§B1.10関数の極限

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関数の値は、変数xxに数を代入すれば求まります。ところがx2−4x−2\dfrac{x^2-4}{x-2}は、x=2x = 2を代入すると分母が00になり、値が定まりません。そもそも代入で分かるのは代入した点での値だけで、その点の近くで式がどう動くかは分かりません。実際には、xxを22に近づけていくと、この式の値は44に限りなく近づきます。

このように、変数xxをある値aaに限りなく近づけたときにf(x)f(x)が近づく先を、関数の極限といいます。xxを限りなく大きくしたり小さくしたりするときの行き先にも、同じ言葉を使います。極限はx=ax = aでの値とは無関係に定まるので、代入だけでは分からない関数の性質を調べるための基本的な道具になります。また、極限がaaでの値と一致するかどうかを調べると、グラフがaaでつながっているかどうかを式で確かめることができます。

本記事では、関数の極限の考え方と計算の方法、およびその使い道を解説します。

1 関数の極限とは

定義 1.1 (関数の極限).aaを実数とし、関数ffがaaを除くaaの両側の近く、すなわちある正の数δ\deltaについて0<∣x−a∣<δ0 < |x - a| < \deltaを満たすすべてのxxで定義されているとする。xxがaaと異なる値をとりながらaaに限りなく近づくときf(x)f(x)が値LLに限りなく近づくならば、x→ax \to aのときf(x)f(x)はLLに収束する (converge) といい、LLをx→ax \to aにおけるffの極限値 (limit) という。このことをlim⁡x→af(x)=L\displaystyle\lim_{x \to a} f(x) = Lと書く。

ffがある実数RRについてx>Rx > Rを満たすすべてのxxで定義されているとき、xxを限りなく大きくするとf(x)f(x)がLLに限りなく近づくことをlim⁡x→∞f(x)=L\displaystyle\lim_{x \to \infty} f(x) = Lと書く。ffがある実数RRについてx<Rx < Rを満たすすべてのxxで定義されているとき、xxを限りなく小さくするとf(x)f(x)がLLに限りなく近づくことをlim⁡x→−∞f(x)=L\displaystyle\lim_{x \to -\infty} f(x) = Lと書く。これらの場合も、f(x)f(x)はLLに収束するといい、LLを極限値という。

上のそれぞれの近づけ方でf(x)f(x)が限りなく大きくなるとき、f(x)f(x)は正の無限大に発散する (diverge to positive infinity) といい、lim⁡x→af(x)=∞\displaystyle\lim_{x \to a} f(x) = \infty、lim⁡x→∞f(x)=∞\displaystyle\lim_{x \to \infty} f(x) = \inftyのように書く。f(x)f(x)が限りなく小さくなるとき、f(x)f(x)は負の無限大に発散する (diverge to negative infinity) といい、lim⁡x→af(x)=−∞\displaystyle\lim_{x \to a} f(x) = -\inftyのように書く。

2 右からの極限と左からの極限

定義 2.1 (片側からの極限).ffがある正の数δ\deltaについてa<x<a+δa < x < a + \deltaを満たすすべてのxxで定義されているとする。xxがaaより大きい値をとりながらaaに限りなく近づくときf(x)f(x)が値LLに限りなく近づくならば、LLをx→ax \to aにおけるffの右からの極限 (right-hand limit) といい、lim⁡x→a+0f(x)=L\displaystyle\lim_{x \to a+0} f(x) = Lと書く。ffがある正の数δ\deltaについてa−δ<x<aa - \delta < x < aを満たすすべてのxxで定義されているとき、xxがaaより小さい値をとりながらaaに限りなく近づくときf(x)f(x)が値LLに限りなく近づくならば、LLを左からの極限 (left-hand limit) といい、lim⁡x→a−0f(x)=L\displaystyle\lim_{x \to a-0} f(x) = Lと書く。片側から近づけたときにf(x)f(x)が限りなく大きくなる場合と限りなく小さくなる場合も、正の無限大に発散する、負の無限大に発散するといい、lim⁡x→a+0f(x)=∞\displaystyle\lim_{x \to a+0} f(x) = \infty、lim⁡x→a−0f(x)=−∞\displaystyle\lim_{x \to a-0} f(x) = -\inftyのように書く。

定理 2.2. 関数ffが、ある正の数δ\deltaについて0<∣x−a∣<δ0 < |x - a| < \deltaを満たすすべてのxxで定義されているとし、LLを実数とする。lim⁡x→af(x)=L\displaystyle\lim_{x \to a} f(x) = Lが成り立つのは、右からの極限と左からの極限がともに存在して、どちらもLLに等しいときであり、そのときに限る。

証明.lim⁡x→af(x)=L\displaystyle\lim_{x \to a} f(x) = Lとする。xxをaaと異なる値をとりながらaaに近づけるとf(x)f(x)はLLに近づくので、xxをx>ax > aに限って近づけても、x<ax < aに限って近づけても、f(x)f(x)はLLに近づく。したがって右からの極限と左からの極限はともに存在してLLに等しい。

逆に、右からの極限と左からの極限がともに存在してLLに等しいとする。aaと異なるxxはx>ax > aとx<ax < aのどちらか一方を満たし、どちらの側でも、xxをaaに近づけるとf(x)f(x)はLLに近づく。したがって、xxがaaと異なる値をとりながらaaに近づくときf(x)f(x)はLLに近づき、lim⁡x→af(x)=L\displaystyle\lim_{x \to a} f(x) = Lである。▨

例 2.3.x≠0x \ne 0についてf(x)=∣x∣xf(x) = \dfrac{|x|}{x}と定める。x>0x > 0ではf(x)=1f(x) = 1、x<0x < 0ではf(x)=−1f(x) = -1であるから

lim⁡x→0+0f(x)=1,lim⁡x→0−0f(x)=−1\lim_{x \to 0+0} f(x) = 1, \qquad \lim_{x \to 0-0} f(x) = -1

である。二つが一致しないので、定理 2.2によりlim⁡x→0f(x)\displaystyle\lim_{x \to 0} f(x)は存在しない。

注意 2.4 (「存在しない」と「値が定まらない」を混同しない).例 2.3で存在しないのは極限であって、f(x)f(x)の値ではない。ffの値はx≠0x \ne 0のどこでも定まっている。逆に、f(a)f(a)が定まっていなくてもlim⁡x→af(x)\displaystyle\lim_{x \to a} f(x)が存在することがある。x2−4x−2\dfrac{x^2 - 4}{x - 2}はx=2x = 2で値をもたないが、x→2x \to 2の極限は44である。極限はx=ax = aにおける値と無関係に定まる。

例 2.5.x≠0x \ne 0についてf(x)=1xf(x) = \dfrac1xとする。xxが正の値をとりながら00に近づくと1x\dfrac1xは限りなく大きくなり、xxが負の値をとりながら00に近づくと1x\dfrac1xは限りなく小さくなる。したがって

lim⁡x→0+01x=∞,lim⁡x→0−01x=−∞\lim_{x \to 0+0} \frac1x = \infty, \qquad \lim_{x \to 0-0} \frac1x = -\infty

である。1x\dfrac1xはx>0x > 0で正の値を、x<0x < 0で負の値をとるので、x→0x \to 0のとき正の無限大にも負の無限大にも発散しない。また、x>0x > 0の側で限りなく大きくなるので、x→0x \to 0のときどの実数にも収束しない。

3 極限の四則計算と大小関係

数列の極限の§B1.7 定理 3.1と§B1.7 定理 3.3にあたる規則が、関数の極限についても成り立ちます。

定理 3.1.aaを実数とし、xxの近づけ方をx→ax \to a、x→a+0x \to a+0、x→a−0x \to a-0、x→∞x \to \infty、x→−∞x \to -\inftyのいずれか一つに定める。正の数δ\deltaまたは実数RRを用いて、近づけ方に応じて0<∣x−a∣<δ0 < |x - a| < \delta、a<x<a+δa < x < a + \delta、a−δ<x<aa - \delta < x < a、x>Rx > R、x<Rx < Rと表されるxxの範囲を、その近づけ方に応じた範囲という。また、その近づけ方での極限を、近づけ方を省いてlim⁡\limと書く。関数ff、ggはその近づけ方に応じたある範囲のすべてのxxで定義されており、lim⁡f(x)=L\lim f(x) = L、lim⁡g(x)=M\lim g(x) = M(LL、MMは実数)であるとする。このとき、同じ近づけ方について次が成り立つ。

  1. 定数kk、llについて、lim⁡{kf(x)+lg(x)}=kL+lM\lim\{k f(x) + l g(x)\} = kL + lMである。
  2. lim⁡f(x)g(x)=LM\lim f(x) g(x) = LMである。
  3. M≠0M \ne 0ならば、その近づけ方に応じたある範囲のすべてのxxでg(x)≠0g(x) \ne 0であり、lim⁡f(x)g(x)=LM\lim \dfrac{f(x)}{g(x)} = \dfrac{L}{M}である。
  4. その近づけ方に応じたある範囲のすべてのxxでf(x)≤g(x)f(x) \le g(x)が成り立つならば、L≤ML \le Mである。

根号を含む式は定理 3.1の対象ではありません。根号を含む式の極限には、次の規則を用います。

定理 3.2.xxの近づけ方を一つ定め、関数ggはその近づけ方に応じたある範囲のすべてのxxで定義されてg(x)≥0g(x) \ge 0を満たすとする(近づけ方、それに応じた範囲、lim⁡\limの書き方は定理 3.1と同じである)。lim⁡g(x)=b\lim g(x) = b(bbは実数。定理 3.1 (4)によりb≥0b \ge 0である)ならば、lim⁡g(x)=b\lim \sqrt{g(x)} = \sqrt{b}である。

本記事では、定理 3.1と定理 3.2を証明せずに認めて用います。これらの精密な証明は、ε と δ による関数の極限の定義から、 §D1.11 ε-δ による関数の極限と連続性をはじめとする §D1 ε-論法と基礎解析の記事で扱います。

4 変数を限りなく大きく、または小さくしたときの極限

x→∞x \to \inftyの極限とx→−∞x \to -\inftyの極限は、一致するとはかぎりません。

例 4.1.f(x)=xx2+1f(x) = \dfrac{x}{\sqrt{x^2 + 1}}とする。x>0x > 0ではx2=x\sqrt{x^2} = xであるから、分母をx1+1x2x\sqrt{1 + \dfrac{1}{x^2}}と書くことができ、f(x)=11+1x2f(x) = \dfrac{1}{\sqrt{1 + \dfrac{1}{x^2}}}となる。lim⁡x→∞1x2=0\displaystyle\lim_{x \to \infty}\frac{1}{x^2} = 0であるから、定理 3.2により1+1x2\sqrt{1 + \dfrac{1}{x^2}}は11に収束し、定理 3.1 (3)により

lim⁡x→∞f(x)=1\lim_{x \to \infty} f(x) = 1

である。x<0x < 0ではx2=−x\sqrt{x^2} = -xであるから分母は−x1+1x2-x\sqrt{1 + \dfrac{1}{x^2}}となり、f(x)=−11+1x2f(x) = -\dfrac{1}{\sqrt{1 + \dfrac{1}{x^2}}}である。lim⁡x→−∞1x2=0\displaystyle\lim_{x \to -\infty}\frac{1}{x^2} = 0であるから、定理 3.2と定理 3.1により

lim⁡x→−∞f(x)=−1\lim_{x \to -\infty} f(x) = -1

である。x2=x\sqrt{x^2} = xと書いてしまうと、負の側で符号を取り違える。

5 不定形の整理

分子と分母がともに00に収束する商は、定理 3.1 (3)の条件M≠0M \ne 0を満たしません。分子と分母がともに正の無限大または負の無限大に発散する商や、ともに正の無限大に発散する二つの式の差は、定理 3.1が前提とする収束を満たしません。数列の場合と同じく、これらの00\dfrac00型、∞∞\dfrac{\infty}{\infty}型、∞−∞\infty - \infty型は不定形であり、式を変形して定理 3.1を用いることができる形に直してから極限を取ります。

  • 約分(00\dfrac00型): 分子と分母を因数分解し、x≠ax \ne aで共通因数を消します。lim⁡x→2x2−4x−2=lim⁡x→2(x−2)(x+2)x−2=lim⁡x→2(x+2)=4\lim_{x \to 2}\frac{x^2 - 4}{x - 2} = \lim_{x \to 2}\frac{(x-2)(x+2)}{x-2} = \lim_{x\to2}(x+2) = 4
  • 最高次の項で割る(∞∞\dfrac{\infty}{\infty}型): 分子と分母を分母の最高次の項で割ります。x→∞x \to \inftyのとき、2x2+13x2−x\dfrac{2x^2 + 1}{3x^2 - x}は分子と分母をx2x^2で割ると2+1x23−1x\dfrac{2 + \dfrac{1}{x^2}}{3 - \dfrac1x}となり、23\dfrac23に近づきます。
  • 有理化(∞−∞\infty - \infty型や根号を含む式): 共役な式を掛けて根号の差を消します。

注意 5.1 (変形の前に定義域を書き出す). 根号を含む式では根号の中が00以上である範囲を、分母を含む式では分母が00にならない範囲を、変形の前に書き出す。x2\sqrt{x^2}をxxと書き換える操作はx≥0x \ge 0でしか正しくなく、分子と分母をxxで割る操作はx≠0x \ne 0でしか正しくない。変形が正しい範囲と、極限を考えている範囲が重なっていることを確かめる。

例 5.2.lim⁡x→∞(x2+x−x)\displaystyle\lim_{x \to \infty}\left(\sqrt{x^2 + x} - x\right)を求める。x2+x\sqrt{x^2 + x}はx2+x≥0x^2 + x \ge 0、すなわちx≤−1x \le -1またはx≥0x \ge 0で定義される。x→∞x \to \inftyの極限を考えるので、x>0x > 0の範囲で式を変形する。xxを限りなく大きくするとx2+x\sqrt{x^2 + x}もxxも限りなく大きくなるので、この極限は∞−∞\infty - \infty型の不定形である。

x>0x > 0ではx2+x+x>0\sqrt{x^2 + x} + x > 0であるから、x2+x+x\sqrt{x^2 + x} + xを掛けて割ることができ、

x2+x−x=(x2+x)−x2x2+x+x=xx2+x+x\sqrt{x^2 + x} - x = \frac{(x^2 + x) - x^2}{\sqrt{x^2 + x} + x} = \frac{x}{\sqrt{x^2 + x} + x}

となる。さらにx>0x > 0ではx=x2x = \sqrt{x^2}であるからx2+xx=1+1x\dfrac{\sqrt{x^2 + x}}{x} = \sqrt{1 + \dfrac1x}であり、分子と分母をxxで割ると

xx2+x+x=11+1x+1\frac{x}{\sqrt{x^2 + x} + x} = \frac{1}{\sqrt{1 + \dfrac1x} + 1}

となる。lim⁡x→∞1x=0\displaystyle\lim_{x \to \infty}\frac1x = 0であるから、定理 3.2により1+1x\sqrt{1 + \dfrac1x}は11に収束し、定理 3.1により

lim⁡x→∞(x2+x−x)=11+1=12\lim_{x \to \infty}\left(\sqrt{x^2 + x} - x\right) = \frac{1}{1 + 1} = \frac12

である。

6 連続性

定義 6.1 (点における連続性と、区間での連続性).ffがaaを含むある範囲で定義されており、lim⁡x→af(x)=f(a)\displaystyle\lim_{x \to a} f(x) = f(a)が成り立つとき、ffはaaで連続 (continuous) であるという。区間に属するどの点でも連続であるとき、ffはその区間で連続であるという。区間の端点では、区間の内側からの片側の極限で考える。

この定義では三つが同時に要求されています。f(a)f(a)が定まること、極限が存在すること、そして両者が等しいことです。どれか一つでも欠ければ、その点で連続ではありません。

例 6.2.

  1. f(x)=∣x∣xf(x) = \dfrac{|x|}{x}(x≠0x \ne 0)はx=0x = 0で値が定まらず、極限も存在しない。
  2. g(x)=x2−4x−2g(x) = \dfrac{x^2 - 4}{x - 2}(x≠2x \ne 2)はx→2x \to 2の極限が44であるが、g(2)g(2)が定まっていない。g(2)=4g(2) = 4と定めれば連続になる。
  3. h(x)h(x)を、x≠0x \ne 0のとき00、x=0x = 0のとき11と定める。極限も値も存在するが、極限00と値11が食い違う。

定理 6.3.

  1. 多項式P(x)P(x)で表される関数は、すべての実数で連続であり、どの区間でも連続である。
  2. 多項式P(x)P(x)、Q(x)Q(x)について、分数関数P(x)Q(x)\dfrac{P(x)}{Q(x)}はQ(a)≠0Q(a) \ne 0を満たすすべての実数aaで連続である。
  3. IIを区間とし、分数関数R(x)R(x)がIIのすべてのxxで定義されてR(x)≥0R(x) \ge 0を満たすとする。このとき関数R(x)\sqrt{R(x)}はIIで連続である。

証明.(1)を示す。aaを実数とする。定数関数のx→ax \to aにおける極限値はその定数であり、xxにxx自身を対応させる関数のx→ax \to aにおける極限値はaaである。定理 3.1 (2)を繰り返し用いると、正の整数mmについてlim⁡x→axm=am\displaystyle\lim_{x \to a} x^m = a^mである。多項式P(x)=c0+c1x+⋯+cdxdP(x) = c_0 + c_1 x + \cdots + c_d x^dに定理 3.1 (1)を繰り返し用いるとlim⁡x→aP(x)=P(a)\displaystyle\lim_{x \to a} P(x) = P(a)である。PPはすべての実数で定義されているので、PPはaaで連続である。区間の端点ccでは、PPがccで連続であることと定理 2.2により、区間の内側からの片側の極限もP(c)P(c)に等しい。したがってPPはどの区間でも連続である。

(2)を示す。Q(a)≠0Q(a) \ne 0とする。(1)によりlim⁡x→aP(x)=P(a)\displaystyle\lim_{x \to a} P(x) = P(a)、lim⁡x→aQ(x)=Q(a)\displaystyle\lim_{x \to a} Q(x) = Q(a)である。定理 3.1 (3)により、ある正の数δ\deltaについて0<∣x−a∣<δ0 < |x - a| < \deltaを満たすすべてのxxでQ(x)≠0Q(x) \ne 0であり、lim⁡x→aP(x)Q(x)=P(a)Q(a)\displaystyle\lim_{x \to a}\frac{P(x)}{Q(x)} = \frac{P(a)}{Q(a)}である。Q(a)≠0Q(a) \ne 0でもあるから、P(x)Q(x)\dfrac{P(x)}{Q(x)}は∣x−a∣<δ|x - a| < \deltaを満たすすべてのxxで定義されており、aaで連続である。

(3)を示す。ccをIIの点とする。R(c)R(c)が定義されているので、(2)によりlim⁡x→cR(x)=R(c)\displaystyle\lim_{x \to c} R(x) = R(c)である。ccがIIの端点でないとき、ある正の数δ\deltaについて∣x−c∣<δ|x - c| < \deltaを満たすxxはすべてIIに属し、そこでR(x)≥0R(x) \ge 0であるから、定理 3.2によりlim⁡x→cR(x)=R(c)\displaystyle\lim_{x \to c}\sqrt{R(x)} = \sqrt{R(c)}である。ccがIIの左端(右端)であるとき、定理 2.2によりlim⁡x→c+0R(x)=R(c)\displaystyle\lim_{x \to c+0} R(x) = R(c)(lim⁡x→c−0R(x)=R(c)\displaystyle\lim_{x \to c-0} R(x) = R(c))であり、ある正の数δ\deltaについてc<x<c+δc < x < c + \delta(c−δ<x<cc - \delta < x < c)を満たすxxはすべてIIに属するから、定理 3.2によりlim⁡x→c+0R(x)=R(c)\displaystyle\lim_{x \to c+0}\sqrt{R(x)} = \sqrt{R(c)}(lim⁡x→c−0R(x)=R(c)\displaystyle\lim_{x \to c-0}\sqrt{R(x)} = \sqrt{R(c)})である。したがってR(x)\sqrt{R(x)}はIIで連続である。▨

したがって、多項式の極限と、分母が00にならない点での分数関数の極限は、x=ax = aを代入して求めることができます。

連続な関数に、その点に収束する数列の各項を代入すると、次が成り立ちます。この規則は中間値の定理の証明に用います。

定理 6.4. 関数ffが実数ccで連続であるとする。数列{xn}\{x_n\}がccに収束し、各xnx_nがffの定義域に属するならば、lim⁡n→∞f(xn)=f(c)\displaystyle\lim_{n \to \infty} f(x_n) = f(c)である。ffが区間IIで連続であり、ccがIIの端点であってIIに属する場合も、各xnx_nがIIに属するならば同じ結論が成り立つ。

本記事では定理 6.4を証明せずに認めて用います。数列を用いた関数の極限と連続性の特徴づけの精密な証明は、§D1.11 ε-δ による関数の極限と連続性が扱います。

7 中間値の定理

閉区間で連続な関数のグラフは、途切れずにつながって見えます。この見え方を主張として述べたものが中間値の定理です。この定理は、§B1.8 極限の存在についてで実数の連続性として認めた区間縮小法から導かれます。

定理 7.1 (中間値の定理).ffが閉区間[a,b][a, b]で連続であり、f(a)≠f(b)f(a) \ne f(b)であるとする。kkをf(a)f(a)とf(b)f(b)のあいだにある実数とすると、f(c)=kf(c) = kを満たすccが開区間(a,b)(a, b)に存在する。

証明.f(a)<k<f(b)f(a) < k < f(b)の場合を示す。f(b)<k<f(a)f(b) < k < f(a)の場合は、−f-fも[a,b][a, b]で連続であるから、ffとkkを−f-fと−k-kに置き換えるとこの場合に帰着する。

閉区間の列を次のように定める。I1=[a,b]I_1 = [a, b]とする。Ij=[lj,rj]I_j = [l_j, r_j]が定まったとき、その中点をmmとして

  • f(m)≤kf(m) \le kならばIj+1=[m,rj]I_{j+1} = [m, r_j]、
  • f(m)>kf(m) > kならばIj+1=[lj,m]I_{j+1} = [l_j, m]

と定める。j=1j = 1ではf(l1)=f(a)<k<f(b)=f(r1)f(l_1) = f(a) < k < f(b) = f(r_1)である。f(lj)≤k≤f(rj)f(l_j) \le k \le f(r_j)が成り立つとき、f(m)≤kf(m) \le kならばf(lj+1)=f(m)≤k≤f(rj)=f(rj+1)f(l_{j+1}) = f(m) \le k \le f(r_j) = f(r_{j+1})であり、f(m)>kf(m) > kならばf(lj+1)=f(lj)≤k<f(m)=f(rj+1)f(l_{j+1}) = f(l_j) \le k < f(m) = f(r_{j+1})である。したがって、すべてのjjについて

f(lj)≤k≤f(rj)f(l_j) \le k \le f(r_j)

が成り立つ。

Ij+1⊆IjI_{j+1} \subseteq I_jであり、長さは半分ずつになるのでrj−lj=b−a2 j−1r_j - l_j = \dfrac{b-a}{2^{\,j-1}}となり、00に近づく。したがって§B1.8 定理 2.1により、すべてのIjI_jに属する実数ccがただ一つ存在する。ccはI1=[a,b]I_1 = [a, b]に属する。

lj≤c≤rjl_j \le c \le r_jであるから、ljl_jもrjr_jもccとの差がrj−ljr_j - l_j以下であり、数列{lj}\{l_j\}、{rj}\{r_j\}はどちらもccに収束する。各ljl_j、rjr_jは[a,b][a, b]に属し、ffは[a,b][a, b]で連続であるから、定理 6.4によりf(lj)→f(c)f(l_j) \to f(c)、f(rj)→f(c)f(r_j) \to f(c)である。すべてのjjについてf(lj)≤k≤f(rj)f(l_j) \le k \le f(r_j)が成り立つので、§B1.7 定理 3.3を各項がkkである数列との比較に用いて

f(c)≤k≤f(c)f(c) \le k \le f(c)

を得る。したがってf(c)=kf(c) = kである。f(a)≠kf(a) \ne kかつf(b)≠kf(b) \ne kであるからccはaaともbbとも異なり、開区間(a,b)(a, b)に属する。▨

注意 7.2 (閉区間で連続であるという仮定). 連続であるという仮定を外すことはできない。x≠0x \ne 0で∣x∣x\dfrac{|x|}{x}、x=0x = 0で00と定めた関数は、x=0x = 0で連続でなく、[−1,1][-1, 1]で−1-1と11を値にとるが、12\dfrac12を値にとる点は存在しない。

閉区間[a,b][a, b]で連続であることは、開区間(a,b)(a, b)の各点で連続であることに加えて、lim⁡x→a+0f(x)=f(a)\displaystyle\lim_{x \to a+0} f(x) = f(a)とlim⁡x→b−0f(x)=f(b)\displaystyle\lim_{x \to b-0} f(x) = f(b)を含む。この端点での連続性も外すことはできない。f(0)=0f(0) = 0、f(1)=1f(1) = 1とし、0<x<10 < x < 1でf(x)=2f(x) = 2と定めた[0,1][0, 1]上の関数ffは、(0,1)(0, 1)の各点で連続であるが、lim⁡x→0+0f(x)=2≠f(0)\displaystyle\lim_{x \to 0+0} f(x) = 2 \ne f(0)、lim⁡x→1−0f(x)=2≠f(1)\displaystyle\lim_{x \to 1-0} f(x) = 2 \ne f(1)である。f(0)<12<f(1)f(0) < \dfrac12 < f(1)であるが、12\dfrac12を値にとる点は[0,1][0, 1]に存在しない。このffとk=12k = \dfrac12について定理 7.1の証明の区間IjI_jを作ると、どの中点mmでもf(m)=2>kf(m) = 2 > kであるからIj=[0,12 j−1]I_j = \left[0, \dfrac{1}{2^{\,j-1}}\right]となり、c=0c = 0である。j≥2j \ge 2ではf(rj)=2f(r_j) = 2であるから、f(rj)f(r_j)はf(c)=f(0)=0f(c) = f(0) = 0に近づかない。証明のうち定理 6.4を用いた段が、端点での連続性を使っている。

ffが区間IIで連続であり、p<qp < qがIIに属するならば、ffは[p,q][p, q]で連続であり、定理 7.1を[p,q][p, q]に用いることができる(IIの内側の点で連続であれば、定理 2.2により片側からの極限もその点での値に等しい)。開区間(0,1)(0, 1)で定義されたf(x)=xf(x) = xのように、両端で値をもたない関数にも、この形で定理を用いることができる。

例 7.3.x3−3x+1=0x^3 - 3x + 1 = 0が0<x<10 < x < 1に解をもつことを示す。f(x)=x3−3x+1f(x) = x^3 - 3x + 1は多項式で表される関数であるから、定理 6.3 (1)により[0,1][0, 1]で連続であり、

f(0)=1>0,f(1)=−1<0f(0) = 1 > 0, \qquad f(1) = -1 < 0

である。00はf(1)f(1)とf(0)f(0)のあいだにあるから、定理 7.1によりf(c)=0f(c) = 0を満たすccが(0,1)(0, 1)に存在する。

注意 7.4 (存在を示すことと、値を求めることは別である).定理 7.1により得られるのはccの存在であって、ccの値ではない。証明では区間を半分ずつ狭めているので、その手順をそのまま計算に使えばccを好きな精度まで求めることができる。存在の証明と、値を求める手続きが同じものになっている例である。

閑話休題:ラマヌジャンの無限に深い根号 1911 年、インドの数学雑誌にラマヌジャンが次の問題を投稿しました。

1+21+31+41+⋯= ?\sqrt{1 + 2\sqrt{1 + 3\sqrt{1 + 4\sqrt{1 + \cdots}}}} = \ ?

根号が無限に深く入れ子になった式です。のちにラマヌジャン自身が答えを示しました。値は33です。

もとになるのは恒等式x+1=1+x(x+2)x + 1 = \sqrt{1 + x(x + 2)}です。x+2x + 2の部分に同じ恒等式を(xxをx+1x+1に取り替えて)代入する操作を繰り返すと、上の入れ子が現れます。x=2x = 2とすれば値は33になります。

ただし、この操作だけでは等号は正当化されません。無限に続く式は、それ自体では意味を持たず、有限で切った列の極限として初めて意味を持ちます。有限で切った式の値が33に近づくことを、上下から評価して確かめる必要があります。この見方は、無限級数、無限積、連分数のいずれにも共通します。

例題

条件と何を求めるかを確認してから、式と答えの対応を見比べてください。

次の極限を求めよ。

解法の型0/00/0 は因数分解して約分、∞/∞\infty/\infty は最高次で割る

  1. 例題 1

    lim⁡x→3x2−x−6x−3\lim_{x \to 3} \dfrac{x^{2}-x-6}{x-3}
  2. 例題 2

    lim⁡x→∞x2+x+24x2−x−4\lim_{x \to \infty} \dfrac{x^{2}+x+2}{4x^{2}-x-4}
  3. 例題 3

    lim⁡x→−3x2−9x+3\lim_{x \to -3} \dfrac{x^{2}-9}{x+3}
  4. 例題 4

    lim⁡x→4x2−7x+12x−4\lim_{x \to 4} \dfrac{x^{2}-7x+12}{x-4}
  5. 例題 5

    lim⁡x→−3x2+7x+12x+3\lim_{x \to -3} \dfrac{x^{2}+7x+12}{x+3}

解法の型sin⁡xx→1\dfrac{\sin x}{x}\to1 と (1+1n)n→e\left(1+\dfrac1n\right)^n\to e の形に持ち込む

  1. 例題 1

    lim⁡n→∞(1+1n)2n\lim_{n \to \infty} \left(1 + \dfrac{1}{n}\right)^{2n}
  2. 例題 2

    lim⁡n→∞(1+1n)3n\lim_{n \to \infty} \left(1 + \dfrac{1}{n}\right)^{3n}
  3. 例題 3

    lim⁡x→0sin⁡2xx\lim_{x \to 0} \dfrac{\sin 2x}{x}
  4. 例題 4

    lim⁡x→0sin⁡5xx\lim_{x \to 0} \dfrac{\sin 5x}{x}
  5. 例題 5

    lim⁡x→0sin⁡3xx\lim_{x \to 0} \dfrac{\sin 3x}{x}

演習

問題を解いてから「解答・解説」を開けます。

次の極限を求めよ。

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