§B1.12基本極限(sin x / x)

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数列や関数の極限は、式を和・差・積・商の部分に分け、それぞれの近づく先を組み合わせて求めることができます。ところが、部分の近づく先が分かっても、全体の近づく先が決まらない式があります。xxを00に近づけるとき、sin⁡xx\dfrac{\sin x}{x}の分母xxは00に近づきます。商の極限は、分母の近づく先が00でないときに分子と分母の近づく先から求められるので、この式にはその計算が使えません。数列(1+1n) n\left(1 + \dfrac1n\right)^{\,n}では、nnを大きくすると底1+1n1 + \dfrac1nは11に近づき、指数nnは限りなく大きくなります。底の動きと指数の動きのどちらか一方だけからは、全体の行き先を決められません。

この二つの式の行き先が、本記事の問いです。sin⁡xx\dfrac{\sin x}{x}については、角xxを弧度法で測るとき、x→0x \to 0で近づく値は何かを問います。(1+1n) n\left(1 + \dfrac1n\right)^{\,n}については、一つの値に収束するのかを問い、収束するとその極限値にネイピア数eeという名前が付きます。たとえばn=1000n = 1000のとき、(1+11000)1000\left(1 + \dfrac1{1000}\right)^{1000}は約2.71692.7169、(1+11000)1001\left(1 + \dfrac1{1000}\right)^{1001}は約2.71962.7196で、eeはこの二つの間にあります。

どちらも、最も基本的な極限の一つです。

本記事では、sin⁡xx\dfrac{\sin x}{x}の極限と、(1+1n) n\left(1 + \dfrac1n\right)^{\,n}の収束について解説します。

1 単位円から得られる不等式

三角関数を単位円上の点の座標で定義することと、角を弧度法で測ることは、 §A2.2 一般角と弧度法、三角関数の定義で扱いました。半径11の円の上に、中心角がxxである扇形を取ります。この扇形は、一方の三角形を含み、他方の三角形に含まれます。この包含関係から面積の大小が定まります。

定理 1.1. 角を弧度法で測る。0<x<π20 < x < \dfrac{\pi}{2}のとき

sin⁡x<x<tan⁡x\sin x < x < \tan x

が成り立つ。

証明. 原点O\mathrm{O}を中心とする半径11の円をとり、円周上に点A(1, 0)\mathrm{A}(1,\,0)と、∠AOB=x\angle\mathrm{AOB} = xを満たす点B\mathrm{B}を、xxを正の向きに測る位置にとる。さらに、点A\mathrm{A}における円の接線と半直線OB\mathrm{OB}との交点をT\mathrm{T}とする。0<x<π20 < x < \dfrac\pi2のとき、この交点T\mathrm{T}は存在する。

三角形OAB\mathrm{OAB}は扇形OAB\mathrm{OAB}に含まれ、扇形OAB\mathrm{OAB}は三角形OAT\mathrm{OAT}に含まれる。0<x<π20 < x < \dfrac\pi2のとき、これらはいずれも一致しない。三角形OAB\mathrm{OAB}の面積は12sin⁡x\dfrac12\sin x、三角形OAT\mathrm{OAT}の面積は12tan⁡x\dfrac12\tan xである。また、半径rr、中心角θ\theta(弧度法)の扇形の面積は12r2θ\dfrac12 r^2\thetaであるから、扇形OAB\mathrm{OAB}の面積は12x\dfrac12 xである。含む側の面積のほうが大きいので

12sin⁡x<12x<12tan⁡x\frac12\sin x < \frac12 x < \frac12\tan x

が成り立ち、各辺を22倍して結論を得る。▨

注意 1.2 (扇形の面積の公式を用いても循環論法にならない).定理 1.1の証明は、半径rr、中心角θ\theta(弧度法)の扇形の面積が12r2θ\dfrac12 r^2\thetaであることを用いている。この式は、扇形の面積が中心角に比例することと、中心角が2π2\piのときに扇形が円全体になって面積がπr2\pi r^2になることから、πr2⋅θ2π=12r2θ\pi r^2\cdot\dfrac{\theta}{2\pi} = \dfrac12 r^2\thetaとして得られる。

この導出が用いるのは、中学までに学ぶ事実である半径rrの円の面積がπr2\pi r^2であることと、弧度法による角の測り方だけである。sin⁡xx\dfrac{\sin x}{x}の極限も、正弦の導関数も用いない。したがって、この公式を用いてsin⁡x<x<tan⁡x\sin x < x < \tan xを示し、そこからsin⁡xx\dfrac{\sin x}{x}の極限を導く順序は、循環していない。

2 sin⁡xx\dfrac{\sin x}{x}の極限

定理 2.1. 角を弧度法で測る。

lim⁡x→0sin⁡xx=1\lim_{x\to 0}\frac{\sin x}{x} = 1

が成り立つ。

証明.0<x<π20 < x < \dfrac\pi2とする。定理 1.1のsin⁡x<x\sin x < xの両辺を正の数xxで割るとsin⁡xx<1\dfrac{\sin x}{x} < 1である。この範囲ではcos⁡x>0\cos x > 0であり、tan⁡x=sin⁡xcos⁡x\tan x = \dfrac{\sin x}{\cos x}であるから、x<tan⁡xx < \tan xの両辺に正の数cos⁡xx\dfrac{\cos x}{x}を掛けるとcos⁡x<sin⁡xx\cos x < \dfrac{\sin x}{x}である。

−π2<x<0-\dfrac\pi2 < x < 0とする。0<−x<π20 < -x < \dfrac\pi2であるから、0<x<π20 < x < \dfrac\pi2で示した評価を−x-xに用いるとcos⁡(−x)<sin⁡(−x)−x<1\cos(-x) < \dfrac{\sin(-x)}{-x} < 1である。cos⁡(−x)=cos⁡x\cos(-x) = \cos x、sin⁡(−x)=−sin⁡x\sin(-x) = -\sin xであるから

sin⁡(−x)−x=−sin⁡x−x=sin⁡xx\frac{\sin(-x)}{-x} = \frac{-\sin x}{-x} = \frac{\sin x}{x}

であり、cos⁡x<sin⁡xx<1\cos x < \dfrac{\sin x}{x} < 1である。

以上より、0<∣x∣<π20 < |x| < \dfrac\pi2を満たすすべてのxxについて

cos⁡x<sin⁡xx<1\cos x < \frac{\sin x}{x} < 1

が成り立つ。§B2.11 定理 2.2によりlim⁡x→0cos⁡x=cos⁡0=1\displaystyle\lim_{x\to 0}\cos x = \cos 0 = 1であり、定数関数11のx→0x \to 0における極限値は11である。したがって、a=0a = 0、δ=π2\delta = \dfrac\pi2、g(x)=cos⁡xg(x) = \cos x、f(x)=sin⁡xxf(x) = \dfrac{\sin x}{x}、h(x)=1h(x) = 1として§B1.11 定理 1.2を用いると、lim⁡x→0sin⁡xx=1\displaystyle\lim_{x\to 0}\frac{\sin x}{x} = 1である。▨

注意 2.2 (この評価は弧度法に依存する).定理 1.1の中辺にあるxxは、扇形の面積12x\dfrac12 xから来ている。半径rr、中心角θ\thetaの扇形について、面積が12r2θ\dfrac12 r^2\theta、弧の長さがrθr\thetaと書くことができるのは、θ\thetaを弧度法で測る場合に限る。したがって、この不等式は角を弧度法で測ることに依存しており、度数法では成り立たない。

実際、度数法で測った角の大きさをxxとすると、その角は弧度法でπx180\dfrac{\pi x}{180}である。t=πx180t = \dfrac{\pi x}{180}とおくと、x≠0x \ne 0のとき

sin⁡x∘x=sin⁡tx=π180⋅sin⁡tt\frac{\sin x^{\circ}}{x} = \frac{\sin t}{x} = \frac{\pi}{180}\cdot\frac{\sin t}{t}

である。xxが00と異なる値をとりながら00に限りなく近づくとき、ttも00と異なる値をとりながら00に限りなく近づくので、定理 2.1によりsin⁡tt\dfrac{\sin t}{t}は11に限りなく近づく。§B1.10 定理 3.1 (1)により

lim⁡x→0sin⁡x∘x=π180\lim_{x\to 0}\frac{\sin x^{\circ}}{x} = \frac{\pi}{180}

であり、11にはならない。定理 2.1を用いる場面では、角を弧度法で測る。

例 2.3.lim⁡x→0sin⁡3xx\displaystyle\lim_{x\to 0}\frac{\sin 3x}{x}を求める。x≠0x \ne 0のときsin⁡3xx=3⋅sin⁡3x3x\dfrac{\sin 3x}{x} = 3\cdot\dfrac{\sin 3x}{3x}である。xxが00と異なる値をとりながら00に限りなく近づくとき、t=3xt = 3xも00と異なる値をとりながら00に限りなく近づく。sin⁡3x3x\dfrac{\sin 3x}{3x}はsin⁡tt\dfrac{\sin t}{t}のとる値をとるので、定理 2.1により11に限りなく近づく。§B1.10 定理 3.1 (1)により、極限は3⋅1=33\cdot 1 = 3である。

lim⁡x→01−cos⁡xx2\displaystyle\lim_{x\to 0}\frac{1-\cos x}{x^2}を求める。∣x∣<π2|x| < \dfrac\pi2のときcos⁡x>0\cos x > 0であるから1+cos⁡x≠01 + \cos x \ne 0であり、0<∣x∣<π20 < |x| < \dfrac\pi2で分子と分母に1+cos⁡x1 + \cos xを掛けることができて

1−cos⁡xx2=1−cos⁡2xx2 (1+cos⁡x)=sin⁡2xx2 (1+cos⁡x)=(sin⁡xx)2⋅11+cos⁡x\frac{1-\cos x}{x^2} = \frac{1-\cos^2 x}{x^2\,(1+\cos x)} = \frac{\sin^2 x}{x^2\,(1+\cos x)} = \left(\frac{\sin x}{x}\right)^{2}\cdot\frac{1}{1+\cos x}

となる。§B2.11 定理 2.2によりlim⁡x→0cos⁡x=1\displaystyle\lim_{x\to 0}\cos x = 1であるから、§B1.10 定理 3.1 (1)により1+cos⁡x1 + \cos xは22に収束する。2≠02 \ne 0であるから、定理 2.1と、§B1.10 定理 3.1 (2)および§B1.10 定理 3.1 (3)により、極限は12⋅12=121^2\cdot\dfrac12 = \dfrac12である。

3 (1+1n) n\left(1+\dfrac1n\right)^{\,n}の収束

数列(1+1n) n\left(1 + \dfrac1n\right)^{\,n}を考えます。nnを大きくすると、底1+1n1 + \dfrac1nは11に近づき、指数nnは限りなく大きくなります。底が11に近づくことだけから極限を11と結論することはできず、指数が限りなく大きくなることだけから極限を正の無限大と結論することもできません。この数列は、実際には一つの値に収束します。

定理 3.1. 数列{(1+1n) n}\left\{\left(1 + \dfrac1n\right)^{\,n}\right\}は収束する。

証明.an=(1+1n) na_n = \left(1 + \dfrac1n\right)^{\,n}とおく。二項定理によって展開すると

an=∑k=0n(nk)1nka_n = \sum_{k=0}^{n}\binom{n}{k}\frac{1}{n^{k}}

である。k=0k = 0の項は11である。1≤k≤n1 \le k \le nの項は

(nk)1nk=n(n−1)⋯(n−k+1)k!  nk=1k!(1−1n)(1−2n)⋯(1−k−1n)\binom{n}{k}\frac{1}{n^{k}} = \frac{n(n-1)\cdots(n-k+1)}{k!\;n^{k}} = \frac{1}{k!}\left(1-\frac1n\right)\left(1-\frac2n\right)\cdots\left(1-\frac{k-1}{n}\right)

と書き下すことができる。k=1k = 1では右辺に因子1−jn1 - \dfrac{j}{n}は現れず、項は11である。

nnをn+1n+1に取り替える。1≤j≤k−11 \le j \le k-1のどのjjについても0<1−jn<1−jn+10 < 1 - \dfrac{j}{n} < 1 - \dfrac{j}{n+1}であるから、2≤k≤n2 \le k \le nの各項は真に大きくなる。k=0k = 0とk=1k = 1の項はどちらも11のままである。さらに、an+1a_{n+1}にはk=n+1k = n+1にあたる正の項が加わる。したがってan<an+1a_n < a_{n+1}であり、{an}\{a_n\}は狭義単調増加である。

上の表示で、各因子1−jn1 - \dfrac{j}{n}は11より小さい正の数であるから、1≤k≤n1 \le k \le nの項は1k!\dfrac{1}{k!}以下であり

an≤∑k=0n1k!a_n \le \sum_{k=0}^{n}\frac{1}{k!}

である。k≥1k \ge 1のとき、k!k!は11と、22以上のk−1k-1個の整数2,3,…,k2, 3, \ldots, kとの積であるからk!≥2 k−1k! \ge 2^{\,k-1}である。初項11、公比12\dfrac12の等比数列の初項から第nn項までの和に§B1.1 公式 2.4を用いると

∑k=0n1k!≤1+∑k=1n12 k−1=1+1−(1/2)n1−1/2<1+2=3\sum_{k=0}^{n}\frac{1}{k!} \le 1 + \sum_{k=1}^{n}\frac{1}{2^{\,k-1}} = 1 + \frac{1 - (1/2)^{n}}{1 - 1/2} < 1 + 2 = 3

となる。よってすべてのnnについてan<3a_n < 3であり、{an}\{a_n\}は上に有界である。

{an}\{a_n\}は狭義単調増加であるから広義単調増加であり、上に有界であるから、§B1.8 定理 3.1により収束する。▨

注意 3.2 (この証明が用いたもの). 上の証明で用いたのは、二項定理、k≥1k \ge 1についてk!≥2 k−1k! \ge 2^{\,k-1}であること、等比数列の和の公式、および§B1.8 定理 3.1である。§B1.8 定理 3.1は §B1.8 極限の存在についてで§B1.8 定理 2.1から証明されているので、この収束は、区間縮小法まで遡れば本単元の中で閉じている。

得られた上からの評価an≤∑k=0n1k!a_n \le \sum_{k=0}^{n}\dfrac{1}{k!}に現れる級数は、指数関数をべき級数として定義し直すときに現れるものと同じである。その扱いは §D1 ε-論法と基礎解析が与える。

この収束する数列の極限値に、ここで名前を付けます。

注意 3.3 (極限値の呼び名).定理 3.1の極限値をネイピア数といい、eeと書く。e=2.718281828⋯e = 2.718281828\cdotsであることが知られている。本記事で示すのは、次の節で作るeeを挟む区間と、その幅の評価である。

ネイピア数を指数関数の微分と結び付けて定める方法は §B3.7 ネイピア数が扱う。同記事では、a>0a > 0に対してaxa^{x}を微分すると現れる極限

lim⁡h→0ah−1h\lim_{h\to 0}\frac{a^{h}-1}{h}

が11になる底としてeeを定め、そのうえで定理 3.1の極限値が同じeeに等しいことを示す。指数関数と対数関数に関わる極限は §B3.10 対数関数の微分が扱う。

4 ネイピア数を挟む区間

以下、an=(1+1n) na_n = \left(1 + \dfrac1n\right)^{\,n}とおきます。{an}\{a_n\}が収束することが分かったので、次はその極限値eeがどのあたりにあるかを調べます。ana_nは下から近づく列ですから、上から近づく列を作って挟みます。指数を11だけ増やしたbn=(1+1n) n+1b_n = \left(1 + \dfrac1n\right)^{\,n+1}が、その役を果たします。

定理 4.1.bn=(1+1n) n+1b_n = \left(1 + \dfrac1n\right)^{\,n+1}とおくと、{bn}\{b_n\}は狭義単調減少である。

証明.n≥2n \ge 2とし、bn−1bn\dfrac{b_{n-1}}{b_n}を計算する。

bn−1bn=(nn−1)n(n+1n)n+1=n2n((n−1)(n+1))n⋅nn+1=(n2n2−1)n⋅nn+1\frac{b_{n-1}}{b_n} = \frac{\left(\dfrac{n}{n-1}\right)^{n}}{\left(\dfrac{n+1}{n}\right)^{n+1}} = \frac{n^{2n}}{\bigl((n-1)(n+1)\bigr)^{n}}\cdot\frac{n}{n+1} = \left(\frac{n^{2}}{n^{2}-1}\right)^{n}\cdot\frac{n}{n+1}

である。n≥2n \ge 2であるからh=1n2−1h = \dfrac{1}{n^{2}-1}はh>−1h > -1を満たし、§B1.6 定理 3.1をこのhhに用いると

(n2n2−1)n=(1+1n2−1)n≥1+nn2−1>1+nn2=n+1n\left(\frac{n^{2}}{n^{2}-1}\right)^{n} = \left(1 + \frac{1}{n^{2}-1}\right)^{n} \ge 1 + \frac{n}{n^{2}-1} > 1 + \frac{n}{n^{2}} = \frac{n+1}{n}

である。したがってbn−1bn>n+1n⋅nn+1=1\dfrac{b_{n-1}}{b_n} > \dfrac{n+1}{n}\cdot\dfrac{n}{n+1} = 1であり、bnb_nはどれも正であるからbn−1>bnb_{n-1} > b_nである。▨

定理 4.2. すべての正の整数nnについて

an<e<bn,bn−an=ann<3na_n < e < b_n, \qquad b_n - a_n = \frac{a_n}{n} < \frac{3}{n}

が成り立つ。

証明.定理 3.1の証明で示したとおり、{an}\{a_n\}は狭義単調増加であるから広義単調増加であり、上に有界である。その極限値はeeであるから、§B1.8 定理 3.1により、すべての正の整数mmについてam≤ea_m \le eである。したがって、すべての正の整数nnについてan<an+1≤ea_n < a_{n+1} \le eである。

bn=an(1+1n)b_n = a_n\left(1 + \dfrac1n\right)であり、1+1n1 + \dfrac1nは11に収束するので、§B1.7 定理 3.1により{bn}\{b_n\}はe⋅1=ee\cdot 1 = eに収束する。定理 4.1により{bn}\{b_n\}は狭義単調減少であるから広義単調減少であり、すべての項が正であるから下に有界である。§B1.8 定理 3.1により、その極限値eeはすべての正の整数mmについてe≤bme \le b_mを満たす。したがって、すべての正の整数nnについてe≤bn+1<bne \le b_{n+1} < b_nである。

幅についてはbn−an=an(1+1n)−an=annb_n - a_n = a_n\left(1+\dfrac1n\right) - a_n = \dfrac{a_n}{n}であり、定理 3.1の証明で示したan<3a_n < 3からann<3n\dfrac{a_n}{n} < \dfrac3nである。▨

注意 4.3 (この挟み込みは区間縮小法の形をしている).{an}\{a_n\}が増加し{bn}\{b_n\}が減少するので、閉区間[an,bn][a_n, b_n]は縮んでいく列になり、幅は3n\dfrac3nより小さく00に近づく。すなわちこの挟み込みは§B1.8 定理 2.1の形をしており、共通する実数がただ一つ存在することからもeeの存在を言うことができる。幅がnnの式として書けているので、そのまま値の評価に使うことができる。

例 4.4.n=1000n = 1000とすると

(1+11000)1000<e<(1+11000)1001\left(1 + \frac{1}{1000}\right)^{1000} < e < \left(1 + \frac{1}{1000}\right)^{1001}

であり、幅は31000\dfrac{3}{1000}より小さい。幅の評価が保証するのは、この区間の中の値をeeの近似値に選んだときの誤差の絶対値が31000\dfrac{3}{1000}より小さいことである。この保証だけでは、eeの小数第22位までが決まるとは限らない。桁を確定するには、両端を実際に計算し、同じ規則で丸めた値が一致することを確かめる。この場合には両端がそれぞれ約2.71692.7169と2.71962.7196であり、どちらも小数第22位へ丸めると2.722.72である。丸めは大小の向きを逆にしないので、両端の間にあるeeを小数第22位へ丸めた値も2.722.72である。より小さい誤差が必要ならば、必要なnnを幅の評価3n\dfrac3nから見積もることができる。

5 演習

問題 5.1. 角を弧度法で測る。次の極限を求めよ。

  1. lim⁡x→0tan⁡xx\displaystyle\lim_{x\to 0}\frac{\tan x}{x}
  2. lim⁡x→0sin⁡2xsin⁡3x\displaystyle\lim_{x\to 0}\frac{\sin 2x}{\sin 3x}
  3. lim⁡x→01−cos⁡xxsin⁡x\displaystyle\lim_{x\to 0}\frac{1-\cos x}{x\sin x}
解答.
  1. 0<∣x∣<π20 < |x| < \dfrac\pi2のときcos⁡x>0\cos x > 0であるから

    tan⁡xx=sin⁡xx⋅1cos⁡x\frac{\tan x}{x} = \frac{\sin x}{x}\cdot\frac{1}{\cos x}

    である。§B2.11 定理 2.2によりcos⁡x\cos xは11に収束し、1≠01 \ne 0であるから、§B1.10 定理 3.1 (3)により1cos⁡x\dfrac{1}{\cos x}は11に収束する。定理 2.1と§B1.10 定理 3.1 (2)により、極限は1⋅1=11\cdot 1 = 1である。

  2. 0<∣x∣<π60 < |x| < \dfrac\pi6とする。0<∣3x∣<π20 < |3x| < \dfrac\pi2であり、0<t<π20 < t < \dfrac\pi2でsin⁡t>0\sin t > 0、sin⁡(−t)=−sin⁡t\sin(-t) = -\sin tであるから、sin⁡3x≠0\sin 3x \ne 0である。このとき

    sin⁡2xsin⁡3x=23⋅sin⁡2x2x⋅1sin⁡3x3x\frac{\sin 2x}{\sin 3x} = \frac23\cdot\frac{\sin 2x}{2x}\cdot\frac{1}{\dfrac{\sin 3x}{3x}}

    である。xxが00と異なる値をとりながら00に限りなく近づくとき、2x2xと3x3xも00と異なる値をとりながら00に限りなく近づくので、定理 2.1によりsin⁡2x2x\dfrac{\sin 2x}{2x}とsin⁡3x3x\dfrac{\sin 3x}{3x}はどちらも11に収束する。1≠01 \ne 0であるから、§B1.10 定理 3.1 (3)、§B1.10 定理 3.1 (2)、§B1.10 定理 3.1 (1)により、極限は23⋅1⋅11=23\dfrac23\cdot 1\cdot\dfrac11 = \dfrac23である。

  3. 0<∣x∣<π20 < |x| < \dfrac\pi2のとき、xxとsin⁡x\sin xは同じ符号をもつ00でない数であるからxsin⁡x>0x\sin x > 0であり、cos⁡x>0\cos x > 0であるから1+cos⁡x>01 + \cos x > 0である。分子と分母に1+cos⁡x1 + \cos xを掛けると

    1−cos⁡xxsin⁡x=1−cos⁡2xxsin⁡x (1+cos⁡x)=sin⁡2xxsin⁡x (1+cos⁡x)=sin⁡xx⋅11+cos⁡x\frac{1-\cos x}{x\sin x} = \frac{1-\cos^2 x}{x\sin x\,(1+\cos x)} = \frac{\sin^2 x}{x\sin x\,(1+\cos x)} = \frac{\sin x}{x}\cdot\frac{1}{1+\cos x}

    である。§B2.11 定理 2.2と§B1.10 定理 3.1 (1)により1+cos⁡x1 + \cos xは22に収束し、2≠02 \ne 0であるから、定理 2.1と§B1.10 定理 3.1 (2)および§B1.10 定理 3.1 (3)により、極限は1⋅12=121\cdot\dfrac12 = \dfrac12である。

▨

問題 5.2. 次の極限を、ネイピア数eeを用いて表せ。

  1. lim⁡n→∞(1+1n)2n\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(1 + \frac1n\right)^{2n}
  2. lim⁡n→∞(1+1n)n−1\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(1 + \frac1n\right)^{n-1}
解答.

an=(1+1n) na_n = \left(1 + \dfrac1n\right)^{\,n}とおくと、{an}\{a_n\}の極限値はeeである。

  1. (1+1n)2n=an 2\left(1 + \dfrac1n\right)^{2n} = a_n^{\,2}であるから、§B1.7 定理 3.1により、極限はe2e^2である。

  2. (1+1n)n−1=an1+1n\left(1 + \dfrac1n\right)^{n-1} = \dfrac{a_n}{1 + \dfrac1n}である。1+1n1 + \dfrac1nは11に収束し、1≠01 \ne 0であり、すべてのnnについて1+1n≠01 + \dfrac1n \ne 0であるから、§B1.7 定理 3.1により、極限はe1=e\dfrac{e}{1} = eである。

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前提記事

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