§A4.13平方剰余とルジャンドル記号

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整数の平方を奇素数ppで割った余りには、零でない余りのすべてが現れるわけではありません。たとえば、52≡−1(mod13)5^2\equiv-1\pmod{13}なので、法1313では−1-1が平方の余りとして現れます。

しかし、ppで割り切れない整数aaが与えられたとき、合同方程式x2≡a(modp)x^2\equiv a\pmod pに解があるかどうかは、余りの計算だけから直ちに分かるとは限りません。平方の余りとして現れるものと現れないものを区別し、その違いを判定する方法が必要です。

この区別を表すのが平方剰余と平方非剰余であり、二つの場合をそれぞれ11と−1-1で記録するのがルジャンドル記号です。平方剰余は、合同方程式の解の存在を調べるうえで基本となる概念です。

位数と原始根によって調べてきた累乗の性質は、平方剰余の判定にも結び付きます。また、ルジャンドル記号は、異なる奇素数を法とする平方剰余の関係を述べる平方剰余の相互法則の基礎になります。

本記事では、平方剰余とルジャンドル記号を導入し、その基本的な性質と判定方法について解説します。

1 定義と基本的な個数

定義 1.1 (平方剰余・平方非剰余).ppを奇素数、aaをp∤ap\nmid aを満たす整数とする。合同方程式

x2≡a(modp)x^2 \equiv a \pmod p

が解をもつときaaを法ppの平方剰余 (quadratic residue)(QR)、解をもたないとき平方非剰余(QNR)という。

定義 1.2 (ルジャンドル記号).ppを奇素数、aaをp∤ap\nmid aを満たす整数とする。ルジャンドル記号 (Legendre symbol) を

(ap)={1(a が法 p の平方剰余)−1(a が法 p の平方非剰余)\left(\frac{a}{p}\right) = \begin{cases} 1 & (a \text{ が法 } p \text{ の平方剰余}) \\ -1 & (a \text{ が法 } p \text{ の平方非剰余}) \end{cases}

と定める(p∣ap \mid aの場合は慣習的に00とすることもあるが、本記事では扱わない)。

補題 1.3.ppを奇素数、x,yx,yを整数とする。このとき

x2≡y2(modp)  ⟺  x≡y(modp) または x≡−y(modp)x^2\equiv y^2\pmod p \iff x\equiv y\pmod p\ \text{または}\ x\equiv-y\pmod p

が成り立つ。

証明.x2−y2=(x−y)(x+y)x^2-y^2=(x-y)(x+y)である。§A4.2 補題 2.1により、p∣(x−y)(x+y)p\mid(x-y)(x+y)ならばp∣x−yp\mid x-yまたはp∣x+yp\mid x+yである。逆に、いずれかの因子がppで割り切れれば、その積もppで割り切れる。▨

命題 1.4.ppを奇素数とする。1,2,…,p−11,2,\dots,p-1のうち、ちょうどp−12\dfrac{p-1}{2}個が平方剰余である。

証明.1≤x≤p−11\le x\le p-1とする。補題 1.3により、1,…,p−11,\ldots,p-1のうち、平方がx2x^2と法ppで合同である数はxxとp−xp-xだけである。ppは奇数なのでx≠p−xx\ne p-xである。したがって1,…,p−11,\ldots,p-1は、平方が同じ剰余をもつ二つの数の組に分かれる。各組に一つの平方剰余が対応し、異なる組には異なる平方剰余が対応するので、平方剰余の個数は(p−1)/2(p-1)/2である。▨

2 オイラーの規準

定理 2.1 (オイラーの規準).ppを奇素数、aaをp∤ap\nmid aを満たす整数とする。このとき

(ap)≡ap−12(modp).\left(\frac{a}{p}\right) \equiv a^{\frac{p-1}{2}} \pmod p.

証明.§A4.12 定理 3.2により、法ppの原始根ggを取る。ggの位数はp−1p-1であり、§A4.12 系 2.2により、g0,g1,…,gp−2g^0,g^1,\ldots,g^{p-2}は法ppで相異なる非零の剰余類を表す。したがってa≡gk(modp)a\equiv g^k\pmod pを満たす整数kkが0≤k≤p−20\le k\le p-2の範囲にただ一つ存在する。

k=2jk=2jならa≡(gj)2(modp)a\equiv(g^j)^2\pmod pであり、aaは平方剰余である。逆にa≡x2(modp)a\equiv x^2\pmod pとする。p∤xp\nmid xなのでx≡gt(modp)x\equiv g^t\pmod pを満たす整数ttを0≤t≤p−20\le t\le p-2の範囲に取ることができる。gk≡g2t(modp)g^k\equiv g^{2t}\pmod pである。k≠2tk\ne2tの場合は、§A4.5 命題 3.2によりg∣k−2t∣≡1(modp)g^{|k-2t|}\equiv1\pmod pであり、§A4.12 命題 1.2によりp−1∣∣k−2t∣p-1\mid|k-2t|である。k=2tk=2tの場合も含めて、k≡2t(modp−1)k\equiv2t\pmod{p-1}である。p−1p-1は偶数なのでkkは偶数である。よってaaが平方剰余であることとkkが偶数であることは同値である。

h=(p−1)/2h=(p-1)/2とおく。(gh)2≡1(modp)(g^h)^2\equiv1\pmod pであるから、補題 1.3によりgh≡1(modp)g^h\equiv1\pmod pまたはgh≡−1(modp)g^h\equiv-1\pmod pである。0<h<p−10<h<p-1とggの位数がp−1p-1であることからgh≢1(modp)g^h\not\equiv1\pmod pなので、gh≡−1(modp)g^h\equiv-1\pmod pである。したがって

ah≡(gh)k≡(−1)k=(ap)(modp)a^h\equiv(g^h)^k\equiv(-1)^k =\left(\frac{a}{p}\right)\pmod p

が成り立つ。▨

例 2.2. 法を1515にすると、1515と互いに素な剰余類の代表は

1,2,4,7,8,11,13,141,2,4,7,8,11,13,14

である。それぞれの平方の余りは

a12478111314a2 mod 1514144141\begin{array}{c|rrrrrrrr} a&1&2&4&7&8&11&13&14\\ \hline a^2\bmod15&1&4&1&4&4&1&4&1 \end{array}

となる。したがって、1515と互いに素な剰余類のうち平方となるものは1,41,4の2個であり、φ(15)/2=4\varphi(15)/2=4個ではない。実際、合同方程式x2≡1(mod15)x^2\equiv1\pmod{15}にはx≡1,4,11,14(mod15)x\equiv1,4,11,14\pmod{15}という四つの解がある。素数を法とする場合のように、平方が等しいものを符号だけで分類することができない。

また

2φ(15)/2=24=16≡1(mod15)2^{\varphi(15)/2}=2^4=16\equiv1\pmod{15}

であるが、x2≡2(mod15)x^2\equiv2\pmod{15}には解がない。この合同式の解があれば、その解は33でも55でも割り切れないので、表に挙げた既約剰余のいずれかになる。しかし、その平方の余りは11または44である。したがって、オイラーの規準の法を素数から合成数へ置き換えても、同じ判定が成り立つとは限らない。

系 2.3 (第一補充法則).ppを奇素数とする。このとき(−1p)=(−1)p−12\left(\dfrac{-1}{p}\right)=(-1)^{\frac{p-1}{2}}であり、

(−1p)=1  ⟺  p≡1(mod4)\left(\frac{-1}{p}\right) = 1 \iff p \equiv 1 \pmod 4

が成り立つ。

証明. オイラーの規準をa=−1a = -1に適用すれば(−1p)≡(−1)p−12(modp)\left(\frac{-1}{p}\right) \equiv (-1)^{\frac{p-1}{2}} \pmod p。両辺とも{−1,1}\{-1, 1\}に値を持ち、p≥3p \ge 3なので−1≢1(modp)-1 \not\equiv 1 \pmod p。よって modppでの合同は整数としての等号を意味する。p−12\dfrac{p-1}{2}が偶数(p≡1(mod4)p \equiv 1 \pmod 4)なら値は11、奇数(p≡3(mod4)p \equiv 3 \pmod 4)なら−1-1。▨

例 2.4.13≡1(mod4)13\equiv1\pmod4なので、系 2.3により−1-1は法1313の平方剰余である。実際x=5x = 5で52=25=26−1≡−1(mod13)5^2 = 25 = 26 - 1 \equiv -1 \pmod{13}が成り立つ。

系 2.5.ppを奇素数、a,ba,bをp∤abp\nmid abを満たす整数とする。このとき(abp)=(ap)(bp)\left(\dfrac{ab}{p}\right)=\left(\dfrac{a}{p}\right) \left(\dfrac{b}{p}\right)。

証明. オイラーの規準より

(abp)≡(ab)p−12=ap−12bp−12≡(ap)(bp)(modp).\left(\frac{ab}{p}\right) \equiv (ab)^{\frac{p-1}{2}} = a^{\frac{p-1}{2}} b^{\frac{p-1}{2}} \equiv \left(\frac{a}{p}\right)\left(\frac{b}{p}\right) \pmod p.

両辺は{−1,1}\{-1, 1\}に値を持ちp≥3p \ge 3なので、系 2.3の証明と同じ理由で合同は等号に強まる。▨

例題

条件と何を求めるかを確認してから、式と答えの対応を見比べてください。

次のルジャンドル記号の値を、オイラーの規準で求めよ。

解法の型オイラーの規準:(ap)≡a(p−1)/2(modp)\left(\dfrac{a}{p}\right) \equiv a^{(p-1)/2} \pmod p

  1. 例題 1

    (311)\left(\dfrac{3}{11}\right)
  2. 例題 2

    (711)\left(\dfrac{7}{11}\right)
  3. 例題 3

    (413)\left(\dfrac{4}{13}\right)
  4. 例題 4

    (1519)\left(\dfrac{15}{19}\right)
  5. 例題 5

    (617)\left(\dfrac{6}{17}\right)
  6. 例題 6

    (1011)\left(\dfrac{10}{11}\right)
  7. 例題 7

    (37)\left(\dfrac{3}{7}\right)
  8. 例題 8

    (411)\left(\dfrac{4}{11}\right)
  9. 例題 9

    (719)\left(\dfrac{7}{19}\right)
  10. 例題 10

    (511)\left(\dfrac{5}{11}\right)

演習

問題を解いてから「解答・解説」を開けます。

次のルジャンドル記号の値を、オイラーの規準で求めよ。

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