1 接線と半径
定義 1.1. 円Γと直線ℓの共有点がただ一つであるとき、ℓはΓに接する (tangent) といい、ℓをΓの接線 (tangent line)、その共有点を接点 (point of tangency) という。接点がAである接線を、AにおけるΓの接線という。
定理 1.2. 中心O、半径r>0の円Γの周上の点Aを通る直線ℓについて、次は同値である。
- ℓはAにおけるΓの接線である。
- OA⊥ℓである。
とくに、AにおけるΓの接線はただ一つ存在し、それはAを通り直線OAに垂直な直線である。
証明.(2)⇒(1)を示す。OA⊥ℓとし、ℓ上のAと異なる点Xをとる。三角形OAXはAを直角の頂点とする直角三角形であるから、§A5.4 定理 1.1により
OX2=OA2+AX2>OA2=r2である。よってOX>rであり、XはΓの周上にない。したがってℓとΓの共有点はAだけであり、ℓはAにおけるΓの接線である。
(1)⇒(2)を示す。直線OAとℓが垂直でないとする。Oからℓへ下ろした垂線の足をHとする。ただし、Oがℓ上にあるときはH=Oとする。直線OAとℓが垂直でないのでH=Aである。ℓ上に、Hが線分AA′の中点となる点A′をとると、A′=Aである。O=Hのとき、三角形OHAと三角形OHA′は、辺OHを共有し、HA=HA′と∠OHA=∠OHA′=90°を満たすので、2辺とその間の角がそれぞれ等しく、合同である。よってOA′=OA=rである。O=HのときもOA′=HA′=HA=OA=rである。いずれの場合も、A′はℓとΓの共有点であってAと異なるので、ℓはAにおけるΓの接線でない。したがって、ℓがAにおけるΓの接線ならばOA⊥ℓである。
r>0よりO=Aであるから、Aを通り直線OAに垂直な直線はただ一つ存在する。AにおけるΓの接線はAを通る直線であり、(1)⇔(2)により、Aを通る直線がAにおけるΓの接線であることと、その直線が直線OAに垂直であることは同値である。よって、AにおけるΓの接線はただ一つ存在し、それはAを通り直線OAに垂直な直線である。▨
2 四点が同一円周上にある条件
定理 2.1. 一直線上にない3点A,B,Cに対して、A,B,Cを通る円はただ一つ存在する。
証明. 2点から等距離にある点の全体は、その2点を結ぶ線分の垂直二等分線である。直線ABと直線ACは平行でないので、線分ABの垂直二等分線と線分ACの垂直二等分線も平行でなく、ただ一点Oを共有する。OはA,B,Cから等距離にあり、OA=OBとA=BからOA>0であるので、Oを中心としOAを半径とする円はA,B,Cを通る。逆に、A,B,Cを通る円の中心はA,B,Cから等距離にあるのでOであり、その半径はOAである。▨
定理 2.2. 相異なる2点A,Bと、直線AB上にない相異なる2点P,Qをとる。次が成り立つ。
- P,Qが直線ABに関して同じ側にあるとき、4点A,B,P,Qが同一円周上にあるための必要十分条件は∠APB=∠AQBである。
- P,Qが直線ABに関して反対側にあるとき、4点A,B,P,Qが同一円周上にあるための必要十分条件は∠APB+∠AQB=180°である。
証明.(1)は§A5.5 定理 1.1 (2)と同じ主張である。
(2)を示す。
必要性を示す。4点A,B,P,Qが円Γの周上にあるとする。Γの周のうちA,Bを除いた部分は、A,Bで分けられる2つの弧からなり、2つの弧は直線ABに関して互いに反対側にある。PとQは直線ABに関して反対側にあるので、異なる弧の上にある。§A5.5 定理 1.1 (1)により、∠APBはPを含まない弧、すなわちQを含む弧に対する中心角の半分に等しく、∠AQBはPを含む弧に対する中心角の半分に等しい。2つの弧を合わせると円周全体になるので、2つの弧に対する中心角の和は360°である。よって
∠APB+∠AQB=2360°=180°である。
十分性を示す。∠APB+∠AQB=180°とする。3点A,B,Pは一直線上にないので、定理 2.1により、A,B,Pを通る円Γが存在する。直線ABに関してQと同じ側にあるΓの弧の上に点Eをとる。
Eは直線ABに関してPと反対側にあり、4点A,B,P,EはΓの周上にあるので、必要性により∠APB+∠AEB=180°である。この等式と仮定から∠AEB=∠AQBである。E=Qならば、QはΓの周上にある。E=Qならば、EとQは直線ABに関して同じ側にあるので、(1)により、4点A,B,E,Qを周上にもつ円Γ′が存在する。ΓとΓ′はともに一直線上にない3点A,B,Eを通るので、定理 2.1により一致し、QはΓの周上にある。いずれの場合も、4点A,B,P,QはΓの周上にある。▨
3 接弦定理
定理 3.1 (接弦定理). 円Γの周上の相異なる3点をA,B,Cとする。Aを通る直線ℓと、ℓ上のAと異なる点Tをとり、Tは直線ABに関してCと反対側にあるとする。このとき、ℓがAにおけるΓの接線であるための必要十分条件は
∠TAB=∠ACBである。
この図は、点Bを動かしたときに接弦定理の主張が成り立っている様子を示すものであり、接弦定理の証明ではありません。
証明.Tは直線AB上にないので、ℓと直線ABは相異なる直線であり、共有点はAだけである。したがって、ℓ上のAと異なる点はどれも直線AB上にない。ℓ上のAと異なる点Xが半直線AT上にあるとき、線分XTはAを含まず直線ABと交わらないので、Xは直線ABに関してTと同じ側にある。Xが半直線AT上にないとき、線分XTはAを含むので、Xは直線ABに関してTと反対側にある。
十分性を示す。∠TAB=∠ACBとする。ℓとΓの共有点XでAと異なるものが存在すると仮定する。Xは直線AB上にないので、∠ABX>0°である。
Xが半直線AT上にあるとき、∠XAB=∠TAB=∠ACBであり、Xは直線ABに関してCと反対側にある。4点A,B,X,CはΓの周上にあるので、定理 2.2 (2)により∠AXB=180°−∠ACBである。
Xが半直線AT上にないとき、半直線AXと半直線ATは互いに反対向きであるから∠XAB=180°−∠TAB=180°−∠ACBであり、Xは直線ABに関してCと同じ側にある。X=Cならば∠AXB=∠ACBである。X=Cならば、4点A,B,X,CはΓの周上にあるので、定理 2.2 (1)により∠AXB=∠ACBである。
どちらの場合も∠XAB+∠AXB=180°であり、三角形ABXの内角の和は180°であるから∠ABX=0°となる。この等式は∠ABX>0°と両立しない。したがって、ℓとΓの共有点でAと異なるものは存在せず、ℓはAにおけるΓの接線である。
必要性を示す。ℓがAにおけるΓの接線であるとする。Cは直線AB上にないので0°<∠ACB<180°であり、直線ABに関してTと同じ側に、∠SAB=∠ACBを満たす点Sが存在する。Sは直線ABに関してCと反対側にあるので、直線ASと点Sに十分性を適用すると、直線ASはAにおけるΓの接線である。定理 1.2によりAにおけるΓの接線はただ一つであるから、直線ASはℓと一致する。Sはℓ上のAと異なる点であり、直線ABに関してTと同じ側にあるので、半直線AT上にある。よって∠TAB=∠SAB=∠ACBである。
これで定理 3.1は示された。▨
4 円に内接する四角形
定義 4.1. どの3点も一直線上にない4点A,B,C,Dについて、線分ACと線分BDが共有点をもつとき、四角形ABCDを凸四角形 (convex quadrilateral) という。四角形の4頂点がすべて一つの円の周上にあるとき、四角形はその円に内接する (inscribed in a circle) という。
定理 4.2. 凸四角形ABCDについて、次は同値である。
- 四角形ABCDは円に内接する。
- ∠ABC+∠CDA=180°である。
- ∠DAB+∠BCD=180°である。
証明. 線分ACと線分BDの共有点をXとする。Xは直線AC上にあって線分BD上にあり、B,Dは直線AC上にないので、BとDは直線ACに関して反対側にある。定理 2.2 (2)を2点A,Cと2点B,Dに適用すると、(1)⇔(2)を得る。
同様に、Xは直線BD上にあって線分AC上にあり、A,Cは直線BD上にないので、AとCは直線BDに関して反対側にある。定理 2.2 (2)を2点B,Dと2点A,Cに適用すると、(1)⇔(3)を得る。▨
例 4.3. 正三角形ABCをとり、直線ACに関してBと同じ側に、∠DAC=∠DCA=30°を満たす点Dをとる。三角形ADCの内角の和から∠ADC=120°であり、
∠ABC+∠CDA=60°+120°=180°である。
4点A,B,C,Dのどの3点も一直線上にない。実際、Dは直線AC上にない。直線ACに関してBと同じ側にある点のうち、直線AB上にある点は半直線AB上にあり、直線CB上にある点は半直線CB上にある。Dが直線AB上にあるとすると∠DAC=∠BAC=60°となり、∠DAC=30°と両立しない。Dが直線CB上にあるとすると∠DCA=∠BCA=60°となり、∠DCA=30°と両立しない。よってDは直線AB上にも直線CB上にもない。BとDは直線ACに関して同じ側にあるので、線分BDは線分ACと共有点をもたず、四角形ABCDは凸四角形でない。
BとDは直線ACに関して同じ側にあり、∠ABC=60°と∠ADC=120°は等しくないので、定理 2.2 (1)により、4点A,B,C,Dは同一円周上にない。すなわち、四角形ABCDは∠ABC+∠CDA=180°を満たすが、円に内接しない。
DとBは直線ACに関して同じ側にあり、∠DAC<∠BACかつ∠DCA<∠BCAであるから、∠DAB=∠BAC−∠DAC=30°と∠BCD=∠BCA−∠DCA=30°が成り立つ。よって∠DAB+∠BCD=60°=180°である。
したがって、定理 4.2から凸四角形であるという仮定を除くと、定理 4.2 (2)⇒(1)と定理 4.2 (2)⇒(3)はどちらも成り立たない。
5 演習
問題 5.1. 三角形ABCの3頂点が円Γの周上にあるとし、ℓをAにおけるΓの接線とする。線分AB上の点Dと線分AC上の点Eを、どちらも線分の端点と異なり、直線DEがℓと平行になるようにとる。4点B,C,E,Dが同一円周上にあることを証明せよ。
解答.
ℓ上の点Tを、直線ABに関してCと反対側にとる。Bは接線ℓ上にないので、ℓは直線ABとAで交わり、このような点Tが存在する。定理 3.1により
∠TAB=∠ACBである。EとCは直線ABに関して同じ側にあるので、EとTは反対側にある。DE∥ℓより、錯角について∠EDA=∠TADである。Dは辺ABの内部、Eは辺ACの内部にあるから
∠EDA=∠TAD=∠TAB=∠ACB=∠BCE.半直線DAとDBは互いに反対向きなので、∠BDE+∠BCE=180°である。
直線BEは辺ACの内部の点Eを通るので、AとCは直線BEに関して反対側にある。線分ADは直線BEと直線ABの交点Bを含まないので、DとAは直線BEに関して同じ側にある。したがって、DとCは直線BEに関して反対側にある。定理 2.2 (2)により、4点B,E,D,Cは同一円周上にある。▨
問題 5.2. 三角形ABCの辺BC上の点Dが、B,Cと異なり、∠BAD=∠ACBを満たすとする。3点A,D,Cを通る円をΓとするとき、直線ABはAにおけるΓの接線であることを証明せよ。
解答.
Aは直線BC上になく、Dは辺BCの内部にあるので、3点A,D,Cは一直線上にない。定理 2.1により、3点を通る円Γはただ一つ存在する。
直線ADは線分BCの内部の点Dで直線BCと交わるので、BとCは直線ADに関して反対側にある。半直線CDとCBは一致するから、仮定より
∠ACD=∠ACB=∠BADである。定理 3.1を円周上の3点A,D,Cと直線AB上の点Bに適用すると、直線ABはAにおけるΓの接線である。▨