§B1.7数列の極限

最終更新

同じ計算を繰り返して項を次々に求めていくと、ある値へ寄っていくように見える数列があります。例えばa1=2a_1 = 2、an+1=12(an+2an)a_{n+1} = \dfrac12\left(a_n + \dfrac{2}{a_n}\right)で定まる数列は、2, 32, 1712, …2,\ \dfrac32,\ \dfrac{17}{12},\ \dotsと進み、2\sqrt2に近づいていくように見えます。しかし、有限個の項を計算しただけでは、番号を大きくしていけば本当に近づくのか、近づくならどの値なのかを確かめることができません。番号nnを限りなく大きくしたときの項ana_nの振る舞いを、近づく値があるかどうかも含めて言い表す考え方が数列の極限であり、数列を調べるときの最も基本的な道具の一つです。本単元ではここまで一般項や有限個の項の和を扱ってきましたが、ここからは、項が限りなく続くときの振る舞いを扱います。収束するかどうかの判断が難しい数列は、 §B1.8 極限の存在についてが扱います。本記事では、数列の極限について、基本的な性質と求め方を解説します。

1 収束、発散、振動

定義 1.1 (数列の極限). 数列{an}\{a_n\}について、nnを限りなく大きくしたときにana_nがある一定の値α\alphaに限りなく近づくならば、{an}\{a_n\}はα\alphaに収束するといい、

lim⁡n→∞an=α\lim_{n\to\infty} a_n = \alpha

と書く。このα\alphaを{an}\{a_n\}の極限値という。収束しない数列は発散するという。発散する場合は、さらに次の三つに分ける。

  1. nnを限りなく大きくしたときにana_nが限りなく大きくなるならば、{an}\{a_n\}は正の無限大に発散するといい、lim⁡n→∞an=∞\lim_{n\to\infty} a_n = \inftyと書く。
  2. nnを限りなく大きくしたときにana_nが限りなく小さくなるならば、{an}\{a_n\}は負の無限大に発散するといい、lim⁡n→∞an=−∞\lim_{n\to\infty} a_n = -\inftyと書く。
  3. 収束もせず、正の無限大にも負の無限大にも発散しないならば、{an}\{a_n\}は振動するという。

この定義の「限りなく近づく」は、nnを限りなく大きくしたときに、ana_nとα\alphaの差∣an−α∣|a_n - \alpha|がいくらでも小さくなることを意味します。この意味をε\varepsilonとNNによって精密に定めることは、 §D1 ε-論法と基礎解析で扱います。

注意 1.2 (極限値は数列の項ではない). 極限値α\alphaは、その数列のどれかの項の値であるとは限らない。an=1na_n = \dfrac1nはどのn≥1n \ge 1についてもan≠0a_n \ne 0であるが、lim⁡n→∞an=0\lim_{n\to\infty} a_n = 0である。

注意 1.3 (∞\inftyは数ではない). 記号∞\inftyは、ana_nが限りなく大きくなるという振る舞いを表すために用いるものであり、一つの数を表すものではない。lim⁡n→∞an=∞\lim_{n\to\infty} a_n = \inftyは、極限値が∞\inftyという数であることを述べているのではなく、{an}\{a_n\}が正の無限大に発散することを述べている。

2 r nr^{\,n}の極限

等比数列の一般項はa r n−1a\,r^{\,n-1}の形なので、等比数列の極限はr nr^{\,n}の極限に帰着します。r nr^{\,n}の振る舞いは、rrの値によって五つに分かれます。

定理 2.1. 実数rrについて、数列{r n}\{r^{\,n}\}の振る舞いは次のとおりである。

  1. r>1r > 1のとき、正の無限大に発散する。
  2. r=1r = 1のとき、11に収束する。
  3. ∣r∣<1|r| < 1のとき、00に収束する。
  4. r=−1r = -1のとき、振動する。
  5. r<−1r < -1のとき、振動する。

したがって、{r n}\{r^{\,n}\}が収束するのは−1<r≤1-1 < r \le 1のときに限る。

証明.r>1r > 1のとき、h=r−1h = r - 1とおくとh>0h > 0である。§B1.6 定理 3.1により、すべての正の整数nnについて

r n=(1+h) n≥1+nhr^{\,n} = (1 + h)^{\,n} \ge 1 + nh

が成り立つ。h>0h > 0であるから、1+nh1 + nhはnnを限りなく大きくすると限りなく大きくなり、それ以上であるr nr^{\,n}も限りなく大きくなる。よって 1 が成り立つ。

r=1r = 1のとき、すべてのnnについてr n=1r^{\,n} = 1である。よって 2 が成り立つ。

∣r∣<1|r| < 1のとき、r nr^{\,n}と00との差は∣r n−0∣=∣r∣ n|r^{\,n} - 0| = |r|^{\,n}であるから、∣r∣ n|r|^{\,n}が00に限りなく近づくことを示せばよい。r=0r = 0ならば、すべてのnnについて∣r∣ n=0|r|^{\,n} = 0である。r≠0r \ne 0ならば∣1r∣>1\left|\dfrac1r\right| > 1であるから、∣1r∣\left|\dfrac1r\right|に 1 を適用して、1∣r∣ n=∣1r∣ n\dfrac{1}{|r|^{\,n}} = \left|\dfrac1r\right|^{\,n}は限りなく大きくなる。正の数が限りなく大きくなるとき、その逆数は限りなく00に近づくので、∣r∣ n|r|^{\,n}は00に限りなく近づく。よって 3 が成り立つ。

r=−1r = -1のとき、nnが奇数ならばr n=−1r^{\,n} = -1、nnが偶数ならばr n=1r^{\,n} = 1である。r nr^{\,n}は−1-1と11を交互に取り、一定の値に近づくことはなく、限りなく大きくも小さくもならないので、振動する。よって 4 が成り立つ。

r<−1r < -1のとき、∣r∣>1|r| > 1であるから、∣r∣|r|に 1 を適用して、∣r n∣=∣r∣ n|r^{\,n}| = |r|^{\,n}は限りなく大きくなる。よってr nr^{\,n}は一定の値に近づかず、収束しない。また、nnが偶数ならばr n>0r^{\,n} > 0、nnが奇数ならばr n<0r^{\,n} < 0であり、どの番号より先にも正の項と負の項があるので、正の無限大にも負の無限大にも発散しない。したがって振動する。よって 5 が成り立つ。▨

例 2.2.(23) n\left(\dfrac23\right)^{\,n}は∣23∣<1\left|\dfrac23\right| < 1であるから00に収束する。(−12) n\left(-\dfrac12\right)^{\,n}も∣−12∣<1\left|-\dfrac12\right| < 1であるから00に収束する。(−32) n\left(-\dfrac32\right)^{\,n}は−32<−1-\dfrac32 < -1であるから振動する。(32) n\left(\dfrac32\right)^{\,n}は32>1\dfrac32 > 1であるから正の無限大に発散する。

3 極限の四則計算と大小関係

収束する数列どうしを足し合わせたり掛け合わせたりして作った数列については、極限値をもとの極限値から計算することができます。

定理 3.1. 数列{an}\{a_n\}と{bn}\{b_n\}がともに収束し、lim⁡n→∞an=α\lim_{n\to\infty} a_n = \alpha、lim⁡n→∞bn=β\lim_{n\to\infty} b_n = \betaであるとする。このとき次が成り立つ。

  1. 定数kk、llについて、lim⁡n→∞(k an+l bn)=kα+lβ\lim_{n\to\infty}(k\,a_n + l\,b_n) = k\alpha + l\betaである。
  2. lim⁡n→∞anbn=αβ\lim_{n\to\infty} a_n b_n = \alpha\betaである。
  3. β≠0\beta \ne 0であり、かつすべてのn≥1n \ge 1についてbn≠0b_n \ne 0であるならば、lim⁡n→∞anbn=αβ\lim_{n\to\infty}\dfrac{a_n}{b_n} = \dfrac{\alpha}{\beta}である。

この定理と、次に述べる定理 3.3は、本記事では認めて用います。どちらもε\varepsilonを用いた収束の定義から証明される規則であり、証明は §D1.6 極限の性質の証明で扱います。

注意 3.2 (商では各項が00でないことも必要である).定理 3.1の 3 では、極限値β\betaが00でないことに加えて、すべてのn≥1n \ge 1についてbn≠0b_n \ne 0であることが必要である。分母に00の項があれば、その番号でanbn\dfrac{a_n}{b_n}が定まらないからである。β≠0\beta \ne 0であっても、このことは保証されない。bn=1−1nb_n = 1 - \dfrac1nはβ=1\beta = 1に収束するが、b1=0b_1 = 0である。

大小関係についても、収束する二つの数列のあいだで次が成り立ちます。

定理 3.3. 数列{an}\{a_n\}と{bn}\{b_n\}がともに収束し、lim⁡n→∞an=α\lim_{n\to\infty} a_n = \alpha、lim⁡n→∞bn=β\lim_{n\to\infty} b_n = \betaであるとする。すべてのn≥1n \ge 1についてan≤bna_n \le b_nが成り立つならば、α≤β\alpha \le \betaである。

注意 3.4 (狭義の不等号は極限で保たれない). すべてのnnについてan<bna_n < b_nという狭義の不等号が成り立っていても、極限ではα<β\alpha < \betaとはかぎらない。an=0a_n = 0、bn=1nb_n = \dfrac1nはどのnnでもan<bna_n < b_nを満たすが、極限はどちらも00である。したがって、定理 3.3から結論として書くことができるのはα≤β\alpha \le \betaまでである。

例 3.5.an=n2a_n = n^2、bn=nb_n = nは、ともに正の無限大に発散する。この二つに定理 3.1の 1 を当てはめて、lim⁡n→∞(an−bn)\lim_{n\to\infty}(a_n - b_n)を「∞−∞\infty - \inftyであるから00」と計算することはできない。実際、an−bn=n2−n=n(n−1)a_n - b_n = n^2 - n = n(n-1)は正の無限大に発散する。

同じく両方が正の無限大に発散する組であっても、差の振る舞いは組ごとに異なる。an=n+1a_n = n + 1、bn=nb_n = nの場合はan−bn=1a_n - b_n = 1であって11に収束し、an=na_n = n、bn=n2b_n = n^2の場合はan−bn=n−n2a_n - b_n = n - n^2であって負の無限大に発散する。

4 不定形の整理

定義 4.1 (不定形).{an}\{a_n\}と{bn}\{b_n\}がともに正の無限大に発散するとき、an−bna_n - b_nやanbn\dfrac{a_n}{b_n}の極限は、二つの数列の選び方によって変わり、それぞれが発散するという事実だけからは定まらない。このように、各部分の極限だけからは全体の極限が定まらない形を不定形という。∞−∞\infty - \infty、∞∞\dfrac{\infty}{\infty}、0×∞0 \times \infty、00\dfrac00がこれにあたる。

不定形は、答えではなく、式を変形する必要がある状態を表します。分数式では分子と分母を分母の最高次の項で割り、根号を含む差では有理化して、各部分の極限が定まる形へ直します。根号そのものの極限は定理 3.1の対象ではないので、別に調べます。

例 4.2.lim⁡n→∞3n2−n2n2+1\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{3n^2 - n}{2n^2 + 1}は∞∞\dfrac{\infty}{\infty}の不定形である。分子と分母をn2 (≠0)n^2\ (\ne 0)で割ると

3n2−n2n2+1=3−1n2+1n2\frac{3n^2 - n}{2n^2 + 1} = \frac{3 - \dfrac1n}{2 + \dfrac{1}{n^2}}

となる。lim⁡n→∞1n=0\lim_{n\to\infty}\dfrac1n = 0かつlim⁡n→∞1n2=0\lim_{n\to\infty}\dfrac{1}{n^2} = 0であり、分母の極限22は00ではなく、各項の分母2+1n22 + \dfrac1{n^2}も00ではないから、定理 3.1の 3 を用いることができ、極限は32\dfrac32である。

例 4.3.lim⁡n→∞(n2+n−n)\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(\sqrt{n^2 + n} - n\right)は∞−∞\infty - \inftyの不定形である。n≥1n \ge 1のときn2+n+n>0\sqrt{n^2 + n} + n > 0であるから、この式にn2+n+n\sqrt{n^2 + n} + nを掛けて割ると

n2+n−n=(n2+n)−n2n2+n+n=nn2+n+n=11+1n+1\sqrt{n^2 + n} - n = \frac{(n^2 + n) - n^2}{\sqrt{n^2 + n} + n} = \frac{n}{\sqrt{n^2 + n} + n} = \frac{1}{\sqrt{1 + \dfrac1n} + 1}

となる。最後の等号では、分子と分母をn (>0)n\ (> 0)で割った。

分母に現れた1+1n\sqrt{1 + \dfrac1n}の極限は、定理 3.1の対象ではない。そこで、1+1n\sqrt{1 + \dfrac1n}と11の差を評価する。1+1n+1>1\sqrt{1 + \dfrac1n} + 1 > 1であるから

0<1+1n−1=(1+1n)−11+1n+1=1n⋅11+1n+1<1n0 < \sqrt{1 + \frac1n} - 1 = \frac{\left(1 + \dfrac1n\right) - 1}{\sqrt{1 + \dfrac1n} + 1} = \frac1n\cdot\frac{1}{\sqrt{1 + \dfrac1n} + 1} < \frac1n

である。1n\dfrac1nは00に限りなく近づくので、それより小さい正の数1+1n−1\sqrt{1 + \dfrac1n} - 1も00に限りなく近づき、lim⁡n→∞1+1n=1\lim_{n\to\infty}\sqrt{1 + \dfrac1n} = 1である。したがって、定理 3.1の 1 により分母の極限は22であり、00ではなく、各項の分母1+1n+1\sqrt{1 + \dfrac1n} + 1も00ではないから、定数列11に対する定理 3.1の 3 により、極限は12\dfrac12である。

上の評価のように、不等式で挟んで極限を決める方法は、 §B1.11 不等式評価とはさみうちの原理の運用が扱います。

5 Σ\Sigmaを含む式の極限

Σ\Sigmaを含む式の極限は、和の公式によってnnの式へ直してから求めます。

例 5.1.lim⁡n→∞1n3∑k=1nk2\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{1}{n^3}\sum_{k=1}^{n}k^2を求める。§B1.2 公式 3.2により∑k=1nk2=n(n+1)(2n+1)6\displaystyle\sum_{k=1}^{n}k^2 = \frac{n(n+1)(2n+1)}{6}であるから

1n3∑k=1nk2=n(n+1)(2n+1)6n3=16(1+1n)(2+1n)\frac{1}{n^3}\sum_{k=1}^{n}k^2 = \frac{n(n+1)(2n+1)}{6n^3} = \frac16\left(1 + \frac1n\right)\left(2 + \frac1n\right)

である。lim⁡n→∞1n=0\lim_{n\to\infty}\dfrac1n = 0であるから、定理 3.1の 1 により1+1n→11 + \dfrac1n \to 1、2+1n→22 + \dfrac1n \to 2であり、2 により、極限は16⋅1⋅2=13\dfrac16\cdot 1\cdot 2 = \dfrac13である。

注意 5.2 (項ごとに極限を取らない).例 5.1で、和の各項k2n3\dfrac{k^2}{n^3}は、kkを固定してnnを限りなく大きくすると00に近づく。しかし、そこから和の極限が00であると結論することはできない。定理 3.1の 1 が扱うのは、nnによらない個数の項の和である。Σ\Sigmaを含む式では項の個数そのものがnnとともに増えるので、この規則を項ごとに当てはめることはできない。先に和をnnの式へ直してから極限を取る。

6 広義単調と有界

漸化式で定まる数列の極限を扱う前に、数列の振る舞いを述べるための語を導入します。

定義 6.1 (広義単調と有界). 数列{an}\{a_n\}について、次のように定める。

  • すべてのn≥1n \ge 1についてan≤an+1a_n \le a_{n+1}が成り立つとき、{an}\{a_n\}は広義単調増加であるという。すべてのn≥1n \ge 1についてan+1≤ana_{n+1} \le a_nが成り立つとき、{an}\{a_n\}は広義単調減少であるという。広義単調増加または広義単調減少である数列を広義単調であるという。
  • ある実数MMが存在して、すべてのn≥1n \ge 1についてan≤Ma_n \le Mが成り立つとき、{an}\{a_n\}は上に有界であるという。ある実数mmが存在して、すべてのn≥1n \ge 1についてm≤anm \le a_nが成り立つとき、{an}\{a_n\}は下に有界であるという。上に有界かつ下に有界である数列を有界であるという。

この二つの語は、収束することを示すために使います。広義単調増加であって上に有界である数列と、広義単調減少であって下に有界である数列は、どちらも収束します。この主張と、その根拠である実数の連続性は§B1.8 極限の存在についてで扱います。

7 漸化式で定まる数列の極限

漸化式で定まる数列については、まず本単元で扱った変形によって一般項をnnの式で求めることができるかどうかを調べます。求めることができる場合は、その式の極限を取ります。

例 7.1.a1=0a_1 = 0、an+1=12an+1a_{n+1} = \dfrac12 a_n + 1(n≥1n \ge 1)とする。α=12α+1\alpha = \dfrac12\alpha + 1の解はα=2\alpha = 2であるからan+1−2=12 (an−2)a_{n+1} - 2 = \dfrac12\,(a_n - 2)であり、a1−2=−2a_1 - 2 = -2より

an−2=−2(12) n−1a_n - 2 = -2\left(\frac12\right)^{\,n-1}

である。∣12∣<1\left|\dfrac12\right| < 1であるから定理 2.1の 3 により(12) n−1\left(\dfrac12\right)^{\,n-1}は00に収束し、lim⁡n→∞an=2\lim_{n\to\infty} a_n = 2である。

本単元で扱った変形から一般項を直ちに得られない場合は、収束することを仮定したうえで、極限値が満たす関係を導きます。

例 7.2.a1=2a_1 = 2、an+1=12(an+2an)a_{n+1} = \dfrac12\left(a_n + \dfrac{2}{a_n}\right)(n≥1n \ge 1)とする。この数列の一般項は、本単元で扱った変形では求めることができない。{an}\{a_n\}が収束すると仮定して、その極限値を求める。

すべてのn≥1n \ge 1についてan>0a_n > 0である。実際、a1=2>0a_1 = 2 > 0であり、an>0a_n > 0ならばan+1=12(an+2an)>0a_{n+1} = \dfrac12\left(a_n + \dfrac{2}{a_n}\right) > 0である。よって2an\dfrac{2}{a_n}が定まる。さらに、an>0a_n > 0のとき

an+1−2=an2−22 an+22an=(an−2)22an≥0a_{n+1} - \sqrt2 = \frac{a_n^2 - 2\sqrt2\,a_n + 2}{2a_n} = \frac{(a_n - \sqrt2)^2}{2a_n} \ge 0

であるから、n≥2n \ge 2についてan≥2a_n \ge \sqrt2であり、a1=2>2a_1 = 2 > \sqrt2と合わせて、すべてのn≥1n \ge 1についてan≥2a_n \ge \sqrt2である。

{an}\{a_n\}の極限値をα\alphaとする。すべてのnnについて2≤an\sqrt2 \le a_nであるから、定数列{2}\{\sqrt2\}と{an}\{a_n\}に定理 3.3を用いて2≤α\sqrt2 \le \alphaを得る。特にα≠0\alpha \ne 0である。{an+1}\{a_{n+1}\}は{an}\{a_n\}の番号を一つずらしたものであるから、同じ値α\alphaに収束する。α≠0\alpha \ne 0かつすべてのnnでan≠0a_n \ne 0であるから、定数列{2}\{2\}と{an}\{a_n\}に定理 3.1の 3 を用いて2an→2α\dfrac{2}{a_n} \to \dfrac{2}{\alpha}であり、さらに 1 を用いて、漸化式の両辺の極限から

α=12(α+2α)\alpha = \frac12\left(\alpha + \frac{2}{\alpha}\right)

を得る。両辺に2α2\alphaを掛けると2α2=α2+22\alpha^2 = \alpha^2 + 2、すなわちα2=2\alpha^2 = 2であり、α≥2>0\alpha \ge \sqrt2 > 0と合わせてα=2\alpha = \sqrt2である。

注意 7.3 (この議論が示したこと).例 7.2で示されたのは、「{an}\{a_n\}が収束するならば、その極限値は2\sqrt2である」という主張である。{an}\{a_n\}が収束することそのものは示していない。収束することを示す方法の一つに、広義単調減少であって下に有界な数列は収束するという事実を用いる方法がある。この数列は、すべてのn≥1n \ge 1についてan≥2a_n \ge \sqrt2であるから下に有界であり、広義単調減少でもある。この確認と収束の導出は§B1.8 極限の存在についての例が扱う。また、an+1−2=an−22⋅an−2ana_{n+1} - \sqrt2 = \dfrac{a_n - \sqrt2}{2}\cdot\dfrac{a_n - \sqrt2}{a_n}であり、0≤an−2an<10 \le \dfrac{a_n - \sqrt2}{a_n} < 1であるから0≤an+1−2≤12(an−2)0 \le a_{n+1} - \sqrt2 \le \dfrac12(a_n - \sqrt2)である。この評価からan−2a_n - \sqrt2が00に近づくことを、単調性によらずに示すこともできる。

8 演習

問題 8.1.rrを−1-1でない実数とする。数列{r n1+r n}\left\{\dfrac{r^{\,n}}{1 + r^{\,n}}\right\}のすべての項が定まることを確かめ、この数列の極限をrrの値で場合分けして求めよ。

解答.

1+r n=01 + r^{\,n} = 0ならばr n=−1r^{\,n} = -1であり、∣r∣ n=1|r|^{\,n} = 1から∣r∣=1|r| = 1である。r=1r = 1ではr n=1≠−1r^{\,n} = 1 \ne -1であり、r=−1r = -1は除かれているから、すべてのn≥1n \ge 1について1+r n≠01 + r^{\,n} \ne 0であり、すべての項が定まる。

∣r∣<1|r| < 1のとき。定理 2.1の 3 によりr n→0r^{\,n} \to 0であり、定理 3.1の 1 により1+r n→11 + r^{\,n} \to 1である。1≠01 \ne 0であり、すべてのnnで1+r n≠01 + r^{\,n} \ne 0であるから、定理 3.1の 3 により、極限は01=0\dfrac01 = 0である。

r=1r = 1のとき。すべての項が12\dfrac12であるから、極限は12\dfrac12である。

∣r∣>1|r| > 1のとき。r n≠0r^{\,n} \ne 0であるから、分子と分母をr nr^{\,n}で割って

r n1+r n=1(1r) n+1\frac{r^{\,n}}{1 + r^{\,n}} = \frac{1}{\left(\dfrac1r\right)^{\,n} + 1}

を得る。∣1r∣<1\left|\dfrac1r\right| < 1であるから、定理 2.1の 3 により(1r) n→0\left(\dfrac1r\right)^{\,n} \to 0であり、定理 3.1の 1 により分母は11に収束する。分母の各項1+r nr n\dfrac{1 + r^{\,n}}{r^{\,n}}は00でないから、定理 3.1の 3 により、極限は11である。r<−1r < -1のとき{r n}\{r^{\,n}\}は振動するが、この数列は11に収束する。

以上より、極限は∣r∣<1|r| < 1のとき00、r=1r = 1のとき12\dfrac12、∣r∣>1|r| > 1のとき11である。▨

問題 8.2. 次の極限を求めよ。

  1. lim⁡n→∞(1n∑k=1nk−n2)\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(\frac1n\sum_{k=1}^{n}k - \frac n2\right)
  2. lim⁡n→∞13 n∑k=1n3 k\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{1}{3^{\,n}}\sum_{k=1}^{n}3^{\,k}
解答.
  1. §B1.2 公式 3.1により1n∑k=1nk=1n⋅n(n+1)2=n+12\displaystyle\frac1n\sum_{k=1}^{n}k = \frac1n\cdot\frac{n(n+1)}{2} = \frac{n+1}{2}であるから

    1n∑k=1nk−n2=n+12−n2=12\frac1n\sum_{k=1}^{n}k - \frac n2 = \frac{n+1}{2} - \frac n2 = \frac12

    である。すべての項が12\dfrac12であるから、極限は12\dfrac12である。第1項と第2項はどちらも正の無限大に発散するので、項ごとに定理 3.1の 1 を用いることはできない。

  2. §B1.1 公式 2.4を初項33、公比3 (≠1)3\ (\ne 1)として用いると∑k=1n3 k=3(1−3 n)1−3=3 n+1−32\displaystyle\sum_{k=1}^{n}3^{\,k} = \frac{3(1 - 3^{\,n})}{1 - 3} = \frac{3^{\,n+1} - 3}{2}であるから

    13 n∑k=1n3 k=3 n+1−32⋅3 n=12{3−3(13) n}\frac{1}{3^{\,n}}\sum_{k=1}^{n}3^{\,k} = \frac{3^{\,n+1} - 3}{2\cdot 3^{\,n}} = \frac12\left\{3 - 3\left(\frac13\right)^{\,n}\right\}

    である。∣13∣<1\left|\dfrac13\right| < 1であるから、定理 2.1の 3 により(13) n→0\left(\dfrac13\right)^{\,n} \to 0であり、定理 3.1の 1 により、極限は12(3−3⋅0)=32\dfrac12(3 - 3\cdot 0) = \dfrac32である。

▨

問題 8.3. 次の漸化式で定まる数列{an}\{a_n\}の極限値を求めよ。

  1. a1=1a_1 = 1、an+1=13an+2a_{n+1} = \dfrac13 a_n + 2(n≥1n \ge 1)。一般項を求めてから極限を取ること。
  2. a1=1a_1 = 1、an+1=2+ana_{n+1} = \sqrt{2 + a_n}(n≥1n \ge 1)。{an}\{a_n\}が収束すると仮定して求めること。根号を含む式は定理 3.1の対象ではないので、漸化式の両辺を22乗した式を用いること。
解答.
  1. α=13α+2\alpha = \dfrac13\alpha + 2の解はα=3\alpha = 3であるからan+1−3=13 (an−3)a_{n+1} - 3 = \dfrac13\,(a_n - 3)である。a1−3=−2a_1 - 3 = -2であるから、§B1.1 公式 2.2によりan−3=−2(13) n−1a_n - 3 = -2\left(\dfrac13\right)^{\,n-1}である。∣13∣<1\left|\dfrac13\right| < 1であるから定理 2.1の 3 により(13) n−1\left(\dfrac13\right)^{\,n-1}は00に収束し、lim⁡n→∞an=3\lim_{n\to\infty} a_n = 3である。

  2. すべてのn≥1n \ge 1についてan>0a_n > 0である。実際、a1=1>0a_1 = 1 > 0であり、an>0a_n > 0ならばan+1=2+an>0a_{n+1} = \sqrt{2 + a_n} > 0である。{an}\{a_n\}の極限値をα\alphaとすると、定理 3.3によりα≥0\alpha \ge 0である。漸化式の両辺を22乗すると、すべてのn≥1n \ge 1についてan+12=2+ana_{n+1}^2 = 2 + a_nである。{an+1}\{a_{n+1}\}もα\alphaに収束するので、左辺は定理 3.1の 2 によりα2\alpha^2に収束し、右辺は 1 により2+α2 + \alphaに収束する。よってα2=2+α\alpha^2 = 2 + \alpha、すなわち(α−2)(α+1)=0(\alpha - 2)(\alpha + 1) = 0であり、α≥0\alpha \ge 0からα=2\alpha = 2である。ここで示したのは、{an}\{a_n\}が収束するならば極限値は22であることであり、収束することは示していない。

▨

前提記事