§A4.2素数と素因数分解

最終更新

素数とは、11と自分自身以外に正の約数を持たない、22以上の整数のことです。2,3,5,7,11,13,…2, 3, 5, 7, 11, 13, \dotsと続きます。11は素数に含めません(理由は後述)。素数でない22以上の整数(4,6,8,9,…4, 6, 8, 9, \dots)は合成数と呼ばれ、必ず自分より小さい素数の積に分解できます。

1 素数と合成数

22以上の整数ppが素数であるとは、正の約数が11とppだけであることをいいます。22以上の整数で素数でないものを合成数といいます。たとえば2,3,5,7,11,132,3,5,7,11,13は素数であり、4,6,8,94,6,8,9は合成数です。整数を素数の積として表すことを素因数分解といい、その積に現れる素数を素因子といいます。

注意 1.1.11は素数に含めない。11を素数に含めると、積に因子11を任意の個数加えても値が変わらず、素数の積による表示の一意性が成り立たなくなる。

2 素因数分解の存在と一意性

素因数分解の一意性には、次のユークリッドの補題を用います。

補題 2.1.ppを素数、a,ba,bを整数とする。p∣abp\mid abならば、p∣ap\mid aまたはp∣bp\mid bが成り立つ。

証明.p∤ap\nmid aとする。ppの正の約数は1,p1,pだけであるので、gcd⁡(p,a)=1\gcd(p,a)=1である。§A4.3 補題 1.1により、px+ay=1px+ay=1を満たす整数x,yx,yが存在する。両辺にbbを掛けるとpbx+aby=bpbx+aby=bとなる。p∣abp\mid abであるので左辺の各項はppで割り切れ、p∣bp\mid bが成り立つ。▨

定理 2.2.22以上の整数は、素数の積として表すことができる。この表示は、因子の順序を除いて一意である。

証明.n≥2n\ge 2とし、nnより小さい22以上の整数はすべて素数の積として表されると仮定する。nnが素数ならば、nn自身が求める表示である。nnが合成数ならば、n=abn=abを満たす整数a,ba,bを2≤a,b<n2\le a,b<nとなるように取ることができる。帰納法の仮定によりa,ba,bはともに素数の積として表されるので、nnも同じ形で表される。n=2n=2の場合は素数の場合に含まれるので、帰納法によって存在が従う。

n=p1⋯pr=q1⋯qsn=p_1\cdots p_r=q_1\cdots q_sを二つの素数の積による表示とし、r,s≥1r,s\ge1とする。補題 2.1を繰り返し用いると、p1p_1はいずれかのqjq_jを割り切る。qjq_jは素数でありp1>1p_1>1であるので、p1=qjp_1=q_jである。因子の順序を入れ替え、両辺からこの共通因子を一つずつ除く。残った積にも同じ議論を繰り返すことができる。一方の因子だけが先に尽きると、11が素数の空でない積に等しくなるが、そのような積は22以上である。したがって両辺の因子は同時に尽き、二つの表示は順序を除いて一致する。▨

定理 2.2を算術の基本定理といいます。

例 2.3.60=22×3×560=2^2\times3\times5である。算術の基本定理により、6060の素数の積による表示には、22が二つ、33と55が一つずつ現れる。

3 エラトステネスのふるい

整数N≥2N\ge2に対し、NN以下の素数を列挙する方法を、エラトステネスのふるいといいます。

  1. 22からNNまでの整数を並べる。
  2. まだ消しておらず素数として確定していない最小の数をppとする。p2>Np^2>Nなら終了する。p2≤Np^2\le Nならppを素数として確定し、ppの倍数のうちpp自身を除く数をすべて消す。
  3. 未確定の数が残っていれば項目 (2)を繰り返し、残っていなければ終了する。

終了時に消されずに残った数が、NN以下の素数です。定理 2.2により、合成数m≤Nm\le Nの最小の素因子qqについてm=qkm=qk、k≥qk\ge qと書くことができるので、q2≤m≤Nq^2\le m\le Nです。したがってN\sqrt{N}以下の素数の倍数を消せば合成数はすべて消され、p2>Np^2>Nで終了してよいことになります。

4 約数の個数と総和

命題 4.1.k≥1k\ge1とし、相異なる素数p1,…,pkp_1,\ldots,p_kと正の整数e1,…,eke_1,\ldots,e_kによって、N=p1e1⋯pkekN=p_1^{e_1}\cdots p_k^{e_k}と表されているとする。NNの正の約数は、0≤fi≤ei0\le f_i\le e_iを満たす整数fif_iを用いてp1f1⋯pkfkp_1^{f_1}\cdots p_k^{f_k}と一意に表される。正の約数の個数と総和は、それぞれ

∏i=1k(ei+1),∏i=1k(1+pi+⋯+piei)\prod_{i=1}^k(e_i+1),\qquad \prod_{i=1}^k(1+p_i+\cdots+p_i^{e_i})

である。

証明.ddがNNの正の約数なら、正の整数mmを用いてN=dmN=dmと書くことができる。定理 2.2により、ddに現れる素数はpip_iのいずれかであり、その指数はeie_iを超えない。逆に0≤fi≤ei0\le f_i\le e_iなら、p1e1−f1⋯pkek−fkp_1^{e_1-f_1}\cdots p_k^{e_k-f_k}を掛けるとNNになるので、p1f1⋯pkfkp_1^{f_1}\cdots p_k^{f_k}はNNの約数である。指数の異なる組から同じ約数が得られることは、素因数分解の一意性によって起こらない。各fif_iにはei+1e_i+1通りの選び方があるので、約数の個数は選び方の個数の積である。総和の式の積を分配法則で展開すると、各因子からpifip_i^{f_i}を一つずつ選んだ積が一度ずつ現れる。各項は正の約数と一対一に対応するので、この展開の値が約数の総和である。▨

例 4.2.360=23×32×5360=2^3\times3^2\times5なので、正の約数の個数は(3+1)(2+1)(1+1)=24(3+1)(2+1)(1+1)=24、総和は(1+2+4+8)(1+3+9)(1+5)=15×13×6=1170(1+2+4+8)(1+3+9)(1+5)=15\times13\times6=1170である。11の正の約数は11だけなので、約数の個数と総和はいずれも11である。

5 最大公約数と最小公倍数

二つの正の整数に共通する正の倍数のうち、最小のものを最小公倍数と呼びます。

命題 5.1.A,BA,Bを正の整数とする。p1,…,pkp_1,\ldots,p_kをAAまたはBBの素因子を重複なく並べたものとし、00以上の整数ai,bia_i,b_iを用いてA=∏i=1kpiaiA=\prod_{i=1}^k p_i^{a_i}、B=∏i=1kpibiB=\prod_{i=1}^k p_i^{b_i}と表す。現れない素数の指数は00とする。A=B=1A=B=1のときはk=0k=0とし、因子のない積は11とする。最大公約数ddと最小公倍数LLは

d=∏i=1kpimin⁡(ai,bi),L=∏i=1kpimax⁡(ai,bi)d=\prod_{i=1}^k p_i^{\min(a_i,b_i)},\qquad L=\prod_{i=1}^k p_i^{\max(a_i,b_i)}

であり、dL=ABdL=ABが成り立つ。

証明.A,BA,Bの一方が11なら、最大公約数は11、最小公倍数は他方の数であり、表示された式が成り立つ。A,B≥2A,B\ge2とする。命題 4.1により、公約数に現れるpip_iの指数はai,bia_i,b_iの両方以下である。したがって、すべての正の公約数は表示されたddを割り切り、dd自身も公約数である。よってddは最大公約数である。定理 2.2により、正の公倍数には各pip_iが少なくともmax⁡(ai,bi)\max(a_i,b_i)個現れる。したがって、すべての正の公倍数は表示されたLLの倍数であり、LL自身も公倍数なので最小である。min⁡(ai,bi)+max⁡(ai,bi)=ai+bi\min(a_i,b_i)+\max(a_i,b_i)=a_i+b_iであるので、dL=ABdL=ABが成り立つ。▨

問題 5.2. 最大公約数が1212、最小公倍数が180180である正の整数の組(A,B)(A,B)を、A≤BA\le Bのもとですべて求めよ。

解答.

A=12uA=12u、B=12vB=12vと書くと、u,vu,vは正の整数であり、u≤vu\le vである。u,vu,vに11より大きい公約数hhがあれば、12h12hがA,BA,Bの公約数となるので、gcd⁡(u,v)=1\gcd(u,v)=1である。命題 5.1によりAB=12×180AB=12\times180なので、uv=15uv=15となる。u≤vu\le vを満たす正の因数の組は(1,15)(1,15)と(3,5)(3,5)だけで、いずれも互いに素である。したがって候補は(12,180)(12,180)と(36,60)(36,60)である。素因数分解から両方の組の最大公約数は1212であり、積は12×18012\times180なので、同じ命題により最小公倍数は180180である。よって求める組は(12,180)(12,180)と(36,60)(36,60)で尽くされる。▨

6 素数の無限性

定理 6.1. 素数は無限に存在する。

証明. 素数が有限個しかないと仮定し、すべての素数をp1,p2,…,pnp_1,p_2,\ldots,p_nとする。22は素数であるのでn≥1n\ge1である。N=p1p2⋯pn+1N=p_1p_2\cdots p_n+1とおく。NNは各pip_iで割ると11余るので、どのpip_iによっても割り切れない。一方、N≥2N\ge2であるので、定理 2.2によりNNの素因子qqが存在する。qqは素数であるのに、列挙したどのpip_iとも異なる。これはp1,…,pnp_1,\ldots,p_nがすべての素数であるという仮定に矛盾する。したがって素数は無限に存在する。▨

例 6.2. 素数の積に11を加えた数が素数になるとは限らない。たとえば、

2×3×5×7×11×13+1=30031=59×5092\times3\times5\times7\times11\times13+1=30031=59\times509

は合成数である。

閑話休題:連続する合成数と双子素数 任意の整数N≥2N\ge2に対して、N!=1×2×⋯×NN!=1\times2\times\cdots\times Nとおく。N!+2, N!+3, …, N!+NN!+2,\ N!+3,\ \ldots,\ N!+NはN−1N-1個の連続した合成数である。実際、2≤k≤N2\le k\le NならN!+kN!+kはkkで割り切れ、N!+k>k>1N!+k>k>1であるので合成数である。NNを大きく取ることにより、連続した合成数の列を任意の長さにすることができる。

(3,5),(11,13),(41,43)(3,5),(11,13),(41,43)のように差が22の素数の組を双子素数と呼ぶ。双子素数が無限に存在するかという問題は、百年以上未解決である。 2013年に張益唐(チャン・イタン)は、差が70007000万以下の素数の組が無限に存在することを証明した。その後、数学者たちの共同オンライン作業であるポリマス・プロジェクトによって上限が縮められ、差が246246以下の素数の組が無限に存在するという結果も得られた。差がちょうど22の双子素数が無限に存在するという予想は、依然として未解決である。

例題

条件と何を求めるかを確認してから、式と答えの対応を見比べてください。

次の問いに答えよ。d(n) は n の正の約数の個数、σ(n)\sigma(n) は n の正の約数の総和を表す。

解法の型n ==p1e1p1^e1 … pkekpk^ek に対し d(n) == Π(ei+1)、σ(n)\sigma(n)== Π (p^(e+1)−1)/(p−1)(素因数分解の一意性から従う)

  1. 441 の正の約数の個数 d(441) を求めよ。

    n=32⋅72=441,d(n)=?n = 3^{2} \cdot 7^{2} = 441, \qquad d(n) = ?
  2. 7605 の正の約数の個数 d(7605) を求めよ。

    n=32⋅5⋅132=7605,d(n)=?n = 3^{2} \cdot 5 \cdot 13^{2} = 7605, \qquad d(n) = ?
  3. 275 の正の約数の総和 σ(275)\sigma(275) を求めよ。

    n=52⋅11=275,σ(n)=?n = 5^{2} \cdot 11 = 275, \qquad \sigma(n) = ?
  4. 1911 の正の約数の総和 σ(1911)\sigma(1911) を求めよ。

    n=3⋅72⋅13=1911,σ(n)=?n = 3 \cdot 7^{2} \cdot 13 = 1911, \qquad \sigma(n) = ?
  5. 3773 の正の約数の総和 σ(3773)\sigma(3773) を求めよ。

    n=73⋅11=3773,σ(n)=?n = 7^{3} \cdot 11 = 3773, \qquad \sigma(n) = ?
  6. 1715 の正の約数の総和 σ(1715)\sigma(1715) を求めよ。

    n=5⋅73=1715,σ(n)=?n = 5 \cdot 7^{3} = 1715, \qquad \sigma(n) = ?
  7. 40 が完全数(自分自身を除く正の約数の総和が自分自身に等しい数)であるかどうか判定せよ。

    n=40は完全数か?n = 40 \quad \text{は完全数か?}
  8. 585 の正の約数の総和 σ(585)\sigma(585) を求めよ。

    n=32⋅5⋅13=585,σ(n)=?n = 3^{2} \cdot 5 \cdot 13 = 585, \qquad \sigma(n) = ?
  9. 28 が完全数(自分自身を除く正の約数の総和が自分自身に等しい数)であるかどうか判定せよ。

    n=28は完全数か?n = 28 \quad \text{は完全数か?}
  10. 4394 の正の約数の個数 d(4394) を求めよ。

    n=2⋅133=4394,d(n)=?n = 2 \cdot 13^{3} = 4394, \qquad d(n) = ?

演習

問題を解いてから「解答・解説」を開けます。

次の問いに答えよ。d(n) は n の正の約数の個数、σ(n)\sigma(n) は n の正の約数の総和を表す。

演習を読み込み中…

前提記事