1 収束を仮定した極限値の計算
「収束するとすれば極限値は何か」という問いには、多くの場合ただちに答えることができます。a1=1、an+1=2+anで定まる数列についてlimn→∞an=αと置き、漸化式をan+12=2+anと書き直して両辺の極限をとればα2=2+α、すなわちα2−α−2=0となり、α≥0とあわせてα=2を得ます。
しかしこの計算は、収束することを前提にしています。収束しない数列に同じ計算を当てはめると、存在しない値を求めたことになります。
例 1.1.b1=1、bn+1=2bn+1で定まる数列について、limbn=βと置いて両辺の極限をとるとβ=2β+1、すなわちβ=−1となる。しかしbnはすべて正であり、bn=2n−1であるから正の無限大に発散する。このβ=−1は、収束するという誤った前提から出た値である。
したがって、極限値を求める前に収束することそのものを示す必要があります。一般項が求まらない以上、その根拠は実数がもつ性質に求めるほかありません。
2 区間縮小法
広義単調増加であって、どの項もM以下である数列を考えます。項は増え続けながらMを越えることができないので、どこかへ落ち着くように見えます。ところが、この「落ち着く先」が存在することは、数の範囲を有理数に限ると成り立ちません。
2の小数第n位までを取った有限小数を第n項とする数列1.4, 1.41, 1.414, …は、広義単調増加でどの項も2以下ですが、有理数の中に落ち着く先がありません。落ち着く先が実数として存在することは、実数がもつ性質そのものです。
本単元では、この性質を次の形で認めて用います。
定理 2.1 (区間縮小法). 各n≥1について閉区間In=[an,bn]が定まり、次の二つを満たすとする。
- すべてのnについてIn+1⊆Inである。
- 区間の長さbn−anは、nを限りなく大きくすると0に近づく。
このとき、すべてのInに属する実数がただ一つ存在する。
3 単調収束定理
定理 3.1 (単調収束定理). 広義単調増加であって上に有界である数列{an}は収束し、その極限値αはすべてのn≥1についてan≤αを満たす。広義単調減少であって下に有界である数列{an}は収束し、その極限値αはすべてのn≥1についてα≤anを満たす。
証明.{an}を広義単調増加であって上に有界な数列とし、Mをすべてのnについてan≤Mを満たす実数とする。閉区間の列を次のように定める。I1=[a1,M]とする。Ik=[lk,rk]が定まったとき、その中点をcとして
- どの項もc以下であるならばIk+1=[lk,c]、
- cより大きい項があるならばIk+1=[c,rk]
と定める。
どのkについても次の二つが成り立つ。
(i) どの項もrk以下である。(ii)lk≤aNを満たす番号Nがある。k=1では、どの項もr1=M以下であり、l1=a1自身が項であるから、両方が成り立つ。Ikで両方が成り立つとする。Ik+1が前の場合に当たるならば、どの項もc=rk+1以下であるから
(i) が成り立ち、lk+1=lkであるから (ii) も成り立つ。後の場合に当たるならば、rk+1=rkであるから (i) が成り立ち、c=lk+1より大きい項aNがあるから (ii) も成り立つ。
作り方からIk+1⊆Ikであり、長さは半分ずつになるので
rk−lk=2k−1M−a1
である。§B1.7 定理 2.1により(21)kは0に近づくので、長さも0に近づく。したがって定理 2.1により、すべてのIkに属する実数αがただ一つ存在する。
kを一つ固定し、(ii) の番号をNとする。{an}は広義単調増加であるから、n≥Nのときlk≤aN≤anである。また
(i) からan≤rkである。よってn≥NのときanはIkに属し、αもIkに属するので
∣an−α∣≤rk−lk=2k−1M−a1
が成り立つ。右辺はkを大きくすると0に近づき、kはいくらでも大きく取ることができるので、anはαに近づく。すなわちlimn→∞an=αである。
番号nを一つ固定する。(i) から、すべてのkについてan≤rkである。αはIkに属するので0≤rk−α≤rk−lkであり、右辺はkを大きくすると0に近づくから、{rk}はαに収束する。すべての項がanである定数列と{rk}に§B1.7 定理 3.3を用いると、an≤αを得る。
{an}が広義単調減少であって下に有界であるとし、mをすべてのnについてm≤anを満たす実数とする。{−an}は広義単調増加であって、すべてのnについて−an≤−mであるから、上で示したことにより{−an}はある実数βに収束し、すべてのnについて−an≤βである。§B1.7 定理 3.1によりan=(−1)(−an)は−βに収束し、すべてのnについて−β≤anである。▨
4 単調収束定理による収束の証明
単調収束定理で収束を示すには、広義単調増加であることと上に有界であること、または広義単調減少であることと下に有界であることを、不等式の評価によって確かめます。
例 4.1.a1=1、an+1=2+anで定まる数列が収束することを示し、極限値を求める。
0≤a1=1≤2である。0≤an≤2を仮定すると、2≤2+an≤4であるからan+1=2+anが定まり、0≤an+1≤2である。よって数学的帰納法により、すべてのnについてanが定まり、0≤an≤2である。特に{an}は上に有界である。
また
an+12−an2=2+an−an2=(2−an)(1+an)≥0であり、an≥0、an+1≥0であるからan+1≥anである。よって{an}は広義単調増加である。
定理 3.1により{an}は収束し、その極限値αはα≥a1=1を満たす。番号を一つずらした数列{an+1}もαに収束するので、an+12=2+anの両辺に§B1.7 定理 3.1を用いるとα2=2+α、すなわち(α−2)(α+1)=0を得る。α≥1であるからα=2である。
例 4.2.a1=2、an+1=21(an+an2)で定まる数列{an}が収束することを示し、極限値を求める。
a1=2>0であり、an>0ならばan2が定まってan+1>0であるから、数学的帰納法により、すべてのnについてanが定まり、an>0である。正の数aに対して
21(a+a2)−2=2aa2−22a+2=2a(a−2)2≥0であるから、a=anとすると、すべてのnについてan+1≥2である。a1=2≥2でもあるから、すべてのnについてan≥2であり、{an}は下に有界である。
また
an+1−an=21(an2−an)=2an2−an2であり、an≥2より2−an2≤0、an>0であるからan+1≤anである。よって{an}は広義単調減少である。
定理 3.1により{an}は収束する。極限値をαとする。すべての項が2である定数列と{an}に§B1.7 定理 3.3を用いると2≤αであり、特にα>0である。したがって§B1.7 例 7.2によりα=2である。
例 4.4.sn=k=1∑nk21が収束することを示す。
sn+1−sn=(n+1)21>0であるから、{sn}は広義単調増加である。
s1=1<2である。n≥2とする。sn=1+k=1∑n−1(k+1)21であり、k≥1のとき(k+1)2>k(k+1)>0であるから
(k+1)21<k(k+1)1=k1−k+11
である。f(k)=−k1と置くと右辺はf(k+1)−f(k)に等しいので、この不等式をk=1,…,n−1について足し、§B1.2 公式 2.1を上端n−1で用いると
sn<1+f(n)−f(1)=1+(1−n1)<2
である。よってすべてのnについてsn<2であり、定理 3.1により{sn}は収束する。
この議論は極限値を与えない。極限値は6π2であるが、それを求めるには本単元の範囲を超える道具が要る。
5 二分法と近似の精度
定理 3.1の証明では、中点cに対して「どの項もc以下であるか」によって次の閉区間を選び、極限値を含む閉区間の幅を2k−1M−a1と評価しました。この分岐は無限個の項のすべてについての主張なので、有限個の項を計算しても一般には判定することができません。そのため、この証明は極限値が存在することを示しますが、閉区間を実際に計算する手続きを一般には与えません。
分岐を一点での値の計算で判定することができる場合には、閉区間の列を実際に計算することができ、区間の幅の評価がそのまま近似の精度になります。
例 5.1.f(x)=x2−2とする。I1=[1,2]とし、Ik=[lk,rk]が定まったとき、中点c=2lk+rkでの値f(c)を計算して、f(c)>0ならばIk+1=[lk,c]、f(c)<0ならばIk+1=[c,rk]と定める。cは有理数であり2は無理数であるから、f(c)=0となることはない。たとえばI1の中点1.5ではf(1.5)=0.25>0であるからI2=[1,1.5]である。
f(1)=−1<0、f(2)=2>0であり、この規則はf(lk)<0<f(rk)を保つ。よってすべてのkについてlk2<2<rk2であり、lkとrkは正であるからlk<2<rkである。区間の幅は1回ごとに半分になるので、Ikの幅は2k−11である。したがって、Ikのどの点xを2の近似値として選んでも
∣x−2∣<2k−11
である。正の整数mに対して2k−1≥10mを満たすkを取れば、絶対誤差が10−m未満の近似値が得られる。たとえば210=1024≥103であるから、I11のどの点も絶対誤差10−3未満の近似値である。
幅が小さいことだけでは、小数第3位が確定したとは限らない。実際に計算するとI11=[1.4140625, 1.4150390625]であり、幅は10−3未満であるが、両端を小数第3位までで切り捨てた値は1.414と1.415で異なる。次のI12=[1.4140625, 1.41455078125]では両端を切り捨てた値がともに1.414であり、2もI12に属するので、2=1.414⋯と小数第3位まで確定する。桁を確定するには、幅の評価に加えて、区間の両端を同じ規則で切り捨てた値または丸めた値が一致することを確認する。
6 演習
問題 6.1.b1=3、bn+1=2+bnで定まる数列{bn}が収束することを示し、極限値を求めよ。
解答.
b1=3≥2である。bn≥2を仮定すると、2+bn≥4であるからbn+1=2+bnが定まり、bn+1≥2である。よって数学的帰納法により、すべてのnについてbnが定まり、bn≥2である。特に{bn}は下に有界である。
また
bn+12−bn2=2+bn−bn2=−(bn−2)(bn+1)≤0であり、bn≥0、bn+1≥0であるからbn+1≤bnである。よって{bn}は広義単調減少である。
定理 3.1により{bn}は収束する。極限値をβとする。すべての項が2である定数列と{bn}に§B1.7 定理 3.3を用いるとβ≥2である。番号を一つずらした数列{bn+1}もβに収束するので、bn+12=2+bnの両辺に§B1.7 定理 3.1を用いるとβ2=2+β、すなわち(β−2)(β+1)=0を得る。β≥2であるからβ=2である。
漸化式は例 4.1と同じであるが、初項が2以上であるから、すべての項が2以上になり、数列は広義単調減少になる。▨
問題 6.2.f(x)=x2−3とし、例 5.1と同じ規則で、I1=[1,2]から閉区間I2、I3、I4を求めよ。また、Ikの幅が10−4以下になる最小のkを求めよ。
解答.
f(1)=−2<0、f(2)=1>0である。I1の中点23ではf(23)=−43<0であるからI2=[23, 2]である。I2の中点47ではf(47)=161>0であるからI3=[23, 47]である。I3の中点813ではf(813)=−6423<0であるからI4=[813, 47]である。
Ikの幅は2k−11である。213=8192<104≤16384=214であるから、2k−11≤10−4となる最小のkはk−1=14、すなわちk=15である。例 5.1と同じ理由で3はすべてのIkに属するので、I15のどの点を3の近似値として選んでも、絶対誤差は10−4未満である。▨