1 極線の定義と幾何的な位置
定義 1.1 (極線と極点). 円Γ:x2+y2=r2(r>0)に対し、P=(u,v)=(0,0)の 極線 (polar line) を
polΓ(P):ux+vy=r2とする。点Pをこの直線の 極点 (pole) という。
定理 1.2. 中心O=(0,0)、半径r>0の円Γと、点P=Oをとる。半直線OP上にOP⋅OH=r2となる点Hをとると、Pの極線はHを通り直線OPに垂直な直線であり、中心Oからの距離はr2/OPである。
Pが円の外部にあるとき、極線は円と相異なる二点で交わる。Pが円周上にあるとき、極線はPを通り半径OPに垂直な直線である。Pが円の内部にあるとき、極線と円は共有点をもたない。
証明.P=(u,v)、a=OP=u2+v2>0とすると、H=(r2u/a2,r2v/a2)である。Hはux+vy=r2を満たし、この直線の法線ベクトル(u,v)は直線OPの方向を表す。したがって極線はHを通り直線OPに垂直であり、中心からの距離はOH=r2/OPである。
OP>r、OP=r、OP<rの各場合に、OH<r、OH=r、OH>rとなる。極線上の点Xについて、X=Hならば§A5.4 定理 1.1よりOX2=OH2+HX2であり、X=Hのときも同じ等式が成り立つ。OH<rのとき、円との共有点はHの両側にあるHX=r2−OH2を満たす二点である。OH=rのとき、共有点はHだけであり、OP=rからH=Pである。OH>rのとき、すべてのXについてOX≥OH>rであるので共有点はない。▨
2 ラ・イールの定理
定理 2.1. 円Γ:x2+y2=r2(r>0)と、原点でない有限点P=(u,v)、Q=(s,t)に対し、上の定義による極線を考えると、
Q∈polΓ(P)⟺P∈polΓ(Q).外部点の場合、この極線は2本の接線の接点を結ぶ直線である。
証明.QがPの極線上にあるとする。半直線OP上にOP⋅OH=r2となる点Hをとる。
O,P,Qが一直線上にある場合、定理 1.2より極線と直線OPの交点はHであるので、Q=Hである。OQ⋅OP=r2であり、Pは半直線OQ上にあるので、同じ定理よりPはQの極線上にある。
O,P,Qが一直線上にない場合、QH⊥OPであり、Hは半直線OP上にあるので、∠POQは鋭角である。Pから直線OQへ下ろした垂線の足をKとすると、Kは半直線OQ上にある。直角三角形OHQとOKPは、直角とOにおける角がそれぞれ等しいので、§A5.1 定理 3.1 (1)により、この頂点の順序で相似である。したがって
OKOH=OPOQ,OQ⋅OK=OP⋅OH=r2である。定理 1.2より、Qの極線はKを通り直線OQに垂直な直線であるので、Pを通る。
PとQを入れ替えて同じ議論を行うと、逆向きの含意も従う。外部点の接点についての主張は定理 3.1により従う。▨
内積を用いると、相反性を次のように示すこともできます。
証明.Q∈polΓ(P)はus+vt=r2と同値である。内積の対称性により、us+vt=r2はsu+tv=r2と同値であり、後者はP∈polΓ(Q)の条件である。外部点の接点についての主張は定理 3.1により従う。▨
定理 2.1の相反性をラ・イールの定理といいます。
図は接点と極線の関係を実演するものであり、相反性の証明ではありません。
3 外部点の二接線と接点弦
定理 3.1. 中心O=(0,0)、半径r>0の円Γの外部に点Pをとる。PからΓへ引く接線はちょうど二本あり、その接点をT1,T2とすると、極線polΓ(P)は直線T1T2である。
証明.d=OPとし、半直線OP上にOH=r2/dとなる点Hをとる。d>rより0<OH<r<OPである。Hを通り直線OPに垂直な直線上で、Hの両側にHT1=HT2=r2−OH2>0となる点をとる。§A5.4 定理 1.1よりOT1=OT2=rであり、二点は円周上にある。どちらの点T=T1,T2についても、直角三角形PHTに同じ定理を用いると
PT2=(d−OH)2+HT2=d2−2d⋅OH+r2=d2−r2である。したがってOT2+PT2=d2=OP2であり、三平方の定理の逆よりOT⊥PTである。§A5.6 定理 1.2によりPT1,PT2は接線である。二本が同じ直線ならば、その直線は円周上の相異なる二点T1,T2を含み、接線であることに反する。よって二本は相異なる。
Pから引いた任意の接線の接点をUとする。§A5.6 定理 1.2よりOU⊥PUである。Uから斜辺OPへ下ろした垂線の足をKとすると、Kは線分OPの内部にある。直角三角形OKUとOUPは、直角とOにおける角がそれぞれ等しいので、§A5.1 定理 3.1 (1)により相似である。したがって
OUOK=OPOU,OP⋅OK=OU2=r2である。半直線OP上でOK=OHとなるのでK=Hである。三平方の定理よりHU2=r2−OH2であり、UはT1,T2のいずれかである。各接点における接線は§A5.6 定理 1.2によりただ一本であるので、Pからの接線はこの二本に限られる。直線T1T2はHを通り直線OPに垂直であるので、定理 1.2よりPの極線である。▨
二接点が極線上にあることは、内積を用いて示すこともできます。
証明. 接点T=(x,y)では半径OTと接線PTが垂直なので、
(T−P)⋅T=0である。∣T∣2=r2を代入するとP⋅T=r2、すなわちux+vy=r2となる。二つの接点はいずれもこの直線上にあり、相異なる二点であるので、その接点を結ぶ直線が極線である。▨
4 円周上の極線
系 4.1. 中心O=(0,0)、半径r>0の円Γの周上に点Pをとる。Pの極線はPにおけるΓの接線である。
証明.OP=rであるので、半直線OP上でOP⋅OH=r2を満たす点はH=Pである。定理 1.2より極線はPを通り直線OPに垂直な直線であり、§A5.6 定理 1.2よりPにおける接線である。▨
座標から接線の法線ベクトルを確認することもできます。
証明. 円周上のP=(u,v)ではu2+v2=r2である。点Pはux+vy=r2を満たし、この直線の法線ベクトルは(u,v)である。したがって極線はPを通り半径OPに垂直であり、§A5.6 定理 1.2より接線である。▨
5 有限点と直線の双対
定理 5.1. 中心O=(0,0)、半径r>0の円Γに対し、Oを通らない直線mには、mを極線とする有限点がただ一つ存在する。Oを通る直線には有限の極点は存在しない。
Oと異なる相異なる三点P,Q,Rが、Oを通らない一本の直線上にあることと、三点の極線が一つの有限点を共有することは同値である。三点がOを通る一本の直線上にある場合には、三点の極線は相異なる平行線である。
証明.mがOを通らないとする。Oからmへ下ろした垂線の足をHとすると、H=Oである。半直線OH上にOH⋅OS=r2となる点Sをとる。定理 1.2より、Sの極線はHを通り直線OHに垂直な直線であり、mに一致する。逆にmが点S′の極線であるならば、同じ定理より、Oからmへの垂足Hは半直線OS′上にあり、OS′⋅OH=r2である。したがってS′は半直線OH上の距離r2/OHの点であり、S′=Sである。どの極線も中心からの距離が正であるので、Oを通る直線は極線にならない。
P,Q,RがOを通らない直線m上にあるとし、mの極点をSとする。定理 2.1の相反性より、Sは三点の極線のすべてに属する。逆に三点の極線が有限点Sを共有するならば、極線はOを通らないのでS=Oである。相反性よりP,Q,RはSの極線上にあり、この直線はOを通らない。
O,P,Q,Rが一直線上にあるとする。定理 1.2より、三点の極線はすべて直線OPに垂直である。二本が一致すると、極点の一意性から対応する二点が一致し、三点が相異なることに反する。したがって三本は相異なる平行線である。▨
問題 5.3. 中心O=(0,0)、半径r>0の円Γと、Oと異なる相異なる二点A,Bが与えられている。Γに関する極線がA,Bの両方を通る点Pをすべて求め、その存在条件を示せ。
解答.
求める極線は直線ABに限られる。Oが直線AB上にある場合、定理 5.1より解は存在しない。Oが直線AB上にない場合、Oから直線ABへ下ろした垂線の足をHとする。半直線OH上でOP=r2/OHを満たす点が唯一の解である。定理 1.2より、この点の極線は直線ABである。▨