§B2.14関数方程式入門

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関数を調べるとき、私たちはふつう式やグラフとして与えられた関数の値や形を調べます。しかし、関数が式で与えられておらず、満たすべき条件だけが与えられている場合もあります。そのとき未知なのは数ではなく関数そのものであり、条件を満たす関数が存在するのか、存在するならどのような関数なのかを問うことになります。このように、未知の関数が満たす等式を課して、その関数を決める問題を扱うのが関数方程式です。関数方程式は、関数の連続性や単調性といった性質により関数の形がどこまで定まるかを調べる場として重要です。たとえば、すべての実数x,yx,yについてf(x+y)=f(x)+f(y)f(x+y)=f(x)+f(y)を満たす連続な関数は、定数ccを用いてf(x)=cxf(x)=cxと表される関数に限られます。

関数方程式は発展の内容であり、関心に応じて選んで読むことができます。本記事では、関数方程式の定義と、代表的な例について解説します。

1 関数方程式とは

定義 1.1 (関数方程式). 定義域DD、終域EEをもつ未知の関数f:D→Ef:D\to Eに対して、DDの要素に関する等式を課したものを関数方程式 (functional equation) という。

定義 1.2 (関数方程式の解). 関数方程式を満たす関数を、その方程式の解 (solution) という。解をすべて求めることを、その関数方程式を解くという。

解を求めるときは、まず入力に00、互いに反対の数、等しい数などを代入して、関数の値に関する関係を取り出します。この段階で得られるのは、ffが解であるために必要な条件だけです。そこで、得られた候補を最後に元の等式へ代入し、すべての入力で成り立つこと(十分性)を確かめます。必要条件から出発した候補が、元の等式を満たすとは限らないからです。

例 1.3.f:R→Rf:\mathbb R\to\mathbb Rがすべての実数x,yx,yについてf(x+y)=f(x)+y2f(x+y)=f(x)+y^2を満たすとする。xxとyyを入れ替えるとf(y+x)=f(y)+x2f(y+x)=f(y)+x^2であり、x+y=y+xx+y=y+xであるからf(x)+y2=f(y)+x2f(x)+y^2=f(y)+x^2である。したがってf(x)−x2=f(y)−y2f(x)-x^2=f(y)-y^2がすべてのx,yx,yで成り立ち、この値は定数kkである。すなわち候補はf(x)=x2+kf(x)=x^2+kに限られる。

しかしx=y=1x=y=1を元の等式へ代入すると、左辺はf(2)=4+kf(2)=4+k、右辺はf(1)+1=2+kf(1)+1=2+kとなり一致しない。よって、この関数方程式を満たすffは存在しない。

2 コーシーの関数方程式

定義 2.1 (加法的な関数). 関数f:R→Rf:\mathbb R\to\mathbb Rが、すべての実数x,yx,yについてf(x+y)=f(x)+f(y)f(x+y)=f(x)+f(y)を満たすとき、ffは加法的 (additive) であるという。この等式をコーシーの関数方程式という。

定理 2.2. 加法的な関数f:R→Rf:\mathbb R\to\mathbb Rは、すべての有理数qqとすべての実数xxについてf(qx)=qf(x)f(qx)=qf(x)を満たす。連続性は仮定しない。

証明.x=y=0x=y=0を代入するとf(0)=2f(0)f(0)=2f(0)であるからf(0)=0f(0)=0である。f(0)=f(x+(−x))=f(x)+f(−x)f(0)=f(x+(-x))=f(x)+f(-x)からf(−x)=−f(x)f(-x)=-f(x)である。

正の整数nnについて、等式を繰り返し用いるとf(nx)=nf(x)f(nx)=nf(x)である。−n-nについてはf(−nx)=−f(nx)=−nf(x)f(-nx)=-f(nx)=-nf(x)であり、n=0n=0ではf(0)=0f(0)=0であるから、f(mx)=mf(x)f(mx)=mf(x)がすべての整数mmで成り立つ。

nnを正の整数とする。f(x)=f(n⋅(x/n))=nf(x/n)f(x)=f(n\cdot(x/n))=nf(x/n)であるからf(x/n)=f(x)/nf(x/n)=f(x)/nである。有理数qqを整数mmと正の整数nnによりq=m/nq=m/nと書くと、f(qx)=f(m⋅xn)=mf(xn)=mnf(x)=qf(x)f(qx)=f\left(m\cdot\frac xn\right)=mf\left(\frac xn\right)=\frac mn f(x)=qf(x)である。▨

定理 2.3. 連続な関数f:R→Rf:\mathbb R\to\mathbb Rが、すべての実数x,yx,yについて

f(x+y)=f(x)+f(y)f(x+y)=f(x)+f(y)

を満たすとする。このとき、c=f(1)c=f(1)とおけば、すべての実数xxについてf(x)=cxf(x)=cxである。逆に、任意の実数ccに対してx↦cxx\mapsto cxはこの等式を満たす。

証明.ffは加法的であるから、定理 2.2をx=1x=1に適用して、有理数qqについてf(q)=qf(1)=cqf(q)=qf(1)=cqを得る。

実数xxを任意にとる。§D1.4 実数の連続性 の§D1.4 系 2.2により示される有理数の稠密性から、各正の整数kkに対して∣qk−x∣<1/k|q_k-x|<1/kを満たす有理数qkq_kを選ぶことができる。するとqk→xq_k\to xである。ffはxxで連続であるから、§B1.10 定理 6.4によりf(qk)→f(x)f(q_k)\to f(x)である。一方f(qk)=cqk→cxf(q_k)=cq_k\to cxであるため、極限の一意性からf(x)=cxf(x)=cxである。

最後にf(x)=cxf(x)=cxを元の等式へ代入するとc(x+y)=cx+cyc(x+y)=cx+cyであり、逆の主張も成り立つ。▨

注意 2.4 (連続性を外す場合). 連続性を仮定しない加法的関数について、定理 2.2からは有理数倍までしか結論が得られない。実際、Q(2)={a+b2∣a,b∈Q}\mathbb Q(\sqrt2)=\{a+b\sqrt2\mid a,b\in\mathbb Q\}上の関数g(a+b2)=ag(a+b\sqrt2)=aは、2\sqrt2が無理数であるためa,ba,bが一意に定まり、Q(2)\mathbb Q(\sqrt2)の任意の2数x,yx,yについてg(x+y)=g(x)+g(y)g(x+y)=g(x)+g(y)を満たす。しかしg(1)=1g(1)=1、g(2)=0g(\sqrt2)=0であるからg(x)=g(1)xg(x)=g(1)xの形ではない。実数全体でも、連続でない加法的関数が存在することが知られている(Hamel、1905)。x↦cxx\mapsto cxはどれも連続であるから、連続でない加法的関数はx↦cxx\mapsto cxの形ではない。

3 代入で決まる例

例 3.1.f:R→Rf:\mathbb R\to\mathbb Rがすべての実数xxについて2f(x)+f(−x)=3x+62f(x)+f(-x)=3x+6を満たすとする。xxを−x-xに置き換えると2f(−x)+f(x)=−3x+62f(-x)+f(x)=-3x+6である。最初の式を2倍して後の式を引けば3f(x)=9x+63f(x)=9x+6、したがってf(x)=3x+2f(x)=3x+2である。元の式へ代入すると確かに成り立つ。

例 3.2. 連続な関数f:R→Rf:\mathbb R\to\mathbb Rがすべての実数x,yx,yについてf(x+f(y))=f(x)+yf(x+f(y))=f(x)+yを満たすとする。

x=0x=0を代入するとf(f(y))=f(0)+yf(f(y))=f(0)+yである。f(y1)=f(y2)f(y_1)=f(y_2)ならばf(f(y1))=f(f(y2))f(f(y_1))=f(f(y_2))からy1=y2y_1=y_2となるので、ffは単射である(§B2.7 定義 2.1)。また任意の実数ttに対しy=t−f(0)y=t-f(0)とおくとf(f(y))=tf(f(y))=tであるから、ffは全射でもある。

y=0y=0を代入するとf(x+f(0))=f(x)f(x+f(0))=f(x)であり、単射性からx+f(0)=xx+f(0)=x、すなわちf(0)=0f(0)=0である。したがってf(f(y))=yf(f(y))=yである。次にy=f(z)y=f(z)を代入するとf(x+f(f(z)))=f(x)+f(z)f(x+f(f(z)))=f(x)+f(z)であり、f(f(z))=zf(f(z))=zであるからf(x+z)=f(x)+f(z)f(x+z)=f(x)+f(z)がすべての実数x,zx,zで成り立つ。ffは連続な加法的関数であるから、定理 2.3によりf(x)=cxf(x)=cx(c=f(1)c=f(1))である。

元の等式へ代入するとf(x+f(y))=cx+c2yf(x+f(y))=cx+c^2y、右辺はcx+ycx+yであるから、c2=1c^2=1が必要である。c=±1c=\pm1のときf(x)=cxf(x)=cxは確かに元の等式を満たす。したがって解はf(x)=xf(x)=xとf(x)=−xf(x)=-xである。

注意 3.3 (本記事で扱う範囲). 指数型、対数型、三角関数型の関数方程式や、正則性の仮定を変えた一般分類は本記事では扱わない。競技数学としてのより複雑な関数方程式は §C5 雑多な話題 が扱う。

4 演習

問題 4.1 (単調な加法的関数). 加法的な関数f:R→Rf:\mathbb R\to\mathbb Rが単調増加である(x≤yx\le yならばf(x)≤f(y)f(x)\le f(y))とき、すべての実数xxについてf(x)=f(1)xf(x)=f(1)xであることを示しなさい。ただし、ffの連続性は仮定しない。

解答 (演習の解答).

c=f(1)c=f(1)とおく。定理 2.2をx=1x=1に適用すると、有理数qqについてf(q)=cqf(q)=cqである。実数xxを任意にとり、§D1.4 系 2.2により各正の整数kkに対して∣qk−x∣<1/(2k)|q_k-x|<1/(2k)を満たす有理数qkq_kをとる。有理数pk=qk−1/(2k)p_k=q_k-1/(2k)、rk=qk+1/(2k)r_k=q_k+1/(2k)についてpk<x<rkp_k<x<r_kであり、∣pk−x∣<1/k|p_k-x|<1/k、∣rk−x∣<1/k|r_k-x|<1/kである。ffは単調増加であるからf(pk)≤f(x)≤f(rk)f(p_k)\le f(x)\le f(r_k)、すなわちcpk≤f(x)≤crkcp_k\le f(x)\le cr_kである。pk→xp_k\to x、rk→xr_k\to xであるからcpk→cxcp_k\to cx、crk→cxcr_k\to cxであり、はさみうちによりf(x)=cxf(x)=cxである。▨

問題 4.2 (f(f(x))=xf(f(x))=xと単調性). 関数f:R→Rf:\mathbb R\to\mathbb Rがすべての実数xxについてf(f(x))=xf(f(x))=xを満たすとする。

  1. ffは全単射であることを示しなさい。

  2. さらにffが狭義単調増加である(x<yx<yならばf(x)<f(y)f(x)<f(y))とき、f(x)=xf(x)=xであることを示しなさい。

解答.

(1)について、g=fg=fとおくと、g(f(x))=xg(f(x))=xとf(g(y))=yf(g(y))=yがすべての実数x,yx,yで成り立つ。したがって§B2.8 定理 2.1 (1)によりffは全単射である。

(2)について、あるxxについてf(x)>xf(x)>xとすると、ffが狭義単調増加であるからf(f(x))>f(x)>xf(f(x))>f(x)>xとなり、f(f(x))=xf(f(x))=xに反する。f(x)<xf(x)<xとするとf(f(x))<f(x)<xf(f(x))<f(x)<xとなり、やはり反する。よってすべてのxxでf(x)=xf(x)=xである。逆にf(x)=xf(x)=xは条件を満たす。▨

問題 4.3 (二次の項をもつ加法型の方程式). 連続な関数f:R→Rf:\mathbb R\to\mathbb Rがすべての実数x,yx,yについてf(x+y)=f(x)+f(y)+2xyf(x+y)=f(x)+f(y)+2xyを満たすとき、ffを求め、元の等式へ代入して確かめなさい。

解答.

g(x)=f(x)−x2g(x)=f(x)-x^2とおくと、ggは連続であり、g(x+y)=f(x)+f(y)+2xy−(x+y)2=(f(x)−x2)+(f(y)−y2)=g(x)+g(y)g(x+y)=f(x)+f(y)+2xy-(x+y)^2=(f(x)-x^2)+(f(y)-y^2)=g(x)+g(y)であるから加法的である。定理 2.3によりg(x)=cxg(x)=cx(c=g(1)=f(1)−1c=g(1)=f(1)-1)、すなわちf(x)=x2+cxf(x)=x^2+cxである。逆にf(x)=x2+cxf(x)=x^2+cxのときf(x+y)=(x+y)2+c(x+y)=f(x)+f(y)+2xyf(x+y)=(x+y)^2+c(x+y)=f(x)+f(y)+2xyが成り立つ。▨

例題

条件と何を求めるかを確認してから、式と答えの対応を見比べてください。

次の関数方程式と条件を満たす関数 f を求めよ。

解法の型代入(x == 0, y == x, x を −x に)で手がかりを取り出し、有理点を押さえてから連続性で実数全体へ延ばす。多項式に限る場合は係数比較で決まる

  1. 多項式 f が、すべての実数 x で f(x+1) == f(x) + 4x-1 を満たし、f(0) == -3 である。f を求めよ。

    f(x+1)=f(x)+4x−1,f(0)=−3,f は多項式f(x+1) = f(x) + 4x-1,\qquad f(0) = -3,\qquad f \text{ は多項式}
  2. すべての実数 x, y で f(x+y) == f(x) + f(y) を満たす連続関数 f で、f(1) == -2 であるものを求めよ。

    f(x+y)=f(x)+f(y)(すべての実数 x, y),f は連続,f(1)=−2f(x+y) = f(x) + f(y)\quad(\text{すべての実数 } x,\ y),\qquad f \text{ は連続},\qquad f(1) = -2
  3. すべての実数 x で 2f(x) + f(−x) == -3x-3 を満たす関数 f を求めよ。

    2f(x)+f(−x)=−3x−3(すべての実数 x)2f(x) + f(-x) = -3x-3\quad(\text{すべての実数 } x)
  4. 多項式 f が、すべての実数 x で f(x+1) == f(x) + 6x+4 を満たし、f(0) == 2 である。f を求めよ。

    f(x+1)=f(x)+6x+4,f(0)=2,f は多項式f(x+1) = f(x) + 6x+4,\qquad f(0) = 2,\qquad f \text{ は多項式}
  5. すべての実数 x, y で f(x+y) == f(x) + f(y) を満たす連続関数 f で、f(1) == 3 であるものを求めよ。

    f(x+y)=f(x)+f(y)(すべての実数 x, y),f は連続,f(1)=3f(x+y) = f(x) + f(y)\quad(\text{すべての実数 } x,\ y),\qquad f \text{ は連続},\qquad f(1) = 3
  6. すべての実数 x で 2f(x) + f(−x) == -4x-3 を満たす関数 f を求めよ。

    2f(x)+f(−x)=−4x−3(すべての実数 x)2f(x) + f(-x) = -4x-3\quad(\text{すべての実数 } x)
  7. 多項式 f が、すべての実数 x で f(x+1) == f(x) + 2x+2 を満たし、f(0) == 2 である。f を求めよ。

    f(x+1)=f(x)+2x+2,f(0)=2,f は多項式f(x+1) = f(x) + 2x+2,\qquad f(0) = 2,\qquad f \text{ は多項式}
  8. すべての実数 x で 2f(x) + f(−x) == x-6 を満たす関数 f を求めよ。

    2f(x)+f(−x)=x−6(すべての実数 x)2f(x) + f(-x) = x-6\quad(\text{すべての実数 } x)
  9. すべての実数 x, y で f(x+y) == f(x) + f(y) を満たす連続関数 f で、f(1) == -1 であるものを求めよ。

    f(x+y)=f(x)+f(y)(すべての実数 x, y),f は連続,f(1)=−1f(x+y) = f(x) + f(y)\quad(\text{すべての実数 } x,\ y),\qquad f \text{ は連続},\qquad f(1) = -1
  10. すべての実数 x, y で f(x+y) == f(x) + f(y) を満たす連続関数 f で、f(1) == 1 であるものを求めよ。

    f(x+y)=f(x)+f(y)(すべての実数 x, y),f は連続,f(1)=1f(x+y) = f(x) + f(y)\quad(\text{すべての実数 } x,\ y),\qquad f \text{ は連続},\qquad f(1) = 1

演習

問題を解いてから「解答・解説」を開けます。

次の関数方程式と条件を満たす関数 f を求めよ。

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