§A5.6円の接線・接弦定理と、四点が同一円周上にある条件

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三角形には外接円がただ一つ存在しますが、四点を通る円は、一般には存在しません。四点が同じ円の上に並ぶことは、図形に強い制約を課すので、その分だけ、そのような四点が見つかれば多くの角の等式が一度に得られます。たとえば、円に内接する四角形では、向かい合う角の和が一定の値になります。 §A5.5 円周角の定理とその逆 では、円周上の点から弦を見込む角が、弧に対する中心角の半分で決まることを調べました。この見方は、円に接する直線にも広げることができます。円に1点だけで触れる接線と、その接点から出る弦との間にも、円周角と結びつく角の関係があります。さらに、円周角の関係を逆向きにたどれば、角の等式から四点が同一円周上にあることを結論することができます。接線と円周角の関係、および円に内接する四角形の角の条件は、角の計算だけで円の存在や接することを示す標準的な方法として、初等幾何学の証明問題の基礎になります。本記事では、これらの条件を順に解説します。

1 接線と半径

定義 1.1. 円Γ\Gammaと直線ℓ\ellの共有点がただ一つであるとき、ℓ\ellはΓ\Gammaに接する (tangent) といい、ℓ\ellをΓ\Gammaの接線 (tangent line)、その共有点を接点 (point of tangency) という。接点がA\mathrm{A}である接線を、A\mathrm{A}におけるΓ\Gammaの接線という。

定理 1.2. 中心O\mathrm{O}、半径r>0r>0の円Γ\Gammaの周上の点A\mathrm{A}を通る直線ℓ\ellについて、次は同値である。

  1. ℓ\ellはA\mathrm{A}におけるΓ\Gammaの接線である。
  2. OA⊥ℓ\mathrm{OA}\perp\ellである。

とくに、A\mathrm{A}におけるΓ\Gammaの接線はただ一つ存在し、それはA\mathrm{A}を通り直線OA\mathrm{OA}に垂直な直線である。

証明.(2)⇒\Rightarrow(1)を示す。OA⊥ℓ\mathrm{OA}\perp\ellとし、ℓ\ell上のA\mathrm{A}と異なる点X\mathrm{X}をとる。三角形OAX\mathrm{OAX}はA\mathrm{A}を直角の頂点とする直角三角形であるから、§A5.4 定理 1.1により

OX2=OA2+AX2>OA2=r2\mathrm{OX}^2=\mathrm{OA}^2+\mathrm{AX}^2>\mathrm{OA}^2=r^2

である。よってOX>r\mathrm{OX}>rであり、X\mathrm{X}はΓ\Gammaの周上にない。したがってℓ\ellとΓ\Gammaの共有点はA\mathrm{A}だけであり、ℓ\ellはA\mathrm{A}におけるΓ\Gammaの接線である。

(1)⇒\Rightarrow(2)を示す。直線OA\mathrm{OA}とℓ\ellが垂直でないとする。O\mathrm{O}からℓ\ellへ下ろした垂線の足をH\mathrm{H}とする。ただし、O\mathrm{O}がℓ\ell上にあるときはH=O\mathrm{H}=\mathrm{O}とする。直線OA\mathrm{OA}とℓ\ellが垂直でないのでH≠A\mathrm{H}\neq\mathrm{A}である。ℓ\ell上に、H\mathrm{H}が線分AA′\mathrm{AA'}の中点となる点A′\mathrm{A'}をとると、A′≠A\mathrm{A'}\neq\mathrm{A}である。O≠H\mathrm{O}\neq\mathrm{H}のとき、三角形OHA\mathrm{OHA}と三角形OHA′\mathrm{OHA'}は、辺OH\mathrm{OH}を共有し、HA=HA′\mathrm{HA}=\mathrm{HA'}と∠OHA=∠OHA′=90°\angle \mathrm{OHA}=\angle \mathrm{OHA'}=90°を満たすので、2辺とその間の角がそれぞれ等しく、合同である。よってOA′=OA=r\mathrm{OA'}=\mathrm{OA}=rである。O=H\mathrm{O}=\mathrm{H}のときもOA′=HA′=HA=OA=r\mathrm{OA'}=\mathrm{HA'}=\mathrm{HA}=\mathrm{OA}=rである。いずれの場合も、A′\mathrm{A'}はℓ\ellとΓ\Gammaの共有点であってA\mathrm{A}と異なるので、ℓ\ellはA\mathrm{A}におけるΓ\Gammaの接線でない。したがって、ℓ\ellがA\mathrm{A}におけるΓ\Gammaの接線ならばOA⊥ℓ\mathrm{OA}\perp\ellである。

r>0r>0よりO≠A\mathrm{O}\neq\mathrm{A}であるから、A\mathrm{A}を通り直線OA\mathrm{OA}に垂直な直線はただ一つ存在する。A\mathrm{A}におけるΓ\Gammaの接線はA\mathrm{A}を通る直線であり、(1)⇔\Leftrightarrow(2)により、A\mathrm{A}を通る直線がA\mathrm{A}におけるΓ\Gammaの接線であることと、その直線が直線OA\mathrm{OA}に垂直であることは同値である。よって、A\mathrm{A}におけるΓ\Gammaの接線はただ一つ存在し、それはA\mathrm{A}を通り直線OA\mathrm{OA}に垂直な直線である。▨

2 四点が同一円周上にある条件

定理 2.1. 一直線上にない3点A,B,C\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C}に対して、A,B,C\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C}を通る円はただ一つ存在する。

証明. 2点から等距離にある点の全体は、その2点を結ぶ線分の垂直二等分線である。直線AB\mathrm{AB}と直線AC\mathrm{AC}は平行でないので、線分AB\mathrm{AB}の垂直二等分線と線分AC\mathrm{AC}の垂直二等分線も平行でなく、ただ一点O\mathrm{O}を共有する。O\mathrm{O}はA,B,C\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C}から等距離にあり、OA=OB\mathrm{OA}=\mathrm{OB}とA≠B\mathrm{A}\neq\mathrm{B}からOA>0\mathrm{OA}>0であるので、O\mathrm{O}を中心としOA\mathrm{OA}を半径とする円はA,B,C\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C}を通る。逆に、A,B,C\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C}を通る円の中心はA,B,C\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C}から等距離にあるのでO\mathrm{O}であり、その半径はOA\mathrm{OA}である。▨

定理 2.2. 相異なる2点A,B\mathrm{A},\mathrm{B}と、直線AB\mathrm{AB}上にない相異なる2点P,Q\mathrm{P},\mathrm{Q}をとる。次が成り立つ。

  1. P,Q\mathrm{P},\mathrm{Q}が直線AB\mathrm{AB}に関して同じ側にあるとき、4点A,B,P,Q\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{P},\mathrm{Q}が同一円周上にあるための必要十分条件は∠APB=∠AQB\angle \mathrm{APB}=\angle \mathrm{AQB}である。
  2. P,Q\mathrm{P},\mathrm{Q}が直線AB\mathrm{AB}に関して反対側にあるとき、4点A,B,P,Q\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{P},\mathrm{Q}が同一円周上にあるための必要十分条件は∠APB+∠AQB=180°\angle \mathrm{APB}+\angle \mathrm{AQB}=180°である。

証明.(1)は§A5.5 定理 1.1 (2)と同じ主張である。

(2)を示す。

必要性を示す。4点A,B,P,Q\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{P},\mathrm{Q}が円Γ\Gammaの周上にあるとする。Γ\Gammaの周のうちA,B\mathrm{A},\mathrm{B}を除いた部分は、A,B\mathrm{A},\mathrm{B}で分けられる2つの弧からなり、2つの弧は直線AB\mathrm{AB}に関して互いに反対側にある。P\mathrm{P}とQ\mathrm{Q}は直線AB\mathrm{AB}に関して反対側にあるので、異なる弧の上にある。§A5.5 定理 1.1 (1)により、∠APB\angle \mathrm{APB}はP\mathrm{P}を含まない弧、すなわちQ\mathrm{Q}を含む弧に対する中心角の半分に等しく、∠AQB\angle \mathrm{AQB}はP\mathrm{P}を含む弧に対する中心角の半分に等しい。2つの弧を合わせると円周全体になるので、2つの弧に対する中心角の和は360°360°である。よって

∠APB+∠AQB=360°2=180°\angle \mathrm{APB}+\angle \mathrm{AQB}=\frac{360°}{2}=180°

である。

十分性を示す。∠APB+∠AQB=180°\angle \mathrm{APB}+\angle \mathrm{AQB}=180°とする。3点A,B,P\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{P}は一直線上にないので、定理 2.1により、A,B,P\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{P}を通る円Γ\Gammaが存在する。直線AB\mathrm{AB}に関してQ\mathrm{Q}と同じ側にあるΓ\Gammaの弧の上に点E\mathrm{E}をとる。

E\mathrm{E}は直線AB\mathrm{AB}に関してP\mathrm{P}と反対側にあり、4点A,B,P,E\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{P},\mathrm{E}はΓ\Gammaの周上にあるので、必要性により∠APB+∠AEB=180°\angle \mathrm{APB}+\angle \mathrm{AEB}=180°である。この等式と仮定から∠AEB=∠AQB\angle \mathrm{AEB}=\angle \mathrm{AQB}である。E=Q\mathrm{E}=\mathrm{Q}ならば、Q\mathrm{Q}はΓ\Gammaの周上にある。E≠Q\mathrm{E}\neq\mathrm{Q}ならば、E\mathrm{E}とQ\mathrm{Q}は直線AB\mathrm{AB}に関して同じ側にあるので、(1)により、4点A,B,E,Q\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{E},\mathrm{Q}を周上にもつ円Γ′\Gamma'が存在する。Γ\GammaとΓ′\Gamma'はともに一直線上にない3点A,B,E\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{E}を通るので、定理 2.1により一致し、Q\mathrm{Q}はΓ\Gammaの周上にある。いずれの場合も、4点A,B,P,Q\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{P},\mathrm{Q}はΓ\Gammaの周上にある。▨

3 接弦定理

定理 3.1 (接弦定理). 円Γ\Gammaの周上の相異なる3点をA,B,C\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C}とする。A\mathrm{A}を通る直線ℓ\ellと、ℓ\ell上のA\mathrm{A}と異なる点T\mathrm{T}をとり、T\mathrm{T}は直線AB\mathrm{AB}に関してC\mathrm{C}と反対側にあるとする。このとき、ℓ\ellがA\mathrm{A}におけるΓ\Gammaの接線であるための必要十分条件は

∠TAB=∠ACB\angle \mathrm{TAB}=\angle \mathrm{ACB}

である。

この図は、点B\mathrm{B}を動かしたときに接弦定理の主張が成り立っている様子を示すものであり、接弦定理の証明ではありません。

証明.T\mathrm{T}は直線AB\mathrm{AB}上にないので、ℓ\ellと直線AB\mathrm{AB}は相異なる直線であり、共有点はA\mathrm{A}だけである。したがって、ℓ\ell上のA\mathrm{A}と異なる点はどれも直線AB\mathrm{AB}上にない。ℓ\ell上のA\mathrm{A}と異なる点X\mathrm{X}が半直線AT\mathrm{AT}上にあるとき、線分XT\mathrm{XT}はA\mathrm{A}を含まず直線AB\mathrm{AB}と交わらないので、X\mathrm{X}は直線AB\mathrm{AB}に関してT\mathrm{T}と同じ側にある。X\mathrm{X}が半直線AT\mathrm{AT}上にないとき、線分XT\mathrm{XT}はA\mathrm{A}を含むので、X\mathrm{X}は直線AB\mathrm{AB}に関してT\mathrm{T}と反対側にある。

十分性を示す。∠TAB=∠ACB\angle \mathrm{TAB}=\angle \mathrm{ACB}とする。ℓ\ellとΓ\Gammaの共有点X\mathrm{X}でA\mathrm{A}と異なるものが存在すると仮定する。X\mathrm{X}は直線AB\mathrm{AB}上にないので、∠ABX>0°\angle \mathrm{ABX}>0°である。

X\mathrm{X}が半直線AT\mathrm{AT}上にあるとき、∠XAB=∠TAB=∠ACB\angle \mathrm{XAB}=\angle \mathrm{TAB}=\angle \mathrm{ACB}であり、X\mathrm{X}は直線AB\mathrm{AB}に関してC\mathrm{C}と反対側にある。4点A,B,X,C\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{X},\mathrm{C}はΓ\Gammaの周上にあるので、定理 2.2 (2)により∠AXB=180°−∠ACB\angle \mathrm{AXB}=180°-\angle \mathrm{ACB}である。

X\mathrm{X}が半直線AT\mathrm{AT}上にないとき、半直線AX\mathrm{AX}と半直線AT\mathrm{AT}は互いに反対向きであるから∠XAB=180°−∠TAB=180°−∠ACB\angle \mathrm{XAB}=180°-\angle \mathrm{TAB}=180°-\angle \mathrm{ACB}であり、X\mathrm{X}は直線AB\mathrm{AB}に関してC\mathrm{C}と同じ側にある。X=C\mathrm{X}=\mathrm{C}ならば∠AXB=∠ACB\angle \mathrm{AXB}=\angle \mathrm{ACB}である。X≠C\mathrm{X}\neq\mathrm{C}ならば、4点A,B,X,C\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{X},\mathrm{C}はΓ\Gammaの周上にあるので、定理 2.2 (1)により∠AXB=∠ACB\angle \mathrm{AXB}=\angle \mathrm{ACB}である。

どちらの場合も∠XAB+∠AXB=180°\angle \mathrm{XAB}+\angle \mathrm{AXB}=180°であり、三角形ABX\mathrm{ABX}の内角の和は180°180°であるから∠ABX=0°\angle \mathrm{ABX}=0°となる。この等式は∠ABX>0°\angle \mathrm{ABX}>0°と両立しない。したがって、ℓ\ellとΓ\Gammaの共有点でA\mathrm{A}と異なるものは存在せず、ℓ\ellはA\mathrm{A}におけるΓ\Gammaの接線である。

必要性を示す。ℓ\ellがA\mathrm{A}におけるΓ\Gammaの接線であるとする。C\mathrm{C}は直線AB\mathrm{AB}上にないので0°<∠ACB<180°0°<\angle \mathrm{ACB}<180°であり、直線AB\mathrm{AB}に関してT\mathrm{T}と同じ側に、∠SAB=∠ACB\angle \mathrm{SAB}=\angle \mathrm{ACB}を満たす点S\mathrm{S}が存在する。S\mathrm{S}は直線AB\mathrm{AB}に関してC\mathrm{C}と反対側にあるので、直線AS\mathrm{AS}と点S\mathrm{S}に十分性を適用すると、直線AS\mathrm{AS}はA\mathrm{A}におけるΓ\Gammaの接線である。定理 1.2によりA\mathrm{A}におけるΓ\Gammaの接線はただ一つであるから、直線AS\mathrm{AS}はℓ\ellと一致する。S\mathrm{S}はℓ\ell上のA\mathrm{A}と異なる点であり、直線AB\mathrm{AB}に関してT\mathrm{T}と同じ側にあるので、半直線AT\mathrm{AT}上にある。よって∠TAB=∠SAB=∠ACB\angle \mathrm{TAB}=\angle \mathrm{SAB}=\angle \mathrm{ACB}である。

これで定理 3.1は示された。▨

注意 3.2.定理 3.1から、T\mathrm{T}が直線AB\mathrm{AB}に関してC\mathrm{C}と反対側にあるという仮定を除くと、ℓ\ellが接線であっても∠TAB=∠ACB\angle \mathrm{TAB}=\angle \mathrm{ACB}は一般には成り立たない。Γ\Gammaの中心をO\mathrm{O}とし、ℓ\ellをA\mathrm{A}におけるΓ\Gammaの接線とし、ℓ\ell上の点T\mathrm{T}を直線AB\mathrm{AB}に関してC\mathrm{C}と同じ側にとる。T\mathrm{T}は直線AB\mathrm{AB}上にないので、ℓ\ellと直線AB\mathrm{AB}の共有点はA\mathrm{A}だけである。ℓ\ell上の点T′\mathrm{T'}を、A\mathrm{A}が線分TT′\mathrm{TT'}の内部にあるようにとると、T′\mathrm{T'}は直線AB\mathrm{AB}に関してT\mathrm{T}と反対側、すなわちC\mathrm{C}と反対側にある。定理 3.1により∠T′AB=∠ACB\angle \mathrm{T'AB}=\angle \mathrm{ACB}であり、半直線AT\mathrm{AT}と半直線AT′\mathrm{AT'}は互いに反対向きであるから

∠TAB=180°−∠ACB\angle \mathrm{TAB}=180°-\angle \mathrm{ACB}

である。よって、この配置で∠TAB=∠ACB\angle \mathrm{TAB}=\angle \mathrm{ACB}が成り立つのは∠ACB=90°\angle \mathrm{ACB}=90°のときに限る。∠ACB=90°\angle \mathrm{ACB}=90°ならば∠T′AB=90°\angle \mathrm{T'AB}=90°であり、直線AB\mathrm{AB}と直線OA\mathrm{OA}はともにA\mathrm{A}を通ってℓ\ellに垂直である(定理 1.2)から一致する。このときO\mathrm{O}は直線AB\mathrm{AB}上にあってOA=OB\mathrm{OA}=\mathrm{OB}を満たすので線分AB\mathrm{AB}の中点であり、AB\mathrm{AB}はΓ\Gammaの直径である。したがって、AB\mathrm{AB}がΓ\Gammaの直径でなければ∠TAB≠∠ACB\angle \mathrm{TAB}\neq\angle \mathrm{ACB}である。

4 円に内接する四角形

定義 4.1. どの3点も一直線上にない4点A,B,C,D\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C},\mathrm{D}について、線分AC\mathrm{AC}と線分BD\mathrm{BD}が共有点をもつとき、四角形ABCD\mathrm{ABCD}を凸四角形 (convex quadrilateral) という。四角形の4頂点がすべて一つの円の周上にあるとき、四角形はその円に内接する (inscribed in a circle) という。

定理 4.2. 凸四角形ABCD\mathrm{ABCD}について、次は同値である。

  1. 四角形ABCD\mathrm{ABCD}は円に内接する。
  2. ∠ABC+∠CDA=180°\angle \mathrm{ABC}+\angle \mathrm{CDA}=180°である。
  3. ∠DAB+∠BCD=180°\angle \mathrm{DAB}+\angle \mathrm{BCD}=180°である。

証明. 線分AC\mathrm{AC}と線分BD\mathrm{BD}の共有点をX\mathrm{X}とする。X\mathrm{X}は直線AC\mathrm{AC}上にあって線分BD\mathrm{BD}上にあり、B,D\mathrm{B},\mathrm{D}は直線AC\mathrm{AC}上にないので、B\mathrm{B}とD\mathrm{D}は直線AC\mathrm{AC}に関して反対側にある。定理 2.2 (2)を2点A,C\mathrm{A},\mathrm{C}と2点B,D\mathrm{B},\mathrm{D}に適用すると、(1)⇔\Leftrightarrow(2)を得る。

同様に、X\mathrm{X}は直線BD\mathrm{BD}上にあって線分AC\mathrm{AC}上にあり、A,C\mathrm{A},\mathrm{C}は直線BD\mathrm{BD}上にないので、A\mathrm{A}とC\mathrm{C}は直線BD\mathrm{BD}に関して反対側にある。定理 2.2 (2)を2点B,D\mathrm{B},\mathrm{D}と2点A,C\mathrm{A},\mathrm{C}に適用すると、(1)⇔\Leftrightarrow(3)を得る。▨

例 4.3. 正三角形ABC\mathrm{ABC}をとり、直線AC\mathrm{AC}に関してB\mathrm{B}と同じ側に、∠DAC=∠DCA=30°\angle \mathrm{DAC}=\angle \mathrm{DCA}=30°を満たす点D\mathrm{D}をとる。三角形ADC\mathrm{ADC}の内角の和から∠ADC=120°\angle \mathrm{ADC}=120°であり、

∠ABC+∠CDA=60°+120°=180°\angle \mathrm{ABC}+\angle \mathrm{CDA}=60°+120°=180°

である。

4点A,B,C,D\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C},\mathrm{D}のどの3点も一直線上にない。実際、D\mathrm{D}は直線AC\mathrm{AC}上にない。直線AC\mathrm{AC}に関してB\mathrm{B}と同じ側にある点のうち、直線AB\mathrm{AB}上にある点は半直線AB\mathrm{AB}上にあり、直線CB\mathrm{CB}上にある点は半直線CB\mathrm{CB}上にある。D\mathrm{D}が直線AB\mathrm{AB}上にあるとすると∠DAC=∠BAC=60°\angle \mathrm{DAC}=\angle \mathrm{BAC}=60°となり、∠DAC=30°\angle \mathrm{DAC}=30°と両立しない。D\mathrm{D}が直線CB\mathrm{CB}上にあるとすると∠DCA=∠BCA=60°\angle \mathrm{DCA}=\angle \mathrm{BCA}=60°となり、∠DCA=30°\angle \mathrm{DCA}=30°と両立しない。よってD\mathrm{D}は直線AB\mathrm{AB}上にも直線CB\mathrm{CB}上にもない。B\mathrm{B}とD\mathrm{D}は直線AC\mathrm{AC}に関して同じ側にあるので、線分BD\mathrm{BD}は線分AC\mathrm{AC}と共有点をもたず、四角形ABCD\mathrm{ABCD}は凸四角形でない。

B\mathrm{B}とD\mathrm{D}は直線AC\mathrm{AC}に関して同じ側にあり、∠ABC=60°\angle \mathrm{ABC}=60°と∠ADC=120°\angle \mathrm{ADC}=120°は等しくないので、定理 2.2 (1)により、4点A,B,C,D\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C},\mathrm{D}は同一円周上にない。すなわち、四角形ABCD\mathrm{ABCD}は∠ABC+∠CDA=180°\angle \mathrm{ABC}+\angle \mathrm{CDA}=180°を満たすが、円に内接しない。

D\mathrm{D}とB\mathrm{B}は直線AC\mathrm{AC}に関して同じ側にあり、∠DAC<∠BAC\angle \mathrm{DAC}<\angle \mathrm{BAC}かつ∠DCA<∠BCA\angle \mathrm{DCA}<\angle \mathrm{BCA}であるから、∠DAB=∠BAC−∠DAC=30°\angle \mathrm{DAB}=\angle \mathrm{BAC}-\angle \mathrm{DAC}=30°と∠BCD=∠BCA−∠DCA=30°\angle \mathrm{BCD}=\angle \mathrm{BCA}-\angle \mathrm{DCA}=30°が成り立つ。よって∠DAB+∠BCD=60°≠180°\angle \mathrm{DAB}+\angle \mathrm{BCD}=60°\neq180°である。

したがって、定理 4.2から凸四角形であるという仮定を除くと、定理 4.2 (2)⇒\Rightarrow(1)と定理 4.2 (2)⇒\Rightarrow(3)はどちらも成り立たない。

5 演習

問題 5.1. 三角形ABC\mathrm{ABC}の3頂点が円Γ\Gammaの周上にあるとし、ℓ\ellをA\mathrm{A}におけるΓ\Gammaの接線とする。線分AB\mathrm{AB}上の点D\mathrm{D}と線分AC\mathrm{AC}上の点E\mathrm{E}を、どちらも線分の端点と異なり、直線DE\mathrm{DE}がℓ\ellと平行になるようにとる。4点B,C,E,D\mathrm{B},\mathrm{C},\mathrm{E},\mathrm{D}が同一円周上にあることを証明せよ。

解答.

ℓ\ell上の点T\mathrm{T}を、直線AB\mathrm{AB}に関してC\mathrm{C}と反対側にとる。B\mathrm{B}は接線ℓ\ell上にないので、ℓ\ellは直線AB\mathrm{AB}とA\mathrm{A}で交わり、このような点T\mathrm{T}が存在する。定理 3.1により

∠TAB=∠ACB\angle \mathrm{TAB}=\angle \mathrm{ACB}

である。E\mathrm{E}とC\mathrm{C}は直線AB\mathrm{AB}に関して同じ側にあるので、E\mathrm{E}とT\mathrm{T}は反対側にある。DE∥ℓ\mathrm{DE}\parallel\ellより、錯角について∠EDA=∠TAD\angle \mathrm{EDA}=\angle \mathrm{TAD}である。D\mathrm{D}は辺AB\mathrm{AB}の内部、E\mathrm{E}は辺AC\mathrm{AC}の内部にあるから

∠EDA=∠TAD=∠TAB=∠ACB=∠BCE.\angle \mathrm{EDA}=\angle \mathrm{TAD}=\angle \mathrm{TAB} =\angle \mathrm{ACB}=\angle \mathrm{BCE}.

半直線DA\mathrm{DA}とDB\mathrm{DB}は互いに反対向きなので、∠BDE+∠BCE=180°\angle \mathrm{BDE}+\angle \mathrm{BCE}=180°である。

直線BE\mathrm{BE}は辺AC\mathrm{AC}の内部の点E\mathrm{E}を通るので、A\mathrm{A}とC\mathrm{C}は直線BE\mathrm{BE}に関して反対側にある。線分AD\mathrm{AD}は直線BE\mathrm{BE}と直線AB\mathrm{AB}の交点B\mathrm{B}を含まないので、D\mathrm{D}とA\mathrm{A}は直線BE\mathrm{BE}に関して同じ側にある。したがって、D\mathrm{D}とC\mathrm{C}は直線BE\mathrm{BE}に関して反対側にある。定理 2.2 (2)により、4点B,E,D,C\mathrm{B},\mathrm{E},\mathrm{D},\mathrm{C}は同一円周上にある。▨

問題 5.2. 三角形ABC\mathrm{ABC}の辺BC\mathrm{BC}上の点D\mathrm{D}が、B,C\mathrm{B},\mathrm{C}と異なり、∠BAD=∠ACB\angle \mathrm{BAD}=\angle \mathrm{ACB}を満たすとする。3点A,D,C\mathrm{A},\mathrm{D},\mathrm{C}を通る円をΓ\Gammaとするとき、直線AB\mathrm{AB}はA\mathrm{A}におけるΓ\Gammaの接線であることを証明せよ。

解答.

A\mathrm{A}は直線BC\mathrm{BC}上になく、D\mathrm{D}は辺BC\mathrm{BC}の内部にあるので、3点A,D,C\mathrm{A},\mathrm{D},\mathrm{C}は一直線上にない。定理 2.1により、3点を通る円Γ\Gammaはただ一つ存在する。

直線AD\mathrm{AD}は線分BC\mathrm{BC}の内部の点D\mathrm{D}で直線BC\mathrm{BC}と交わるので、B\mathrm{B}とC\mathrm{C}は直線AD\mathrm{AD}に関して反対側にある。半直線CD\mathrm{CD}とCB\mathrm{CB}は一致するから、仮定より

∠ACD=∠ACB=∠BAD\angle \mathrm{ACD}=\angle \mathrm{ACB}=\angle \mathrm{BAD}

である。定理 3.1を円周上の3点A,D,C\mathrm{A},\mathrm{D},\mathrm{C}と直線AB\mathrm{AB}上の点B\mathrm{B}に適用すると、直線AB\mathrm{AB}はA\mathrm{A}におけるΓ\Gammaの接線である。▨

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