1 作図可能数の定義
定規で引く直線は作図済みの二点を通る直線であり、コンパスで描く円は作図済みの点を中心とし作図済みの二点の距離を半径とする円である。作図を、このような直線と円の交点を一点ずつ加える操作の有限回の反復として、次のように定式化する。
定義 1.1. 複素数x+iy(x,y∈R)を座標平面の点(x,y)と同一視し、部分集合S⊆Cを考える。
- 相異なる二点a,b∈Sを通る直線を、Sが定める直線 (line determined byS) という。
- 点c∈Sを中心とし、相異なる二点a,b∈Sの距離∣a−b∣を半径とする円を、Sが定める円 (circle determined byS) という。
- Sが定める直線と円のうち相異なる二つに共通に属する点z∈Cを、Sから一段で作図される (constructible fromSin one step) 点という。
複素数zが作図可能 (constructible) であるとは、有限列z0,z1,…,zn(n≥1)であって、z0=0とz1=1を満たし、2≤k≤nを満たす各kについてzkが{z0,…,zk−1}から一段で作図され、z∈{z0,…,zn}となるものが存在することをいう。作図可能な複素数全体をCと書く。
補題 1.2. 部分集合S⊆Cを考える。Sから一段で作図される点はCに属する。
証明.zをSから一段で作図される点とする。zが共通に属する二つの直線または円は、Sの高々六個の点s1,…,smによって定まるので、zは{s1,…,sm}から一段で作図される。各lについて、slに対して作図可能性の定義の条件を満たす有限列z0(l),…,znl(l)を取り、列
0, 1, z2(1),…,zn1(1), …, z2(m),…,znm(m), zを考える。部分集合T⊆T′⊆Cについて、Tが定める直線と円はT′が定める直線と円でもあるので、Tから一段で作図される点はT′から一段で作図される。k≥2について、zk(l)は{z0(l),…,zk−1(l)}から一段で作図され、この集合は上の列でzk(l)より前にある項の集合に含まれる。各slはz0(l),…,znl(l)のいずれかであるので、上の列でzより前にある。したがって、zは上の列でzより前にある項の集合から一段で作図される。上の列はzに対して作図可能性の定義の条件を満たすので、z∈Cである。▨
2 作図可能数の体
補題 2.1.CはCの部分体である。さらに、任意のz∈Cと、w2=zを満たす任意のw∈Cについて、w∈Cである。
証明.
主張 2.1.1. 任意のz,w∈Cについて、z+w、−z、zおよびizはCに属する。
証明.z=0ならば−z=z=iz=0∈Cであるので、−z、z、izについてはz=0とする。
点−zは、0とzを通る直線と、中心0、半径∣z−0∣の円に共通に属する。この直線と円は{0,z}が定める直線と円であるから、補題 1.2により−z∈Cである。
z=0またはw=0ならばz+w∈{z,w}⊆Cである。z=0、w=0、z=wならば、点z+wは、中心z、半径∣w−0∣の円と、中心w、半径∣z−0∣の円に共通に属する。二つの円は中心が異なるので相異なり、いずれも{0,z,w}が定める円である。z=w=0ならば、点z+w=2zは、0とzを通る直線と、中心z、半径∣z−0∣の円に共通に属する。いずれの場合も、補題 1.2によりz+w∈Cである。
z∈Rならばz=z∈Cである。z∈/Rならばz=0,1であり、∣z−0∣=∣z−0∣と∣z−1∣=∣z−1∣=∣z−1∣により、点zは中心0、半径∣z−0∣の円と、中心1、半径∣z−1∣の円に共通に属する。二つの円は{0,1,z}が定める相異なる円であるから、補題 1.2によりz∈Cである。
既に得たとおり−z∈Cであり、z=−zである。符号±のいずれについても
∣±3iz−z∣=∣z∣∣±3i−1∣=2∣z∣,∣±3iz+z∣=∣z∣∣±3i+1∣=2∣z∣であるから、二点±3izは、中心z、半径∣z−(−z)∣の円と、中心−z、半径∣z−(−z)∣の円に共通に属する。二つの円は{z,−z}が定める相異なる円であるから、補題 1.2により±3iz∈Cである。点izは、相異なる二点3izと−3izを通る直線{t3iz∣t∈R}と、中心0、半径∣z−0∣の円に共通に属するので、補題 1.2によりiz∈Cである。▨
主張 2.1.2. 実数a,b,c∈Cがa=0を満たすならば、bc/a∈Cである。
証明.b=0またはc=0ならばbc/a=0∈Cであるので、b=0かつc=0とする。主張 2.1.1により、i=i⋅1、ibおよびq:=c+ib−aはCに属する。q−c=ib−aの実部は−a=0であるから、q=cであり、cとqを通る直線は
{c+t(ib−a)∣t∈R}である。この直線は0でない実数cを含むので、0とiを通る直線iRとは異なる。t=c/aのときc+t(ib−a)=ibc/aであるから、点ibc/aは二つの直線に共通に属する。補題 1.2によりibc/a∈Cであり、主張 2.1.1を三回用いると
i3⋅aibc=abc∈Cを得る。▨
主張 2.1.3. 複素数zがCに属することと、RezとImzがともにCに属することは同値である。
証明.z∈Cとし、x:=Rez、y:=Imzとおく。主張 2.1.1により、2=1+1、2x=z+zおよび2y=i3(z+(−z))はCに属する。主張 2.1.2をa=2、c=1とb∈{2x,2y}に適用すると、x,y∈Cを得る。逆に、実数x,y∈Cについて、主張 2.1.1によりx+iy∈Cである。▨
0,1∈Cであり、主張 2.1.1によりCは加法と符号の反転について閉じる。
z,w∈Cを取り、z=x+iy、w=u+iv(x,y,u,v∈R)と書く。主張 2.1.3によりx,y,u,v∈Cであり、主張 2.1.2をa=1と(b,c)∈{(x,u),(y,v),(x,v),(y,u)}に適用すると、xu、yv、xv、yuはCに属する。Cは加法と符号の反転について閉じるので、
Re(zw)=xu−yv,Im(zw)=xv+yuはCに属し、主張 2.1.3によりzw∈Cである。z=0ならば、N:=x2+y2=zzはCに属する正の実数である。主張 2.1.2をa=N、c=1とb∈{x,−y}に適用すると、z−1の実部x/Nと虚部−y/NはCに属するので、主張 2.1.3によりz−1∈Cである。以上により、CはCの部分体である。
正の実数r∈Cを取る。c:=(r−1)/2はCに属し、c+1=(r+1)/2>0であるからc=−1である。
∣ir−c∣2=r+4(r−1)2=4(r+1)2=∣c−(−1)∣2であるから、点irは、中心c、半径∣c−(−1)∣の円と、0とiを通る直線に共通に属する。この円と直線は{−1,0,c,i}が定める円と直線であるから、補題 1.2によりir∈Cであり、r=(ir)/i∈Cである。0でないζ∈Cについては、∣ζ∣2=ζζがCに属する正の実数であるから、∣ζ∣∈Cである。
z∈Cと、w2=zを満たすw∈Cを取る。z=0ならばw=0∈Cである。z=0とし、u:=z/∣z∣とおくと、u∈Cかつ∣u∣=1である。u=−1ならばv:=iとおき、u=−1ならばv:=(1+u)/∣1+u∣とおく。いずれの場合もv∈Cである。u=−1の場合には、u=u−1から
∣1+u∣2=(1+u)(1+u−1)=u(1+u)2となるので、v2=(1+u)2/∣1+u∣2=uである。u=−1の場合にもv2=−1=uである。w0:=∣z∣vとおくと、w0∈Cかつw02=∣z∣u=zである。(w−w0)(w+w0)=w2−w02=0であるからw=±w0であり、w∈Cである。▨
3 二次拡大の塔による特徴づけ
補題 3.1.FをRの部分体とし、部分集合S⊆Cに属するすべての点の実部と虚部がFに属すると仮定する。点zがSから一段で作図されるならば、d≥0を満たすd∈Fが存在して、zの実部と虚部はF(d)に属する。ここでdはdの非負の平方根を表し、F(d)はFとdによって生成されるRの部分体を表す。
証明.z=x0+iy0(x0,y0∈R)と書く。Sが定める直線が相異なる二点p1+ip2とq1+iq2を通るとき、a:=q2−p2、b:=p1−q1、c:=ap1+bp2とおくと、a,b,c∈Fかつ(a,b)=(0,0)であり、この直線は方程式ax+by=cの実数解(x,y)全体である。Sが定める円が中心m1+im2と、Sの二点s,s′の距離ρ:=∣s−s′∣を半径とするとき、
ρ2=(Res−Res′)2+(Ims−Ims′)2∈Fである。e:=−2m1、f:=−2m2、g:=m12+m22−ρ2とおくと、e,f,g∈Fであり、この円は方程式x2+y2+ex+fy+g=0の実数解全体である。
主張 3.1.1.(a,b)=(0,0)を満たすa,b,c∈Fとe,f,g∈Fについて、(x0,y0)が二つの方程式ax+by=cとx2+y2+ex+fy+g=0をともに満たすならば、d≥0を満たすd∈Fが存在してx0,y0∈F(d)である。
証明. 二つの方程式の形はxとyの入れ替えで保たれるので、b=0と仮定してよい。y0=(c−ax0)/bを第二の方程式に代入すると、
Ax02+Bx0+C=0,A=1+b2a2を満たすB,C∈Fが存在する。A=0であり、d:=B2−4AC∈Fとおくと
(2Ax0+B)2=4A(Ax02+Bx0+C)+B2−4AC=dである。したがってd≥0であり、2Ax0+B=±dからx0=(±d−B)/(2A)∈F(d)を得る。さらにy0=(c−ax0)/b∈F(d)である。▨
zは、Sが定める直線と円のうち相異なる二つに共通に属する。その二つが直線a1x+b1y=c1とa2x+b2y=c2である場合、Δ:=a1b2−a2b1=0と仮定する。このとき零でない二つのベクトル(a1,b1)と(a2,b2)は平行であり、(a2,b2)=λ(a1,b1)を満たす実数λ=0が存在する。(x0,y0)は二つの方程式をともに満たすのでc2=a2x0+b2y0=λc1であり、二つの方程式の解集合は一致する。解集合の一致は二つの直線が相異なることに反するので、Δ=0である。Cramer の公式により
x0=Δc1b2−c2b1,y0=Δa1c2−a2c1はともにFに属するので、d=0とすればよい。
その二つの一方が直線で他方が円である場合、主張 3.1.1により結論が成り立つ。
その二つが円x2+y2+ekx+fky+gk=0(k=1,2)である場合、二つの方程式の差をとると
(e1−e2)x0+(f1−f2)y0=g2−g1を得る。e1=e2かつf1=f2ならば、この式からg1=g2となり、二つの円の方程式が一致して、二つの円が相異なることに反する。したがって(e1−e2,f1−f2)=(0,0)であり、(x0,y0)はF係数の一次方程式(e1−e2)x+(f1−f2)y=g2−g1と方程式x2+y2+e1x+f1y+g1=0をともに満たす。主張 3.1.1により結論が成り立つ。▨
補題 3.2.EをCの部分体とし、任意のz∈Eと、w2=zを満たす任意のw∈Cについて、w∈Eであると仮定する。Cの部分体の塔
Q=F0⊆F1⊆⋯⊆Frが[Fj:Fj−1]∈{1,2}(1≤j≤r)を満たすならば、Fr⊆Eである。
証明.Eは1を含む体であるから、整数mと0でない整数nについてm/n∈Eであり、F0=Q⊆Eである。1≤j≤rとし、Fj−1⊆Eと仮定する。[Fj:Fj−1]=1ならば、1がFjのFj−1上の基底であるからFj=Fj−1⊆Eである。[Fj:Fj−1]=2とし、α∈Fj∖Fj−1を取る。p,q∈Fj−1がp+qα=0かつq=0を満たすならばα=−p/q∈Fj−1となるので、1とαはFj−1上一次独立であり、2次元のFj−1-線形空間Fjの基底をなす。したがって
Fj={p+qα∣p,q∈Fj−1}であり、α2=−bα−cを満たすb,c∈Fj−1が存在する。β:=2α+bとおくと
β2=4α2+4bα+b2=b2−4c∈Fj−1⊆Eであるから、Eについての仮定によりβ∈Eである。α=(β−b)/2∈Eであり、Eは体であるからFj⊆Eである。jについての帰納法によりFr⊆Eである。▨
定理 3.3.z∈Cについて、次の二条件は同値である。
- zは作図可能である。
- Cの部分体の塔
Q=F0⊆F1⊆⋯⊆Fr
が存在し、z∈Frかつ[Fj:Fj−1]∈{1,2}が1≤j≤rを満たすすべてのjについて成り立つ。
証明.(1)⇒(2)を示す。zに対して作図可能性の定義の条件を満たす有限列z0,…,znを取る。Rの部分体K1:=Qから始めて、2≤k≤nについてRの部分体Kk⊇Kk−1を、z0,…,zkの実部と虚部がすべてKkに属し、[Kk:Kk−1]∈{1,2}となるように帰納的に定める。z0=0とz1=1の実部と虚部はK1に属する。Kk−1まで定まったとする。補題 3.1をF=Kk−1とS={z0,…,zk−1}に適用すると、dk≥0を満たすdk∈Kk−1が存在して、zkの実部と虚部はKk:=Kk−1(dk)に属する。Kk−1⊆Kkであるから、z0,…,zkの実部と虚部はすべてKkに属する。dkはx2−dk∈Kk−1[x]の根であるから、§E8.2 定理 2.1によりdkのKk−1上の最小多項式はx2−dkを割り、その次数は1または2である。§E8.2 定理 3.1により[Kk:Kk−1]∈{1,2}である。
iはx2+1∈Kn[x]の根であるから、§E8.2 定理 2.1と§E8.2 定理 3.1により[Kn(i):Kn]∈{1,2}である。zの実部と虚部はKnに属するので、z∈Kn(i)である。Fj:=Kj+1(0≤j≤n−1)およびFn:=Kn(i)とおくと、Cの部分体の塔Q=F0⊆⋯⊆Fnは(2)の条件を満たす。
(2)⇒(1)を示す。補題 2.1により、E=Cは補題 3.2の仮定を満たす。同じ補題によりFr⊆Cであるから、z∈Cである。▨
[Fj:Fj−1]=1ならばFj=Fj−1であるから、(2)の塔から重複する体を除くと、各段が二次拡大である塔を得ることができる。したがって(2)は、各段が二次拡大であるCの部分体の塔で、最後の体がzを含むものが存在するという条件と同値である。
系 3.4.EをCの部分体とし、任意のz∈Eと、w2=zを満たす任意のw∈Cについて、w∈Eであると仮定する。このときC⊆Eである。したがって、Cは、この性質をもつCの部分体のうち最小のものである。
証明.z∈Cを取る。定理 3.3により、[Fj:Fj−1]∈{1,2}(1≤j≤r)を満たすCの部分体の塔Q=F0⊆⋯⊆Frで、z∈Frとなるものが存在する。補題 3.2によりFr⊆Eであるから、z∈Eである。補題 2.1によりC自身もこの性質をもつCの部分体であるから、Cは最小である。▨
系 3.5.z∈Cならば、zはQ上代数的であり、[Q(z):Q]は2の冪である。したがって、zのQ上の最小多項式の次数は2の冪である。
証明.定理 3.3により、[Fj:Fj−1]∈{1,2}(1≤j≤r)を満たすCの部分体の塔Q=F0⊆⋯⊆Frで、z∈Frとなるものが存在する。塔の公式§E8.1 定理 2.1を繰り返し適用すると、[Fr:Q]は有限であり、ある整数t≥0について[Fr:Q]=2tである。§E8.2 命題 4.1によりzはQ上代数的であり、§E8.2 定理 3.1により[Q(z):Q]はzのQ上の最小多項式の次数に等しい。FrはQとzを含む体であるからQ(z)⊆Frであり、FrのQ上の基底はFrをQ(z)上でも生成するので、[Fr:Q(z)]は有限である。塔の公式§E8.1 定理 2.1により
2t=[Fr:Q(z)][Q(z):Q]であるから、[Q(z):Q]は2tの正の約数であり、素因数分解の一意性により2の冪である。▨
系 3.6.f∈Q[x]をQ[x]で既約な多項式とし、degfは2の冪でないと仮定する。このとき、fの根である複素数はいずれも作図可能でない。
証明.z∈Cをfの根とし、gをfの最高次係数の逆数をfに掛けたモニック多項式とする。gはQ[x]で既約であり、g(z)=0であるから、zはQ上代数的である。§E8.2 定理 2.1により、zのQ上の最小多項式はgを割る非定数のモニック多項式である。既約多項式gの非定数のモニックな約数はg自身だけであるから、最小多項式はgであり、§E8.2 定理 3.1により[Q(z):Q]=degfである。degfは2の冪でないので、系 3.5によりz∈/Cである。▨
4 立方体倍積と角の三等分
定理 4.1. 実数32は作図可能でない。さらに、作図可能な二点a,bで∣a−b∣=32を満たすものは存在しない。すなわち、線分[0,1]を一辺とする立方体の二倍の体積をもつ立方体の一辺を、作図可能な二点を端点とする線分として得ることはできない。
証明. 多項式x3−2∈Z[x]は、素数2について Eisenstein の判定法§E6.28 命題 8.1の条件を満たすので、Q[x]で既約である。次数3は2の冪でないので、系 3.6により32∈/Cである。
作図可能な二点a,bが∣a−b∣=32を満たすと仮定する。a=bであるから、0と1を通る直線と、中心0、半径∣a−b∣の円は、{0,1,a,b}が定める直線と円である。点32は両者に共通に属するので、補題 1.2により32∈Cとなり、32∈/Cと両立しない。▨
定理 4.2.eiπ/3は作図可能であり、半直線{teiπ/9∣t>0}上の点はいずれも作図可能でない。さらに、有限列w0,w1,…,wn(n≥2)がw0=0、w1=1、w2=eiπ/3を満たし、3≤k≤nを満たす各kについてwkが{w0,…,wk−1}から一段で作図されるならば、どのwkも半直線{teiπ/9∣t>0}上にない。すなわち、三点0、1、eiπ/3が定める角π/3は、定規とコンパスで三等分することができない。
証明.3=1+1+1と−1は部分体Cに属するので、補題 2.1により3∈Cとi∈Cを得る。したがってeiπ/3=(1+3i)/2∈Cである。
半直線上の点p=teiπ/9(t>0)が作図可能であると仮定する。0とpを通る直線と、中心0、半径∣1−0∣の円は、{0,1,p}が定める直線と円であり、ζ:=eiπ/9は両者に共通に属する。補題 1.2によりζ∈Cであり、Cは体であるからu:=ζ+ζ−1∈Cである。ζ3=eiπ/3からζ3+ζ−3=2cos(π/3)=1であるので、
u3=ζ3+ζ−3+3(ζ+ζ−1)=1+3uとなり、uはh:=x3−3x−1∈Q[x]の根である。hが有理数の根m/n(m,n∈Zは互いに素、n>0)をもつと仮定すると、m3=3mn2+n3である。nの素因数はいずれもm3を割り、したがってmを割るので、mとnが互いに素であることからn=1である。このときm(m2−3)=1であるからm=±1であるが、h(1)=−3かつh(−1)=1であるので、h(m/n)=0となり、m/nがhの根であることと両立しない。したがってhはQに根をもたず、次数が3であるから、§E6.28 定理 4.3によりQ[x]で既約である。次数3は2の冪でないので、系 3.6によりu∈/Cであり、u∈Cと両立しない。したがって半直線上のどの点も作図可能でない。
有限列w0,…,wnを主張のとおりに取る。w0,w1,w2∈Cであり、3≤k≤nについてw0,…,wk−1∈Cならば、補題 1.2によりwk∈Cである。kについての帰納法により、すべてのwkはCに属する。半直線{teiπ/9∣t>0}上のどの点も作図可能でないので、どのwkもこの半直線上にない。▨
5 演習
問題 5.1.e2πi/3は作図可能であり、半直線{te2πi/9∣t>0}上の点はいずれも作図可能でないことを示せ。さらに、有限列w0,w1,…,wn(n≥2)がw0=0、w1=1、w2=e2πi/3を満たし、3≤k≤nを満たす各kについてwkが{w0,…,wk−1}から一段で作図されるならば、どのwkもこの半直線上にないこと、すなわち三点0、1、e2πi/3が定める角2π/3は定規とコンパスで三等分することができないことを示せ。
解答.
補題 2.1により3∈Cとi∈Cであるから、e2πi/3=(−1+3i)/2∈Cである。
半直線上の点p=te2πi/9(t>0)が作図可能であると仮定する。0とpを通る直線と、中心0、半径∣1−0∣の円は、{0,1,p}が定める直線と円であり、ζ:=e2πi/9は両者に共通に属する。補題 1.2によりζ∈Cであり、Cは体であるからu:=ζ+ζ−1=2cos(2π/9)∈Cである。ζ3=e2πi/3からζ3+ζ−3=2cos(2π/3)=−1であるので、
u3=ζ3+ζ−3+3(ζ+ζ−1)=−1+3uとなり、uはh:=x3−3x+1∈Q[x]の根である。hが有理数の根m/n(m,n∈Zは互いに素、n>0)をもつと仮定すると、m3=3mn2−n3である。nの素因数はいずれもm3を割り、したがってmを割るので、mとnが互いに素であることからn=1である。このときm(m2−3)=−1であるからm=±1であるが、h(1)=−1かつh(−1)=3であるので、h(m/n)=0となり、m/nがhの根であることと両立しない。したがってhはQに根をもたず、次数が3であるから、§E6.28 定理 4.3によりQ[x]で既約である。次数3は2の冪でないので、系 3.6によりu∈/Cであり、u∈Cと両立しない。したがって半直線上のどの点も作図可能でない。
有限列w0,…,wnを問題のとおりに取る。w0,w1,w2∈Cであり、3≤k≤nについてw0,…,wk−1∈Cならば、補題 1.2によりwk∈Cである。kについての帰納法により、すべてのwkはCに属する。半直線{te2πi/9∣t>0}上のどの点も作図可能でないので、どのwkもこの半直線上にない。▨