必要条件、十分条件、必要十分条件を、二つの条件のあいだにある含意の向きからどのように判別するのでしょうか。本記事では、条件文と二つの条件の真理集合を対象として、三つの関係を矢印の向きと包含関係から判別し、同値であることを二つの向きの含意に分けて確かめるところまで進みます。
1 真理集合の包含関係で判定する
定義 1.1 (必要条件・十分条件・必要十分条件). 条件文が真であるとき、をであるための十分条件 (sufficient condition) といい、をであるための必要条件 (necessary condition) という。との両方が真であるとき、をであるための必要十分条件 (necessary and sufficient condition) といい、と書く。このとき、とは同値であるという。
定理 1.2.を全体集合とし、上の条件、の真理集合をそれぞれ、とする。すべてのについて条件文が真であるための必要十分条件は、であることである。
証明. すべてのについてが真であると仮定し、を任意に取る。真理集合の定義によりは真であるから、仮定した条件文によっても真である。したがってであり、が成り立つ。
逆に、と仮定し、を任意に取る。が真ならばであり、からとなるので、は真である。したがって、すべてのについては真である。▨
定理 1.2により、真理集合が小さい条件から、真理集合が大きい条件への含意が成り立ちます。したがって、条件が満たされる範囲が狭いほど条件は強くなります。
四角形全体をとすると、正方形の集合は長方形の集合に含まれます。この包含関係から、「正方形であること」は「長方形であること」であるための十分条件であり、「長方形であること」は「正方形であること」であるための必要条件です。
また、実数についてを、をとします。このときであるため、はであるための十分条件であり、はであるための必要条件です。
2 二つの向きを判定する
定理 2.1.を全体集合とし、上の二つの条件、の真理集合をそれぞれ、とする。次の表では、が真であるとは、すべてのについてが真であることをいう。についても同様とする。がであるための条件は、二つの含意と真理集合の関係によって次の四つの場合に分類される。
| 真理集合の関係 | の分類 | ||
|---|---|---|---|
| 真 | 真 | 必要十分条件 | |
| 真 | 偽 | かつ | 十分条件であるが、必要条件ではない |
| 偽 | 真 | かつ | 必要条件であるが、十分条件ではない |
| 偽 | 偽 | かつ | 必要条件でも十分条件でもない |
証明. 定義により、が真であることはがであるための十分条件であることと同値であり、が真であることはがであるための必要条件であることと同値である。定理 1.2により、二つの含意はそれぞれ、と同値である。両方の包含関係が成り立つことは、との要素が一致すること、すなわちと同値である。したがって、二つの含意の真偽の四通りから表の各場合が得られる。▨
一方の含意が偽であることを示すには、前件を満たして後件を満たさない対象を一つ挙げます。同値であることを示すには二つの向きをともに示す必要があり、一方の向きだけから同値と結論することはできません。
3 例:二乗によって生じる候補
例 3.1. 実数についての方程式を考える。両辺を2乗するととなり、からが得られる。元の方程式が成り立てば二乗後の方程式も成り立つが、逆向きの含意はまだ示されていない。を元の方程式へ代入すると左辺は、右辺はであり、等号は成り立たない。を代入すると両辺はともにであり、等号が成り立つ。したがって、元の方程式の解はだけである。
二乗する前の式では、左辺が非負なので右辺のも非負である。この条件を二乗後の式に加えると、の範囲で
が成り立つ。左から右への含意は、両辺を二乗することと、平方根が非負であることから従う。逆に、かつならば、は二乗してになる非負の数であるから、平方根の定義によりとなる。したがって、二乗後に得られた候補と、条件の真理集合との共通部分が、元の方程式の解の集合である。
この場面で「を満たすこと」は、「を満たすこと」であるための必要条件ですが、十分条件ではありません。必要条件だけを用いて得た候補については、元の式を満たすかどうかを確かめる必要があります。式変形では、各段階がだけを保つのか、を保つのかを区別します。