§A1.10整式の除法・剰余の定理・因数定理

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整式を因数分解すると、元の式を因子の積として表すことができます。たとえばx3−2x+1x^3-2x+1にx=1x=1を代入すると値は零になりますが、代入の結果だけでは、どのような積に書き直すことができるかはまだ分かりません。式の値が零になることと、因子を取り出すこととの関係を調べる必要があります。

この関係を扱うために、整式を割って商と余りを求める除法を用います。一次式で割った余りと代入した値を結びつけるのが剰余の定理であり、余りが零になる場合を因数分解につなぐのが因数定理です。

本記事では、整式の除法を通して、余り・代入した値・一次因子の関係を調べます。

1 整式の除法の手順

実数を係数とする整式AAを零でない整式BBで割るとき、

A=BQ+RA=BQ+R

を満たし、R=0R=0またはRRの次数がBBの次数より小さくなる商QQと余りRRを求めます。§A1.3 公式 4.1により、実数係数の商と余りはただ一通りに定まります。零の余りには次数を要求しません。

筆算では、割られる式の最高次の項を除式の最高次の項で割って商の項を決めます。その項と除式の積を引くと、最高次の項が消えます。残った式について同じ操作を繰り返し、残りが00または除式より低い次数になったときに終了します。

例 1.1.x3−2x+1x^3-2x+1をx−1x-1で割る。最初にx3/x=x2x^3/x=x^2を商へ置き、積を引くと

(x3−2x+1)−x2(x−1)=x2−2x+1(x^3-2x+1)-x^2(x-1)=x^2-2x+1

となる。次にx2/x=xx^2/x=xを商へ加え、

(x2−2x+1)−x(x−1)=−x+1(x^2-2x+1)-x(x-1)=-x+1

とする。最後に(−x)/x=−1(-x)/x=-1を商へ加えると

(−x+1)−(−1)(x−1)=0(-x+1)-(-1)(x-1)=0

となる。よって商はx2+x−1x^2+x-1、余りは00である。実際に

(x−1)(x2+x−1)=x3−2x+1(x-1)(x^2+x-1)=x^3-2x+1

と展開して検算することができる。

§A1.3 例 4.2では、x2+5x+3x^2+5x+3をx+2x+2で割った余りは−3-3でした。除法は余りが零の場合と非零の場合をともに扱います。非零の余りが残る場合も、たとえば二次式で割った余りは一次以下のpx+qpx+qの形となります。

2 組立除法

x−ax-aで割る場合には、除法の計算を係数だけで記録する組立除法を使うことができます。被除式の次数が11以上の場合は、最高次の係数をそのまま商の係数とし、それにaaを掛けた値を次の係数へ加えます。得た係数に再びaaを掛けて次へ加える操作を続け、最後に得た数を余りとします。被除式が定数または零の場合には、商は00、余りは被除式そのものです。

例 2.1.x3−2x+1x^3-2x+1をx−1x-1で割るとき、係数を欠けた項の00も含めて1,0,−2,11,0,-2,1と並べる。a=1a=1を用いて

1,0+1⋅1=1,−2+1⋅1=−1,1+1⋅(−1)=01,\qquad 0+1\cdot1=1,\qquad -2+1\cdot1=-1,\qquad 1+1\cdot(-1)=0

と計算する。最初の三つの数が商x2+x−1x^2+x-1の係数であり、最後の00が余りである。通常の除法で最高次の項を消す際にも、x−1x-1の定数項−1-1との積を引くため、次の係数へ商の係数を加える。したがって二つの方法は同じ計算を行っている。

3 剰余の定理

一次式で割った余りは、零の場合も含めて定数です。この定数を求めるには、除法の等式へ一つの値を代入します。

公式 3.1.A(x)A(x)を実数係数の整式、aaを実数とする。A(x)A(x)をx−ax-aで割った余りはA(a)A(a)である。

証明. 除法の等式をA(x)=(x−a)Q(x)+RA(x)=(x-a)Q(x)+Rと書く。余りRRは定数であり、x=ax=aを代入するとA(a)=RA(a)=Rを得る。▨

例 3.2.A(x)=x3−2x+1A(x)=x^3-2x+1ではA(1)=1−2+1=0A(1)=1-2+1=0であり、x−1x-1で割った余りが00となることを代入だけでも確認することができる。x+2=x−(−2)x+2=x-(-2)で割った余りはA(−2)=−8+4+1=−3A(-2)=-8+4+1=-3である。

二つの異なる一次式の積で割る場合も、余りの次数と代入した値から余りを定めることができます。

定理 3.3.A(x)A(x)を実数係数の整式、a,ba,bを異なる実数とする。A(x)A(x)を(x−a)(x−b)(x-a)(x-b)で割った余りは

R(x)=A(a)x−ba−b+A(b)x−ab−aR(x)=A(a)\frac{x-b}{a-b}+A(b)\frac{x-a}{b-a}

である。

証明. 除法の等式を

A(x)=(x−a)(x−b)Q(x)+S(x)A(x)=(x-a)(x-b)Q(x)+S(x)

と書く。余りSSは一次以下であり、x=a,bx=a,bを代入するとS(a)=A(a)S(a)=A(a)、S(b)=A(b)S(b)=A(b)となる。

主張の式で定めたRRも一次以下で、R(a)=A(a)R(a)=A(a)、R(b)=A(b)R(b)=A(b)を満たす。S(x)−R(x)=ux+vS(x)-R(x)=ux+vと書くと、ua+v=ub+v=0ua+v=ub+v=0である。この二つの式を引いてu(a−b)=0u(a-b)=0を得る。a≠ba\ne bからu=0u=0、さらにv=0v=0である。よってS=RS=Rとなる。▨

問題 3.4. 実数係数の整式x100+x+1x^{100}+x+1をx2−1x^2-1で割った余りを求めよ。

解答.

A(x)=x100+x+1A(x)=x^{100}+x+1と置くと、A(1)=3A(1)=3、A(−1)=1A(-1)=1である。x2−1=(x−1)(x+1)x^2-1=(x-1)(x+1)なので、定理 3.3により余りは

3x+12+x−1−2=x+23\frac{x+1}{2}+\frac{x-1}{-2}=x+2

である。▨

注意 3.5. 同じ値を二回代入しても、(x−a)2(x-a)^2で割った余りは定まらない。たとえばA(x)=x−1A(x)=x-1とB(x)=(x−1)2B(x)=(x-1)^2はともにx=1x=1で00となる。しかし(x−1)2(x-1)^2で割った余りは、AAではx−1x-1、BBでは00である。一次式の値を二点で定めるためには、二点が異なることが必要である。

4 因数定理

整式が別の整式で割り切れるとは、余りが零であることです。そのとき除式は元の整式の因数となります。

公式 4.1.A(x)A(x)を実数係数の整式、aaを実数とする。次の三つは同値である。

  1. A(x)A(x)をx−ax-aで割った余りが00である。
  2. 実数係数の整式Q(x)Q(x)が存在してA(x)=(x−a)Q(x)A(x)=(x-a)Q(x)となる。
  3. A(a)=0A(a)=0であり、aaは方程式A(x)=0A(x)=0の実数解である。

証明.公式 3.1により、余りが零であることとA(a)=0A(a)=0は同値である。余りが零なら、除法の等式はA(x)=(x−a)Q(x)A(x)=(x-a)Q(x)となる。逆にその等式が成り立つなら、x=ax=aの代入によりA(a)=0A(a)=0である。▨

上の三次式の例ではA(1)=0A(1)=0から因子x−1x-1が得られ、除法によって残りの因子x2+x−1x^2+x-1が求まります。高次式では実数解を見つけるたびに一次因子を取り出して、残りの式の次数を下げることができます。

5 整数根と有理根の候補

実数係数の整式の根を、定数項の約数だけから求めることはできません。係数が整数の場合には、整数根と有理根の候補を次のように絞ります。

公式 5.1.A(x)=cnxn+⋯+c1x+c0A(x)=c_nx^n+\cdots+c_1x+c_0を整数係数の整式とし、n≥1n\ge1、cn≠0c_n\ne0、c0≠0c_0\ne0とする。整数rrが根ならばrrはc0c_0を割る。既約分数p/qp/q(p,qp,qは整数、q>0q>0)が根ならば、ppはc0c_0を割り、qqはcnc_nを割る。

証明.A(r)=0A(r)=0なら、c0=−r(cnrn−1+⋯+c1)c_0=-r(c_nr^{n-1}+\cdots+c_1)なのでrrはc0c_0を割る。A(p/q)=0A(p/q)=0の両辺をqnq^n倍すると

cnpn+cn−1pn−1q+⋯+c1pqn−1+c0qn=0c_np^n+c_{n-1}p^{n-1}q+\cdots+c_1pq^{n-1}+c_0q^n=0

となる。ppはc0qnc_0q^nを、qqはcnpnc_np^nを割る。p,qp,qは互いに素なので、ppはc0c_0を、qqはcnc_nを割る。▨

定数項が00の場合は、まず00が根であることを確認し、xxをくくってから残りの式へ候補の条件を使います。有理数係数の場合は、全係数の分母の公倍数を掛けて整数係数へ直します。この非零定数倍は根の集合を変えません。

注意 5.2. 候補の条件は必要条件である。候補を代入し、実際にA(p/q)=0A(p/q)=0となるかを確かめる必要がある。また、有理根が見つからなくても実数解がないとは限らない。たとえばx2−2x^2-2は整数根・有理根をもたないが、実数解±2\pm\sqrt2をもつ。

6 係数の範囲

本記事の除法は実数係数で行います。整数係数の整式どうしを割っても、商が整数係数になるとは限りません。たとえばxxを2x+12x+1で割る商は1/21/2、余りは−1/2-1/2です。係数として認める数の範囲を変えた場合に、同じ除法がどこまで通用するかは§E8 体論入門で扱います。

例題

条件と何を求めるかを確認してから、式と答えの対応を見比べてください。

次の整式 P(x)P(x) を、与えられた1次式で割った商と余りを求めよ。

割った商と余りを求めよ。

解法の型筆算(組立除法)。検算は剰余の定理 P(a)=余りP(a)=\text{余り}

  1. 例題 1

    P(x)=x3−x2−8x+9 を x+3 で割るP(x) = x^{3}-x^{2}-8x+9\ \text{を}\ x+3\ \text{で割る}
  2. 例題 2

    P(x)=x3−2x2+2x+7 を x+1 で割るP(x) = x^{3}-2x^{2}+2x+7\ \text{を}\ x+1\ \text{で割る}
  3. 例題 3

    P(x)=x3−4x2+7x−10 を x−2 で割るP(x) = x^{3}-4x^{2}+7x-10\ \text{を}\ x-2\ \text{で割る}
  4. 例題 4

    P(x)=x3−x2+2x+1 を x−1 で割るP(x) = x^{3}-x^{2}+2x+1\ \text{を}\ x-1\ \text{で割る}
  5. 例題 5

    P(x)=x3−3x2+6x−7 を x−1 で割るP(x) = x^{3}-3x^{2}+6x-7\ \text{を}\ x-1\ \text{で割る}
  6. 例題 6

    P(x)=x3−x2+3x+4 を x+1 で割るP(x) = x^{3}-x^{2}+3x+4\ \text{を}\ x+1\ \text{で割る}
  7. 例題 7

    P(x)=x3−6x2+12x−7 を x−3 で割るP(x) = x^{3}-6x^{2}+12x-7\ \text{を}\ x-3\ \text{で割る}
  8. 例題 8

    P(x)=x3+3x2+3x+7 を x+3 で割るP(x) = x^{3}+3x^{2}+3x+7\ \text{を}\ x+3\ \text{で割る}
  9. 例題 9

    P(x)=x3+4x2+7x+15 を x+3 で割るP(x) = x^{3}+4x^{2}+7x+15\ \text{を}\ x+3\ \text{で割る}
  10. 例題 10

    P(x)=x3+x2−11x−11 を x+3 で割るP(x) = x^{3}+x^{2}-11x-11\ \text{を}\ x+3\ \text{で割る}

演習

問題を解いてから「解答・解説」を開けます。

次の整式 P(x)P(x) を、与えられた1次式で割った商と余りを求めよ。

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