1 方べきの定理
定義 1.1 (方べき). 中心O、半径r>0の円Γと平面上の点Pに対し、
PowΓ(P):=PO2−r2を、PのΓに対する方べき (power of a point) という。PO>r、PO=r、PO<rであることを、それぞれPがΓの外部にある、Γ上にある、Γの内部にあるという。方べきは、Pが外部にあれば正、Γ上にあれば0、内部にあれば負である。
定義 1.2 (符号つきの長さ). 直線ℓに向きを一つ定め、ℓ上に点Eをとる。ℓ上の点Xに対し、XがEから定めた向きの側にあればx(X)=EX、反対の側にあればx(X)=−EXとし、x(E)=0とする。ℓ上の2点X,Yに対して
XY:=x(Y)−x(X)を、XからYへの符号つきの長さ (signed length) という。
xは、Eを原点とし、定めた向きを正の向きとする数直線としてℓをみたときの目盛りです。したがって、ℓ上の任意の2点X,Yについて∣XY∣=XYが成り立ち、XYはEの選び方によらず、XからYへ進む向きが定めた向きと一致するとき正、逆のとき負になります。また、ℓ上の3点X,Y,ZについてXY+YZ=XZが成り立ちます。
定理 1.3 (割線の方べきの定理). 中心O、半径r>0の円Γと点Pをとり、Pを通る直線ℓがΓと相異なる2点A,Bで交わるとする。ℓにどちらの向きを定めて符号つきの長さをとっても
PAPB=PowΓ(P)が成り立つ。とくに、積PAPBは、Pを通ってΓと相異なる2点で交わる直線の選び方によらない。通常の長さで述べると、次が成り立つ。
- PがΓの外部にあれば、A,BはPを端点とする同じ半直線上にあり、PA⋅PB=PowΓ(P)=PO2−r2である。
- PがΓの内部にあれば、Pは線分AB上にあってA,Bと異なり、PA⋅PB=−PowΓ(P)=r2−PO2である。
- PがΓ上にあれば、PはA,Bのいずれかに一致する。
この図は、(1)と、この節の後半で証明する定理 1.5の内容を一つの配置で示すものであり、証明ではありません。
証明.X=FのときはFX=0であり、Q=FのときはQF=0であるから、どちらの場合も両辺は一致する。X=FかつQ=Fのときは、Qはg上になく、三角形QFXはFにおける角が直角であるから、§A5.4 定理 1.1により等式が成り立つ。▨
定理 1.3の証明は次のとおりです。
証明.Oからℓに下ろした垂線の足をMとする。ただし、Oがℓ上にあるときはM=Oとする。定理 1.4により、ℓ上の任意の点XについてOX2=OM2+MX2が成り立つ。
X=A、X=Bとすると、OA=OB=rであるからMA2=MB2=r2−OM2である。a=MAとおくとMB=aである。a=0ならA=M=Bとなるので、A=Bからa>0である。
ℓに向きを定め、符号つきの長さをとる。∣MA∣=∣MB∣=aであり、MB−MA=ABの絶対値はAB>0であるからMB=MAである。よってMB=−MAであり、
PAPB=(PM+MA)(PM−MA)=PM2−MA2=PM2−a2となる。一方、X=Pとすると
PowΓ(P)=OM2+MP2−r2=MP2−a2である。したがってPAPB=PowΓ(P)である。右辺はPとΓだけで定まるので、この積は直線ℓの選び方によらない。
定理 1.3 (1)を示す。PowΓ(P)>0であるから、PAとPBはどちらも0でなく、同符号である。よってx(A)とx(B)はともにx(P)より大きいか、ともに小さく、A,BはPを端点とする同じ半直線上にある。またPA⋅PB=PAPB=PowΓ(P)である。
定理 1.3 (2)を示す。PowΓ(P)<0であるから、PAとPBは異符号であり、x(P)はx(A)とx(B)の間にある。よってPは線分AB上にあってA,Bと異なり、PA⋅PB=−PAPB=−PowΓ(P)である。
定理 1.3 (3)を示す。PowΓ(P)=0であるからPAPB=0であり、PA=0またはPB=0、すなわちP=AまたはP=Bである。▨
定理 1.5 (接線の方べきの定理). 中心O、半径r>0の円Γと点Pをとり、Pを通る直線tがΓに点Tで接するとする。このとき
PT2=PowΓ(P)=PO2−r2が成り立つ。したがって、Pを通る直線がΓと相異なる2点A,Bで交わるときPT2=PAPBであり、PがΓの外部にあればPT2=PA⋅PBである。また、Pを通る直線t′がΓに点T′で接するならば、PT=PT′である。
証明.§A5.6 定理 1.2によりOT⊥tであり、OT=r>0であるから、TはOからtに下ろした垂線の足である。定理 1.4をt上の点Pに用いるとPO2=OT2+TP2=r2+PT2となり、PT2=PO2−r2を得る。
Pを通る直線がΓと相異なる2点A,Bで交わるとき、定理 1.3によりPAPB=PowΓ(P)=PT2であり、Pが外部にあれば定理 1.3 (1)によりPA⋅PB=PowΓ(P)=PT2である。この定理の最初の等式はt′とT′についても成り立つので、PT′2=PowΓ(P)=PT2であり、長さは負でないのでPT=PT′である。▨
定理 1.6 (方べきの定理とその逆). 相異なる2直線ℓ,ℓ′が点Pで交わるとする。ℓ上にPと異なる相異なる2点A,Bを、ℓ′上にPと異なる相異なる2点C,Dをとり、ℓとℓ′にそれぞれ向きを定めて符号つきの長さをとる。このとき、4点A,B,C,Dが同一円周上にあるための必要十分条件は
PAPB=PCPDである。
証明. 必要性を示す。4点が円Γの上にあるとする。ℓはΓと相異なる2点A,Bで交わり、ℓ′はΓと相異なる2点C,Dで交わるので、定理 1.3によりPAPB=PowΓ(P)=PCPDである。
十分性を示す。PAPB=PCPDとする。ℓとℓ′の共有点はPだけであり、Cはℓ′上のPと異なる点であるから、Cはℓ上にない。よってA,B,Cは一直線上になく、§A5.6 定理 2.1によりA,B,Cを通る円Γが存在する。Γの中心をO、半径をrとする。定理 1.3をℓに用いるとPowΓ(P)=PAPB=PCPDである。
Oからℓ′に下ろした垂線の足をMとする。ただし、Oがℓ′上にあるときはM=Oとする。定理 1.4により、ℓ′上の任意の点XについてOX2=OM2+MX2が成り立つ。X=CとするとMC2=r2−OM2であり、X=PとするとPowΓ(P)=OM2+MP2−r2=MP2−MC2である。u=PM、c=MC、d=MDとおくと、u2=MP2、c2=MC2であり、PC=u+c、PD=u+dであるから
(u+c)(u+d)=PCPD=PowΓ(P)=u2−c2=(u+c)(u−c)である。C=Pよりu+c=PC=0であるからu+d=u−c、すなわちMD=−MCである。よってMD=MCであり、X=DとするとOD2=OM2+MD2=OM2+MC2=r2である。したがってDはΓの上にあり、
4点A,B,C,DはΓの上にある。▨
2 根軸
定義 2.1 (根軸). 中心が相異なる2円Γ1,Γ2に対し、PowΓ1(P)=PowΓ2(P)を満たす点Pの全体を、Γ1とΓ2の根軸 (radical axis) という。
定理 2.2. 相異なる2円Γ1,Γ2の中心と半径を、それぞれO1,r1とO2,r2とする(r1,r2>0)。
- O1=O2ならば、直線O1O2上にO1H2−O2H2=r12−r22を満たす点Hがただ一つ存在し、Γ1とΓ2の根軸は、Hを通り直線O1O2に垂直な直線である。
- O1=O2ならば、PowΓ1(P)=PowΓ2(P)を満たす点Pは存在しない。
証明.(2)を示す。O=O1=O2とおく。Γ1とΓ2は中心が一致する相異なる円であるからr1=r2である。任意の点Pについて
PowΓ1(P)−PowΓ2(P)=(PO2−r12)−(PO2−r22)=r22−r12=0である。
(1)を示す。直線O1O2をmとし、mにO1からO2へ進む向きを定めて符号つきの長さをとる。d=O1O2>0とおくとO1O2=dである。m上の点XについてO2X=O2O1+O1X=O1X−dであるから
O1X2−O2X2=O1X2−(O1X−d)2=2dO1X−d2となる。したがって、m上の点XがO1X2−O2X2=r12−r22を満たすことは
O1X=2dd2+r12−r22と同値である。数直線上でO1からの符号つきの長さがこの値になる点はただ一つであるから、条件を満たすm上の点Hはただ一つ存在する。
任意の点Pをとり、Pからmに下ろした垂線の足をKとする。ただし、Pがm上にあるときはK=Pとする。i=1,2について、定理 1.4をm上の点Oiに用いるとOiP2=OiK2+KP2である。よって
PowΓ1(P)−PowΓ2(P)=(O1K2−O2K2)−(r12−r22)であり、Pが根軸上にあることはO1K2−O2K2=r12−r22と同値である。Kはm上の点であるから、Hの一意性により、この等式はK=Hと同値である。Hを通りmに垂直な直線をnとする。Pがn上にあれば、Pからmに下ろした垂線の足はHである。逆にK=Hなら、P=Hであるか、直線PHがmに垂直であるので、Pはn上にある。よって、Pが根軸上にあることはPがn上にあることと同値であり、根軸はnに一致する。▨
証明 (座標による別証明).(1)を示す。d=O1O2>0とし、O1=(0,0)、O2=(d,0)となる座標をとる。点P=(x,y)について、2点間の距離の公式から
PowΓ1(P)−PowΓ2(P)=(x2+y2−r12)−((x−d)2+y2−r22)=2dx−d2−r12+r22である。h=2dd2+r12−r22とおくと、Pが根軸上にあることはx=hと同値であり、根軸はx軸すなわち直線O1O2に垂直な直線x=hである。x軸上の点(s,0)についてO1とO2までの距離の2乗の差はs2−(s−d)2=2ds−d2であり、この差がr12−r22に等しいのはs=hのときに限る。したがって、根軸とx軸の交点(h,0)がHである。▨
定理 2.3. 相異なる2円Γ1,Γ2が相異なる2点X,Yで交わるとする。このとき、2円の中心は相異なり、Γ1とΓ2の根軸は直線XYである。また、直線XY上にあって線分XY上にない点Pは2円の外部にあり、Pを通る直線がΓ1に点T1で接し、Pを通る直線がΓ2に点T2で接するならば、PT1=PT2である。
証明.XとYはどちらの円の上にもあるので、2円に対する方べきはどちらも0で等しい。したがって定理 2.2 (2)により
2円の中心は相異なり、定理 2.2 (1)により根軸は直線である。根軸は相異なる2点X,Yを含むので、直線XYに一致する。
直線XY上にあって線分XY上にない点Pをとる。X,YはPと異なり、Pを端点とする同じ半直線上にあるので、PXとPYは同符号である。定理 1.3をΓ1と直線XYに用いるとPowΓ1(P)=PXPY=PX⋅PY>0である。Pは根軸上にあるのでPowΓ2(P)=PowΓ1(P)>0であり、Pは2円の外部にある。Pを通る直線がΓ1に点T1で接し、Pを通る直線がΓ2に点T2で接するならば、定理 1.5によりPT12=PX⋅PY=PT22であり、PT1=PT2である。▨
3 演習
問題 3.1. 中心Oの円Γの外部の点Pを通る2本の直線が、Γにそれぞれ相異なる点T,T′で接するとする。直線OPは線分TT′の垂直二等分線であることを証明せよ。
解答.
Pは直線TT′上にない。実際、Pが直線TT′上にあれば、P=Tより直線PTは直線TT′に一致してT′を通る。直線PTがT′を通ることは、直線PTがΓとTだけを共有することと両立しない。
線分TT′の中点をNとし、Nを通って直線TT′に垂直な直線をnとする。定理 1.5によりPT=PT′であり、NT=NT′、辺PNは共通であるから、三角形PNTと三角形PNT′は3辺がそれぞれ等しく、合同である。よって∠PNT=∠PNT′である。NはTとT′の間にあるので、この2角の和は180∘であり、どちらも90∘である。すなわちPN⊥TT′であり、Pはn上にある。
Oもn上にある。O=Nのときは、nがNを通るのでOはn上にある。O=Nのときは、Oは直線TT′上にない。実際、OT=OT′であり、直線TT′上でTとT′から等距離にある点はNだけであるので、Oが直線TT′上にあればO=Nとなる。したがって、OT=OT′、NT=NT′、辺ONが共通であることから、三角形ONTと三角形ONT′は合同であり、∠ONT=∠ONT′である。この2角の和は180∘であるから、どちらも90∘であり、Oはn上にある。
PはΓの外部にあるのでO=Pであり、直線OPはn、すなわち線分TT′の垂直二等分線に一致する。▨
問題 3.2. 中心が相異なる2円Γ1,Γ2と直線tがあり、tはΓ1に点T1で、Γ2に点T2で接し、T1=T2であるとする。線分T1T2の中点NはΓ1とΓ2の根軸上にあることを証明せよ。また、Γ1とΓ2が相異なる2点X,Yで交わるとき、直線XYはNを通ることを証明せよ。
解答.
Nはt上にあり、tはΓ1にT1で接するので、定理 1.5によりNT12=PowΓ1(N)である。同じ定理をtとΓ2に用いるとNT22=PowΓ2(N)である。Nは線分T1T2の中点であるからNT1=NT2であり、PowΓ1(N)=PowΓ2(N)を得る。よってNは根軸上にある。
Γ1とΓ2が相異なる2点X,Yで交わるとき、定理 2.3により根軸は直線XYである。したがって、Nは直線XY上にある。▨
問題 3.3. 中心O1,O2が相異なり、半径がそれぞれr1,r2>0である二円Γ1,Γ2をとる。根軸をnとし、nと直線O1O2の交点をHとする。k=PowΓ1(H)とおく。
n上の任意の点Pについて、二円に対する共通の方べきがHP2+kであることを示せ。この等式を用いて、二円の共有点の個数をkの符号によって分類せよ。さらに、d=O1O2とおき、共有点の個数をd,r1,r2の大小関係によって表せ。
解答.
定理 2.2 (1)により、根軸は直線O1O2に垂直である。定理 1.4により、n上の点Pについて
PowΓ1(P)=O1H2+HP2−r12=HP2+kである。根軸の定義により、Γ2に対する方べきも同じ値である。
二円の共有点は根軸上にあり、両方の方べきが0である。逆に、根軸上で共通の方べきが0である点は両方の円周上にある。したがって共有点は、n上でHP2=−kを満たす点と一致する。
k<0のとき、Hからnの両方向へ距離−kだけ離れた二点が共有点である。k=0のとき、共有点はHだけである。k>0のとき、共有点は存在しない。特に、k>0の場合も根軸自体は存在し、その全体が両円の外部にある。
直線O1O2の向きをO1からO2へ定め、h=O1Hとする。Hにおける方べきが等しいので、h2−r12=(h−d)2−r22であり、
h=2dd2+r12−r22を得る。よって
k=h2−r12=4d2(d2+r12−r22)2−4d2r12=4d2(d2−(r1+r2)2)(d2−(r1−r2)2).d>0かつr1+r2>∣r1−r2∣であるから、k<0となるのは∣r1−r2∣<d<r1+r2の場合に限る。k=0となるのはd=r1+r2またはd=∣r1−r2∣の場合であり、残りの場合はk>0である。したがって、二円は∣r1−r2∣<d<r1+r2なら二点を共有し、d=r1+r2またはd=∣r1−r2∣なら一点を共有する。d>r1+r2または0<d<∣r1−r2∣なら共有点をもたない。半径が等しい場合には、d=∣r1−r2∣=0は中心が相異なるという仮定により除かれている。▨