回転を表すには、角の大きさに加えて、回転の向きや何周したかを区別する必要があります。たとえば、反時計回りに420度回転したときの向きは、60度回転したときと同じですが、回転した量は異なります。一般角は、このような回転の量を表すための角です。三角比を円上の点の座標として捉えると、負の角や一周を超える角にも三角関数を定めることができます。この定義は、回転に伴って値が繰り返されることを理解する基礎になります。本記事では、一般角の測り方と、円による三角関数の定義を解説します。
1 一般角と弧度法
角を回転の量として表すとき、反時計回りを正、時計回りを負とします。回転を始める半直線を始辺、回転後の半直線を終辺と呼びます。一周を超える回転も含めた角が一般角です。度数法では一周をとします。
定義 1.1 (弧度法). 円の半径を、中心角に対応する弧の長さをとするとき、によって角の大きさを測る方法を 弧度法 (radian measure) という。単位をラジアンとし、正の回転には正、負の回転には負の符号を付ける。一周の角はラジアンである。
公式 1.2. 度数法の角と弧度法の角の換算は
したがってラジアン、ラジアンである。
例 1.3.はラジアン、はラジアンである。逆にラジアンはである。
公式 1.4. 半径、中心角ラジアンの扇形では、弧長と面積は
証明. 円周と円の面積に、それぞれ全周に対する中心角の割合を掛ける。▨
例 1.5. 半径、中心角の扇形では、である。負の角や一周を超える回転量を、通常の扇形の負の弧長や面積と解釈することはしない。
以降、単位を明示しない角はラジアンで表します。
2 単位円による定義
定義 2.1 (三角関数). 任意の実数角に対し、原点を中心とする半径の円上で、正の軸からだけ回転した点をとする。、と定め、のときと定める。これらを 三角関数 (trigonometric function) という。
注意 2.2. 正弦と余弦はすべての実数角で定義される。正接は
では定義されない。単位円上で終辺が軸と一致し、分母の座標がになるためである。
次の図では、角に対応する単位円上の点の位置を確認することができます。
図の表示範囲は角の定義域を制限しません。
3 符号と周期
注意 3.1. 軸上の点を除くと、の符号は第1象限で、第2象限で、第3象限で、第4象限でである。正接の符号は二つの座標の比から定まる。軸上では座標の一方がになるため、象限内の符号表をそのまま適用しない。
公式 3.2.、に対して
正接が定義される角ではである。同じ始辺から測った二つの角が同じ終辺をもつことと、その差が()であることは同値である。
証明. 整数回の一周によって単位円上の点は変わらない。同じ終辺へ戻る回転量は整数回の一周である。また、半周によってはに移るので、なら比は変わらない。▨
注意 3.3.ラジアンとは同じ角である。度数法と弧度法を混在させて足すことはできない。角を換算してから計算する。負の角や一周を超える角の三角関数は、同じ終辺をもつの角へ移して求めることができる。
例 3.4.とは同じ終辺をもち、第4象限の点
に対応する。したがって、どちらの角でもである。は第1象限の点に対応し、正接はである。
閑話休題:360 との使い分け なぜ1周をとするのかについては、古代の60進法や天文上の慣行と結び付けて説明されることが多いものの、ここでは起源を一つの理由に断定しません。360 は多くの整数で割り切れるため、角を分割して扱うときに便利な単位です。
一方、ラジアンは円の弧長から直接定まる単位です。そのため、という式は、角をラジアンで測ったときにだけ成り立ちます。度で測るとと係数が付きます。小さい角でと書くことができることや、微分公式が簡潔になることは、弧度法の数学的な利点です。物理現象への応用には、それぞれ別途のモデルと仮定が必要です。