1 和を積に変える公式
差の商の分子sin(x+h)−sinxを積に直すために、正弦と余弦の差を積に変える公式を用意します。
証明.p=2A+B、q=2A−Bと置くとA=p+q、B=p−qである。
§A2.3 加法定理とその派生公式の加法定理により
sin(p+q)=sinpcosq+cospsinq,sin(p−q)=sinpcosq−cospsinqであるから、辺々を引くとsinA−sinB=2cospsinqである。同様に
cos(p+q)=cospcosq−sinpsinq,cos(p−q)=cospcosq+sinpsinqの辺々を引くとcosA−cosB=−2sinpsinqである。pとqをもとのA、Bで書き直すと、結論を得る。▨
2 正弦の評価と連続性
差の商を積に直すとcos(x+2h)が現れます。これがh→0でcosxに近づくことは、正弦の値の大きさの評価から従います。この節の評価と連続性は、x→0でのxsinxの極限を用いずに示します。
定理 2.1. 角を弧度法で測る。すべての実数uについて
∣sinu∣≤∣u∣が成り立つ。
証明.u=0のときは両辺が0で成り立つ。
0<u<2πのとき、
§B1.12 基本極限(sin x / x)の§B1.12 定理 1.1によりsinu<uである。この範囲ではsinu>0であるから∣sinu∣=sinu<u=∣u∣である。
u≥2πのときは、∣sinu∣≤1<2π≤u=∣u∣である。
u<0のときは、sin(−u)=−sinuであるから∣sinu∣=∣sin(−u)∣であり、−u>0についていま示したことから∣sin(−u)∣≤∣−u∣=∣u∣である。▨
定理 2.2. すべての実数xについて
t→0limsin(x+t)=sinx,t→0limcos(x+t)=cosxが成り立つ。
証明.公式 1.1でA=x+t、B=xとすると
sin(x+t)−sinx=2cos(x+2t)sin2t,cos(x+t)−cosx=−2sin(x+2t)sin2tである。正弦と余弦の値の絶対値は1を超えないので、どちらの右辺も絶対値が2sin2t以下である。定理 2.1によりsin2t≤2∣t∣であるから
∣sin(x+t)−sinx∣≤∣t∣,∣cos(x+t)−cosx∣≤∣t∣が成り立つ。右辺はt→0のとき0に近づくので、結論を得る。▨
3 x→0での二つの基本極限
証明.式 (3.1.1)は
§B1.12 基本極限(sin x / x)の§B1.12 定理 2.1である。
式 (3.1.2)を式 (3.1.1)から導く。§A2.3 加法定理とその派生公式の半角の公式により、すべての実数xについて1−cosx=2sin22xが成り立つ。x=0のとき
x1−cosx=x2sin22x=2xsin2x⋅sin2xとなる。t=2xと置くと、x→0のときt→0であり、x=0のときt=0である。式 (3.1.1)によりtsintは1に近づく。また定理 2.2でx=0とするとlimt→0sint=sin0=0である。よってlimx→0x1−cosx=1⋅0=0である。▨
4 正弦と余弦の導関数
定理 4.1. 角を弧度法で測る。sinとcosはすべての実数xで微分可能であり
(sinx)′(cosx)′=cosx,=−sinx(4.1.1) が成り立つ。
証明. 実数xを固定する。h=0のとき、公式 1.1でA=x+h、B=xとすると
hsin(x+h)−sinx=h2cos(x+2h)sin2h=cos(x+2h)⋅2hsin2hである。t=2hと置くと、h→0のときt→0であり、h=0のときt=0である。公式 3.1によりtsintは1に近づく。また定理 2.2によりcos(x+2h)はcosxに近づく。よって差の商はcosx⋅1=cosxに近づき、(sinx)′=cosxである。
余弦についても同様に、h=0のとき
hcos(x+h)−cosx=h−2sin(x+2h)sin2h=−sin(x+2h)⋅2hsin2hである。定理 2.2によりsin(x+2h)はsinxに近づくので、差の商は−sinx⋅1=−sinxに近づき、(cosx)′=−sinxである。▨
同じ定理は、差の商を加法定理で展開しても証明できます。
別証明は、連続性を引かずにx1−cosxの極限を直接用います。ただし、その極限の証明はsinの0での連続性を引き、式 (3.1.1)の証明もcosの0での連続性を引いています。
横軸は弧度法で測った角x、縦軸は関数の値です。原点における接線の傾き1は、定理 4.1にx=0を代入したcos0=1から得られます。
例 4.2.y=sinxのx=3πにおける微分係数は、定理 4.1によりcos3π=21である。sin3π=23であるから、この点における接線(§B2.5 定義 1.2)の方程式は
y=23+21(x−3π)である。
例 4.3. 導関数f′がさらに微分可能なとき、その導関数をf′′、f′′の導関数をf′′′、さらにその導関数をf(4)と書く。定理 4.1を繰り返し用いると
(sinx)′=cosx,(sinx)′′=−sinx,(sinx)′′′=−cosx,(sinx)(4)=sinxである。4回微分すると、もとの関数に戻る。
5 度数法と導関数の係数
6 演習
問題 6.1 (積の微分法との組合せ).
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f(x)=sinxcosxの導関数を、積の微分法と定理 4.1を用いて求め、cos2x−sin2xの形からcos2xの形へ直しなさい。
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角を度数法で測り、C(x)=cosx∘と書く。C′(x)を求めなさい。
解答 (演習の解答).
(1)について、§B2.10 定理 3.1によりf′(x)=(sinx)′cosx+sinx(cosx)′=cos2x−sin2xである。余弦の2倍角の公式により、これはcos2xに等しい。
(2)について、C(x)=cos(180πx)である。§B2.10 定理 5.1と定理 4.1によりC′(x)=−sin(180πx)⋅180π=−180πsinx∘である。▨