1 位数の定義と基本性質
定義 1.1 (位数).mを正整数、aをgcd(a,m)=1を満たす整数とする。ak≡1(modm)を満たす最小の正整数kを、aの法mに関する位数 (multiplicative order) といい、ordm(a)と書く。
m≥2の場合、§A4.7 定理 2.2によりaφ(m)≡1(modm)が成り立ちます。m=1の場合にも、§A4.7 注意 2.3により同じ合同式が成り立ちます。したがって、ak≡1(modm)を満たす正整数kが存在し、その最小値を取ることができます。法1ではa≡1(mod1)なので、任意の整数aの位数は1です。
命題 1.2.mを正整数、aをgcd(a,m)=1を満たす整数とする。任意の正整数nについて
an≡1(modm)⟺ordm(a)∣nが成り立つ。
証明.d=ordm(a)とおく。d∣nならば、正整数qを用いてn=dqと書くことができるので、an=(ad)q≡1(modm)である。
an≡1(modm)とする。n=qd+r、0≤r<dと書くと、
an=(ad)qar≡ar(modm)よりar≡1(modm)である。r>0ならば、dより小さい正整数rがar≡1(modm)を満たし、dの最小性に反する。したがってr=0であり、d∣nである。▨
系 1.3.mを正整数、aをgcd(a,m)=1を満たす整数とする。このときordm(a)∣φ(m)である。
証明.m≥2ならば§A4.7 定理 2.2により、m=1ならば§A4.7 注意 2.3により、aφ(m)≡1(modm)である。命題 1.2をn=φ(m)に適用すると、ordm(a)∣φ(m)を得る。▨
位数を求めるときには、φ(m)の正の約数を候補として調べます。
命題 1.4.mを正整数、aをgcd(a,m)=1を満たす整数とし、d=ordm(a)とおく。任意の正整数kについて
ordm(ak)=gcd(d,k)dが成り立つ。
証明.h=gcd(d,k)とし、d=hd′、k=hk′と書くと、gcd(d′,k′)=1である。kd′=k′dなので、(ak)d′=(ad)k′≡1(modm)である。
正整数rが(ak)r≡1(modm)を満たすとする。命題 1.2によりd∣krなので、d′∣k′rである。§A4.3 補題 1.1によりud′+vk′=1を満たす整数u,vを取ると、
r=ud′r+vk′rの右辺の両項はd′で割り切れる。したがってd′∣rであり、r≥d′である。よって、(ak)r≡1(modm)を満たす最小の正整数rはd′=d/hである。▨
2 原始根とそのべき
定義 2.1 (原始根).mを正整数とする。整数gがgcd(g,m)=1かつordm(g)=φ(m)を満たすとき、gを法mの原始根 (primitive root) という。
系 2.2.mを正整数、gを法mの原始根とする。g,g2,…,gφ(m)は、mと互いに素な剰余類を一つずつ尽くす。任意の正整数kについて、gkが法mの原始根であるための必要十分条件はgcd(k,φ(m))=1である。したがって、法mの原始根の剰余類は
gk(modm)(1≤k≤φ(m), gcd(k,φ(m))=1)で尽くされ、その個数はφ(φ(m))である。
証明.1≤i<j≤φ(m)とし、gi≡gj(modm)と仮定する。giはmと互いに素なので、§A4.5 命題 3.2によりgj−i≡1(modm)である。0<j−i<φ(m)=ordm(g)なので、位数の最小性に反する。よってg,g2,…,gφ(m)は法mで互いに異なる。各べきはmと互いに素であり、そのような剰余類はφ(m)個なので、この列がすべてを尽くす。
命題 1.4により、任意の正整数kについて
ordm(gk)=gcd(k,φ(m))φ(m)である。したがって、gkが原始根であることとgcd(k,φ(m))=1は同値である。1≤k≤φ(m)の範囲にそのようなkはφ(φ(m))個あり、対応するべきは法mで互いに異なるので、原始根の個数もφ(φ(m))である。▨
3 素数を法とする原始根の存在
素数を法とする原始根の存在には、多項式の合同式の解の個数を用います。
補題 3.1.pを素数、f(X)を次数d≥0の整数係数多項式とし、その最高次係数はpで割り切れないとする。合同式f(x)≡0(modp)の解の剰余類は高々d個である。
証明.d=0のとき、fはpで割り切れない定数なので、解はない。d≥1とし、次数d−1の場合には主張が成り立つと仮定する。f(x)≡0(modp)に解がなければ主張は成り立つので、解の一つをaとする。各正整数jについて
Xj−aj=(X−a)ℓ=0∑j−1Xj−1−ℓaℓであるから、整数係数多項式g(X)を用いて
f(X)−f(a)=(X−a)g(X)と書くことができる。gの次数はd−1であり、最高次係数はfと等しい。aと合同でない解bについて
0≡f(b)−f(a)=(b−a)g(b)(modp)である。p∤b−aなので、§A4.2 補題 2.1によりp∣g(b)である。帰納法の仮定により、そのようなbの剰余類は高々d−1個である。aの剰余類を加えても、fの解は高々d個である。▨
定理 3.2.pを素数とする。このとき法pの原始根が存在する。
証明.p−1の各正の約数dについて、1,2,…,p−1のうち法pに関する位数がdである整数の個数をedとする。合同式xd≡1(modp)の解の剰余類の集合をRdとする。多項式Xd−1の次数はdであり、最高次係数は1なので、補題 3.1によりRdの元は高々d個である。
ed>0と仮定し、法pに関する位数がdである整数aを1≤a≤p−1の範囲に取る。1≤i<j≤dについてai≡aj(modp)ならば、§A4.5 命題 3.2によりaj−i≡1(modp)となり、0<j−i<dは位数の最小性に反する。したがって、a,a2,…,adは法pで互いに異なる。また、(ai)d=(ad)i≡1(modp)なので、そのd個の剰余類はすべてRdに属する。Rdの元は高々d個なので、a,a2,…,adがRdを尽くす。
位数がdである整数はxd≡1(modp)を満たすので、その剰余類はRdに属する。命題 1.4により、1≤i≤dの範囲でaiの位数がdであることと、gcd(i,d)=1は同値である。そのようなiはφ(d)個なので、ed=φ(d)である。ed=0の場合と合わせると、各正の約数dについてedは0またはφ(d)に等しく、特にed≤φ(d)である。
§A4.8 命題 2.1よりφ(p)=p−1であり、系 1.3より1,2,…,p−1の各整数の位数はp−1の正の約数である。これらの整数を位数によって分けて数えると
d∣p−1∑ed=p−1である。一方、§A4.8 命題 5.1を正整数p−1に適用すると
d∣p−1∑φ(d)=p−1である。いずれの和もp−1の正の約数にわたる和である。各項でed≤φ(d)であり、両方の総和が等しいので、すべてのdについてed=φ(d)である。実際、一つでもed<φ(d)となる約数があれば、∑ed<∑φ(d)となり、二つの総和が等しいことに反する。特にep−1=φ(p−1)≥1なので、位数がp−1=φ(p)である整数が存在する。この整数は法pの原始根である。▨
例 3.3. 法7に関する3のべきの余りは
31≡3,32≡2,33≡6,34≡4,35≡5,36≡1(mod7)である。1,2,…,6が一回ずつ現れ、位数は6=φ(7)なので、3は法7の原始根である。系 2.2より、原始根はgcd(k,6)=1を満たすk=1,5に対応するので、法7の原始根の剰余類は3と35≡5の二つである。