§A5.16極線と極点、双対原理

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円の外部の点から二本の接線を引くと、二つの接点を結ぶ直線が定まります。例えば、円の外部の一点から接線を引く問題では、その点だけでなく、二つの接点を結ぶ直線の位置も調べる対象になります。しかし、円の内部の点からは接線を引くことができないため、接点を用いるだけでは同じ対応を考えることができません。

そこで、接線の有無によらず点と直線を対応させる、極線と極点の考え方を導入します。この対応は、点が直線上にあるという関係を、対応する点と直線の関係へ移すために重要です。円の接線についての知識を、点の配置と直線の交わりを扱う幾何へ広げることができます。

本記事では、円に関する極線と極点の基本的な性質を解説します。

1 極線の定義と幾何的な位置

定義 1.1 (極線と極点). 円Γ:x2+y2=r2\Gamma:x^2+y^2=r^2(r>0r>0)に対し、P=(u,v)≠(0,0)P=(u,v)\ne(0,0)の 極線 (polar line) を

pol⁡Γ(P):ux+vy=r2\operatorname{pol}_{\Gamma}(P): ux+vy=r^2

とする。点PPをこの直線の 極点 (pole) という。

定理 1.2. 中心O=(0,0)O=(0,0)、半径r>0r>0の円Γ\Gammaと、点P≠OP\ne Oをとる。半直線OPOP上にOP⋅OH=r2OP\cdot OH=r^2となる点HHをとると、PPの極線はHHを通り直線OPOPに垂直な直線であり、中心OOからの距離はr2/OPr^2/OPである。

PPが円の外部にあるとき、極線は円と相異なる二点で交わる。PPが円周上にあるとき、極線はPPを通り半径OPOPに垂直な直線である。PPが円の内部にあるとき、極線と円は共有点をもたない。

証明.P=(u,v)P=(u,v)、a=OP=u2+v2>0a=OP=\sqrt{u^2+v^2}>0とすると、H=(r2u/a2,r2v/a2)H=(r^2u/a^2,r^2v/a^2)である。HHはux+vy=r2ux+vy=r^2を満たし、この直線の法線ベクトル(u,v)(u,v)は直線OPOPの方向を表す。したがって極線はHHを通り直線OPOPに垂直であり、中心からの距離はOH=r2/OPOH=r^2/OPである。

OP>rOP>r、OP=rOP=r、OP<rOP<rの各場合に、OH<rOH<r、OH=rOH=r、OH>rOH>rとなる。極線上の点XXについて、X≠HX\ne Hならば§A5.4 定理 1.1よりOX2=OH2+HX2OX^2=OH^2+HX^2であり、X=HX=Hのときも同じ等式が成り立つ。OH<rOH<rのとき、円との共有点はHHの両側にあるHX=r2−OH2HX=\sqrt{r^2-OH^2}を満たす二点である。OH=rOH=rのとき、共有点はHHだけであり、OP=rOP=rからH=PH=Pである。OH>rOH>rのとき、すべてのXXについてOX≥OH>rOX\geq OH>rであるので共有点はない。▨

注意 1.3. 円Γ:x2+y2=r2\Gamma:x^2+y^2=r^2(r>0r>0)に対する点P=(u,v)≠(0,0)P=(u,v)\ne(0,0)の方べきは、§A5.7 定義 1.1によりu2+v2−r2u^2+v^2-r^2である。点X=(x,y)X=(x,y)がPPの極線上にある条件は、定義式から

u(x−u)+v(y−v)=−(u2+v2−r2)u(x-u)+v(y-v)=-(u^2+v^2-r^2)

と書くこともできる。

2 ラ・イールの定理

定理 2.1. 円Γ:x2+y2=r2\Gamma:x^2+y^2=r^2(r>0r>0)と、原点でない有限点P=(u,v)P=(u,v)、Q=(s,t)Q=(s,t)に対し、上の定義による極線を考えると、

Q∈pol⁡Γ(P)⟺P∈pol⁡Γ(Q).Q\in\operatorname{pol}_{\Gamma}(P) \quad\Longleftrightarrow\quad P\in\operatorname{pol}_{\Gamma}(Q).

外部点の場合、この極線は2本の接線の接点を結ぶ直線である。

証明.QQがPPの極線上にあるとする。半直線OPOP上にOP⋅OH=r2OP\cdot OH=r^2となる点HHをとる。

O,P,QO,P,Qが一直線上にある場合、定理 1.2より極線と直線OPOPの交点はHHであるので、Q=HQ=Hである。OQ⋅OP=r2OQ\cdot OP=r^2であり、PPは半直線OQOQ上にあるので、同じ定理よりPPはQQの極線上にある。

O,P,QO,P,Qが一直線上にない場合、QH⊥OPQH\perp OPであり、HHは半直線OPOP上にあるので、∠POQ\angle POQは鋭角である。PPから直線OQOQへ下ろした垂線の足をKKとすると、KKは半直線OQOQ上にある。直角三角形OHQOHQとOKPOKPは、直角とOOにおける角がそれぞれ等しいので、§A5.1 定理 3.1 (1)により、この頂点の順序で相似である。したがって

OHOK=OQOP,OQ⋅OK=OP⋅OH=r2\frac{OH}{OK}=\frac{OQ}{OP},\qquad OQ\cdot OK=OP\cdot OH=r^2

である。定理 1.2より、QQの極線はKKを通り直線OQOQに垂直な直線であるので、PPを通る。

PPとQQを入れ替えて同じ議論を行うと、逆向きの含意も従う。外部点の接点についての主張は定理 3.1により従う。▨

内積を用いると、相反性を次のように示すこともできます。

証明.Q∈pol⁡Γ(P)Q\in\operatorname{pol}_{\Gamma}(P)はus+vt=r2us+vt=r^2と同値である。内積の対称性により、us+vt=r2us+vt=r^2はsu+tv=r2su+tv=r^2と同値であり、後者はP∈pol⁡Γ(Q)P\in\operatorname{pol}_{\Gamma}(Q)の条件である。外部点の接点についての主張は定理 3.1により従う。▨

定理 2.1の相反性をラ・イールの定理といいます。

図は接点と極線の関係を実演するものであり、相反性の証明ではありません。

3 外部点の二接線と接点弦

定理 3.1. 中心O=(0,0)O=(0,0)、半径r>0r>0の円Γ\Gammaの外部に点PPをとる。PPからΓ\Gammaへ引く接線はちょうど二本あり、その接点をT1,T2T_1,T_2とすると、極線pol⁡Γ(P)\operatorname{pol}_{\Gamma}(P)は直線T1T2T_1T_2である。

証明.d=OPd=OPとし、半直線OPOP上にOH=r2/dOH=r^2/dとなる点HHをとる。d>rd>rより0<OH<r<OP0<OH<r<OPである。HHを通り直線OPOPに垂直な直線上で、HHの両側にHT1=HT2=r2−OH2>0HT_1=HT_2=\sqrt{r^2-OH^2}>0となる点をとる。§A5.4 定理 1.1よりOT1=OT2=rOT_1=OT_2=rであり、二点は円周上にある。どちらの点T=T1,T2T=T_1,T_2についても、直角三角形PHTPHTに同じ定理を用いると

PT2=(d−OH)2+HT2=d2−2d⋅OH+r2=d2−r2PT^2=(d-OH)^2+HT^2=d^2-2d\cdot OH+r^2=d^2-r^2

である。したがってOT2+PT2=d2=OP2OT^2+PT^2=d^2=OP^2であり、三平方の定理の逆よりOT⊥PTOT\perp PTである。§A5.6 定理 1.2によりPT1,PT2PT_1,PT_2は接線である。二本が同じ直線ならば、その直線は円周上の相異なる二点T1,T2T_1,T_2を含み、接線であることに反する。よって二本は相異なる。

PPから引いた任意の接線の接点をUUとする。§A5.6 定理 1.2よりOU⊥PUOU\perp PUである。UUから斜辺OPOPへ下ろした垂線の足をKKとすると、KKは線分OPOPの内部にある。直角三角形OKUOKUとOUPOUPは、直角とOOにおける角がそれぞれ等しいので、§A5.1 定理 3.1 (1)により相似である。したがって

OKOU=OUOP,OP⋅OK=OU2=r2\frac{OK}{OU}=\frac{OU}{OP},\qquad OP\cdot OK=OU^2=r^2

である。半直線OPOP上でOK=OHOK=OHとなるのでK=HK=Hである。三平方の定理よりHU2=r2−OH2HU^2=r^2-OH^2であり、UUはT1,T2T_1,T_2のいずれかである。各接点における接線は§A5.6 定理 1.2によりただ一本であるので、PPからの接線はこの二本に限られる。直線T1T2T_1T_2はHHを通り直線OPOPに垂直であるので、定理 1.2よりPPの極線である。▨

二接点が極線上にあることは、内積を用いて示すこともできます。

証明. 接点T=(x,y)T=(x,y)では半径OTOTと接線PTPTが垂直なので、

(T−P)⋅T=0(T-P)\cdot T=0

である。∣T∣2=r2|T|^2=r^2を代入するとP⋅T=r2P\cdot T=r^2、すなわちux+vy=r2ux+vy=r^2となる。二つの接点はいずれもこの直線上にあり、相異なる二点であるので、その接点を結ぶ直線が極線である。▨

注意 3.2. 中心O=(0,0)O=(0,0)、半径r>0r>0の円の内部の点PPから、円への実接線は存在しない。実際、接点TTがあればOT⊥PTOT\perp PTであり、三平方の定理からOP2=r2+PT2≥r2OP^2=r^2+PT^2\geq r^2となるが、内部点ではOP<rOP<rである。内部点P≠OP\ne Oに対しても、定義式ux+vy=r2ux+vy=r^2は一本の直線を表す。

4 円周上の極線

系 4.1. 中心O=(0,0)O=(0,0)、半径r>0r>0の円Γ\Gammaの周上に点PPをとる。PPの極線はPPにおけるΓ\Gammaの接線である。

証明.OP=rOP=rであるので、半直線OPOP上でOP⋅OH=r2OP\cdot OH=r^2を満たす点はH=PH=Pである。定理 1.2より極線はPPを通り直線OPOPに垂直な直線であり、§A5.6 定理 1.2よりPPにおける接線である。▨

座標から接線の法線ベクトルを確認することもできます。

証明. 円周上のP=(u,v)P=(u,v)ではu2+v2=r2u^2+v^2=r^2である。点PPはux+vy=r2ux+vy=r^2を満たし、この直線の法線ベクトルは(u,v)(u,v)である。したがって極線はPPを通り半径OPOPに垂直であり、§A5.6 定理 1.2より接線である。▨

5 有限点と直線の双対

定理 5.1. 中心O=(0,0)O=(0,0)、半径r>0r>0の円Γ\Gammaに対し、OOを通らない直線mmには、mmを極線とする有限点がただ一つ存在する。OOを通る直線には有限の極点は存在しない。

OOと異なる相異なる三点P,Q,RP,Q,Rが、OOを通らない一本の直線上にあることと、三点の極線が一つの有限点を共有することは同値である。三点がOOを通る一本の直線上にある場合には、三点の極線は相異なる平行線である。

証明.mmがOOを通らないとする。OOからmmへ下ろした垂線の足をHHとすると、H≠OH\ne Oである。半直線OHOH上にOH⋅OS=r2OH\cdot OS=r^2となる点SSをとる。定理 1.2より、SSの極線はHHを通り直線OHOHに垂直な直線であり、mmに一致する。逆にmmが点S′S'の極線であるならば、同じ定理より、OOからmmへの垂足HHは半直線OS′OS'上にあり、OS′⋅OH=r2OS'\cdot OH=r^2である。したがってS′S'は半直線OHOH上の距離r2/OHr^2/OHの点であり、S′=SS'=Sである。どの極線も中心からの距離が正であるので、OOを通る直線は極線にならない。

P,Q,RP,Q,RがOOを通らない直線mm上にあるとし、mmの極点をSSとする。定理 2.1の相反性より、SSは三点の極線のすべてに属する。逆に三点の極線が有限点SSを共有するならば、極線はOOを通らないのでS≠OS\ne Oである。相反性よりP,Q,RP,Q,RはSSの極線上にあり、この直線はOOを通らない。

O,P,Q,RO,P,Q,Rが一直線上にあるとする。定理 1.2より、三点の極線はすべて直線OPOPに垂直である。二本が一致すると、極点の一意性から対応する二点が一致し、三点が相異なることに反する。したがって三本は相異なる平行線である。▨

注意 5.2. 中心O=(0,0)O=(0,0)、半径r>0r>0の円に対し、OOと異なる相異なる二点P,QP,Qの極線が有限点SSで交わるとする。極線はOOを含まないのでS≠OS\ne Oであり、相反性よりSSの極線は直線PQPQである。逆に直線PQPQがOOを通らないならば、その極点SSは相反性より二つの極線の交点である。直線PQPQがOOを通る場合、二つの極線は相異なる平行線であり、有限の交点はない。

問題 5.3. 中心O=(0,0)O=(0,0)、半径r>0r>0の円Γ\Gammaと、OOと異なる相異なる二点A,BA,Bが与えられている。Γ\Gammaに関する極線がA,BA,Bの両方を通る点PPをすべて求め、その存在条件を示せ。

解答.

求める極線は直線ABABに限られる。OOが直線ABAB上にある場合、定理 5.1より解は存在しない。OOが直線ABAB上にない場合、OOから直線ABABへ下ろした垂線の足をHHとする。半直線OHOH上でOP=r2/OHOP=r^2/OHを満たす点が唯一の解である。定理 1.2より、この点の極線は直線ABABである。▨

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