1 オイラー関数
定義 1.1 (オイラー関数). 正の整数nに対して、1以上n以下の整数のうち、nと互いに素なものの個数をφ(n)と書く。関数φをオイラー関数 (Euler totient function) という。
例 1.2.gcd(1,1)=1なので、φ(1)=1である。1以上6以下で6と互いに素な整数は1,5なので、φ(6)=2である。
2 素数べきでの値
命題 2.1.pを素数、kを正の整数とすると、
φ(pk)=pk−pk−1=pk−1(p−1)が成り立つ。特に、φ(p)=p−1である。
証明.§A4.2 定理 2.2により、pkの素因数はpだけである。したがって、整数がpkと互いに素でないことと、その整数がpの倍数であることは同値である。1以上pk以下のpの倍数はp,2p,…,pk−1pのpk−1個なので、
φ(pk)=pk−pk−1となる。k=1とすると、φ(p)=p−1を得る。▨
3 互いに素な二数についての乗法性
命題 3.1.m,nを互いに素な正の整数とすると、
φ(mn)=φ(m)φ(n)が成り立つ。
証明.m=1またはn=1の場合は、φ(1)=1から等式が従う。以下ではm,n≥2とする。§A4.6 補題 2.1により、法mnの剰余類と、法mの剰余類と法nの剰余類の組は一対一に対応する。整数xがmnと互いに素であることは、xがm,nの両方と互いに素であることと同値である。実際、§A4.2 定理 2.2により、mnの素因数はmの素因数とnの素因数を合わせたものである。また、x≡r(modm)ならばx,rとmの公約数は一致するので、mと互いに素かどうかは剰余類によって定まる。法nでも同じことが成り立つ。
したがって、mnと互いに素な剰余類は、mと互いに素な剰余類とnと互いに素な剰余類の組に一対一に対応する。それぞれの個数を数えると、φ(mn)=φ(m)φ(n)となる。▨
4 素因数分解による計算公式
証明. 相異なる素数のべきは互いに素なので、命題 3.1を繰り返し用いると
φ(n)=i=1∏rφ(piki)を得る。命題 2.1によって各因子をpiki−1(pi−1)=piki(1−1/pi)と書くと、二つの表示が従う。▨
例 4.2.360=23⋅32⋅5なので、命題 4.1より
φ(360)=360⋅21⋅32⋅54=96である。
例 4.3.7100を360で割った余りを求める。gcd(7,360)=1かつφ(360)=96なので、§A4.7 定理 2.2より796≡1(mod360)である。100=96+4より
7100≡74=2401=6⋅360+241≡241(mod360)であり、求める余りは241である。
問題 4.4.φ(n)=8を満たす正の整数nをすべて求めよ。
解答.
φ(1)=1なのでn>1である。命題 4.1より、nの素因数pに対してp−1はφ(n)=8を割り切る。8の正の約数は1,2,4,8なので、pの候補は2,3,5,9である。pは素数だから、p=2,3,5に限られる。
3または5の指数が2以上なら、同じ公式によりφ(n)がそれぞれ3または5の倍数となり、φ(n)=8に反する。したがって
n=2a3b5c,a≥0,b,c∈{0,1}と書くことができる。a=0またはa=1のときはφ(2a)=1なので、乗法性によりφ(n)=2b+2cである。b+2c=3を満たすのはb=c=1の場合だけであり、n=15,30を得る。
a≥2のときはφ(n)=2a−1+b+2cなので、a−1+b+2c=3となる。(b,c)=(0,0),(1,0),(0,1)の場合は、それぞれa=4,3,2となり、n=16,24,20を得る。(b,c)=(1,1)の場合はa=1となるので、a≥2に反する。五つの整数はいずれも公式によりφ(n)=8を満たす。よって解は
n=15,16,20,24,30である。▨
5 約数にわたるオイラー関数の和
命題 5.1. 正の整数nに対して、
d∣n∑φ(d)=nが成り立つ。和はnの正の約数dにわたる和である。
証明.1≤k≤nを満たす整数kに対し、g=gcd(k,n)とおく。k/nを約分した既約分数は(k/g)/(n/g)であり、その分母d=n/gはnの正の約数である。
逆に、nの正の約数dと、1≤u≤dかつgcd(u,d)=1を満たす整数uを取る。k=(n/d)uとおくと1≤k≤nであり、gcd(k,n)=n/dなので、k/nを約分するとu/dを得る。したがって、約分後の分母がdである分数はちょうどφ(d)個である。もとのn個の分数を約分後の分母によって分けて数えると、∑d∣nφ(d)=nとなる。▨
例 5.2.6の正の約数は1,2,3,6なので、
φ(1)+φ(2)+φ(3)+φ(6)=1+1+2+2=6となる。