§B2.6合成関数

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二つの関数を続けて施すと、一つの対応が得られます。xxから33を引き、その結果の平方根をとる操作は、xxにx−3\sqrt{x-3}を対応させる一つの関数とみることができます。

ただし、続けて施すことができるのは、内側の関数の値が外側の関数の定義域に入る入力に限られます。この例では、x<3x<3の入力で平方根の中が負になり、値が定まりません。

このように二つの関数から作る関数を合成関数といい、複雑な式の仕組みを読み解くための基本的な道具です。合成関数は、後に合成関数の微分法で、外側の関数と内側の関数に分けて導関数を求めるときに用います。

本記事では、合成関数の定義や代表的な例について解説します。

1 合成関数と定義域

定義 1.1 (合成関数と自然な定義域).DfD_f、DgD_gを実数の部分集合とし、f:Df→Rf:D_f\to\mathbb{R}、g:Dg→Rg:D_g\to\mathbb{R}とする。ffを内側の関数、ggを外側の関数として、

Dg∘f={x∈Df∣f(x)∈Dg}D_{g\circ f}=\{x\in D_f\mid f(x)\in D_g\}

とおく。x∈Dg∘fx\in D_{g\circ f}にg(f(x))g(f(x))を対応させる関数をg∘fg\circ fと書き、合成関数 (composite function) という。Dg∘fD_{g\circ f}が空集合であるときも、値をとる入力のない関数としてg∘fg\circ fを考える。

例 1.2.f(x)=x−3f(x)=x-3を実数全体で、g(x)=xg(x)=\sqrt{x}を[0,∞)[0,\infty)で定める。g∘fg\circ fの定義域はx−3≥0x-3\ge0を満たす[3,∞)[3,\infty)であり、(g∘f)(x)=x−3(g\circ f)(x)=\sqrt{x-3}である。値域は[0,∞)[0,\infty)である。実際、x≥3x\ge3のときx−3≥0\sqrt{x-3}\ge0であり、t≥0t\ge0に対してx=t2+3x=t^2+3とおけば(g∘f)(x)=t(g\circ f)(x)=tとなる。一方、(f∘g)(x)=x−3(f\circ g)(x)=\sqrt{x}-3の定義域は[0,∞)[0,\infty)である。

例 1.3.

  1. f(x)=xf(x)=\sqrt{x}を[0,∞)[0,\infty)で、g(x)=x2g(x)=x^2を実数全体で定める。g∘fg\circ fの定義域は[0,∞)[0,\infty)であり、(g∘f)(x)=(x)2=x(g\circ f)(x)=(\sqrt{x})^2=xである。式はxxに簡約されるが、g∘fg\circ fはx<0x<0では定義されない。f∘gf\circ gの定義域は実数全体であり、(f∘g)(x)=x2=∣x∣(f\circ g)(x)=\sqrt{x^2}=|x|である。

  2. f(x)=1xf(x)=\dfrac1xをx≠0x\ne0で、g(x)=1x−1g(x)=\dfrac1{x-1}をx≠1x\ne1で定める。g∘fg\circ fの定義域は{x≠0∣1x≠1}\{x\ne0\mid \frac1x\ne1\}すなわちx≠0, 1x\ne0,\,1であり、(g∘f)(x)=11x−1=x1−x(g\circ f)(x)=\dfrac{1}{\frac1x-1}=\dfrac{x}{1-x}である。簡約した式x1−x\dfrac{x}{1-x}はx=0x=0でも値をとるが、0∉Dg∘f0\notin D_{g\circ f}である。

  3. f(x)=−x2−1f(x)=-x^2-1を実数全体で、g(x)=xg(x)=\sqrt{x}を[0,∞)[0,\infty)で定める。すべての実数xxに対してf(x)≤−1<0f(x)\le-1<0であるから、Dg∘f=∅D_{g\circ f}=\varnothingである。

2 合成の順序と結合法則

定理 2.1. 実数全体で定義された関数ff、ggで、g∘fg\circ fとf∘gf\circ gの定義域がともに実数全体でありながら、g∘f≠f∘gg\circ f\ne f\circ gとなるものが存在する。

証明.例 2.2のf(x)=x+1f(x)=x+1、g(x)=x2g(x)=x^2をとる。両方の定義域は実数全体であり、x=1x=1で(g∘f)(1)=4(g\circ f)(1)=4、(f∘g)(1)=2(f\circ g)(1)=2であるから、g∘f≠f∘gg\circ f\ne f\circ gである。▨

例 2.2.f(x)=x+1f(x)=x+1、g(x)=x2g(x)=x^2をともに実数全体で定める。このとき(g∘f)(x)=(x+1)2(g\circ f)(x)=(x+1)^2、(f∘g)(x)=x2+1(f\circ g)(x)=x^2+1である。x=1x=1で前者は44、後者は22となるため、二つの関数は一致しない。

定義域だけが異なる場合も、順序の交換はできません。例 1.3 (1)ではg∘fg\circ fの定義域が[0,∞)[0,\infty)、f∘gf\circ gの定義域が実数全体であり、共通の定義域[0,∞)[0,\infty)の上では値がどちらもxxですが、定義域が一致しないので二つの関数は異なります。

定理 2.3 (合成の結合法則).f:Df→Rf:D_f\to\mathbb{R}、g:Dg→Rg:D_g\to\mathbb{R}、h:Dh→Rh:D_h\to\mathbb{R}を実数値関数とする。このとき(h∘g)∘f(h\circ g)\circ fとh∘(g∘f)h\circ(g\circ f)の定義域はともに{x∈Df∣f(x)∈Dg, g(f(x))∈Dh}\{x\in D_f\mid f(x)\in D_g,\ g(f(x))\in D_h\}であり、その上で値はともにh(g(f(x)))h(g(f(x)))である。したがって(h∘g)∘f=h∘(g∘f)(h\circ g)\circ f=h\circ(g\circ f)である。

証明.定義 1.1によりDh∘g={y∈Dg∣g(y)∈Dh}D_{h\circ g}=\{y\in D_g\mid g(y)\in D_h\}である。したがって(h∘g)∘f(h\circ g)\circ fの定義域は{x∈Df∣f(x)∈Dh∘g}\{x\in D_f\mid f(x)\in D_{h\circ g}\}であり、f(x)∈Dh∘gf(x)\in D_{h\circ g}はf(x)∈Dgf(x)\in D_gかつg(f(x))∈Dhg(f(x))\in D_hと同値である。値は((h∘g)∘f)(x)=(h∘g)(f(x))=h(g(f(x)))((h\circ g)\circ f)(x)=(h\circ g)(f(x))=h(g(f(x)))である。

一方、Dg∘f={x∈Df∣f(x)∈Dg}D_{g\circ f}=\{x\in D_f\mid f(x)\in D_g\}であるから、h∘(g∘f)h\circ(g\circ f)の定義域は{x∈Dg∘f∣(g∘f)(x)∈Dh}\{x\in D_{g\circ f}\mid (g\circ f)(x)\in D_h\}である。これはx∈Dfx\in D_f、f(x)∈Dgf(x)\in D_g、g(f(x))∈Dhg(f(x))\in D_hを満たすxxの全体であり、先の集合と一致する。値は(h∘(g∘f))(x)=h((g∘f)(x))=h(g(f(x)))(h\circ(g\circ f))(x)=h((g\circ f)(x))=h(g(f(x)))である。定義域と値がともに等しいので、二つの関数は等しい。▨

注意 2.4 (三つの合成の記法). 結合法則により、括弧を省いてh∘g∘fh\circ g\circ fと書く。その定義域は{x∈Df∣f(x)∈Dg, g(f(x))∈Dh}\{x\in D_f\mid f(x)\in D_g,\ g(f(x))\in D_h\}であり、値はh(g(f(x)))h(g(f(x)))である。式だけを比べず、定義域も合わせて確認する。

3 演習

問題 3.1 (定義域つきの合成).f(x)=x−2f(x)=x-2を実数全体で、g(x)=xg(x)=\sqrt{x}を[0,∞)[0,\infty)で定める。g∘fg\circ fとf∘gf\circ gについて、式、定義域、値域を求めなさい。

解答 (演習の解答).

(g∘f)(x)=x−2(g\circ f)(x)=\sqrt{x-2}であり、定義域はx−2≥0x-2\ge0すなわち[2,∞)[2,\infty)である。t≥0t\ge0に対してx=t2+2x=t^2+2とおくと値がttになるので、値域は[0,∞)[0,\infty)である。

(f∘g)(x)=x−2(f\circ g)(x)=\sqrt{x}-2であり、定義域は[0,∞)[0,\infty)である。x\sqrt{x}は[0,∞)[0,\infty)のすべての値をとるので、値域は[−2,∞)[-2,\infty)である。▨

問題 3.2 (順序の交換).f(x)=2x+1f(x)=2x+1、g(x)=x2g(x)=x^2を実数全体で定める。g∘f≠f∘gg\circ f\ne f\circ gであることを示しなさい。

解答.

(g∘f)(x)=(2x+1)2(g\circ f)(x)=(2x+1)^2、(f∘g)(x)=2x2+1(f\circ g)(x)=2x^2+1である。x=1x=1で(g∘f)(1)=9(g\circ f)(1)=9、(f∘g)(1)=3(f\circ g)(1)=3となり、値が異なるのでg∘f≠f∘gg\circ f\ne f\circ gである。▨

問題 3.3 (定義域が除かれる合成).g(x)=xg(x)=\sqrt{x}を[0,∞)[0,\infty)で定める。次のffについて、g∘fg\circ fの定義域を求めなさい。(1)では値域も求めなさい。

  1. f(x)=1−x2f(x)=1-x^2(実数全体)

  2. f(x)=1xf(x)=\dfrac1x(x≠0x\ne0)

  3. f(x)=−x2−1f(x)=-x^2-1(実数全体)

解答.

(1)について、Dg∘f={x∣1−x2≥0}=[−1,1]D_{g\circ f}=\{x\mid 1-x^2\ge0\}=[-1,1]である。(g∘f)(x)=1−x2(g\circ f)(x)=\sqrt{1-x^2}であり、x∈[−1,1]x\in[-1,1]のとき0≤1−x2≤10\le1-x^2\le1であるから値は[0,1][0,1]に入る。s∈[0,1]s\in[0,1]に対してx=1−s2∈[0,1]x=\sqrt{1-s^2}\in[0,1]とおくと値がssになるので、値域は[0,1][0,1]である。

(2)について、Dg∘f={x≠0∣1x≥0}=(0,∞)D_{g\circ f}=\{x\ne0\mid \frac1x\ge0\}=(0,\infty)である。

(3)について、すべての実数xxに対してf(x)≤−1<0f(x)\le-1<0であるから、Dg∘f=∅D_{g\circ f}=\varnothingである。▨

問題 3.4 (合成への分解). 次の関数を、実数全体または[0,∞)[0,\infty)で定めた関数ff、ggの合成g∘fg\circ fとして表しなさい。ただし、定義域はg∘fg\circ fの自然な定義域と一致させること。

  1. x2+1\sqrt{x^2+1}

  2. (2x+1)5(2x+1)^5

解答.

(1)について、f(x)=x2+1f(x)=x^2+1を実数全体で、g(x)=xg(x)=\sqrt{x}を[0,∞)[0,\infty)で定める。x2+1≥1x^2+1\ge1であるからDg∘fD_{g\circ f}は実数全体であり、(g∘f)(x)=x2+1(g\circ f)(x)=\sqrt{x^2+1}である。

(2)について、f(x)=2x+1f(x)=2x+1、g(x)=x5g(x)=x^5をともに実数全体で定める。Dg∘fD_{g\circ f}は実数全体であり、(g∘f)(x)=(2x+1)5(g\circ f)(x)=(2x+1)^5である。▨

例題

条件と何を求めるかを確認してから、式と答えの対応を見比べてください。

次の f, g について (f∘g)(x) と (g∘f)(x) を求め、両者が一致するかどうか答えよ。定義域が狭まる場合は明示すること。

次の f, g について (f∘g)(x) と (g∘f)(x) を求め、両者が一致するかどうか答えよ。

解法の型(f∘g)(x) == f(g(x))。内側の g を先に計算する。定義域は「g の定義域」かつ「g の値域が f の定義域に入る条件」で絞る

  1. 例題 1

    f(x)=x,g(x)=x−3f(x) = \sqrt{x},\qquad g(x) = x-3
  2. 例題 2

    f(x)=−3x+4,g(x)=2x−3f(x) = -3x+4,\qquad g(x) = 2x-3
  3. 例題 3

    f(x)=2x,g(x)=x2f(x) = 2x,\qquad g(x) = \dfrac{x}{2}
  4. 例題 4

    f(x)=−3x,g(x)=3x+1f(x) = -3x,\qquad g(x) = 3x+1
  5. 例題 5

    f(x)=5x−4,g(x)=x+45f(x) = 5x-4,\qquad g(x) = \dfrac{x+4}{5}
  6. 例題 6

    f(x)=3x−1,g(x)=x+13f(x) = 3x-1,\qquad g(x) = \dfrac{x+1}{3}
  7. 例題 7

    f(x)=−2x−2,g(x)=x2+3f(x) = -2x-2,\qquad g(x) = x^{2}+3
  8. 例題 8

    f(x)=2x+3,g(x)=2x+1f(x) = 2x+3,\qquad g(x) = 2x+1
  9. 例題 9

    f(x)=3x+4,g(x)=x−43f(x) = 3x+4,\qquad g(x) = \dfrac{x-4}{3}
  10. 例題 10

    f(x)=3x,g(x)=−3x+4f(x) = 3x,\qquad g(x) = -3x+4

演習

問題を解いてから「解答・解説」を開けます。

次の f, g について (f∘g)(x) と (g∘f)(x) を求め、両者が一致するかどうか答えよ。定義域が狭まる場合は明示すること。

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