1 正接の導関数
定理 1.1. 角を弧度法で測る。nを整数としてx=2π+nπを満たすすべての実数xについて、tanは微分可能であり
(tanx)′=cos2x1が成り立つ。この値は1+tan2xにも等しい。
証明.cosx=0となるのはx=2π+nπ(nは整数)のときであり、これらの点はπの間隔で並んでいる。したがって、x=2π+nπであれば、xを含み、これらの点を一つも含まない開区間をとることができる。その開区間のすべての点でcosの値は0でないので、tanx=cosxsinxが定義される。
§B2.10 積・商・合成関数の微分の§B2.10 定理 4.1と、§B2.11 定理 4.1により
(tanx)′=cos2x(sinx)′cosx−sinx(cosx)′=cos2xcosx⋅cosx−sinx⋅(−sinx)=cos2xcos2x+sin2xである。sin2x+cos2x=1であるから、右辺はcos2x1に等しい。また、cos2xcos2x+sin2x=1+tan2xでもある。▨
2 三角関数を含む式の導関数
三角関数と多項式を組み合わせた式は、積の微分法、商の微分法、合成関数の微分法を§B2.11 定理 4.1と定理 1.1に組み合わせて微分します。よく現れる形を先にまとめます。
証明. 第一の組は、外側をsin、内側をax+bとみて§B2.10 定理 5.1を用いると、(ax+b)′=aであるからcos(ax+b)⋅aとなる。余弦についても同様である。
第二の組は、外側をtan、内側をax+bとみる。ax+b=2π+nπのとき、外側のtanは点ax+bで微分可能であるから(定理 1.1)、§B2.10 定理 5.1によりcos2(ax+b)1⋅aとなる。
第三の組は、外側をtn、内側をsinxとみて§B2.10 定理 5.1と§B2.10 定理 6.1を用いると、nsinn−1x⋅(sinx)′=nsinn−1xcosxとなる。余弦についても同様で、(cosx)′=−sinxから負号が付く。▨
例 2.2. 次の4つの関数の導関数を求める。
(1)y=sin3xとする。公式 2.1により、すべての実数xについてy′=3cos3xである。
(2)y=cos2xとする。公式 2.1により、すべての実数xについてy′=−2cosxsinxである。倍角の公式によってy′=−sin2xとも書くことができる。
(3)x=2π+nπ(nは整数)とし、y=xtanxとする。§B2.10 定理 3.1と定理 1.1により
y′=1⋅tanx+x⋅cos2x1=tanx+cos2xxである。
(4)x=π+2nπ(nは整数)とし、y=1+cosxsinxとする。この範囲ではcosx=−1であるから1+cosx>0であり、§B2.10 定理 4.1を用いることができて
y′=(1+cosx)2cosx(1+cosx)−sinx(−sinx)=(1+cosx)2cosx+cos2x+sin2x=(1+cosx)21+cosx=1+cosx1である。
3 増減と極値
導関数の符号から関数の増減を判定する方法は
§B2.5 多項式の微分と接線・増減・極値で扱いました。三角関数を含む式でも手順は同じで、導関数を求め、それが0になるxを求め、その前後での符号を調べます。
周期をもつ関数では、極値をとる点が一つあれば、周期ごとに同じ形の極値が繰り返し現れます。そのような関数の増減表は、調べるxの範囲を先に定めて作ります。
例 3.2.0≤x≤2πの範囲でf(x)=sinx+cosxの増減を調べる。§B2.11 定理 4.1によりf′(x)=cosx−sinxである。
0≤x≤2πでf′(x)=0となるのはcosx=sinxのときであり、x=4πとx=45πである。cosx>sinxとなるのは0≤x<4πと45π<x≤2πの範囲であり、cosx<sinxとなるのは4π<x<45πの範囲である。増減は次のようになる。
| x |
0 |
⋯ |
4π |
⋯ |
45π |
⋯ |
2π |
| f′(x) |
|
+ |
0 |
− |
0 |
+ |
|
| f(x) |
1 |
増加 |
2 |
減少 |
−2 |
増加 |
1 |
§B2.5 定理 4.2により、fは表の増加の区間で狭義単調増加、減少の区間で狭義単調減少であり、§B2.5 定理 4.5により、fはx=4πで極大値2をとり、x=45πで極小値−2をとる。両端の値はf(0)=f(2π)=1であるから、この範囲での最大値は2、最小値は−2である。
三角関数の合成によってf(x)=2sin(x+4π)と書き直すことができ、値の範囲が−2≤f(x)≤2であることと、最大値をとるxがx+4π=2πすなわちx=4πであることが確かめられる。
例 3.3.−2π<x<2πの範囲でf(x)=2x−tanxの増減と極値を調べる。この範囲ではcosx>0であり、定理 1.1によりfは微分可能でf′(x)=2−cos2x1である。
f′(x)>0はcos2x>21、すなわちcosx>21と同値であり、この範囲では−4π<x<4πである。同様にf′(x)=0はx=±4π、f′(x)<0は−2π<x<−4πと4π<x<2πである。増減は次のようになる。
| x |
(−2π, −4π) |
−4π |
(−4π, 4π) |
4π |
(4π, 2π) |
| f′(x) |
− |
0 |
+ |
0 |
− |
| f(x) |
減少 |
1−2π |
増加 |
2π−1 |
減少 |
§B2.5 定理 4.5をa=4π、δ=4πに適用すると、fはx=4πで極大値2π−1をとり、a=−4πに適用するとx=−4πで極小値1−2πをとる。
例 3.4.0≤x≤2πの範囲でf(x)=sinx(1+cosx)の増減を調べる。§B2.10 定理 3.1と§B2.11 定理 4.1により
f′(x)=cosx(1+cosx)+sinx(−sinx)=cosx+cos2x−sin2x=2cos2x+cosx−1であり、cosxについての2次式として因数分解するとf′(x)=(2cosx−1)(cosx+1)である。
0≤x≤2πでf′(x)=0となるのは、cosx=21すなわちx=3π, 35πの場合と、cosx=−1すなわちx=πの場合である。0≤x≤2πでcosx+1≥0であり、等号が成り立つのはx=πだけであるから、x=πではf′(x)の符号は2cosx−1の符号と一致する。増減は次のようになる。
| x |
0 |
⋯ |
3π |
⋯ |
π |
⋯ |
35π |
⋯ |
2π |
| f′(x) |
|
+ |
0 |
− |
0 |
− |
0 |
+ |
|
| f(x) |
0 |
増加 |
433 |
減少 |
0 |
減少 |
−433 |
増加 |
0 |
x=πではf′(π)=0であるが、その前後でf′の符号は負のまま変わらない。f′は(3π, π)と(π, 35π)で負であるから、§B2.5 定理 4.2によりfは[3π, π]と[π, 35π]のそれぞれの上で狭義単調減少であり、したがって[3π, 35π]上で狭義単調減少である。πを含むどの開区間にもπより小さい点と大きい点があり、そこでの値はそれぞれf(π)より大きく、f(π)より小さいから、x=πは極値をとる点ではない。極大値はx=3πにおける433、極小値はx=35πにおける−433である。
4 演習
問題 4.1 (端点を含む範囲での増減と最大・最小).f(x)=x+2cosxについて、0≤x≤2πの範囲で増減を調べ、極値と、この範囲での最大値・最小値を求めよ。
解答.
f′(x)=1−2sinxである。0≤x≤2πでf′(x)=0となるのはsinx=21、すなわちx=6π, 65πのときである。f′(x)>0はsinx<21と同値で、0≤x<6πと65π<x≤2πの範囲であり、6π<x<65πではf′(x)<0である。
| x |
0 |
⋯ |
6π |
⋯ |
65π |
⋯ |
2π |
| f′(x) |
|
+ |
0 |
− |
0 |
+ |
|
| f(x) |
2 |
増加 |
6π+3 |
減少 |
65π−3 |
増加 |
2π+2 |
§B2.5 定理 4.5により、fはx=6πで極大値6π+3、x=65πで極小値65π−3をとる。この範囲での最大値と最小値は、極値と両端の値f(0)=2、f(2π)=2π+2を比べて求める。6π+3<2π+2であり、65π−3<2である(65π<2.7、3>1.7による)から、最大値は端の値2π+2(x=2π)、最小値は極小値65π−3である。最大値は極値ではなく端の値である。▨
問題 4.2 (正接を含む合成関数の導関数).y=tan(2x−3π)の定義域を求め、その定義域で導関数を求めよ。
解答.
yが定義されるのは2x−3π=2π+nπ(nは整数)のとき、すなわちx=125π+2nπのときである。この範囲で、外側をtan、内側を2x−3πとみて公式 2.1をa=2、b=−3πで用いるとy′=cos2(2x−3π)2である。▨
問題 4.3 (導関数の零点が無数にあって極値がない関数).f(x)=x−sinxとする。f′(x)=0となる実数xは無数にあるが、fはどの点でも極値をとらないことを示せ。
解答.
f′(x)=1−cosx≥0であり、f′(x)=0となるのはx=2nπ(nは整数)のときだから、零点は無数にある。x1<x2とし、f(x1)≥f(x2)と仮定する。fはR上で連続で微分可能でありf′≥0であるから、§B2.5 定理 4.2によりfは広義単調増加であり、f(x1)=f(x2)、かつ[x1,x2]上でfは定数である。このとき(x1,x2)のすべての点でf′=0となるが、この開区間には2πの整数倍でない点があり、そこではf′>0であるから矛盾する。したがってfはR上で狭義単調増加である。
任意の実数aと任意のh>0についてf(a−h)<f(a)<f(a+h)であるから、aを含む開区間Jをどのようにとっても、Jにはf(x)<f(a)となる点とf(x)>f(a)となる点があり、fはaで極大でも極小でもない。▨