1 法の選択
法を選ぶ際には、累乗の周期や平方数の余りを用いて、場合分けを減らすことを考えます。
- 累乗が消える法。pが素数でp∤aならap−1≡1(modp)です。§A4.7 定理 1.1により指数をp−1ごとに整理することができます。
- 余りの種類が少ない法。 平方数の余りは、法4では0,1、法8では0,1,4、法3では0,1だけです。「平方数である」という条件を少数の場合分けに置き換えることができます。
- 互いに素な法へ分解する。 「30で割り切れる」は「2、3、5のそれぞれで割り切れる」と同値です。合成数を互いに素な因子に分け、それぞれを法とする整除の条件を調べます。
例 1.1. 任意の整数nについて30∣n5−nである。
証明.30=2⋅3⋅5と分解し、pを2,3,5のいずれかとする。p∣nならp∣n5−nである。p∤nなら、§A4.7 定理 1.1によりnp−1≡1(modp)である。いずれのpについてもp−1∣4なので、n4≡1(modp)であり、p∣n(n4−1)=n5−nとなる。
2,3,5はどの二つも互いに素であるから、30∣n5−nである。▨
法30で余りを直接列挙する方法では、30通りの余りを調べます。素数2,3,5に分けると、p−1が4を割り切るという共通の条件によって、同じ小定理を用いることができます。
例 1.2. 任意の整数xに対してx2≡0または1(mod4)であり、x2≡2(mod4)とはならない。
証明.xが偶数なら、整数kを用いてx=2kと書くことができるのでx2=4k2≡0(mod4)である。xが奇数なら、整数kを用いてx=2k+1と書くことができるので
x2=4k(k+1)+1≡1(mod4)である。▨
この判定は、方程式を満たす整数の偶奇を定めるために使うことができます。偶奇を定めた後で、素因数の指数や無限降下の議論へ進みます。
例 1.3.p>3を素数とすると、p2≡1(mod24)である。
証明.pは奇数なので、整数kを用いてp=2k+1と書くことができ、p2−1=4k(k+1)である。k(k+1)は連続する二整数の積なので偶数であり、8∣p2−1、すなわちp2≡1(mod8)である。
また、p>3は素数なので3∤pである。したがってp≡±1(mod3)であり、p2≡1(mod3)である。8と3は互いに素であり、8∣p2−1と3∣p2−1がともに成り立つので、24∣p2−1である。よってp2≡1(mod24)である。▨
法24を直接扱えば、pの余りを一つずつ調べることになります。法8と法3に分けると、奇数であることと3の倍数でないことを別々に利用することができます。
2 素因数の指数の選択
平方数や累乗を含む積では、素因数の指数を比べることによって、各因子の形を定めることができます。
定義 2.1.pを素数、nを正整数とする。pe∣nを満たす非負整数eの最大値をvp(n)と書き、nの素因数分解における pの指数 (exponent of a prime) という。
命題 2.2. 正整数a,bと素数pについて、vp(ab)=vp(a)+vp(b)が成り立つ。また、正整数nが平方数であるための必要十分条件は、すべての素数pについてvp(n)が偶数であることである。
証明.aとbの素因数分解を掛け合わせると、素数pの指数はvp(a)+vp(b)となる。§A4.2 定理 2.2の一意性から、vp(ab)=vp(a)+vp(b)である。
正整数cによりn=c2と書くことができるなら、すべての素数pについてvp(n)=2vp(c)は偶数である。逆に、すべての素数の指数が偶数であるとする。n=1ならn=12である。n>1の場合には、nの素因数分解に現れる相異なる素数をp1,…,pkとすると、正整数e1,…,ekを用いてn=p12e1⋯pk2ek=(p1e1⋯pkek)2と書くことができる。したがってnは平方数である。▨
補題 2.3. 互いに素な正整数u,vの積uvが平方数なら、uとvはそれぞれ平方数である。
証明. 素数pを任意に取る。uとvは互いに素なので、vp(u)とvp(v)の少なくとも一方は0である。一方、uvは平方数であるから
vp(u)+vp(v)=vp(uv)は偶数である。したがってvp(u)とvp(v)はともに偶数である。これはすべての素数pで成り立つので、uとvはそれぞれ平方数である。▨
3 降下で比較する量
§A4.9 命題 1.1により、任意の解から、比較する正整数値がより小さい解を作ることができれば、解は存在しません。最小の解を用いる場合には、どの正整数値を最小にするかを定めます。
標準形は次のとおりです。
- 正整数解があると仮定する。
- その中でzなどの正整数値が最小となる解を選ぶ。
- 偶奇、最大公約数、合同式から構造を定める。
- 同じ条件を満たし、選んだ値がより小さい正整数解を構成する。
- 最小性に反することを示す。
新しく構成した組について、各成分が正整数であること、元と同じ方程式を満たすこと、比較する値が真に小さいことを確かめます。斜辺、最大の変数、分母、補助変数など、方程式に応じて比較する正整数値を選びます。
例 3.1. 方程式x2=2y2は正整数解をもたない。したがって、2は無理数である。
証明.x2=2y2を満たす正整数解が存在すると仮定し、その中からxが最小となる解(x,y)を取る。x2は偶数なのでxは偶数であり、正整数u=x/2を用いてx=2uと書くことができる。すると
4u2=2y2,y2=2u2
となる。したがって、(y,u)はY2=2U2を満たす正整数の組であり、元と同じ方程式の解である。またx2=2y2>y2でx,y>0だからy<xである。新しい解(y,u)の第一成分は元の解の第一成分より小さく、xの最小性に反する。よって正整数解は存在しない。
もし2=x/yと正整数x,yを用いて表すことができたならx2=2y2となるので、2は無理数である。この証明では分数を既約にする操作を用いず、正整数解の最小性だけを用いている。▨
4 方程式x4+y4=z2への適用
不定方程式を扱うときには、合同式で偶奇と余りを絞り、残った積から素因数の指数を読み、最後に最小性を用いて降下させることがあります。次の例では、三つの判断が順に現れます。
例 4.1. 方程式x4+y4=z2は正整数解をもたない。
証明.x4+y4=z2を満たす正整数解が存在すると仮定し、その中からzが最小となる解(x,y,z)を取る。
素数pがxとyの両方を割ると仮定する。このときp4∣z2であるから、素因数の指数を比較するとp2∣zである。したがって(x/p,y/p,z/p2)は正整数の組であり、
(px)4+(py)4=(p2z)2を満たす。さらにz/p2<zであり、zの最小性に反する。よってgcd(x,y)=1である。
(x2)2+(y2)2=z2は、gcd(x2,y2)=1を満たすピタゴラス数である。x,yは両方偶数ではない。両方奇数ならz2≡1+1≡2(mod4)となり、例 1.2に反する。よってx,yの一方だけが偶数である。必要ならx,yを入れ替え、xを偶数、yを奇数とする。
§A4.10 補題 2.2より、互いに素で偶奇の異なる正整数m>n>0があって
x2=2mn,y2=m2−n2,z=m2+n2
と書くことができる。mが偶数でnが奇数ならm2−n2≡3(mod4)となるが、yは奇数なのでy2≡1(mod4)である。したがってmは奇数で、nは偶数である。
nは偶数なので、正整数wを用いてn=2wと書く。x2=2mn=4mwより
(2x)2=mw
である。w∣nとgcd(m,n)=1からgcd(m,w)=1である。補題 2.3を適用するとmとwはそれぞれ平方数である。したがって、正整数u,vを用いて
m=u2,n=2v2
と書くことができる。mは奇数なのでuも奇数である。gcd(m,n)=1とm=u2,n=2v2からgcd(u,v)=1である。m>nよりu2−2v2>0である。m=u2,n=2v2をy2=m2−n2へ代入すると
y2=u4−4v4=(u2−2v2)(u2+2v2)
となる。二つの因子はともに奇数である。二つの因子を割る素数dがあると仮定すると、dは和2u2と差4v2を割る。dは奇数なのでd∣u2かつd∣v2である。§A4.2 補題 2.1により、dはu,vをともに割る。これはgcd(u,v)=1に反する。よって二つの因子は互いに素である。積は平方数y2なので、補題 2.3により、正整数r,sを用いて
u2−2v2=r2,u2+2v2=s2
と書くことができる。r2とs2は互いに素なので、rとsも互いに素である。uが奇数なのでr,sはともに奇数である。またs>r>0である。差を取ると
s2−r2=4v2
である。s+rとs−rはともに正の偶数なので
2s+r⋅2s−r=v2
が成り立つ。
さらに(s+r)/2と(s−r)/2をともに割る整数はsとrをともに割るので、この二つの正整数も互いに素である。積は平方数v2なので、補題 2.3により、正整数p,qを用いて
2s+r=p2,2s−r=q2
と書くことができる。するとs=p2+q2、r=p2−q2であり、s2+r2=(u2+2v2)+(u2−2v2)=2u2から
u2=2s2+r2=p4+q4
となる。したがって(p,q,u)は正整数の組であり、元と同じ方程式X4+Y4=Z2を満たす。
m=u2とn>0より
u≤u2=m≤m2<m2+n2=z
なのでu<zである。新しい正整数解(p,q,u)の第三成分がzより小さいことは、zの最小性に反する。したがって、x4+y4=z2を満たす正整数解は存在しない。▨
5 技法の組合せ
この解答では、法4によって偶奇を定め、素因数の指数によって互いに素な積を三度処理し、最後にzの最小性を用いました。各因子が平方数であることから、新しい正整数解を構成しています。
同じ方程式を、原始ピタゴラス数の一般形を二度当てる別の証明が §A4.10 フェルマーの最終定理 n = 4 にあります。二度目のピタゴラス数の表示を用いる代わりに、ここでは平方差の因数分解に対して、互いに素な積の平方性を用いています。
6 演習
- 任意の整数nについてn3−nが6で割り切れることを示せ。
- 素数p>3に対してp2−1が24で割り切れることを、法24でpのとりうる余りをすべて調べる方法で示せ。本文の方法と手間を比較せよ。
- pを素数とする。x2≡1(modp)からx≡±1(modp)を示せ。
- 正整数x,yに対してx2=3y2が不可能であることを、3の倍数性を使った降下で示せ。
- x2−y2=1を満たす正整数x,yが存在しないことを、因数分解と最小性を用いて示せ。
- 正整数解を仮定すると降下することができる不定方程式を一つ設計せよ。最小にする正整数値を定め、各段階の正当性を説明せよ。
解答.
項目 (1)について、n3−n=(n−1)n(n+1)と因数分解する。連続する三整数のうち一つは3の倍数であり、少なくとも一つは偶数である。したがって、積は2,3のどちらでも割り切れる。2,3は互いに素なので、積は6で割り切れる。nが0や負の整数である場合にも、連続する三整数について同じ整除の議論が成り立つ。▨
解答.
項目 (2)について、素数p>3は2,3のどちらでも割り切れない。したがって、法24におけるpの余りは1,5,7,11,13,17,19,23のいずれかである。後半の四つはそれぞれ−11,−7,−5,−1に合同なので、平方の余りを求めるには12=1,52=25,72=49,112=121を調べればよい。いずれも24で割った余りは1であるから、24∣p2−1となる。
この方法では、法24で可能な八つの余りを列挙し、符号を除いた四つの平方を計算した。本文の法8と法3に分ける方法では、奇数であることと3の倍数でないことを別々に用いるため、これらの平方を個別に計算する必要がない。▨
解答.
項目 (3)の仮定より、p∣x2−1=(x−1)(x+1)である。§A4.2 補題 2.1により、p∣x−1またはp∣x+1が成り立つ。よって、x≡1(modp)またはx≡−1(modp)である。p=2の場合には、1と−1は同じ剰余を表す。▨
解答.
項目 (4)の方程式に正整数解が存在すると仮定し、xが最小となる解(x,y)を取る。法3では、整数は0,1,−1のいずれかに合同なので、その平方の余りは0,1のいずれかである。x2=3y2よりx2≡0(mod3)であるから、3∣xである。正整数uを用いてx=3uと置くと、9u2=3y2、したがってy2=3u2となる。よって、(y,u)も同じ方程式の正整数解である。x2=3y2>y2とx,y>0よりy<xであり、xの最小性に反する。したがって、正整数解は存在しない。▨
解答.
項目 (5)の方程式に正整数解が存在すると仮定し、xが最小となる解(x,y)を取る。x2−y2=1よりx>y>0であり、(x−y)(x+y)=1となる。二つの因子は正整数なので、x−y=x+y=1でなければならない。差を取ると2y=0となり、y>0に反する。
この証明は、因数分解によって解を直接排除しており、xの最小性を用いていない。最小の解を選ぶことだけでは降下の証明にはならず、降下には、比較する量がより小さい解の構成が必要である。▨
解答.
項目 (6)に対して、方程式x2=2y2の正整数解の非存在を一例とする。正整数解が存在すると仮定し、第1成分xが最小となる解(x,y)を取る。x2が偶数なのでxも偶数であり、正整数u=x/2を取ることができる。代入すると4u2=2y2、したがってy2=2u2となるので、(y,u)も同じ方程式の正整数解である。また、x2=2y2>y2とx,y>0よりy<xである。新しい組の正整数性、方程式の保存、第1成分の狭義減少が成り立ち、xの最小性に反する。したがって、正整数解は存在しない。▨
問題 6.1.a≥b≥0を満たす整数a,bと正整数xについて、x2=2a+2bを満たす組(a,b,x)をすべて求めよ。
解答.
a=bなら、x2=2a+1である。命題 2.2によりa+1は偶数なので、非負整数tを用いてa=b=2t+1,x=2t+1と書くことができる。
a>bとし、正整数k=a−bを置く。x2=2b(2k+1)において2k+1は奇数なので、右辺の素因数2の指数はちょうどbである。したがって、b=2tを満たす非負整数tと、x=2tuを満たす奇数の正整数uが存在する。両辺を22tで割るとu2=2k+1,(u−1)(u+1)=2kとなる。uは奇数でu2>1なので、u≥3である。二つの因子u−1,u+1は正の偶数であり、積の素因数が2だけであるから、正整数r<sを用いてu−1=2r,u+1=2sと書くことができる。差を取ると2=2s−2r=2r(2s−r−1)である。括弧内は奇数なのでr=1であり、2s−r−1=1からs=2となる。よって、u=3、k=r+s=3であるから、(a,b,x)=(2t+3,2t,3⋅2t)を得る。
逆に、任意の非負整数tについて、(2t+1)2=22t+1+22t+1,(3⋅2t)2=22t+3+22tが成り立つ。したがって、求める解の全体は(a,b,x)=(2t+1,2t+1,2t+1),(a,b,x)=(2t+3,2t,3⋅2t)(t≥0)である。ただし、tは整数である。▨
問題 6.2. 方程式x2+y2+1=3xyの正整数解をすべて求めよ。x≤yの場合について、解を小さい解へ移す操作と、その逆操作を示せ。
解答.
1≤x≤yを満たす解(x,y)を取る。x=1ならy2−3y+2=0なので、y=1またはy=2である。(1,2)からは解(1,1)へ移すと、最大の成分が2から1へ減少する。
x>1とする。x=yなら元の方程式からx2=1となるので、x<yであり、y≥x+1である。整数v=3x−yを置く。元の方程式からvy=x2+1であり、y>0なのでv>0である。また、v=yx2+1≤x+1x2+1<xである。最後の不等式にはx>1を用いた。さらに、
v2+x2+1−3vx=(3x−y)2+x2+1−3x(3x−y)=x2+y2+1−3xy=0なので、(v,x)も解である。0<v<xなので新しい組も小さい順に並んでおり、最大の成分はyからxへ真に減少する。
(1,1)以外の任意の解について、最大の成分がより小さい正整数解を構成することができた。正整数が真に減少し続けることはないので、この降下を繰り返すと(1,1)に達する。
1≤a≤bを満たす解(a,b)に対し、3b−a≥2b>bである。また、
b2+(3b−a)2+1−3b(3b−a)=a2+b2+1−3ab=0なので、(b,3b−a)も小さい順に並んだ正整数解である。この操作は、降下(x,y)↦(3x−y,x)の逆操作であり、(1,1)を(1,2)に戻す場合も含む。任意の解から(1,1)までの有限回の降下を逆順にたどると、その解を(1,1)から生成することができる。逆に、(1,1)からこの操作で生成した各組は方程式を満たす。
したがって、1≤x≤yを満たす解の全体は、(1,1)から(x,y)⟼(y,3y−x)を有限回繰り返して得られる組である。操作を一度も行わない場合を含み、最初の数組は(1,1),(1,2),(2,5),(5,13),(13,34)である。元の方程式はx,yの交換で変わらないので、順序を限定しない正整数解の全体は、この操作で生成されるすべての組と、その各組の二成分を入れ替えた組である。▨