§E13.10有限 Ramsey の定理

最終更新

十分に大きな完全グラフの辺を二色で塗り分けると、どのように塗り分けても、内部の辺の色がそろった頂点部分集合が必ず現れる。何頂点あれば必ず現れるかを表す量が Ramsey 数である。

本記事では、正の整数ssとttに対する二色 Ramsey 数R(s,t)R(s,t)を定義し、頂点一つを固定してその色別の近傍へ帰着する再帰から、上界R(s,t)≤R(s−1,t)+R(s,t−1)R(s,t)\le R(s-1,t)+R(s,t-1)を証明する。この再帰から二項係数による上界R(s,t)≤(s+t−2s−1)R(s,t)\le\binom{s+t-2}{s-1}を導き、これによって Ramsey 数が有限であることを示す。最後に、二つの母数が等しい場合の上界を系として得る。

1 二色 Ramsey 数の定義

グラフの定義は§D2.7 定義 1.1による。完全グラフは上流に定義ブロックが無いので、本記事で定める。

定義 1.1.nnを正の整数とする。nn元の頂点集合をもち、相異なる二頂点がすべて隣接する有限単純無向グラフを nn頂点完全グラフ (complete graph on n vertices) といい、KnK_nと書く。KnK_nの辺集合は頂点集合の二元部分集合の全体であるから、同型を除いてKnK_nはnnによって定まる。

定義の順序に注意する。R(s,t)R(s,t)は、ある性質を満たす正の整数の最小値として定める。この定め方が意味をもつためには、その性質を満たす正の整数が少なくとも一つ存在しなければならない。この存在は自明ではなく、本記事の定理 3.1により得られる。定義の段階で最小元の存在を仮定することはしない。

定義 1.2.ssとttを正の整数とする。正の整数nnについての次の性質をQs,t(n)Q_{s,t}(n)と書く。

nn頂点完全グラフKnK_nの辺集合を赤と青へ塗り分ける任意の写像に対し、内部のすべての辺が赤であるss元頂点部分集合、または内部のすべての辺が青であるtt元頂点部分集合が存在する。

ここで、頂点部分集合SSの内部の辺 (internal edge) とは、両端点がSSに属する辺をいう。∣S∣≤1\lvert S\rvert\le1のとき内部の辺は存在しないので、色についての条件は空虚に成り立つ。

性質Qs,tQ_{s,t}はnnについて上方閉である。この上方閉性は命題 1.3により示される。また、Qs,t(n)Q_{s,t}(n)を満たす正の整数nnが存在することは定理 3.1により示される。この存在のもとで、集合{n: n は正の整数, Qs,t(n) が成り立つ}\{n:\ n\ \text{は正の整数},\ Q_{s,t}(n)\ \text{が成り立つ}\}は空でない。自然数の大小関係は§D2.1 例 2.2の第一項により整礎であるから、§D2.1 定義 2.1よりこの集合は極小元をもつ。大小関係は全順序であるから、極小元は最小元である。この最小元を 二色 Ramsey 数 (two-color Ramsey number) といい、R(s,t)R(s,t)と書く。

命題 1.3.ssとttを正の整数とし、nnとn′n'をn≤n′n\le n'を満たす正の整数とする。Qs,t(n)Q_{s,t}(n)が成り立つならばQs,t(n′)Q_{s,t}(n')が成り立つ。

証明.Kn′K_{n'}の頂点集合をV′V'とし、辺集合の赤と青への塗り分けφ′\varphi'を任意に取る。n≤n′n\le n'であるから∣W∣=n\lvert W\rvert=nを満たすW⊆V′W\subseteq V'を取ることができる。WWを頂点集合とし、両端点がWWに属するKn′K_{n'}の辺の全体を辺集合とするグラフは、WWの相異なる二頂点がすべて隣接するのでKnK_nと同型である。このグラフの辺へのφ′\varphi'の制限は、KnK_nの辺集合の赤と青への塗り分けを与える。

Qs,t(n)Q_{s,t}(n)より、WWの部分集合であって内部のすべての辺が赤であるss元集合、または内部のすべての辺が青であるtt元集合が存在する。この集合はV′V'の部分集合でもあり、内部の辺と塗り分けは制限の前後で変わらないから、φ′\varphi'についても同じ条件を満たす。φ′\varphi'は任意であったからQs,t(n′)Q_{s,t}(n')が成り立つ。▨

命題 1.4.

  1. t≥1t\ge1に対しQ1,t(1)Q_{1,t}(1)とQt,1(1)Q_{t,1}(1)が成り立つ。したがってR(1,t)R(1,t)とR(t,1)R(t,1)は定まり、R(1,t)=R(t,1)=1R(1,t)=R(t,1)=1である。
  2. s,t≥1s,t\ge1と任意の正の整数nnに対し、Qs,t(n)Q_{s,t}(n)が成り立つこととQt,s(n)Q_{t,s}(n)が成り立つことは同値である。したがって、一方の Ramsey 数が定まればもう一方も定まり、R(s,t)=R(t,s)R(s,t)=R(t,s)である。

証明.(1)を示す。K1K_1は辺をもたないから、辺集合の塗り分けは空写像ただ一つである。K1K_1の唯一の頂点からなる一元集合SSを取ると、∣S∣=1\lvert S\rvert=1であり内部の辺は存在しないから、「内部のすべての辺が赤である」という条件は空虚に成り立つ。ゆえにSSはQ1,t(1)Q_{1,t}(1)の要求する11元集合であり、Q1,t(1)Q_{1,t}(1)が成り立つ。11は最小の正の整数であるからR(1,t)=1R(1,t)=1である。Qt,1(1)Q_{t,1}(1)については、同じSSが「内部のすべての辺が青である11元集合」の条件を空虚に満たすので、同様にR(t,1)=1R(t,1)=1である。

(2)を示す。KnK_nの辺集合の塗り分けφ\varphiに対し、赤と青を入れ替えた塗り分けをφˉ\bar\varphiと書く。φ↦φˉ\varphi\mapsto\bar\varphiは塗り分けの全体からそれ自身への全単射であり、φˉˉ=φ\bar{\bar\varphi}=\varphiである。定義より、SSがφ\varphiについて内部のすべての辺が赤である集合であることと、SSがφˉ\bar\varphiについて内部のすべての辺が青である集合であることは同値である。

したがって、φˉ\bar\varphiについて「赤いtt元集合または青いss元集合が存在する」ことと、φ\varphiについて「青いtt元集合または赤いss元集合が存在する」ことは同値である。φ↦φˉ\varphi\mapsto\bar\varphiが全単射であることから、「すべての塗り分けについて前者が成り立つ」ことと「すべての塗り分けについて後者が成り立つ」ことも同値であり、これはQt,s(n)  ⟺  Qs,t(n)Q_{t,s}(n)\iff Q_{s,t}(n)にほかならない。二つの性質を満たす正の整数の集合が一致するので、最小元も一致する。▨

2 頂点一つの色別近傍による再帰

2.1 証明方針

KNK_Nの塗り分けを一つ取り、頂点vvを固定する。残りのN−1N-1個の頂点を、vvとの辺が赤であるものの集合AAと、青であるものの集合BBへ分ける。NNをR(s−1,t)+R(s,t−1)R(s-1,t)+R(s,t-1)と取っておくと、∣A∣+∣B∣=N−1\lvert A\rvert+\lvert B\rvert=N-1であるから、∣A∣≥R(s−1,t)\lvert A\rvert\ge R(s-1,t)と∣B∣≥R(s,t−1)\lvert B\rvert\ge R(s,t-1)の少なくとも一方が成り立つ。

∣A∣≥R(s−1,t)\lvert A\rvert\ge R(s-1,t)の場合、AAの内部の辺への塗り分けの制限に対してQs−1,tQ_{s-1,t}を適用する。青いtt元集合が得られればそれが求めるものである。赤い(s−1)(s-1)元集合SSが得られた場合には、SSの各頂点がAAに属することからvvとの辺がすべて赤であり、S∪{v}S\cup\{v\}が赤いss元集合になる。もう一方の場合も対称である。

定理 2.1.s≥2s\ge2かつt≥2t\ge2とし、R(s−1,t)R(s-1,t)とR(s,t−1)R(s,t-1)が定まっているとする。N=R(s−1,t)+R(s,t−1)N=R(s-1,t)+R(s,t-1)と置くとQs,t(N)Q_{s,t}(N)が成り立つ。したがってR(s,t)R(s,t)は定まりR(s,t)≤R(s−1,t)+R(s,t−1)R(s,t)\le R(s-1,t)+R(s,t-1)が成り立つ。

証明.R(s−1,t)≥1R(s-1,t)\ge1かつR(s,t−1)≥1R(s,t-1)\ge1であるからN≥2N\ge2である。KNK_Nの頂点集合をVVとし、辺集合の赤と青への塗り分けφ\varphiを任意に取る。頂点v∈Vv\in Vを一つ固定しA={x∈V∖{v}: φ(vx)=赤},B={x∈V∖{v}: φ(vx)=青}A=\{x\in V\setminus\{v\}:\ \varphi(vx)=\text{赤}\},\qquad B=\{x\in V\setminus\{v\}:\ \varphi(vx)=\text{青}\}と置く。AAとBBは互いに素で合併がV∖{v}V\setminus\{v\}であるから、§D2.2 定理 2.1より∣A∣+∣B∣=N−1=R(s−1,t)+R(s,t−1)−1\lvert A\rvert+\lvert B\rvert=N-1=R(s-1,t)+R(s,t-1)-1である。もし∣A∣≤R(s−1,t)−1\lvert A\rvert\le R(s-1,t)-1かつ∣B∣≤R(s,t−1)−1\lvert B\rvert\le R(s,t-1)-1であるとすると、和はN−2N-2以下となって上の等式に反する。ゆえに∣A∣≥R(s−1,t)\lvert A\rvert\ge R(s-1,t)または∣B∣≥R(s,t−1)\lvert B\rvert\ge R(s,t-1)が成り立つ。

場合 1:∣A∣≥R(s−1,t)\lvert A\rvert\ge R(s-1,t)のとき.AAを頂点集合とし、両端点がAAに属するKNK_Nの辺の全体を辺集合とするグラフはK∣A∣K_{\lvert A\rvert}と同型であり、φ\varphiの制限がその辺の塗り分けを与える。R(s−1,t)R(s-1,t)の定義よりQs−1,t(R(s−1,t))Q_{s-1,t}(R(s-1,t))が成り立つから、命題 1.3よりQs−1,t(∣A∣)Q_{s-1,t}(\lvert A\rvert)が成り立つ。ゆえに、AAの部分集合であって内部のすべての辺が赤であるs−1s-1元集合SS、または内部のすべての辺が青であるtt元集合TTが存在する。

後者の場合、TTはVVの部分集合として、内部のすべての辺が青であるtt元集合であり、求めるものである。

前者の場合、v∉Av\notin AかつS⊆AS\subseteq Aであるから∣S∪{v}∣=s\lvert S\cup\{v\}\rvert=sである。S∪{v}S\cup\{v\}の内部の辺は、SSの内部の辺と、vvとSSの各頂点を結ぶ辺である。前者はすべて赤であり、後者はS⊆AS\subseteq AとAAの定義よりすべて赤である。ゆえにS∪{v}S\cup\{v\}は内部のすべての辺が赤であるss元集合であり、求めるものである。

場合 2:∣B∣≥R(s,t−1)\lvert B\rvert\ge R(s,t-1)のとき. 同じ議論によりQs,t−1(∣B∣)Q_{s,t-1}(\lvert B\rvert)が成り立つから、BBの部分集合であって内部のすべての辺が赤であるss元集合、または内部のすべての辺が青であるt−1t-1元集合TTが存在する。前者はそのまま求めるものである。後者の場合、T∪{v}T\cup\{v\}はtt元集合であり、その内部の辺はTTの内部の辺(すべて青)とvvとTTの各頂点を結ぶ辺(T⊆BT\subseteq Bよりすべて青)であるから、求めるものである。

いずれの場合も条件を満たす頂点部分集合が存在し、φ\varphiは任意であったからQs,t(N)Q_{s,t}(N)が成り立つ。したがってQs,tQ_{s,t}を満たす正の整数の集合は空でないのでR(s,t)R(s,t)が定まり、NNがこの集合に属することからR(s,t)≤NR(s,t)\le Nである。▨

3 有限性と二項係数による上界

3.1 証明方針

s+ts+tについての累積帰納法による。s=1s=1またはt=1t=1のときは命題 1.4により値が得られる。s≥2s\ge2かつt≥2t\ge2のときは、(s−1)+t(s-1)+tとs+(t−1)s+(t-1)がいずれもs+ts+tより小さいので、帰納法の仮定からR(s−1,t)R(s-1,t)とR(s,t−1)R(s,t-1)が定まって二項係数で抑えられる。定理 2.1を適用するとR(s,t)R(s,t)が定まり、二つの二項係数の和で抑えられる。この和を Pascal の公式で一つの二項係数へまとめれば主張を得る。有限性は、この帰納法によって初めて確立される。

定理 3.1.s≥1s\ge1かつt≥1t\ge1とする。Qs,t(n)Q_{s,t}(n)を満たす正の整数nnが存在し、したがってR(s,t)R(s,t)は定まる。さらにR(s,t)≤(s+t−2s−1)R(s,t)\le\binom{s+t-2}{s-1}が成り立つ。

証明.s+ts+tについての累積帰納法(§D2.1 命題 1.2)による。s,t≥1s,t\ge1よりs+t≥2s+t\ge2である。

s=1s=1の場合.命題 1.4よりQ1,t(1)Q_{1,t}(1)が成り立ちR(1,t)=1R(1,t)=1である。また(1+t−20)=1\binom{1+t-2}{0}=1であるから、主張の不等式は等号として成り立つ。

t=1t=1の場合.命題 1.4よりR(s,1)=1R(s,1)=1である。また(s+1−2s−1)=(s−1s−1)=1\binom{s+1-2}{s-1}=\binom{s-1}{s-1}=1であるから、主張の不等式は等号として成り立つ。

s≥2s\ge2かつt≥2t\ge2の場合.(s−1)+t=s+t−1<s+t(s-1)+t=s+t-1<s+tかつs+(t−1)=s+t−1<s+ts+(t-1)=s+t-1<s+tであり、s−1≥1s-1\ge1かつt−1≥1t-1\ge1であるから、帰納法の仮定を組(s−1,t)(s-1,t)と(s,t−1)(s,t-1)へ適用することができる。すなわちR(s−1,t)R(s-1,t)とR(s,t−1)R(s,t-1)は定まりR(s−1,t)≤((s−1)+t−2(s−1)−1)=(s+t−3s−2),R(s,t−1)≤(s+(t−1)−2s−1)=(s+t−3s−1)R(s-1,t)\le\binom{(s-1)+t-2}{(s-1)-1}=\binom{s+t-3}{s-2},\qquad R(s,t-1)\le\binom{s+(t-1)-2}{s-1}=\binom{s+t-3}{s-1}が成り立つ。定理 2.1よりR(s,t)R(s,t)は定まりR(s,t)≤R(s−1,t)+R(s,t−1)≤(s+t−3s−2)+(s+t−3s−1)R(s,t)\le R(s-1,t)+R(s,t-1)\le\binom{s+t-3}{s-2}+\binom{s+t-3}{s-1}である。ここで§D2.2 命題 5.2をn=s+t−2n=s+t-2、k=s−1k=s-1に対して適用する。s≥2s\ge2よりk=s−1≥1k=s-1\ge1であり、t≥2t\ge2よりk=s−1≤s+t−3=n−1k=s-1\le s+t-3=n-1であるから、適用の条件が満たされる。ゆえに(s+t−3s−2)+(s+t−3s−1)=(s+t−2s−1)\binom{s+t-3}{s-2}+\binom{s+t-3}{s-1}=\binom{s+t-2}{s-1}であり、R(s,t)≤(s+t−2s−1)R(s,t)\le\binom{s+t-2}{s-1}を得る。▨

系 3.2.s≥2s\ge2に対しR(s,s)≤(2s−2s−1)<4s−1R(s,s)\le\binom{2s-2}{s-1}<4^{s-1}が成り立つ。

証明.定理 3.1をt=st=sに対して適用するとR(s,s)≤(s+s−2s−1)=(2s−2s−1)R(s,s)\le\binom{s+s-2}{s-1}=\binom{2s-2}{s-1}を得る。

m=s−1m=s-1と置くとm≥1m\ge1である。§D2.2 定理 5.1をx=y=1x=y=1、n=2mn=2mに対して適用すると4m=22m=(1+1)2m=∑j=02m(2mj)4^{m}=2^{2m}=(1+1)^{2m}=\sum_{j=0}^{2m}\binom{2m}{j}である。右辺は2m+12m+1個の項の和であり、各項は正の整数である。m≥1m\ge1より2m+1≥32m+1\ge3であるから、j=mj=mの項(2mm)\binom{2m}{m}のほかに正の項が少なくとも二つある。ゆえに(2mm)<∑j=02m(2mj)=4m\binom{2m}{m}<\sum_{j=0}^{2m}\binom{2m}{j}=4^{m}であり、(2s−2s−1)<4s−1\binom{2s-2}{s-1}<4^{s-1}を得る。▨

4 具体例

例 4.1. R(2,2)=2R(2,2)=2.定理 3.1よりR(2,2)≤(21)=2R(2,2)\le\binom{2}{1}=2である。一方Q2,2(1)Q_{2,2}(1)は成り立たない。K1K_1の頂点集合は一元集合であり、22元部分集合が存在しないからである。ゆえにR(2,2)≠1R(2,2)\ne1であり、R(2,2)=2R(2,2)=2である。二項係数による上界はここで等号になる。

R(2,t)=tR(2,t)=t(t≥1t\ge1).定理 3.1よりR(2,t)≤(t1)=tR(2,t)\le\binom{t}{1}=tである。t≥2t\ge2とし、Kt−1K_{t-1}の辺をすべて青に塗る。内部の辺がすべて赤である22元集合は、赤い辺が一本もないので存在しない。内部の辺がすべて青であるtt元集合は、頂点がt−1t-1個しかないので存在しない。ゆえにQ2,t(t−1)Q_{2,t}(t-1)は成り立たず、命題 1.3の対偶よりn≤t−1n\le t-1を満たす正の整数nnについてQ2,t(n)Q_{2,t}(n)は成り立たない。したがってR(2,t)≥tR(2,t)\ge tであり、R(2,t)=tR(2,t)=tである。t=1t=1のときは命題 1.4よりR(2,1)=1R(2,1)=1である。ここでも二項係数による上界は等号になる。

R(3,3)=6R(3,3)=6.定理 3.1よりR(3,3)≤(42)=6R(3,3)\le\binom{4}{2}=6である。

下からの評価のために、K5K_5の辺の塗り分けを一つ与える。頂点を1,2,3,4,51,2,3,4,5とし、赤={12, 23, 34, 45, 51},青={13, 24, 35, 41, 52}\text{赤}=\{12,\ 23,\ 34,\ 45,\ 51\},\qquad\text{青}=\{13,\ 24,\ 35,\ 41,\ 52\}と定める。二つを合わせると5+5=10=(52)5+5=10=\binom52本となり、K5K_5のすべての辺をちょうど一度ずつ塗り分けている。

赤い三角形が存在しないことを確かめる。赤の辺に関する各頂点の隣接頂点は1:{2,5},2:{1,3},3:{2,4},4:{3,5},5:{4,1}1:\{2,5\},\quad2:\{1,3\},\quad3:\{2,4\},\quad4:\{3,5\},\quad5:\{4,1\}である。赤い三角形があれば、ある頂点の二つの赤い隣接頂点どうしが赤で結ばれる。しかし2525、1313、2424、3535、1414はいずれも赤ではなく青である。ゆえに赤い三角形は存在しない。

青い三角形が存在しないことを確かめる。青の辺に関する各頂点の隣接頂点は1:{3,4},2:{4,5},3:{1,5},4:{1,2},5:{2,3}1:\{3,4\},\quad2:\{4,5\},\quad3:\{1,5\},\quad4:\{1,2\},\quad5:\{2,3\}である。対応する対3434、4545、1515、1212、2323はいずれも青ではなく赤である。ゆえに青い三角形は存在しない。

したがってQ3,3(5)Q_{3,3}(5)は成り立たず、命題 1.3の対偶よりn≤5n\le5を満たす正の整数nnについてQ3,3(n)Q_{3,3}(n)は成り立たない。ゆえにR(3,3)≥6R(3,3)\ge6であり、上界とあわせてR(3,3)=6R(3,3)=6である。ここでも二項係数による上界は等号になる。

再帰上界の検算.定理 2.1をs=t=3s=t=3に適用するとR(3,3)≤R(2,3)+R(3,2)=3+3=6R(3,3)\le R(2,3)+R(3,2)=3+3=6である。上で決定したR(3,3)=6R(3,3)=6と一致し、この場合の再帰上界も等号になる。

対角上界の値.系 3.2によりs=2s=2でR(2,2)≤(21)=2<4R(2,2)\le\binom21=2<4、s=3s=3でR(3,3)≤(42)=6<16R(3,3)\le\binom42=6<16、s=4s=4でR(4,4)≤(63)=20<64R(4,4)\le\binom63=20<64が得られる。s=2s=2とs=3s=3では二項係数による上界が等号になるので、定理 3.1の不等号を<<に強めることはできない。

5 演習

問題 5.1.

  1. 定義 1.2において、R(s,t)R(s,t)を「Qs,t(n)Q_{s,t}(n)を満たす最小のnn」と述べるだけでは定義として不十分である理由を説明せよ。どの主張がその不足を埋めるかを明示せよ。
  2. 定理 2.1の証明で、∣A∣≥R(s−1,t)\lvert A\rvert\ge R(s-1,t)からQs−1,t(∣A∣)Q_{s-1,t}(\lvert A\rvert)を導く一手を書き下せ。この一手で命題 1.3が必要になる理由を述べよ。
  3. 定理 2.1の証明で、赤いs−1s-1元集合SSにvvを加えた集合の内部の辺をすべて列挙し、それらが赤である根拠をそれぞれ述べよ。
  4. 定理 3.1の証明を、s+ts+tについての帰納法からssについての帰納法へ置き換えることを試み、置き換えることができない理由を、帰納法の仮定を適用する二つの組に注目して述べよ。
  5. s≥2s\ge2かつt≥2t\ge2とし、R(s−1,t)R(s-1,t)とR(s,t−1)R(s,t-1)がともに偶数であるとする。このときR(s,t)≤R(s−1,t)+R(s,t−1)−1R(s,t)\le R(s-1,t)+R(s,t-1)-1が成り立つことを、定理 2.1の証明を修正して示せ。修正の要点は次のとおりである。N=R(s−1,t)+R(s,t−1)−1N=R(s-1,t)+R(s,t-1)-1と置き、すべての頂点vvについて∣A∣≤R(s−1,t)−1\lvert A\rvert\le R(s-1,t)-1かつ∣B∣≤R(s,t−1)−1\lvert B\rvert\le R(s,t-1)-1が成り立つと仮定すると、∣A∣+∣B∣=N−1\lvert A\rvert+\lvert B\rvert=N-1から各頂点で∣A∣=R(s−1,t)−1\lvert A\rvert=R(s-1,t)-1が定まる。赤い辺だけからなるグラフの次数の総和を§D2.7 定理 1.2で評価し、NNとR(s−1,t)−1R(s-1,t)-1の偶奇から矛盾を導けばよい。
  6. 問題 5 の結果と定理 2.1を用いてR(3,4)≤9R(3,4)\le9を導け。途中で必要になるR(2,4)R(2,4)とR(3,3)R(3,3)の値を、本記事の結果から求めよ。

注意 5.2. 三色以上の塗り分け、無限版の Ramsey の定理、超グラフの版、および Ramsey 数の精密な漸近評価は、本記事では扱っていない。

参考文献

  1. Reinhard Diestel, Graph Theory, 6th ed., Graduate Texts in Mathematics 173, Springer, Berlin, 2025.二色 Ramsey 数の定義と、頂点一つの色別近傍による再帰上界の定式化を参考にした。
  2. J. H. van Lint and R. M. Wilson, A Course in Combinatorics, 2nd ed., Cambridge University Press, 2001.二項係数による上界の導出と、R(3,3) = 6 の決定を参考にした。

前提記事