1 合成関数と定義域
定義 1.1 (合成関数と自然な定義域).Df、Dgを実数の部分集合とし、f:Df→R、g:Dg→Rとする。fを内側の関数、gを外側の関数として、
Dg∘f={x∈Df∣f(x)∈Dg}
とおく。x∈Dg∘fにg(f(x))を対応させる関数をg∘fと書き、合成関数 (composite function) という。Dg∘fが空集合であるときも、値をとる入力のない関数としてg∘fを考える。
例 1.2.f(x)=x−3を実数全体で、g(x)=xを[0,∞)で定める。g∘fの定義域はx−3≥0を満たす[3,∞)であり、(g∘f)(x)=x−3である。値域は[0,∞)である。実際、x≥3のときx−3≥0であり、t≥0に対してx=t2+3とおけば(g∘f)(x)=tとなる。一方、(f∘g)(x)=x−3の定義域は[0,∞)である。
例 1.3.
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f(x)=xを[0,∞)で、g(x)=x2を実数全体で定める。g∘fの定義域は[0,∞)であり、(g∘f)(x)=(x)2=xである。式はxに簡約されるが、g∘fはx<0では定義されない。f∘gの定義域は実数全体であり、(f∘g)(x)=x2=∣x∣である。
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f(x)=x1をx=0で、g(x)=x−11をx=1で定める。g∘fの定義域は{x=0∣x1=1}すなわちx=0,1であり、(g∘f)(x)=x1−11=1−xxである。簡約した式1−xxはx=0でも値をとるが、0∈/Dg∘fである。
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f(x)=−x2−1を実数全体で、g(x)=xを[0,∞)で定める。すべての実数xに対してf(x)≤−1<0であるから、Dg∘f=∅である。
2 合成の順序と結合法則
定理 2.1. 実数全体で定義された関数f、gで、g∘fとf∘gの定義域がともに実数全体でありながら、g∘f=f∘gとなるものが存在する。
証明.例 2.2のf(x)=x+1、g(x)=x2をとる。両方の定義域は実数全体であり、x=1で(g∘f)(1)=4、(f∘g)(1)=2であるから、g∘f=f∘gである。▨
例 2.2.f(x)=x+1、g(x)=x2をともに実数全体で定める。このとき(g∘f)(x)=(x+1)2、(f∘g)(x)=x2+1である。x=1で前者は4、後者は2となるため、二つの関数は一致しない。
定義域だけが異なる場合も、順序の交換はできません。例 1.3 (1)ではg∘fの定義域が[0,∞)、f∘gの定義域が実数全体であり、共通の定義域[0,∞)の上では値がどちらもxですが、定義域が一致しないので二つの関数は異なります。
定理 2.3 (合成の結合法則).f:Df→R、g:Dg→R、h:Dh→Rを実数値関数とする。このとき(h∘g)∘fとh∘(g∘f)の定義域はともに{x∈Df∣f(x)∈Dg, g(f(x))∈Dh}であり、その上で値はともにh(g(f(x)))である。したがって(h∘g)∘f=h∘(g∘f)である。
証明.定義 1.1によりDh∘g={y∈Dg∣g(y)∈Dh}である。したがって(h∘g)∘fの定義域は{x∈Df∣f(x)∈Dh∘g}であり、f(x)∈Dh∘gはf(x)∈Dgかつg(f(x))∈Dhと同値である。値は((h∘g)∘f)(x)=(h∘g)(f(x))=h(g(f(x)))である。
一方、Dg∘f={x∈Df∣f(x)∈Dg}であるから、h∘(g∘f)の定義域は{x∈Dg∘f∣(g∘f)(x)∈Dh}である。これはx∈Df、f(x)∈Dg、g(f(x))∈Dhを満たすxの全体であり、先の集合と一致する。値は(h∘(g∘f))(x)=h((g∘f)(x))=h(g(f(x)))である。定義域と値がともに等しいので、二つの関数は等しい。▨
3 演習
問題 3.1 (定義域つきの合成).f(x)=x−2を実数全体で、g(x)=xを[0,∞)で定める。g∘fとf∘gについて、式、定義域、値域を求めなさい。
解答 (演習の解答).
(g∘f)(x)=x−2であり、定義域はx−2≥0すなわち[2,∞)である。t≥0に対してx=t2+2とおくと値がtになるので、値域は[0,∞)である。
(f∘g)(x)=x−2であり、定義域は[0,∞)である。xは[0,∞)のすべての値をとるので、値域は[−2,∞)である。▨
問題 3.2 (順序の交換).f(x)=2x+1、g(x)=x2を実数全体で定める。g∘f=f∘gであることを示しなさい。
解答.
(g∘f)(x)=(2x+1)2、(f∘g)(x)=2x2+1である。x=1で(g∘f)(1)=9、(f∘g)(1)=3となり、値が異なるのでg∘f=f∘gである。▨
問題 3.3 (定義域が除かれる合成).g(x)=xを[0,∞)で定める。次のfについて、g∘fの定義域を求めなさい。(1)では値域も求めなさい。
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f(x)=1−x2(実数全体)
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f(x)=x1(x=0)
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f(x)=−x2−1(実数全体)
解答.
(1)について、Dg∘f={x∣1−x2≥0}=[−1,1]である。(g∘f)(x)=1−x2であり、x∈[−1,1]のとき0≤1−x2≤1であるから値は[0,1]に入る。s∈[0,1]に対してx=1−s2∈[0,1]とおくと値がsになるので、値域は[0,1]である。
(2)について、Dg∘f={x=0∣x1≥0}=(0,∞)である。
(3)について、すべての実数xに対してf(x)≤−1<0であるから、Dg∘f=∅である。▨
問題 3.4 (合成への分解). 次の関数を、実数全体または[0,∞)で定めた関数f、gの合成g∘fとして表しなさい。ただし、定義域はg∘fの自然な定義域と一致させること。
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x2+1
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(2x+1)5
解答.
(1)について、f(x)=x2+1を実数全体で、g(x)=xを[0,∞)で定める。x2+1≥1であるからDg∘fは実数全体であり、(g∘f)(x)=x2+1である。
(2)について、f(x)=2x+1、g(x)=x5をともに実数全体で定める。Dg∘fは実数全体であり、(g∘f)(x)=(2x+1)5である。▨