1 パスカルの定理
定義 1.1 (非退化な円錐曲線と射影閉包). 円、楕円(§A2.14 定義 3.1)、放物線(§A2.14 定義 2.1)、双曲線(§A2.14 定義 4.1)を合わせて非退化な円錐曲線 (nondegenerate conic) という。非退化な円錐曲線Γに対して、拡張平面(§A5.17 定義 1.1)の部分集合Γを次のように定め、Γの射影閉包 (projective closure) という。
- Γが円または楕円であるとき、Γ=Γとする。
- Γが放物線であるとき、Γに軸の方向の無限遠点を加えた集合をΓとする。
- Γが双曲線であるとき、Γに二本の漸近線の方向の無限遠点を加えた集合をΓとする。
定理 1.2 (パスカルの定理).Γを非退化な円錐曲線とし、A,B,C,D,E,FをΓの相異なる六点とする。このとき、直線ABと直線DE、直線BCと直線EF、直線CDと直線FAは、それぞれ相異なる二直線であり、拡張平面のただ一点で交わる。それらの交点を
P=AB∩DE,Q=BC∩EF,R=CD∩FAとおくと、P,Q,Rは拡張平面の一本の直線の上にある。
図は、楕円の上で六点を動かしたときにP,Q,Rが一直線上に並ぶ様子を実演するものであり、定理の証明ではありません。
例 1.3. 円Kの中心をOとし、Kの上に点Aをとる。AをOを中心として60∘、120∘、180∘、240∘、300∘回転した点を、それぞれB,C,D,E,Fとする。Oを中心とする回転はKをKへ移し、回転の角が相異なるので、A,B,C,D,E,FはKの相異なる六点であり、六角形ABCDEFはKに内接する正六角形である。
Oを中心とする角180∘の回転は、A,B,C,DをそれぞれD,E,F,Aへ移す。したがって、この回転は直線ABを直線DEへ、直線BCを直線EFへ、直線CDを直線FAへ移す。角180∘の回転は各直線を、それと平行な直線またはその直線自身へ移す。定理 1.2によりABとDE、BCとEF、CDとFAはそれぞれ相異なるので、三つの組はいずれも平行な二直線である。§A5.17 定理 2.2により、P=AB∩DE、Q=BC∩EF、R=CD∩FAは、それぞれ直線AB、BC、CDの方向の無限遠点である。したがってP,Q,Rはいずれも無限遠直線の上にあり、この配置では定理 1.2の結論は、三点が無限遠直線の上に並ぶという形で成り立つ。もとの平面の中では、向かい合う辺の三つの組はどれも交わらない。
2 円錐曲線を円へ移す射影変換
定理 2.1. 平面の直交座標を一つ選び、その座標から§A5.17 定義 6.1のとおりに同次座標[X:Y:Z]を定める。(a,b,c)=(0,0,0)に対して、aX+bY+cZ=0を満たす点[X:Y:Z]の全体は拡張平面の直線であり、拡張平面のどの直線もこの形に表される。(a,b)=(0,0)のとき、この直線は有限直線ax+by+c=0であり、(a,b)=(0,0)のとき、無限遠直線である。
証明.aX+bY+cZ=0を満たすかどうかは、点の同次座標を0でない定数倍しても変わらない。
(a,b)=(0,0)とする。有限点[x:y:1]がこの式を満たすことはax+by+c=0と同値である。無限遠点[u:v:0]がこの式を満たすことはau+bv=0、すなわち(u,v)が(b,−a)の0でない実数倍であることと同値であり、(b,−a)は直線ax+by+c=0の方向である。したがって、式を満たす点の全体は、直線ax+by+c=0にその方向の無限遠点を加えた有限直線(§A5.17 定義 1.1)である。
(a,b)=(0,0)とするとc=0であり、式はZ=0と同値であるから、式を満たす点の全体は無限遠点の全体、すなわち無限遠直線である。
逆に、有限直線は、もとの平面の直線をax+by+c=0((a,b)=(0,0))と表すと、上で示したとおりaX+bY+cZ=0を満たす点の全体であり、無限遠直線はZ=0を満たす点の全体である。▨
定理 2.2.Γを非退化な円錐曲線とする。射影変換(§A5.17 定義 1.2)φと円Kで、φ(Γ)=Kを満たすものが存在する。
証明.Γの種類に応じて平面の直交座標を一つ選び、その座標から§A5.17 定義 6.1のとおりに同次座標[X:Y:Z]を定める。有限点(x,y)の同次座標は[x:y:1]であり、方向(u,v)の無限遠点の同次座標は[u:v:0]である。座標の選び方と、二次の同次式F(X,Y,Z)と、実3次行列Mを次のように定める。
- Γが円であるとき、中心を原点とすると、半径をrとしてΓはx2+y2=r2と表される。a=b=rとおく。Γが楕円であるとき、中心を原点とし焦点をx軸の上にとると、§A2.14 公式 3.2により、あるa,b>0についてΓはx2/a2+y2/b2=1と表される。どちらの場合も、F=X2/a2+Y2/b2−Z2とし、Mを対角成分が1/a,1/b,1の対角行列とする。
- Γが双曲線であるとき、中心を原点とし焦点をx軸の上にとると、§A2.14 公式 4.2により、あるa,b>0についてΓはx2/a2−y2/b2=1と表される。F=X2/a2−Y2/b2−Z2とし、M=001/a01/b0100とする。
- Γが放物線であるとき、頂点を原点とし、焦点がx軸の正の部分にあるように座標をとると、§A2.14 公式 2.2により、あるp>0についてΓはy2=4pxと表される。F=Y2−4pXZとし、M=p0p010−p0pとする。
Mの行列式は、三つの場合の順に1/(ab)、−1/(ab)、2pであり、いずれも0でない。G(X,Y,Z)=X2+Y2−Z2とおく。円・楕円と放物線ではε=1、双曲線ではε=−1とすると、すべてのv∈R3について
G(Mv)=εF(v)が成り立つ。実際、v=(X,Y,Z)とすると、円・楕円ではG(X/a,Y/b,Z)=F(X,Y,Z)であり、双曲線ではG(Z,Y/b,X/a)=Z2+Y2/b2−X2/a2=−F(X,Y,Z)であり、放物線では
G(p(X−Z),Y,p(X+Z))=p(X−Z)2+Y2−p(X+Z)2=Y2−4pXZ=F(X,Y,Z)である。
Γは、F(v)=0を満たす点[v]の全体である。実際、有限点[x:y:1]については、F(x,y,1)=0はΓの方程式そのものである。無限遠点[u:v:0]については、円・楕円ではF(u,v,0)=u2/a2+v2/b2=0からu=v=0となるので、F=0を満たす無限遠点はない。双曲線では、F(u,v,0)=u2/a2−v2/b2=0ならばu=0であり(u=0ならばv=0となる)、この条件はv/u=b/aまたはv/u=−b/aと同値である。したがってF=0を満たす無限遠点は、二本の漸近線y=(b/a)x、y=−(b/a)x(§A2.14 公式 4.2)の方向の無限遠点である。放物線ではF(u,v,0)=v2=0からv=0となるので、F=0を満たす無限遠点は軸y=0の方向の無限遠点[1:0:0]だけである。いずれの場合も、F=0を満たす点の全体は定義 1.1のΓと一致する。同じく、G(u,v,0)=u2+v2=0を満たす無限遠点はないので、G(v)=0を満たす点[v]の全体は、原点を中心とし半径が単位の長さである円である。この円をKとする。
Mは可逆であるから、§A5.17 定理 8.1により、[v]↦[Mv]は射影変換である。この射影変換をφとする。F(v)=0とG(Mv)=0は同値であるから、φ(Γ)⊂Kである。逆に、Kの点[w]に対してv=M−1wとおくと、εF(v)=G(w)=0であるから[v]∈Γであり、φ([v])=[w]である。よってφ(Γ)=Kである。▨
定理 2.3.Γを非退化な円錐曲線とする。拡張平面の直線とΓの共有点は高々二つである。とくに、Γの相異なる二点W,W′を通る直線とΓの共有点はW,W′だけであり、Γの相異なる三点は一直線上にない。さらに、Γの相異なる四点W1,W2,W3,W4について、直線W1W2と直線W3W4は相異なり、拡張平面のただ一点で交わる。
証明.定理 2.2により、射影変換φと円Kでφ(Γ)=Kを満たすものをとる。§A5.17 定理 1.3により、φは単射であり、拡張平面の直線ℓを直線φ(ℓ)へ移すので、ℓとΓの共有点を、φ(ℓ)とKの共有点へ一対一に移す。したがって、拡張平面の直線mとKの共有点が高々二つであることを示せば、最初の主張が従う。
Kの中心をO、半径をrとする。Kは無限遠点を含まないので、mが無限遠直線であるとき共有点はない。mが有限直線であるとき、Oからmへ下ろした垂線の足をHとする。ただし、Oがmの上にあるときはH=Oとする。§A5.7 定理 1.4により、mの任意の点XについてOX2=OH2+HX2であるから、XがKの上にあることはHX2=r2−OH2と同値である。r2−OH2<0ならばそのようなXは存在せず、r2−OH2≥0ならばそのようなXは、mの上でHからの距離がr2−OH2である点であり、Hの両側に一つずつあるか、Hだけである。よって、mとKの共有点は高々二つである。
直線WW′はΓの二点W,W′を通るので、最初の主張によりΓとほかの点を共有しない。Γの相異なる三点が一直線上にあれば、その直線とΓが三点を共有して、最初の主張に反する。Γの相異なる四点W1,W2,W3,W4について、直線W1W2と直線W3W4が一致すれば、その直線とΓが四点を共有して、最初の主張に反する。よって二直線は相異なり、§A5.17 定理 2.1により拡張平面のただ一点で交わる。▨
定理 2.4.Kを円とし、Sを拡張平面の有限個の点からなる集合とする。射影変換ψで、ψ(K)=Kを満たし、Sのすべての点を有限点へ移すものが存在する。
証明.Kの中心を原点とし、半径を単位の長さとする直交座標を選び、その座標から§A5.17 定義 6.1のとおりに同次座標[X:Y:Z]を定める。G(X,Y,Z)=X2+Y2−Z2とおくと、KはG(v)=0を満たす点[v]の全体である。
Sに含まれる無限遠点[u:v:0]のそれぞれについて、ucosα+vsinα=0を満たすαは0≤α<2πの範囲に二つしかない。Sの無限遠点は有限個であるから、Sのすべての無限遠点[u:v:0]についてucosα+vsinα=0を満たす実数αが存在する。このαを一つ固定する。Sの有限点も有限個であるから、Sのすべての有限点(x,y)についてxcosα+ysinα=dを満たす実数d>1が存在する。このdを一つ固定する。
行列
M=d0−10d2−10−10dcosα−sinα0sinαcosα0001をとる。右の行列の行列式は1であり、左の行列の行列式は(d2−1)d2−1であるから、Mは可逆である。§A5.17 定理 8.1により、ψ([v])=[Mv]で定まるψは射影変換である。
v=(X,Y,Z)に対してX′=Xcosα+Ysinα、Y′=−Xsinα+Ycosαとおくと、X′2+Y′2=X2+Y2であり、Mv=(dX′−Z, d2−1Y′, dZ−X′)である。したがって
G(Mv)=(dX′−Z)2+(d2−1)Y′2−(dZ−X′)2=(d2−1)(X′2+Y′2−Z2)=(d2−1)G(v)が成り立つ。d2−1=0であるから、G(v)=0とG(Mv)=0は同値である。よってψ(K)⊂Kであり、Kの点[w]はKの点[M−1w]の像であるから、ψ(K)=Kである。
ψ([v])が無限遠点であることは、Mvの第3成分dZ−X′が0であることと同値である。Sの無限遠点[u:v:0]では第3成分は−(ucosα+vsinα)=0であり、Sの有限点[x:y:1]では第3成分はd−(xcosα+ysinα)=0である。よってψはSのすべての点を有限点へ移す。▨
3 円周角の定理と複比による証明
定理 3.1. 円Kの上に相異なる四点U1,U2,U3,U4をとり、Kの上にU1,…,U4のいずれとも異なる二点X,X′をとる(X=X′であってもよい)。Xを通らない直線tが四直線XU1,…,XU4とそれぞれ有限点Y1,…,Y4で交わり、X′を通らない直線t′が四直線X′U1,…,X′U4とそれぞれ有限点Y1′,…,Y4′で交わるとする。このときY1,…,Y4は相異なり、Y1′,…,Y4′も相異なり、
(Y1,Y2;Y3,Y4)=(Y1′,Y2′;Y3′,Y4′)が成り立つ。
証明.Kは非退化な円錐曲線でありK=Kであるから、定理 2.3により、Kの相異なる三点は一直線上にない。したがって四直線XU1,…,XU4は相異なる。実際、i=jについてXUi=XUjならば、この直線はKの相異なる三点X,Ui,Ujを通る。四直線はどれもXを通るので、どの二本もX以外の点を共有しない。i=jについてYi=Yjならば、この点はXUiとXUjの共有点であるからXに等しく、Xがtの上にあることになって仮定に反する。よってY1,…,Y4は相異なる。同じく、X′を通る四直線X′U1,…,X′U4は相異なり、X′はt′の上にないので、Y1′,…,Y4′も相異なる。
X=X′であるとする。t=t′ならば、YiとYi′はどちらも直線XUiとtの共有点であり、Xはtの上にないのでXUi=tであるから、Yi=Yi′である。t=t′ならば、Xはtの上にもt′の上にもなく、各iについて直線XYi=XUiはt′と有限点Yi′で交わる。§A5.14 定理 1.2を、中心X、二直線t,t′、四点Y1,…,Y4に用いると、(Y1,Y2;Y3,Y4)=(Y1′,Y2′;Y3′,Y4′)を得る。
X=X′であるとする。i=2,3,4について、U1=Uiであり、X,X′はKの点でU1,Uiと異なるので、直線U1Uiの上にない。四点X,U1,Ui,X′はKの上にあるので、円周角の定理とその逆を向きをもつ角で述べた四点共円の判定§C2.4 補題 1.5により
∠(XU1,XUi)=∠(X′U1,X′Ui)(mod180∘)が成り立つ。∠(XU1,X′U1)の値を一つ選んでθとし、XをX′へ移す平行移動に続けて、X′を中心とする角θの回転を行う合同変換をρとする。直線nを平行移動で移した直線をn1とすると、n1はnと平行であるから∠(n,n1)=0であり、ρ(n)はn1を角θの回転で移した直線であるから∠(n1,ρ(n))=θである(§C2.4 定義 1.3)。したがって§C2.4 補題 1.4により、任意の直線nについて∠(n,ρ(n))=θである。一方、加法性と上の等式により、i=2,3,4について
∠(XUi,X′Ui)=∠(XUi,XU1)+∠(XU1,X′U1)+∠(X′U1,X′Ui)=−∠(XU1,XUi)+θ+∠(XU1,XUi)=θであり、i=1についても∠(XU1,X′U1)=θである。よってi=1,…,4のそれぞれについて
∠(ρ(XUi),X′Ui)=∠(ρ(XUi),XUi)+∠(XUi,X′Ui)=−θ+θ=0であるから、ρ(XUi)とX′Uiは平行であるか一致する。二直線はどちらもρ(X)=X′を通るので一致する。
ρは直線tを直線ρ(t)へ移し、Xはtの上にないので、X′=ρ(X)はρ(t)の上にない。YiはtとXUiの共有点であるから、ρ(Yi)はρ(t)とρ(XUi)=X′Uiの共有点であり、有限点である。ρは二点間の距離を保つ。tの上の相異なる三点Yi,Yk,Yjについて、符号つきの長さの比YiYk/YkYj(§A5.9 定義 1.1)の絶対値はYiYk/YkYjであり、その符号は、Ykが線分YiYjの内部にあるとき正、外部にあるとき負である。Ykが線分YiYjの内部にあることはYiYk+YkYj=YiYjと同値であるから、距離を保つρはこの符号つきの長さの比を保つ。複比は符号つきの長さの比の商であるから(§A5.14 定義 1.1)、
(ρ(Y1),ρ(Y2);ρ(Y3),ρ(Y4))=(Y1,Y2;Y3,Y4)である。X=X′の場合に示した等式を、点X′と、X′を通らない二直線ρ(t),t′に用いると、(ρ(Y1),ρ(Y2);ρ(Y3),ρ(Y4))=(Y1′,Y2′;Y3′,Y4′)を得る。二つの等式から(Y1,Y2;Y3,Y4)=(Y1′,Y2′;Y3′,Y4′)である。▨
証明 (パスカルの定理の証明).定理 2.3により、直線ABとDE、BCとEF、CDとFA、FAとDE、CDとEFは、それぞれ相異なり、拡張平面のただ一点で交わる。したがってP,Q,Rと
S=FA∩DE,T=CD∩EFがただ一つずつ定まる。
Rは直線DEの上にない。実際、RがDEの上にあれば、Rは相異なる二直線CD,DEの共有点であるからR=Dとなり、Dが直線FAの上にあることになるが、定理 2.3によりFAとΓの共有点はF,Aだけであり、Dはそのどちらとも異なる。また、Rは直線EFの上にない。実際、RがEFの上にあれば、Rは相異なる二直線FA,EFの共有点であるからR=Fとなり、Fが直線CDの上にあることになるが、CDとΓの共有点はC,Dだけであり、Fはそのどちらとも異なる。PはDEの上にあるのでR=Pであり、直線RPはEFの上にない点Rを通るのでEFと相異なる。直線RPと直線EFの交点をVとする。
定理 2.2により、射影変換φ1と円Kでφ1(Γ)=Kを満たすものをとる。定理 2.4を、Kと、六点φ1(P),φ1(Q),φ1(R),φ1(S),φ1(T),φ1(V)からなる集合に用いて、ψ(K)=Kを満たし、この六点を有限点へ移す射影変換ψをとる。射影変換の合成は一点からの射影の有限回の合成であるから、φ=ψ∘φ1は射影変換であり、φ(Γ)=Kを満たし、P,Q,R,S,T,Vを有限点へ移す。§A5.17 定理 1.3により、φは全単射であり、直線を直線へ移し、点が直線上にあることを保つ。したがって、φ(A),…,φ(F)はKの相異なる六点であり、たとえばφ(P)=φ(A)φ(B)∩φ(D)φ(E)のように、P,Q,R,S,T,Vはそれぞれ像の点から同じ規則で定まる交点へ移り、φ(R)は直線φ(D)φ(E)の上にも直線φ(E)φ(F)の上にもない。§A5.17 定理 10.1により、φ(P),φ(Q),φ(R)が一直線上にあることを示せば、P,Q,Rが一直線上にあることが従う。以下では、像の配置を同じ記号で書く。すなわち、A,…,Fは円Kの相異なる六点であり、P,Q,R,S,T,Vは有限点であり、Rは直線DEの上にも直線EFの上にもない。
Kは非退化な円錐曲線でありK=Kであるから、定理 2.3により、直線DEとKの共有点はD,Eだけであり、直線EFとKの共有点はE,Fだけである。とくに、AはDEの上になく、CはEFの上にない。四直線AB,AD,AE,AFと直線DEの交点は、順にP,D,E,Sである。四直線CB,CD,CE,CFと直線EFの交点は、順にQ,T,E,Fである。これらの交点はいずれも有限点である。定理 3.1を、U1=B、U2=D、U3=E、U4=F、X=A、X′=C、t=DE、t′=EFとして用いると、P,D,E,Sは相異なり、Q,T,E,Fも相異なり、
(P,D;E,S)=(Q,T;E,F)が成り立つ。
Rを中心として、直線DEの点を直線EFへ射影する。RはDEの上にもEFの上にもなく、DEとEFは相異なる。RはDEの上にないのでR=Dであり、R,Dはともに直線CDの上にあるので、直線RDはCDに一致し、EFとTで交わる。RはDEの上にないのでR=Eであり、RはEFの上にないので、直線REはEFとEで交わる。SはDEの上にありRはそうでないのでR=Sであり、R,Sはともに直線FAの上にあるので、直線RSはFAに一致し、EFとFで交わる。直線RPはEFと有限点Vで交わる。§A5.14 定理 1.2を、中心R、二直線DE,EF、四点P,D,E,Sに用いると、V,T,E,Fは相異なり、
(P,D;E,S)=(V,T;E,F)が成り立つ。
二つの等式から(Q,T;E,F)=(V,T;E,F)である。直線EFに座標を入れ、Q,V,T,E,Fの座標をそれぞれq,v,τ,e,fとすると、§A5.14 定義 1.1により
(e−τ)(f−q)(e−q)(f−τ)=(e−τ)(f−v)(e−v)(f−τ)である。T,E,Fは相異なるので(f−τ)/(e−τ)は0でない実数であり、両辺をこの値で割ると
1+f−qe−f=f−qe−q=f−ve−v=1+f−ve−fを得る。e=fであるからf−q=f−v、すなわちq=vである。よってQ=Vであり、Qは直線RPの上にある。したがってP,Q,Rは一直線上にある。▨
4 同次座標の計算による別証明
証明 (パスカルの定理の別証明).定理 2.3により、直線ABとDE、BCとEF、CDとFAはそれぞれ相異なり、拡張平面のただ一点で交わるので、P,Q,Rがただ一つずつ定まる。
定理 2.2により、射影変換φ1と円Kでφ1(Γ)=Kを満たすものをとる。Kの中心を原点とし、半径を単位の長さとする直交座標から同次座標[X:Y:Z]を定めると、KはX2+Y2−Z2=0を満たす点の全体である。行列
N=10−1010101の行列式は2であるから、§A5.17 定理 8.1により、φ2([v])=[Nv]で定まるφ2は射影変換である。Nv=(X+Z, Y, Z−X)の成分を(X′,Y′,Z′)と書くと、Y′2−X′Z′=Y2−(Z2−X2)=X2+Y2−Z2である。したがってφ2はKを
Λ={[X:Y:Z]∣Y2=XZ}の中へ移し、Λの点[w]はKの点[N−1w]の像であるから、φ2(K)=Λである。φ=φ2∘φ1は射影変換であり、φ(Γ)=Λである。§A5.17 定理 1.3により、φは全単射であり、直線を直線へ移し、点が直線上にあることを保つ。したがって、拡張平面の直線とΛの共有点は高々二つであり(定理 2.3)、φ(P),φ(Q),φ(R)は像の六点から同じ規則で定まる交点である。§A5.17 定理 10.1により、φ(P),φ(Q),φ(R)が一直線上にあることを示せばよい。以下では、像の配置を同じ記号で書く。すなわち、A,…,FはΛの相異なる六点であり、Λの相異なる二点を通る直線とΛの共有点はその二点だけである。
同次式の値が0であるかどうかは、点の同次座標の0でない定数倍の取り方によらない。
Λの点[X:Y:Z]でX=0であるものは、X=1とするとZ=Y2を満たすので、[1:u:u2](uは実数)の形に書かれる。X=0ならばY=0であり、点は[0:0:1]である。uが異なれば点[1:u:u2]も異なる。Λの点Wに対して、uの多項式eW(u)を、W=[1:s:s2]ならばeW(u)=u−s、W=[0:0:1]ならばeW(u)=1と定める。
Λの相異なる二点W,W′に対して、一次の同次式hWW′(X,Y,Z)を次のように定める。W=[1:s:s2]、W′=[1:s′:s′2]であるときは
hWW′=ss′X−(s+s′)Y+Zとし、W=[0:0:1]、W′=[1:s′:s′2]であるときはhWW′=hW′W=Y−s′Xとする。いずれの場合も、hWW′の係数のうちに0でないものがあり、hWW′はWとW′で0になる。したがって、定理 2.1と§A5.17 定理 2.1により、hWW′=0を満たす点の全体は直線WW′である。さらに、すべての実数uについて
hWW′(1,u,u2)=eW(u)eW′(u)が成り立つ。実際、第一の場合はss′−(s+s′)u+u2=(u−s)(u−s′)であり、第二の場合はu−s′=1⋅(u−s′)である。
三次の同次式
H1=hABhCDhEF,H2=hBChDEhFAをとる。六点A,…,Fはどちらの積にもちょうど一回ずつ現れるので、すべての実数uについて
H1(1,u,u2)=eA(u)eB(u)eC(u)eD(u)eE(u)eF(u)=H2(1,u,u2)が成り立つ。
H1−H2をYの多項式としてH1−H2=g3Y3+g2Y2+g1Y+g0と書く。ここでgkはX,Zの3−k次の同次式または0である(g3は定数である)。Y2=(Y2−XZ)+XZとY3=Y(Y2−XZ)+XZYを代入すると
H1−H2=(Y2−XZ)m+r1Y+r0,m=g3Y+g2,r1=g1+g3XZ,r0=g0+g2XZとなる。mは一次の同次式または0であり、r1,r0はそれぞれX,Zの二次、三次の同次式または0である。点(1,u,u2)ではY2−XZ=0であるから、すべての実数uについて
ur1(1,u2)+r0(1,u2)=0が成り立つ。uを−uに替えた式と辺々加えるとr0(1,u2)=0を得て、辺々引くとur1(1,u2)=0を得る。したがって、wの多項式r1(1,w)とr0(1,w)は、すべての正の実数wで0になる。0でない多項式の根は有限個であるから、二つの多項式はどちらも0である。r1(1,w)の係数はr1の係数と同じであるからr1=0であり、r0(1,w)についても同じ理由でr0=0である。よって
H1−H2=(Y2−XZ)mである。
m=0である。実際、m=0ならばH1とH2は多項式として一致する。直線ABは直線BC,DE,FAのいずれとも異なる(三本のそれぞれはABの上にないΛの点C,D,Fのいずれかを通る)ので、三本のそれぞれとABの共有点はただ一つである。直線ABは無数の点をもつから、BC,DE,FAのどの上にもないABの点W0が存在する。W0でhABは0になるのでH1も0になるが、hBC,hDE,hFAはどれも0にならないのでH2は0にならず、H1=H2に反する。
Pは直線ABと直線DEの上にあるので、PでhABとhDEは0になり、H1とH2も0になる。したがってPで(Y2−XZ)mは0になる。直線ABとΛの共有点はA,Bだけであり、P=AならばAが直線DEの上に、P=BならばBが直線DEの上にあることになって、いずれも直線DEとΛの共有点がD,Eだけであることに反する。よってPはΛの上になく、PでY2−XZは0にならないから、Pでmは0になる。QではhEFとhBCが0になるのでH1とH2が0になり、QがΛの上にあればQはBまたはCに一致して、BまたはCが直線EFの上にあることになる。よってQでmは0になる。RではhCDとhFAが0になるのでH1とH2が0になり、RがΛの上にあればRはCまたはDに一致して、CまたはDが直線FAの上にあることになる。よってRでmは0になる。mの係数のうちに0でないものがあるので、定理 2.1によりm=0を満たす点の全体は拡張平面の一本の直線であり、P,Q,Rはこの直線の上にある。▨
5 ブリアンションの定理
定義 5.1 (円錐曲線の接線).Γを非退化な円錐曲線とする。拡張平面の直線のうち、Γとただ一つの共有点をもつものをΓの接線 (tangent line) といい、その共有点を接点 (point of tangency) という。
定理 5.3 (ブリアンションの定理).Γを非退化な円錐曲線とし、t1,t2,t3,t4,t5,t6をΓの相異なる六本の接線とする。拡張平面の点
A=t1∩t2,B=t2∩t3,C=t3∩t4,D=t4∩t5,E=t5∩t6,F=t6∩t1について、A=D、B=E、C=Fであり、三直線AD,BE,CFは拡張平面の一点を共有する。
定義 5.5 (拡張平面での極線). 円Kと、Kの中心Oを原点とし半径を単位の長さとする直交座標を一つ固定し、その座標から§A5.17 定義 6.1のとおりに同次座標[X:Y:Z]を定める。拡張平面の点W=[u:v:w]に対して、直線(定理 2.1)
uX+vY−wZ=0を、WのKに関する極線 (polar line) といい、pol(W)と書く。Wの同次座標を0でない定数倍しても方程式が同じ定数倍になるだけであるから、pol(W)はWによって定まる。WがOと異なる有限点(u,v)であるとき、pol(W)は直線ux+vy=1、すなわち§A5.16 定義 1.1の極線である。
定理 5.6. 円Kと定義 5.5の座標をとり、Kに関する極線をpolで表す。このとき次が成り立つ。
- 拡張平面のどの直線も、ある点Wについてpol(W)と表される。
- 拡張平面の任意の二点W,W′について、W′がpol(W)の上にあることと、Wがpol(W′)の上にあることは同値である。
- Kの各点Wについて、Wを接点とするKの接線はただ一本であり、それはpol(W)である。
- 拡張平面のどの点についても、その点を通るKの接線は高々二本である。
- 拡張平面の相異なる二点W1,W2と点W0について、W0がpol(W1)とpol(W2)の上にあるならば、pol(W0)は直線W1W2である。
証明.(1)を示す。定理 2.1により、拡張平面の直線は、ある(a,b,c)=(0,0,0)についてaX+bY+cZ=0を満たす点の全体であり、この直線は点[a:b:−c]に対するpol([a:b:−c])である。
(2)を示す。W=[u:v:w]、W′=[u′:v′:w′]とすると、W′がpol(W)の上にあることはuu′+vv′−ww′=0と同値であり、この式はWとW′を入れ替えても変わらない。
(3)を示す。Kは無限遠点を含まないので、Kの点WはOと異なる有限点(u,v)であり、pol(W)は§A5.16 定義 1.1の極線ux+vy=1である。§A5.16 系 4.1により、この直線はWにおけるKの接線であって、KとWだけを共有し、Kは無限遠点を含まないので、拡張平面でもKとWだけを共有する。逆に、Wを接点とするKの接線ℓをとる。無限遠直線はKと共有点をもたないのでℓは有限直線であり、Kとただ一点Wを共有するので、円の接線の意味でもWにおける接線である。§A5.6 定理 1.2により、ℓはWを通り直線OWに垂直な直線であり、そのような直線はただ一本である。よってℓ=pol(W)である。
(4)を示す。点Wを通るKの接線ℓをとり、その接点をTとする。(3)によりℓ=pol(T)であり、Wはpol(T)の上にあるので、(2)によりTはpol(W)の上にある。定理 2.3により、直線pol(W)とKの共有点は高々二つであるから、Wを通る接線の接点は高々二つである。(3)により、接点が等しい二本の接線は一致するので、Wを通るKの接線は高々二本である。
(5)を示す。W0はpol(W1)とpol(W2)の上にあるので、(2)によりW1,W2はどちらも直線pol(W0)の上にある。W1=W2であるから、§A5.17 定理 2.1によりpol(W0)は直線W1W2である。▨
証明 (ブリアンションの定理の証明).定理 2.2により、射影変換φと円Kでφ(Γ)=Kを満たすものをとる。§A5.17 定理 1.3により、φは全単射であり、逆写像も射影変換であり、φとその逆写像はどちらも直線を直線へ移し、点が直線上にあることを保つ。したがって、拡張平面の直線ℓについて、φ(ℓ)とKの共有点の全体はℓとΓの共有点の全体の像であり、ℓがΓの接線であることと、φ(ℓ)がKの接線であることは同値である。よってφ(t1),…,φ(t6)はKの相異なる六本の接線であり、たとえばφ(A)=φ(t1)∩φ(t2)のように、A,…,Fはそれぞれ像の接線から同じ規則で定まる交点へ移る。φは単射であるから、A=Dとφ(A)=φ(D)は同値であり、B,EとC,Fについても同値である。§A5.17 定理 10.1により、三直線の共有点についての主張も像の配置で示せばよい。以下では、像の配置を同じ記号で書く。すなわち、t1,…,t6は円Kの相異なる六本の接線である。
Kについて定義 5.5の座標をとり、Kに関する極線をpolで表す。各iについてtiの接点をTiとすると、(3)によりti=pol(Ti)である。i=jについてTi=Tjならばti=pol(Ti)=tjとなるので、T1,…,T6はKの相異なる六点である。
Aはpol(T1)=t1とpol(T2)=t2の上にあり、T1=T2であるから、(5)によりpol(A)は直線T1T2である。同じく(5)をB,…,Fに用いて
pol(B)=T2T3,pol(C)=T3T4,pol(D)=T4T5,pol(E)=T5T6,pol(F)=T6T1を得る。
A=Dならば、相異なる四本の接線t1,t2,t4,t5がAを通ることになり、(4)に反する。よってA=Dである。同じく、B=Eならば四本の接線t2,t3,t5,t6がBを通り、C=Fならば四本の接線t3,t4,t6,t1がCを通ることになるので、B=EかつC=Fである。
定理 1.2をKの相異なる六点T1,…,T6に用いる。直線T1T2とT4T5、T2T3とT5T6、T3T4とT6T1の交点をそれぞれP,Q,Rとすると、P,Q,Rは拡張平面の一本の直線pの上にある。Pはpol(A)=T1T2とpol(D)=T4T5の上にあり、A=Dであるから、(5)によりpol(P)は直線ADである。同じく、Qはpol(B)とpol(E)の上にありB=Eであるからpol(Q)は直線BEであり、Rはpol(C)とpol(F)の上にありC=Fであるからpol(R)は直線CFである。
(1)により、pol(J)=pを満たす点Jが存在する。Pはpol(J)の上にあるので、(2)によりJはpol(P)=ADの上にある。同じく、Q,Rがpol(J)の上にあることから、JはBEとCFの上にある。よって三直線AD,BE,CFは点Jを共有する。▨
6 演習
問題 6.1. 円Kの上に相異なる六点A,B,C,D,E,Fをとり、P=AB∩DE、Q=BC∩EF、R=CD∩FAはいずれも有限点であるとする。さらに、三直線AB,CD,EFのどの二本も平行でなく、三本は一点を共有しないとし、
U=EF∩AB,V=AB∩CD,W=CD∩EFとおく。メネラウスの定理(§A5.9 定理 3.1)と割線の方べきの定理(§A5.7 定理 1.3)を用いて、P,Q,Rが一直線上にあることを証明せよ。
解答.
三直線AB,CD,EFのどの二本も平行でないので、U,V,Wは有限点である。U=Vならばこの点は三直線すべての上にあることになるのでU=Vであり、同じくV=W、W=Uである。U,V,Wが一直線上にあれば、その直線はU,Vを通る直線ABであり、WはABとCDの共有点Vに一致してW=Vに反する。よってU,V,Wは三角形をなし、その三辺を含む直線はUV=AB、VW=CD、WU=EFである。
定理 2.3により、Kの相異なる三点は一直線上にないので、六点のそれぞれは三直線AB,CD,EFのうちちょうど一本の上にある。U,V,Wはいずれも三直線のうち二本の上にあるので、六点はいずれもU,V,Wと異なる。Pについて、P=UならばPは相異なる二直線DE,EFの共有点Eに一致し、P=VならばPはDE,CDの共有点Dに一致して、いずれもEまたはDがABの上にあることになる。よってP=U,Vである。Qについて、Q=WならばQはBC,CDの共有点Cに一致し、Q=UならばQはBC,ABの共有点Bに一致して、いずれもCまたはBがEFの上にあることになる。よってQ=W,Uである。Rについて、R=VならばRはFA,ABの共有点Aに一致し、R=WならばRはFA,EFの共有点Fに一致して、いずれもAまたはFがCDの上にあることになる。よってR=V,Wである。
三角形UVWについて、三点の組(C,Q,B)、(D,E,P)、(R,F,A)は、それぞれ順に直線VW,WU,UVの上にあって頂点と異なり、それぞれ直線BC,DE,FAの上にあるので一直線上にある。§A5.9 定理 3.1により
CWVC⋅QUWQ⋅BVUB=−1,DWVD⋅EUWE⋅PVUP=−1,RWVR⋅FUWF⋅AVUA=−1が成り立つ。三式を掛け合わせ、CWDW=WCWD、EUFU=UEUF、AVBV=VAVBを用いて整理すると
RWVR⋅QUWQ⋅PVUP⋅VAVBVCVD⋅WCWDWEWF⋅UEUFUAUB=−1を得る。§A5.7 定理 1.3により、Vを通りKと相異なる二点で交わる二直線AB,CDについてVAVB=PowK(V)=VCVDである。同じく、Wを通る二直線CD,EFについてWCWD=PowK(W)=WEWFであり、Uを通る二直線AB,EFについてUAUB=PowK(U)=UEUFである。したがって後ろの三つの因子はどれも1であり、
RWVR⋅QUWQ⋅PVUP=−1が成り立つ。R,Q,Pはそれぞれ直線VW,WU,UVの上にあって頂点と異なるので、§A5.9 定理 3.1によりP,Q,Rは一直線上にある。▨