1 平面曲線の符号つき曲率
第2項は空間曲線の曲率をκ=∥T′∥と定めた(§E19.2 定義 2.1)。この量は非負であり、曲がる向きの情報を持たない。平面曲線では、向きの情報を符号として持たせることができる。
定義 1.1.Iを区間、γ:I→R2を単位速度の曲線(§E19.1 定理 2.2)とし、T=γ′と置く。各s∈Iに対して
n(s)=JT(s)と定め、nをγの単位法線 (unit normal) という。∥T∥≡1を微分すると⟨T′,T⟩=0であり、(T(s),n(s))はR2の正規直交基底であるから、T′(s)はn(s)の実数倍である。その係数
κs(s)=⟨γ′′(s),n(s)⟩,すなわちT′(s)=κs(s)n(s)をγの符号つき曲率 (signed curvature) という。
命題 1.2.γ:I→R2を単位速度の曲線とする。
- γをR3の曲線とみたときの曲率κ=∥T′∥(§E19.2 定義 2.1)についてκ=∣κs∣が成り立つ。
- γの向きを反転させてγ(s)=γ(−s)と置くと、κs(s)=−κs(−s)である。
- AをR2の直交行列、c∈R2とし、γ=Aγ+cと置く。detA=1ならばκs(s)=κs(s)であり、detA=−1ならばκs(s)=−κs(s)である。
証明.(1)を示す。T′=κsnと∥n∥=1からκ=∥T′∥=∣κs∣である。
(2)を示す。γ′(s)=−γ′(−s)であるからT(s)=−T(−s)であり、n(s)=JT(s)=−n(−s)である。一方T′(s)=T′(−s)=κs(−s)n(−s)であるから
κs(s)=⟨T′(s),n(s)⟩=⟨κs(−s)n(−s),−n(−s)⟩=−κs(−s)である。
(3)を示す。T=ATでありAは直交行列であるからγも単位速度である。detA=1のときAは回転でありAJ=JAが成り立つからn=JAT=AJT=Anであり
κs=⟨AT′,An⟩=⟨T′,n⟩=κsである。detA=−1のときAJ=−JAが成り立つからn=−Anであり、同じ計算で符号が反転する。▨
2 偏角の連続な選択
回転指数を定めるには、単位ベクトル場の偏角を連続に選ぶ操作が要る。この操作は§E18 位相幾何入門の指数被覆による道の持ち上げそのものである。
補題 2.1.[a,b]を有界閉区間、w:[a,b]→S1を連続写像とする。
- 連続関数φ:[a,b]→Rであって、すべてのs∈[a,b]で
w(s)=(cosφ(s), sinφ(s))
を満たすものが存在する。
- φ(a)の値を指定すれば、そのようなφは一意である。とくに二つの選択は定数2πk(kは整数)だけ異なる。
- 差φ(b)−φ(a)はφの取り方に依らない。
このφをwの偏角の連続な選択という。
証明.(1)と(2)を示す。S1を複素数の絶対値1の全体と同一視し、p:R→S1、p(t)=e2πitと置く。§E18 位相幾何入門の§E18.5 例 1.3によりpは被覆写像である。[a,b]を[0,1]へ増加するアフィン写像で移して考えれば、wはS1の中の道である。θ0∈Rをp(θ0)=w(a)となるように取る。§E18 位相幾何入門の§E18.5 補題 2.1により、w(a)=θ0かつp∘w=wを満たす連続写像w:[a,b]→Rが一意に存在する。φ=2πwと置けば 1 の等式が成り立つ。
一意性を示す。φ1,φ2をともに 1 を満たす連続関数としφ1(a)=φ2(a)とすると、φ1/(2π)とφ2/(2π)はともにwの持ち上げであって一点で一致するから、§E18.5 補題 2.1の一意性により一致する。始点を指定しない場合は、φ1−φ2が連続で2πZに値を取り、[a,b]が連結であるから定数2πkである。
(3)を示す。(2)により二つの選択の差は定数であるから、差φ(b)−φ(a)は共通である。▨
補題 2.2.γ:[a,b]→R2を単位速度のC∞曲線、T=γ′とし、φをTの偏角の連続な選択とする。このときφはC∞であり、[a,b]の上で
φ′=κsが成り立つ。とくに
φ(b)−φ(a)=∫abκs(s)dsである。
証明. φがC∞であることを示す。T=(T1,T2)と書くとT1=cosφ、T2=sinφであり、(T1)2+(T2)2=1であるから、各点でT1とT2の少なくとも一方は零でない。s0∈[a,b]を固定する。
T1(s0)=0の場合を扱う。T1は連続であるから、s0のある近傍I0([a,b]の中での近傍)でT1=0である。cosφ=T1=0であるから、I0の上でφは⋃k∈Z(kπ−2π,kπ+2π)に値を取る。この和集合の各成分は互いに交わらない開区間であり、φは連続でI0は連結であるから、φ(I0)は一つの成分(kπ−2π,kπ+2π)に含まれる。その成分の上で正接はRへのC∞微分同相であり、tanφ=T2/T1であるから
φ=kπ+arctanT1T2(I0 の上で)である。T1,T2はC∞であるからφはI0の上でC∞である。
T2(s0)=0の場合も同様である。s0の近傍でsinφ=0であるからφは⋃k(kπ,(k+1)π)の一つの成分に値を取り、その成分の上で余接がRへのC∞微分同相であることとcotφ=T1/T2から、φはその近傍でC∞である。s0は任意であったからφは[a,b]の上でC∞である。
φ′=κsを示す。T=(cosφ,sinφ)を微分すると
T′=φ′(−sinφ, cosφ)=φ′JT=φ′nである。定義 1.1によりT′=κsnであり、n=0であるからφ′=κsである。最後の等式は§D1 ε-論法と基礎解析の微積分学の基本定理§D1.19 定理 1.1による。▨
3 区分的に滑らかな閉曲線と回転指数
定義 3.1. 連続写像γ:[a,b]→R2が区分的に滑らかな正則閉曲線 (piecewise smooth regular closed curve) であるとは、次の三条件が成り立つことをいう。
- γ(a)=γ(b)である。
- 分割a=t0<t1<⋯<tN=bが存在して、各制限γ∣[tj−1,tj]はC∞である。
- 各jと各t∈[tj−1,tj]でγ′(t)=0である。端点における微分は片側微分を意味する。
さらにγ∣[a,b)が単射であるとき、γを単純 (simple) であるという。
1≤j≤N−1に対して、tjにおける入る側の単位接ベクトル (incoming unit tangent vector) と出る側の単位接ベクトル (outgoing unit tangent vector) を
Tj−=∥γ′(tj−)∥γ′(tj−),Tj+=∥γ′(tj+)∥γ′(tj+)と定める。j=N(同じことであるがj=0)については、閉じていることを用いて
TN−=∥γ′(b−)∥γ′(b−),TN+=∥γ′(a+)∥γ′(a+)と定める。Tj−=−Tj+がすべてのjで成り立つとき、γは尖点を持たない (cusp-free) という。Tj−=Tj+となるtjを角 (corner) という。
尖点を持たないという条件は、外角を(−π,π)の中で一意に定めるために置く。本単元で領域の境界の外角について置く規約も、この条件のもとで述べられている。
定義 3.2.γを尖点を持たない区分的に滑らかな正則閉曲線とする。各jに対して、Tj−=−Tj+であるから
cosθj=⟨Tj−, Tj+⟩,sinθj=⟨JTj−, Tj+⟩を満たすθjが(−π,π)の中でただ一つ定まる。このθjをtjにおける外角 (exterior angle) という。
θjの存在と一意性は次のように確かめる。(Tj−,JTj−)はR2の正規直交基底でありTj+は単位ベクトルであるから、上の二つの値の平方和は1である。したがってθjは2πの整数倍を除いて定まる。Tj−=−Tj+はcosθj=−1と同値であるから、(−π,π)の中の代表がただ一つ存在する。θj=0であることとTj−=Tj+であることは同値であり、角でない分割点の外角は0である。
外角は、二つの単位ベクトルを結ぶ線分の上で偏角がどれだけ動くかとしても取り出すことができる。次の補題は、この取り出し方を回転定理の証明で二度用いるために用意するものである。
補題 3.3.w0,w1∈S1がw1=−w0を満たすとし、定義 3.2と同じ定め方で
cosθ=⟨w0,w1⟩,sinθ=⟨Jw0,w1⟩を満たすθ∈(−π,π)を取る。μ∈[0,1]に対してz(μ)=(1−μ)w0+μw1と置く。
- すべてのμ∈[0,1]でz(μ)=0であり、Z(μ)=z(μ)/∥z(μ)∥は[0,1]からS1への連続写像である。
- Zの偏角の連続な選択(補題 2.1)をζとするとζ(1)−ζ(0)=θである。
- c0,c1≥0がc0+c1>0を満たすときc0w0+c1w1=0であり、μ=c1/(c0+c1)に対して(c0w0+c1w1)/∥c0w0+c1w1∥=Z(μ)である。
証明.(1)を示す。μ∈{0,1}のときz(μ)は単位ベクトルである。μ∈(0,1)でz(μ)=0とすると(1−μ)w0=−μw1であり、両辺のノルムを比べて1−μ=μ、すなわちμ=1/2であり、そのときw0=−w1となって仮定に反する。zはμについて連続であり∥z∥>0であるからZは連続である。
(2)を示す。w0の偏角の一つをβと取ると、θの定め方によりw1=(cos(β+θ),sin(β+θ))である。座標を角−βの回転で移せばβ=0としてよい。R2を複素平面と同一視するとz(μ)=(1−μ)+μeiθである。
Cを1とeiθが非負係数で張る閉凸錐とする。∣θ∣<πであるから、Cに属する零でない複素数の偏角は、0とθを端点とする閉区間Iの元と2πの整数倍との和として書かれ、Iの長さは∣θ∣<πである。z(μ)はCに属し零でないから、連続な選択ζはζ(0)=0から出発して⋃k∈Z(I+2πk)に値を取る。この和集合の各成分は互いに交わらない閉区間であり、[0,1]は連結であるから、ζ([0,1])は成分Iに含まれる。ζ(1)はθと2πの整数倍だけ異なり、かつIに属するからζ(1)=θである。
(3)を示す。c0+c1>0で割るとc0w0+c1w1=(c0+c1)z(μ)(μ=c1/(c0+c1)∈[0,1])であり、(1)により零でない。正の実数倍は正規化した値を変えない。▨
定義 3.4.γ:[a,b]→R2を尖点を持たない区分的に滑らかな正則閉曲線とし、分割a=t0<t1<⋯<tN=bと外角θ1,…,θNを定義 3.1と定義 3.2のとおりとする。各jに対して、弧γ∣[tj−1,tj]の単位接ベクトルT=γ′/∥γ′∥の偏角の連続な選択をφj:[tj−1,tj]→Rとする(補題 2.1)。このとき
ι(γ)=2π1(j=1∑N(φj(tj)−φj(tj−1))+j=1∑Nθj)をγの回転指数 (rotation index) という。補題 2.1 (3)により、各増分はφjの取り方に依らないので、ι(γ)は定まる。γが滑らかな正則閉曲線であってTが[a,b]の全体で連続である場合には、外角はすべて0であり、ι(γ)はTの偏角の一周分の増分を2πで割った値に等しい。
弧に沿う増分を、単位速度に取り直したうえで補題 2.2によって書き直すと
φj(tj)−φj(tj−1)=∫弧jκsds
である。したがって回転指数の定義は、記号を略した形では
2πι(γ)=j∑∫弧jdφ+j∑θj
と書かれる。
命題 3.5.γを尖点を持たない区分的に滑らかな正則閉曲線とする。
- ι(γ)は整数である。
- ι(γ)は定義 3.1の分割の取り方に依らない。
- h:[c,d]→[a,b]を狭義単調増加な区分的に滑らかな全単射であってh′>0を満たすものとするとι(γ∘h)=ι(γ)である。
証明.(1)を示す。wj=cosφj+isinφjと同一視して、単位複素数
u=exp(ij=1∑N(φj(tj)−φj(tj−1))+ij=1∑Nθj)を考える。eiφj(tj)=Tj−、eiφj(tj−1)=Tj−1+(ただしT0+=TN+)であり、定義 3.2の定め方によりeiθj=Tj+Tj−である。したがって
u=j=1∏NTj−1+Tj−⋅j=1∏NTj−Tj+=j=1∏NTj−1+Tj+=1である。最後の等号は、積が電話帳式に相殺しTN+/T0+=1となることによる。u=1であるから、指数の中身は2πの整数倍であり、ι(γ)は整数である。
(2)を示す。二つの分割の共通の細分を取れば足りる。分割へ点t∗∈(tj−1,tj)を追加すると、その点の外角は0であり、弧[tj−1,tj]に沿う増分は[tj−1,t∗]と[t∗,tj]に沿う増分の和に等しい。φjの制限がそれぞれの弧の偏角の連続な選択になっているからである。したがってι(γ)は変わらない。
(3)を示す。h′>0であるから、γ∘hの単位接ベクトルはT∘hに等しい。したがって各弧の偏角の連続な選択としてφj∘hを取ることができ、増分は変わらない。片側接ベクトルも変わらないので外角も変わらない。▨
4 境界の向きの規約と支持点
回転定理の証明は、曲線が支持直線に接する点を出発点に取る。その点が角である場合を排除することはできないので、角である場合を含めて、そこでの外角の値を先に決めておく。
以下、Dを§E4 実解析 IIの§E4.22 定義 1.2の意味の区分的に一階連続微分可能な正則領域、Ωをその内部とする。§E4.22 定義 1.2 条件 (c)と§E4.22 定義 1.2 条件 (d)を、本記事では次の形で用いる。境界の滑らかな弧の内部の点γ(t)に対して、δt>0が存在して
0<δ<δt ⟹ γ(t)+δJγ′(t)∈Ω,γ(t)−δJγ′(t)∈/D
が成り立つ。これが「Dを左に見る向き」の意味である。
det(v,w)=v1w2−v2w1と書く。Jの定義から、すべてのv,w∈R2について
det(v,Jw)=⟨v,w⟩,⟨v,Jw⟩=−det(v,w),det(v,Jv)=∥v∥2
が成り立つ。
補題 4.1.γ:[0,L]→R2を、尖点を持たない区分的に滑らかな正則単純閉曲線であって、その像が上記のDの境界であり、向きがDを左に見る向きであるものとする。γは単位速度とし、Lを周期としてRの全体へ延長する。p=γ(0)が第二座標γ2の[0,L]における最小値を与えるとする。座標を平行移動してp=0、γ2(0)=0としてよい。
u1=γ′(0+)、u2=−γ′(0−)と置き、a1,a2∈[−π,π]をui=(cosai,sinai)で定める。このとき次が成り立つ。
- a1,a2∈[0,π]に取ることができ、u1=u2である。
- a1<a2である。
- pにおける外角はθ=a1−a2+πであり、θ∈[0,π)である。
証明.(1)を示す。γ2(t)≥0がすべてのtで成り立つ。γ2(t)=tsina1+o(t)(t↓0)であるから、sina1<0とすると小さいt>0でγ2(t)<0となり矛盾である。よってsina1≥0であり、a1∈[0,π]に取ることができる。同様にγ2(−t)=−tγ2′(0−)+o(t)=tsina2+o(t)であるからsina2≥0であり、a2∈[0,π]に取ることができる。u1=u2はγ′(0+)=−γ′(0−)を意味し、尖点を持たないという仮定に反する。
(2)を示す。A1(t)=γ(t)、A2(t)=γ(−t)(t≥0)と置く。Aiはt=0の近くでC∞、単位速度であり、Ai(0)=0、Ai′(0)=uiである。
⟨Ai(t),Ai′(t)⟩=t+o(t)であるから、ε1>0を十分小さく取ると、0<t≤ε1で⟨Ai(t),Ai′(t)⟩>0であり、したがってρi(t)=∥Ai(t)∥は[0,ε1]で狭義単調増加である。ρi′(t)=⟨Ai,Ai′⟩/ρi>0であるからρiはC∞微分同相であり、その逆写像を通じて
ϑi(ρ)=argAi(ρi−1(ρ))は(0,ρi(ε1)]の上でC∞に定まり、ρ↓0でaiへ収束する。ここでargは連続に選ぶ。連鎖律により
ϑi′(ρ)=⟨Ai,Ai′⟩/ρdet(Ai,Ai′)/ρ2=ρ⟨Ai,Ai′⟩det(Ai,Ai′)である。
r>0を、次の三つが成り立つように取る。第一に、§E4.22 定義 1.2 条件 (c)の局所的な片側性がpにおいて半径rで成り立つ。第二に、r<miniρi(ε1)である。第三に、r<dist(p, γ([ε1,L−ε1]))である。第三の量が正であることは、γ∣[0,L)が単射でありγ([ε1,L−ε1])がコンパクトでpを含まないことによる。
このとき∂D∩B(p,r)は二つの弧A1、A2の部分の合併である。ρiが狭義単調増加であるから、各ρ∈(0,r)に対して円周∥q∥=ρとAiの交わりはちょうど一点であり、その偏角がϑi(ρ)である。u1=u2かつϑi(ρ)→aiであるから、rをさらに小さく取ればϑ1(ρ)=ϑ2(ρ)がすべてのρ∈(0,r)で成り立つ。ϑ2の連続な代表をϑ1(ρ)<ϑ2(ρ)<ϑ1(ρ)+2πとなるように取る。
以上により
V+={ρ(cosϑ,sinϑ): 0<ρ<r, ϑ1(ρ)<ϑ<ϑ2(ρ)},V−={ρ(cosϑ,sinϑ): 0<ρ<r, ϑ2(ρ)<ϑ<ϑ1(ρ)+2π}と置くと、V+とV−は互いに交わらない連結開集合であり、B(p,r)∖∂D=V+∪V−である。連結性は、(ρ,λ)↦ρ(cos((1−λ)ϑ1(ρ)+λϑ2(ρ)), sin(⋯))という連続な全射が定義域(0,r)×(0,1)からV+へ与えられることによる(V−も同様)。条件 3 によりB(p,r)∖∂Dの連結成分はちょうど二つであるから、{V+,V−}が{Ω∩B(p,r), (R2∖D)∩B(p,r)}に一致する。
V+がΩの側であることを示す。0<t≤ε1を、ρ1(t)<rとなるように取り、v=A1(t)、w=A1′(t)、ρ=∥v∥と置く。q(δ)=v+δJwとすると
dδdargq(δ)δ=0=ρ2det(v,Jw)=ρ2⟨v,w⟩,dδd∥q(δ)∥δ=0=ρ⟨v,Jw⟩=−ρdet(v,w)である。よって
dδd[argq(δ)−ϑ1(∥q(δ)∥)]δ=0=ρ2⟨v,w⟩+ρ2⟨v,w⟩det(v,w)2>0である。δ=0ではこの量は0であるから、十分小さいδ>0に対してargq(δ)>ϑ1(∥q(δ)∥)であり、またδ→0でargq(δ)→ϑ1(ρ)<ϑ2(ρ)であるから、δを十分小さく取ればq(δ)∈V+である。一方、Dを左に見る向きに取ったことにより、十分小さいδ>0でq(δ)=γ(t)+δJγ′(t)∈Ωである。したがってV+はΩと交わり、V+=Ω∩B(p,r)である。
結論。D⊆{q:q2≥0}である。実際、γ2≥0であり、Dはコンパクトであるからγ2の代わりにq↦q2のDにおける最小値を考えると、それはΩの点では達成されない(内点の近傍で値を下げることができる)ので∂Dで達成され、その値は0である。よってB(p,r)の下半分B−={q∈B(p,r):q2<0}はDと交わらず、B−⊆(R2∖D)∩B(p,r)=V−である。
a2<a1と仮定する。このときϑ1(ρ)<ϑ2(ρ)<ϑ1(ρ)+2πという取り方から、ρ↓0でϑ1(ρ)→a1、ϑ2(ρ)→a2+2πである。したがって、十分小さいρに対してV−の偏角の範囲(ϑ2(ρ),ϑ1(ρ)+2π)は(a2+2π,a1+2π)に近く、その全体が偏角2πから3πの範囲、すなわち第二座標が非負の方向に含まれる。これはB−⊆V−に反する。実際、a1,a2∈[0,π]であるから、真下の方向3π/2(同じことであるが7π/2)は(ϑ2(ρ),ϑ1(ρ)+2π)に属さない。よってa1<a2である。
(3)を示す。γ′(0−)=−u2の偏角はa2−π∈[−π,0]であり、γ′(0+)=u1の偏角はa1∈[0,π]である。定義 3.2の外角θは、a1−(a2−π)=a1−a2+πを2πの整数倍だけずらして(−π,π)に入れた値である。2 とa1,a2∈[0,π]によりa1−a2+π∈[0,π)であるから、この値自身が(−π,π)に属し、θ=a1−a2+πである。▨
5 定義域の境界点を膨らませる操作
回転定理の証明は、Hopf の割線写像を三角形Δ={(s,t):0≤s≤t≤L}の上で作る。s<tのときは割線の方向(γ(t)−γ(s))/∥γ(t)−γ(s)∥を対応させ、対角線s=tの上では単位接ベクトルを対応させる。この写像はΔの三つの境界点の型で連続にならない。曲線γの角sjに対応する対角線上の点(sj,sj)と、対角線の両端を結ぶ頂点(0,L)である。いずれの点でも、極限は近づき方に依存する。
そこで、これらの点を、近づき方を径数とする線分へ置き換える。置き換えが定義域の位相を変えないことを示すために、まず、平面のコンパクトな凸集合が閉円板と同相であることと、境界の同相写像が内部へ延びることを確かめる。用いるのは凸性だけであり、Jordan の曲線定理も Schoenflies の定理も用いない。
補題 5.1.K⊆R2をコンパクトな凸集合、cをその内点とする。D={z∈R2:∥z∥≤1}と書く。
- 各u∈S1に対してrK(u)=max{r≥0: c+ru∈K}が定まり、rKはS1の上の正の連続関数である。
- Ξ(0)=c、Ξ(τu)=c+τrK(u)u(u∈S1、τ∈(0,1])はDからKへの同相写像であり、S1を∂Kの上へ写す。
- K′を内点を持つ別のコンパクトな凸集合、h:∂K→∂K′を同相写像とすると、hの延長である同相写像K→K′が存在する。
証明.(1)を示す。B(c,ε)⊆Kとなるε>0を取る。{r≥0:c+ru∈K}は、Kが有界かつ閉であることから有界閉であり、Kが凸であることから区間である。r=0を含むので、この集合は[0,rK(u)]の形であり、rK(u)≥ε>0である。
連続性を示す。un→uとする。rK(un)の任意の収束する部分列の極限をrとすると、c+rK(un)un∈KでありKは閉であるからc+ru∈K、すなわちr≤rK(u)である。よってlimsupnrK(un)≤rK(u)である。逆向きを示す。R=rK(u)とし0<τ<1を取る。B(c,ε)⊆Kとc+Ru∈Kと凸性により
B((1−τ)c+τ(c+Ru), (1−τ)ε)=(1−τ)B(c,ε)+τ(c+Ru)⊆Kである。nが大きいときc+τRunはこの球に属するからrK(un)≥τRであり、liminfnrK(un)≥τRである。τ↑1としてliminfnrK(un)≥Rを得る。
(2)を示す。ΞはD∖{0}の上でΞ(z)=c+rK(z/∥z∥)zと書かれるから連続であり、∥Ξ(z)−c∥≤∥z∥maxS1rKであるから0でも連続である。単射性を示す。τuとτ′u′がともに零でなくΞ(τu)=Ξ(τ′u′)とするとτrK(u)u=τ′rK(u′)u′であり、両辺のノルムと向きを比べてu=u′、次いでτ=τ′を得る。全射性を示す。z∈Kがz=cを満たすときu=(z−c)/∥z−c∥と置くと∥z−c∥≤rK(u)であり、τ=∥z−c∥/rK(u)∈(0,1]がΞ(τu)=zを与える。コンパクト空間から Hausdorff 空間への連続な全単射は同相写像であるからΞは同相写像である。
Ξ(S1)=∂Kを示す。τ<1のとき、1 の証明の球の評価によりΞ(τu)はKの内点である。したがって∂K⊆Ξ(S1)である。逆にc+rK(u)uはKに属し、その任意の近傍がc+ru(r>rK(u))というKに属さない点を含むから∂Kに属する。
(3)を示す。c′をK′の内点とし、2 の同相写像をΞ、Ξ′と書く。k=(Ξ′)−1∘h∘Ξ∣S1はS1からS1への同相写像である。Dの上でk(τu)=τk(u)(u∈S1、τ∈[0,1])と定めると、kは連続な全単射であり、コンパクト空間から Hausdorff 空間への写像であるから同相写像である。Ξ′∘k∘Ξ−1が求める同相写像である。▨
以下、p∈R2、η>0、0<α+−α−≤πに対して
Σ(p,η,α−,α+)={p+ρ(cosα,sinα): 0≤ρ≤η, α−≤α≤α+}
と書き、これをpを頂点とする閉扇形という。閉扇形は、閉球B(p,η)と、pを頂点とし開き角がπ以下の閉凸錐との共通部分であるから、コンパクトな凸集合であり、内点を持つ。
補題 5.2.X⊆R2をコンパクト集合、p1,…,pmを相異なる点、η>0とし、閉扇形Σi=Σ(pi,η,αi−,αi+)が次を満たすとする。各iについてX∩B(pi,η)=Σiであり、i=kのときΣi∩Σk=∅である。
Ri=[αi−,αi+]×[0,η]と置き、πi:Ri→Σiをπi(α,ρ)=pi+ρ(cosα,sinα)と定め、Ai=πi([αi−,αi+]×{η})、Y=X∖⋃iΣiと置く。Y⊔⨆iRiにおいて、各αについてRiの点(α,η)とYの点πi(α,η)とを同一視した商空間をXと書く。このとき次が成り立つ。
- Xはコンパクトかつ Hausdorff であり、Xと同相である。
- Yの上で恒等写像、各Riの上でπiとして定まる写像π:X→Xは連続な全射であり、m本の線分[αi−,αi+]×{0}の外側では単射である。各線分はpiの一点へ写る。
証明. まずY∪⋃iΣi=X、Y∩Σi=Ai、およびYがコンパクトであることを確かめる。X∩B(pi,η)=ΣiであるからX∖⋃iΣi=X∖⋃iB(pi,η)であり、その閉包に新たに加わるXの点は、あるpiからの距離がちょうどηである点、すなわちAiの点だけである。よってY=(X∖⋃iΣi)∪⋃iAiであり、これはXの閉部分集合であるからコンパクトである。三つの主張はこの表示から従う。
(2)を示す。Z=Y⊔⨆iRiと置き、Θ0:Z→Xを、Yの上で恒等写像、Riの上でπiとして定める。Θ0は連続であり、像はY∪⋃iΣi=Xであるから全射である。Θ0の値が一致する相異なる二点は、Aiの点πi(α,η)とRiの点(α,η)の組か、またはRiの線分ρ=0の中の二点である。前者は同一視した組であり、後者はπiがρ=0をpiへ潰すことによる。よってΘ0は商写像Z→Xを経由して連続な全射π:X→Xを定め、πは線分ρ=0の外側で単射である。
(1)を示す。補題 5.1 (3)をK=Ri、K′=Σiに適用する。Riは長方形であり、Σiは閉扇形であるから、いずれもコンパクトな凸集合であって内点を持つ。∂Riは四つの辺からなり、辺ρ=ηとその他の三つの辺の合併とは、共通の端点を持つ二つの弧である。∂Σiは円弧Aiと二つの半径の合併とからなり、これも共通の端点を持つ二つの弧である。πiは辺ρ=ηからAiへの同相写像であり、残りの弧どうしのあいだにも、端点を対応させる同相写像が存在する(いずれの弧も閉区間と同相である)。二つを合わせると同相写像hi:∂Ri→∂Σiが得られ、補題 5.1 (3)により、hiを延長する同相写像Fi:Ri→Σiが存在する。Fiは辺ρ=ηの上でπiに一致する。
Θ:Z→Xを、Yの上で恒等写像、Riの上でFiとして定める。Θは連続かつ全射であり、値が一致する相異なる二点は、同一視した組((α,η), πi(α,η))に限る。Zはコンパクト、Xは Hausdorff であるからΘは閉写像であり、したがって商写像である。ゆえにΘが誘導する写像X→Xは同相写像である。とくにXはコンパクトかつ Hausdorff である。▨
Xの中で、Riの辺ρ=0が、潰れていた点piを置き換える線分である。その径数αは、Xの中でpiへ近づく方向にほかならない。
6 証明方針
回転定理では、単純閉曲線についてι(γ)=1であると述べる。証明は次の三段からなる。
第一段は、割線写像の定義域を作る段である。γを単位速度に取り直し、周期Lの写像とみなす。Δの対角線上の角に対応する点(sj,sj)(j=1,…,N−1)と頂点(0,L)を、補題 5.2によって線分へ膨らませる。膨らませた領域は正方形と同相である。曲線の側で角の跳びを補間するのではなく、定義域の側で角を膨らませる。曲線γ自身は角を持ったままであるから、接ベクトル場を補間しても割線の方向は連続にならない。
第二段は、割線写像の構成と連続性である。膨らませた線分の上では、その点へ近づく方向αに応じて、二つの片側接ベクトルTj−、Tj+を結ぶ線分の上の方向を対応させる。尖点を持たないという仮定により、この線分は原点を通らない。補題 3.3により、膨らませた線分に沿う偏角の増分はちょうど外角θjである。すなわち、角における跳びを外角のぶんだけ補間する操作を、定義域の上で行うことになる。単純性が割線写像の定義に効き、区分的な滑らかさが対角線における連続性に効く。
第三段は、持ち上げである。§E18 位相幾何入門の§E18.5 補題 3.1により、割線写像はRへ連続に持ち上がる。持ち上げは領域の上の連続関数であるから、二点の値の差は、二点を結ぶ経路の取り方に依らない。この経路独立性が、巻き数のホモトピー不変性が本証明に現れる形である。出発点を、曲線が支持直線に接する点、すなわち第二座標が最小になる点に取ると、辺に沿う割線の方向は閉じた半平面の中にとどまる。この制約と補題 4.1から、増分の総和が2πになる。
7 回転定理
定理 7.1 (回転定理).γ:[a,b]→R2を、尖点を持たない区分的に滑らかな正則単純閉曲線とし、その像を境界とする有界領域を左に見る向きに径数づける。すなわち、Dを§E4 実解析 IIの§E4.22 定義 1.2の意味の区分的に一階連続微分可能な正則領域であって∂D=γ([a,b])が一つの境界曲線からなるものとし、γの向きを、Dを左に見る向きに取る。このとき
ι(γ)=1,すなわちj=1∑N∫弧jdφ+j=1∑Nθj=2πが成り立つ。ここでθj∈(−π,π)は定義 3.2の外角である。
証明.命題 3.5 (3)により、径数を弧長へ取り替えてもι(γ)は変わらない。よってγ:[0,L]→R2を単位速度とし、Lを周期としてRの全体へ延長する。γ2の最小値を与える点を一つ取り、径数を平行移動してその点をγ(0)とする。命題 3.5 (2)により分割の取り方はι(γ)を変えないので、分割0=s0<s1<⋯<sN=Lを、すべての角が分割点になるように取る。座標を平行移動してγ(0)=0、γ2≥0としてよい。
Tj−、Tj+を定義 3.1のとおりとし、外角をθjと書く。とくにTN+=T0+=γ′(0+)=u1、TN−=γ′(0−)=−u2であり、θNはγ(0)における外角である。補題 4.1によりa1,a2∈[0,π]、a1<a2、θN=a1−a2+π∈[0,π)である。
第一段。膨らませた定義域。Δ={(s,t)∈R2:0≤s≤t≤L}と置く。Δは三角形であるからコンパクトな凸集合であり内点を持つので、補題 5.1 (2)により閉円板と同相である。[0,1]2も同じ理由で閉円板と同相であるから、Δは[0,1]2と同相である。d=min1≤j≤N(sj−sj−1)と置き、ηを0<η<min{d/2, L/4}に取る。膨らませる点はpj=(sj,sj)(1≤j≤N−1)とpN=(0,L)である。
1≤j≤N−1のとき、pjから直線s=0までの距離はsj≥d、直線t=Lまでの距離はL−sj≥dでありη<dであるから、B(pj,η)の中では条件0≤sとt≤Lが自動的に成り立ち
Δ∩B(pj,η)={(s,t):s≤t}∩B(pj,η)=Σ(pj,η,4π,45π)である。pNについては、η<L/4によりB(pN,η)の中でs≤η<L−η≤tであるから、条件s≤tが自動的に成り立ち
Δ∩B(pN,η)={(s,t):s≥0, t≤L}∩B(pN,η)=Σ(pN,η,−2π,0)である。相異なる二点の距離は2ηより大きい。実際、j=kがともにN未満のとき∥pj−pk∥=2∣sj−sk∣≥2d>2ηであり、∥pj−pN∥=sj2+(L−sj)2≥L/2>L/2>2ηである。したがって補題 5.2の仮定が満たされる。同補題によって得られる領域をΔ、対応する連続な全射をπ:Δ→Δと書く。補題 5.2 (1)によりΔはΔと同相であり、したがって[0,1]2と同相である。
pj(1≤j≤N−1)に対する長方形をRj=[π/4,5π/4]×[0,η]、pNに対する長方形をRNと書く。RNではχ=α+π/2∈[0,π/2]を座標に取り、貼り合わせの写像を
πN(χ,ρ)=(s,t)=(ρsinχ, L−ρcosχ)と書き直す。χ=0は辺s=0の側、χ=π/2は辺t=Lの側に対応する。0<ϵ≤ηに対して、各Riのρ<ϵの部分を取り除いて得られるΔの部分集合は閉であってコンパクトであり、πはそこからΔの対応するコンパクト部分集合への連続な全単射であるから同相写像である。ϵを小さく取ることにより、πは、膨らませたN本の線分を除いた範囲でΔ∖{p1,…,pN}の上への同相写像である。
第二段。割線写像とその連続性。Ψ:Δ→S1を次の四つで定める。
- πによる像がs<tを満たす点ではΨ=∥γ(t)−γ(s)∥γ(t)−γ(s)とする。この点では(s,t)=(0,L)であり、γ∣[0,L)が単射であってγ(L)=γ(0)であるからγ(s)=γ(t)であり、分母は零でない。
- πによる像が対角線の点(sˉ,sˉ)であってsˉ∈/{s1,…,sN−1}であるときはΨ=γ′(sˉ)とする。ここでγ′(sˉ)は、sˉを含む滑らかな弧の導関数の値であり、sˉ=0ではγ′(0+)=u1、sˉ=Lではγ′(L−)=−u2と読む。
- Rj(1≤j≤N−1)の辺ρ=0の上では
Ψ(α,0)=Zj(Λ(α)),Zj(μ)=(1−μ)Tj−+μTj+(1−μ)Tj−+μTj+
とする。ここで
Λ(α)=⎩⎨⎧1,sinα−cosαsinα,0,4π≤α≤2π,2π≤α≤π,π≤α≤45π
である。
- RNの辺ρ=0の上では
Ψ(χ,0)=∥cosχu2−sinχu1∥cosχu2−sinχu1
とする。
3 のZjが定まることは、γが尖点を持たない、すなわちTj−=−Tj+であることと補題 3.3 (1)による。Λが定まり連続であることは、α=π/2で第二の式の値が1、α=πで0であることによる。sinα−cosα=2sin(α−π/4)は(π/4,5π/4)で正であるから第二の式の分母は消えず、[π/2,π]の上で
Λ′(α)=(sinα−cosα)2cosα(sinα−cosα)−sinα(cosα+sinα)=(sinα−cosα)2−1<0であるから、Λは[π/4,5π/4]から[0,1]への広義単調減少な連続全射である。4 の分母が零でないことは、補題 4.1 (1)によりu1=u2、すなわち−u1=−u2であるから、u2と−u1が互いに反対向きでない単位ベクトルであり、補題 3.3 (3)を適用することができることによる。
Ψが連続であることを示す。1 の範囲ではγの連続性から従う。
対角線の点における連続性。sˉ∈[0,L]をsˉ∈/{s1,…,sN−1}を満たす点とし、sˉを含む滑らかな弧を[sj−1,sj]とする。s≤tがsˉの近傍(弧の中での近傍)にあるとき、微積分学の基本定理(§D1.19 定理 2.1)により
γ(t)−γ(s)=(t−s)γ′(sˉ)+r(s,t),∥r(s,t)∥≤(t−s)s≤u≤tsup∥γ′(u)−γ′(sˉ)∥である。γ′は弧の上で連続であるから、右辺の上限は(s,t)→(sˉ,sˉ)で0へ収束する。t−sで割って正規化するとΨ→γ′(sˉ)である。Δの中で対角線の点の近傍は、膨らませた線分を含まないかぎりπによってΔの中の近傍と同相であるから、これで連続性が従う。
Rjの膨らませた線分における連続性(1≤j≤N−1)。0<ρ≤ηに対して
εj(ρ)=sj−ρ≤u≤sjsupγ′(u)−Tj−+sj≤u≤sj+ρsupγ′(u)−Tj+と置く。左の上限ではγ∣[sj−1,sj]の、右の上限ではγ∣[sj,sj+1]の導関数を取る。η<d/2によりこれらの区間は弧からはみ出さない。二つの導関数はそれぞれの閉区間の上で連続であり、sjにおける値がTj−とTj+であるからεj(ρ)→0(ρ↓0)である。
α∈(π/4,5π/4)、0<ρ≤ηとし(s,t)=πj(α,ρ)と置くとs<tでありs,t∈[sj−ρ,sj+ρ]である。mをs、sj、tの中央値、すなわちm=min{max{s,sj}, t}とするとs≤m≤tであり、[s,m]はγのsjより前の弧に、[m,t]は後の弧に含まれる。よって
γ(t)−γ(s)=∫smγ′(u)du+∫mtγ′(u)du=(m−s)Tj−+(t−m)Tj++r,∥r∥≤(t−s)εj(ρ)である。mとΛの定め方により(t−m)/(t−s)=Λ(α)が成り立つ。実際、cosα>0のときはs>sjかつm=sであって比は1であり、α<π/2であるからΛ(α)=1である。sinα<0のときはt<sjかつm=tであって比は0であり、α>πであるからΛ(α)=0である。cosα≤0≤sinα、すなわちπ/2≤α≤πのときはm=sjであり
t−st−m=ρ(sinα−cosα)ρsinα=Λ(α)である。したがってw(α)=(1−Λ(α))Tj−+Λ(α)Tj+と置くと
t−sγ(t)−γ(s)=w(α)+r′,∥r′∥≤εj(ρ)である。補題 3.3 (1)によりμ↦∥(1−μ)Tj−+μTj+∥は[0,1]の上で連続かつ正であるから、その最小値cjは正であり、すべてのαで∥w(α)∥≥cjである。εj(ρ)<cjとなるρを取るとw(α)+r′=0である。零でない二つのベクトルw、w+r′について
∥w+r′∥w+r′−∥w∥w=∥w+r′∥r′+w(∥w+r′∥1−∥w∥1)であり、∥w+r′∥−∥w∥≤∥r′∥であるから
∥w+r′∥w+r′−∥w∥w≤∥w+r′∥2∥r′∥が成り立つ。∥w+r′∥≥cj−εj(ρ)であるから、εj(ρ)≤cj/2となるρに対して∥Ψ(α,ρ)−Zj(Λ(α))∥≤4εj(ρ)/cjである。α∈{π/4,5π/4}のときはs=tであってΨ=γ′(s)であるが、∥γ′(s)−Tj+∥≤εj(ρ)(α=π/4)、∥γ′(s)−Tj−∥≤εj(ρ)(α=5π/4)であり、Zj(Λ(π/4))=Tj+、Zj(Λ(5π/4))=Tj−であるから、同じ形の評価が成り立つ。
以上によりΨ(α,ρ)はρ↓0のときZj(Λ(α))へαについて一様に収束する。α↦Zj(Λ(α))は連続であるから、ΨはRjの辺ρ=0の各点で連続である。
RNの膨らませた線分における連続性。εN(ρ)を、TN−=γ′(L−)=−u2とTN+=γ′(0+)=u1について同じ形で定める。0<ρ≤η、χ∈[0,π/2]とし(s,t)=πN(χ,ρ)と置く。γ(L)=γ(0)=0であるから
γ(t)−γ(s)=(γ(L−ρcosχ)−γ(L))−(γ(ρsinχ)−γ(0))であり、それぞれの差に上と同じ積分の評価を適用すると
ργ(t)−γ(s)=−cosχγ′(L−)−sinχγ′(0+)+r′′=cosχu2−sinχu1+r′′,∥r′′∥≤εN(ρ)である。主要項はχ∈[0,π/2]で零にならずχについて連続であるから、その最小値は正であり、前段と同じ不等式によって、正規化したΨはρ↓0でΨ(χ,0)へχについて一様に収束する。よってΨはRNの辺ρ=0の各点で連続である。
第三段。持ち上げと三つの増分。Δは[0,1]2と同相であるから、まず一辺の上で§E18 位相幾何入門の§E18.5 補題 2.1を用いて持ち上げを定め、次に§E18.5 補題 3.1を適用すると、連続写像Ψ:Δ→Rであって
Ψ=(cosΨ, sinΨ)を満たすものが得られる。Δの四つの点を次のように取る。Oは(s,t)=(0,0)に、Qは(s,t)=(L,L)に対応する点であり、P0とPπ/2はRNの膨らませた線分の両端(χ,ρ)=(0,0)と(π/2,0)である。A=Ψ(O)、B0=Ψ(P0)、C=Ψ(Pπ/2)、E=Ψ(Q)と置く。ΨはΔの上の関数であるから、二点における値の差は経路に依らない。
対角線。Δの中でOからQへ至る道Γを次のように取る。対角線{(s,s)}のうち膨らませた扇形の外にある部分と、各Rj(1≤j≤N−1)の三つの辺、すなわち辺α=5π/4(ρがηから0へ動く)、辺ρ=0(αが5π/4からπ/4へ動く)、辺α=π/4(ρが0からηへ動く)を、sの増加する順につないだ道である。πj(5π/4,ρ)=(sj−ρ/2, sj−ρ/2)、πj(π/4,ρ)=(sj+ρ/2, sj+ρ/2)であるから、Γから膨らませた線分を除いた部分は、対角線をsが0からLへ動く向きに辿ったものに対応し、その上でΨ=γ′(s)である。
Γに沿う増分を数える。弧[sj−1,sj]に対応する部分ではΨ=γ′(s)であり、その偏角の連続な選択は定義 3.4のφjであるから、増分はφj(sj)−φj(sj−1)である。Rjの辺ρ=0に対応する部分では、Λが5π/4からπ/4へ向かって0から1へ広義単調に動く連続全射であるから、Ψの値はZj(μ)(μが0から1へ動く)が取る値と同じ順に並ぶ。持ち上げの一意性によりZj∘Λの持ち上げはZjの持ち上げとΛとの合成であるから、この部分の増分はZjに沿う増分に等しく、補題 3.3 (2)によりその値はθjである。したがって
E−A=j=1∑N(φj(sj)−φj(sj−1))+j=1∑N−1θjであり、定義 3.4により
2πι(γ)=(E−A)+θNである。示すべきことは(E−A)+θN=2πである。
辺s=0。OからP0へ至る境界の弧は、{(0,t):0≤t≤L−η}とRNの辺χ=0(ρがηから0へ動き、t=L−ρがL−ηからLへ動く)とをつないだものであり、tが0からLへ動く向きに径数づけられる。0<t<Lでは
Ψ=∥γ(t)−γ(0)∥γ(t)−γ(0)であり、γ2≥0かつγ2(0)=0であるから、この単位ベクトルの第二成分は非負である。端点の値はΨ(O)=γ′(0+)=u1(偏角a1∈[0,π])とΨ(P0)=u2(偏角a2∈[0,π])であり、いずれも第二成分が非負である。すなわちこの弧の上でΨは閉じた上半円周に値を取る。
閉じた上半円周に値を取る連続写像の持ち上げの像は、互いに交わらない閉区間の族{[2πk,2πk+π]}k∈Zの一つの元に含まれる。したがって、ある整数kについてA=2πk+a1、B0=2πk+a2であり
B0−A=a2−a1である。
膨らませた線分ρ=0。この線分ではΨ(χ,0)がcosχu2−sinχu1の正規化である。係数cosχとsinχはχ∈[0,π/2]で非負であり同時に零にならないから、補題 3.3 (3)をw0=u2、w1=−u1、c0=cosχ、c1=sinχに適用することができ、Ψ(χ,0)=Z(μ)(μ=sinχ/(cosχ+sinχ))である。χ↦μは[0,π/2]から[0,1]への狭義単調増加な連続全単射であるから、この線分に沿う増分はZに沿う増分に等しい。
u2の偏角はa2、−u1の偏角はa1+πであり、補題 4.1 (2)とa1,a2∈[0,π]により
0≤a1+π−a2<πである。すなわちu2から−u1への定義 3.2の意味の符号つき角は(−π,π)の中でa1+π−a2であり、補題 4.1 (3)によりこれはθNに等しい。したがって補題 3.3 (2)により
C−B0=a1+π−a2=θNである。
辺t=L。Pπ/2からQへ至る境界の弧は、RNの辺χ=π/2(ρが0からηへ動き、s=ρが0からηへ動く)と{(s,L):η≤s≤L}とをつないだものであり、sが0からLへ動く向きに径数づけられる。0<s<Lではγ(L)=γ(0)であるから
Ψ(s,L)=∥γ(L)−γ(s)∥γ(L)−γ(s)=−∥γ(s)−γ(0)∥γ(s)−γ(0)=−Ψ(0,s)である。端点でもΨ(Pπ/2)=−u1=−Ψ(O)、Ψ(Q)=γ′(L−)=−u2=−Ψ(P0)である。すなわち、Pπ/2からQへ至る弧をsが0からLへ動く向きに見た写像は、OからP0へ至る弧をtが0からLへ動く向きに見た写像の対蹠である。二つの連続写像f,g:[0,L]→S1がg=−fを満たすとき、それぞれの持ち上げf,gについてg−f−πは連続で2πZに値を取るから定数であり、したがって増分は等しい。よって
E−C=B0−A=a2−a1である。
総和。三つを合わせると
E−A=(B0−A)+(C−B0)+(E−C)=(a2−a1)+θN+(a2−a1)=2(a2−a1)+θNである。θN=a1−a2+πであるから
E−A=2(a2−a1)+(a1−a2+π)=(a2−a1)+πであり
2πι(γ)=(E−A)+θN=(a2−a1)+π+(a1−a2+π)=2πである。したがってι(γ)=1である。▨
8 例
例 8.1.R2の三点A=(0,0)、B=(1,0)、C=(0,1)を頂点とする三角形の境界を、閉三角板Dを左に見る向き、すなわちA→B→C→Aの順に一周する。各辺の上で単位接ベクトルは定ベクトル
TAB=(1,0),TBC=21(−1,1),TCA=(0,−1)である。定ベクトルであるから、各弧に沿う偏角の増分は0であり、その総和も0である。
外角を定義 3.2に従って計算する。J(a,b)=(−b,a)である。頂点BではT−=TAB=(1,0)、T+=TBCであり
cosθB=⟨(1,0), 21(−1,1)⟩=−21,sinθB=⟨J(1,0), 21(−1,1)⟩=⟨(0,1), 21(−1,1)⟩=21であるからθB=3π/4である。頂点CではT−=TBC、T+=TCA=(0,−1)であり
cosθC=⟨21(−1,1), (0,−1)⟩=−21,sinθC=⟨21(−1,−1), (0,−1)⟩=21であるからθC=3π/4である。頂点AではT−=TCA=(0,−1)、T+=TAB=(1,0)であり
cosθA=⟨(0,−1),(1,0)⟩=0,sinθA=⟨J(0,−1), (1,0)⟩=⟨(1,0),(1,0)⟩=1であるからθA=π/2である。総和は
θA+θB+θC=2π+43π+43π=2πであり、定義 3.4によりι=2π1(0+2π)=1である。定理 7.1と一致する。
外角と内角の関係も確かめることができる。三角形の内角はAでπ/2、Bでπ/4、Cでπ/4であり、いずれの頂点でも(内角)+(外角)=πが成り立つ。内角の総和がπであることと、外角の総和が2πであることは、この関係によって同値である。
例 8.2.例 8.1の三角形について、定理 7.1の証明に現れる量を実際に計算する。弧長で径数づけ、γ2の最小値を与える点として頂点B=(1,0)を出発点に取る。周長はL=2+2であり、分割点はs1=2(頂点C)、s2=2+1(頂点A)、s3=L(頂点B)である。座標を平行移動してγ(0)=0とすると、三角形はγ2≥0の側にある。
支持点の補題の値。u1=γ′(0+)=TBC=21(−1,1)、u2=−γ′(0−)=−TAB=(−1,0)であるからa1=3π/4、a2=πである。a1,a2∈[0,π]かつa1<a2であり、補題 4.1 (3)の値は
θ3=a1−a2+π=43πであって、例 8.1が頂点Bについて求めた外角と一致する。
膨らませた線分の上の値。内部の角s1(頂点C)ではT1−=TBC、T1+=TCA=(0,−1)である。λの三つの値に対するZ1(λ)は
Z1(0)=21(−1,1) (偏角 43π),Z1(21)=4−221(−1, 1−2) (偏角 89π),Z1(1)=(0,−1) (偏角 23π)であり、三つとも相異なる。この三つは、点(s1,s1)への三通りの近づき方
(s,t)=(s1−ε, s1+ε2),(s,t)=(s1−ε, s1+ε),(s,t)=(s1−ε2, s1+ε)に沿う割線の方向の極限である。実際、λ=(t−s1)/(t−s)はそれぞれ0、1/2、1へ収束する。膨らませる前の三角形Δの上では、Ψの(s1,s1)における極限が近づき方に依存するので、Ψ(s1,s1)をどう定めても不連続である。膨らませた線分は、この三つの極限を線分の相異なる三点へ割り当てる。線分に沿う増分は補題 3.3 (2)により23π−43π=43πであり、Cにおける外角θ1に一致する。同様にs2(頂点A)における増分はθ2=π/2である。
三つの増分。各辺の上で単位接ベクトルは定ベクトルであるから、弧に沿う増分はすべて0である。したがって
E−A=0+(θ1+θ2)=43π+2π=45πである。境界の三つの弧に沿う値でも同じ量が得られる。B0−A=a2−a1=π/4、C−B0=θ3=3π/4、E−C=a2−a1=π/4であり、総和はπ/4+3π/4+π/4=5π/4である。よって
2πι(γ)=(E−A)+θ3=45π+43π=2πであり、+2πが得られる。向きを反転すると補題 4.1 (2)がa2<a1となる形へ変わり、同じ計算から−2πが得られる。符号を分けているのは、境界を領域の左に見る向きに取ったという仮定である。
例 8.3. 半径r>0の円をγ(t)=(rcost, rsint)(0≤t≤2π)と径数づける。角は無く、単位接ベクトルはT(t)=(−sint,cost)である。偏角の連続な選択はφ(t)=t+π/2であり、増分は2π、外角の総和は0であるからι(γ)=1である。この向きでは、閉円板が進行方向の左側にある。実際JT(t)=(−cost,−sint)は原点を向く。
向きを反転してγ(t)=γ(−t)と取るとT(t)=(−sint,−cost)であり、偏角の連続な選択は−t−π/2、増分は−2πであるからι(γ)=−1である。この場合、閉円板は進行方向の右側にある。定理 7.1が向きの指定を含むことは省くことができない。
単位速度に取り直すとκs≡1/rであり、補題 2.2により
∫02πrκsds=r1⋅2πr=2πである。反転した向きでは命題 1.2 (2)によりκs≡−1/rとなり、積分は−2πである。
例 8.4.γ(t)=(sin2t, sint)(0≤t≤2π)はγ(0)=γ(π)=γ(2π)=(0,0)を満たすので単純でない。γ′(t)=(2cos2t, cost)であり、cost=0のときcos2t=−1であるからγ′(t)=0が全域で成り立ち、γは滑らかな正則閉曲線である。偏角の増分を計算するとι(γ)=0である。実際、T(t)とT(t+π)は
γ′(t+π)=(2cos(2t+2π), cos(t+π))=(2cos2t, −cost)の正規化であるから、Tの第一成分は周期π、第二成分はt↦t+πで符号を変える。φ(π)−φ(0)とφ(2π)−φ(π)は、この対称性により符号が反対で絶対値が等しく、総和は0である。回転定理で単純性が仮定されていることは省くことができない。
9 第一基本形式で測った角への置き換え
定理 7.1は、パラメータ平面の Euclid 内積で測った偏角についての主張である。次の記事が必要とするのは、曲面の第一基本形式で測った角についての同じ主張である。二つは同じ量ではない。偏角の増分も外角の値も、角をどの内積で測るかによって変わる。この隔たりを埋めるのが次の命題である。
定義 9.1.U⊆R2を開集合とし、gをUの上のC∞な正定値対称二次形式の族、すなわち各q∈Uに対してR2の正定値対称双線形形式gqを対応させ、成分がqについてC∞であるものとする。γ:[a,b]→Uを尖点を持たない区分的に滑らかな正則閉曲線とする。
各点q∈Uでgqに関する Gram–Schmidt 直交化を標準基底(ε1,ε2)へ施して
f1(q)=gq(ε1,ε1)ε1,f2(q)=ε2−gq(ε2,f1(q))f1(q)gqε2−gq(ε2,f1(q))f1(q)と置くと、(f1(q),f2(q))はgqに関する正規直交基底であり、qについてC∞に依存する。零でないベクトルwのgに関する偏角 (angle with respect to a metric) とは、
∥w∥gqw=cosαf1(q)+sinαf2(q)を満たすαのことである。この対応によって補題 2.1、定義 3.2、定義 3.4をそのままgについて読み替えることができる。得られる回転指数をιg(γ)と書く。標準内積δについてはf1=ε1、f2=ε2でありιδ(γ)=ι(γ)である。
命題 9.2.U⊆R2を開集合、gをUの上のC∞な正定値対称二次形式の族、γ:[a,b]→Uを尖点を持たない区分的に滑らかな正則閉曲線とする。さらに、γがgに関しても尖点を持たない、すなわちすべての角でgに関する外角が(−π,π)の中に定まると仮定する。このとき
ιg(γ)=ι(γ)が成り立つ。とくにγが定理 7.1の仮定を満たすならばιg(γ)=1である。
証明.t∈[0,1]に対して
gt=(1−t)g+tδと置く。ここでδは標準内積である。各q∈Uと各零でないw∈R2に対して
(gt)q(w,w)=(1−t)gq(w,w)+tδ(w,w)>0であるから、(gt)qは正定値対称双線形形式である。成分はtとqについてC∞であり、g0=g、g1=δである。
各tに対して、定義 9.1の Gram–Schmidt 直交化をgtへ施して標構(f1t,f2t)を作る。Gram–Schmidt の式はgtの成分の四則演算と平方根だけからなり、分母は正定値性により正であるから、fit(q)は(t,q)について連続である。
F(t)=ιgt(γ)と置く。Fが[0,1]の上で連続であることを示す。回転指数は、弧に沿う偏角の増分の総和と外角の総和の和を2πで割ったものである。
弧に沿う増分については次のように見る。各弧[tj−1,tj]の上で、単位接ベクトルのgtに関する正規化
wt(u)=∥γ′(u)∥(gt)γ(u)γ′(u)を標構(f1t,f2t)で表した単位ベクトル
W(t,u)=( (gt)γ(u)(wt(u),f1t(γ(u))), (gt)γ(u)(wt(u),f2t(γ(u))) )∈S1は(t,u)について連続である。Wを[0,1]×[tj−1,tj]の上の連続写像とみなし、§E18 位相幾何入門の§E18.5 補題 3.1によってRへ持ち上げると、増分
Δj(t)=W(t,tj)−W(t,tj−1)はtについて連続である。
外角については次のように見る。tjにおけるgtに関する外角θj(t)は
cosθj(t)=(gt)(Tj−,Tj+),sinθj(t)=(gt)(JtTj−,Tj+)で定まる。ここで はgtに関する正規化を表し、Jtは標構(f1t,f2t)に関する正の向きの直角回転である。右辺はtについて連続であり、仮定と正定値性によりcosθj(t)=−1がt=0とt=1で成り立つ。cosθj(t)=−1となるtが存在する可能性を排除するため、gtに関する角について次を確かめる。cosθj(t)=−1はTj+=−Tj−、すなわちTj+とTj−が反対向きの平行ベクトルであることと同値である。この条件はtに依らない。仮定によりt=0でもt=1でも成り立たないから、すべてのtで成り立たない。したがってθj(t)∈(−π,π)が各tで一意に定まり、cosθjとsinθjが連続であることからθjはtについて連続である。
以上により
F(t)=2π1(j∑Δj(t)+j∑θj(t))は[0,1]の上で連続である。命題 3.5 (1)の証明は、内積をgtへ取り替えてもそのまま通用する。証明が用いたのは、各弧の端における偏角の値が片側単位接ベクトルの偏角であることと、外角の指数関数が片側単位接ベクトルの比であることだけであり、いずれもgtに関する正規直交標構の中で同じ形を取るからである。したがってFは整数値を取る。整数値を取る連続関数は連結な定義域の上で定数であるからF(0)=F(1)、すなわちιg(γ)=ιδ(γ)=ι(γ)である。▨
10 演習
問題 10.1.
- 定理 7.1の証明では、内部の角の跳びを曲線の側で補間せず、定義域の側で角を膨らませた。曲線の単位接ベクトル場を角の近傍で回転によって補間した連続な場σを作り、Ψの対角線上の値をσと定めたとすると、Ψが連続にならない理由を二つ挙げよ。一つは角sjにおける極限の非一意性であり、もう一つは補間区間の内点における値の食い違いである。例 8.2の三点の極限を用いて、前者を具体的に示せ。
- 定理 7.1の証明で、pN=(0,L)を線分へ膨らませた。出発点が角でない場合には、この線分の上でΨが定数になることを確かめよ。また、補題 5.2を用いずに三角形のまま議論すると、出発点が角である場合にΨがどのように不連続になるかを、二辺からの極限を比べて述べよ。
- 定理 7.1の第三段で、出発点γ(0)を第二座標が最小になる点に取った。この選択を任意の点に変えると、辺χ=0に沿うΨの値が閉じた上半円周にとどまるという評価が失われる。失われたときにB0−Aについて何が言えるかを述べ、それだけでは結論が得られない理由を説明せよ。
- 補題 4.1の証明で、a2<a1と仮定して矛盾を導いた箇所は、下半円板がV−に含まれることを用いている。この一手が、境界をDを左に見る向きに取ったという仮定をどこで使っているかを特定せよ。
- 例 8.1の計算を、三角形の向きを反転した場合について実行せよ。三つの外角の値と回転指数を求め、定理 7.1の向きの仮定がどこで効いているかを述べよ。
- 命題 3.5 (1)の証明では、単位複素数の積が電話帳式に相殺することを用いた。この相殺が成り立つために、外角の定義においてeiθj=Tj+Tj−が必要であった。定義 3.2の二つの等式からこの式を導け。
- 命題 9.2の証明で、gt=(1−t)g+tδが各tで正定値であることを用いた。正定値でない対称二次形式が族の中に一つでも現れると、証明のどの段が止まるかを、Gram–Schmidt 直交化の式に即して述べよ。
- 命題 9.2の結論を用いずに、第一基本形式で測った外角と Euclid 内積で測った外角が一般に異なることを、具体的な二次形式g=diag(1,4)と例 8.1の三角形について確かめよ。三つの外角の値が変わり、総和が2πのままであることを計算せよ。
- 例 8.4の曲線について、回転指数が0であることを、偏角の増分を実際に積分して確かめよ。同じ像を持つ単純閉曲線が存在しないことを、曲線が自己交叉することから述べよ。
- 命題 1.2 (3)により、鏡映で符号つき曲率の符号が変わる。この事実と補題 2.2を用いて、鏡映によって回転指数の符号が変わることを、滑らかな正則単純閉曲線の場合に示せ。
11 境界
Jordan の曲線定理を用いていないこと。定理 7.1は、曲線の像が平面を二つに分けることを結論として使わない。領域Dの存在と、境界の局所的な片側性は、§E4 実解析 IIの§E4.22 定義 1.2の定義に仮定として含まれている。本単元では Jordan の曲線定理と Schoenflies の定理を扱わない。証明で用いたのは、Dが進行方向の左側にあるという向きの規約と、第二座標の最小点における局所的な位置関係だけである。
尖点を扱わないこと。定義 3.2ではTj−=−Tj+を仮定する。片側接ベクトルが反対向きになる点、すなわち尖点では外角が±πの二通りのいずれとも決まらず、回転指数が定まらない。本単元が領域の境界の外角について置く規約も、この場合を除いている。尖点を持つ曲線に対して回転指数を定めるには、曲線を尖点の近傍で滑らかに近似したうえで極限を取る別の議論が要る。
回転指数が1でない場合を扱わないこと。例 8.4のとおり、単純でない閉曲線の回転指数は1とは限らない。回転指数が閉曲線の正則ホモトピー類の完全不変量であるという Whitney–Graustein の定理は本単元の範囲外である。本記事で示したのは、単純である場合に値が1になることだけである。
曲線の大域的な性質を扱わないこと。本記事の符号つき曲率は、平面曲線の局所的な量として導入し、回転指数の積分表示を与えるためだけに用いる。