§B2.2グラフの平行移動・対称移動

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関数のグラフを平行に動かしたり、座標軸や原点に関して折り返したりすると、別の関数のグラフが得られます。平行移動と対称移動は、このようにグラフから新しい関数を得る最も基本的な操作です。たとえばy=x2y=x^2のグラフをxx軸方向にpp、yy軸方向にqqだけ動かすと、頂点(0,0)(0,0)が(p,q)(p,q)へ移ります。

このとき、動かしたグラフが表す関数を調べるには、式の変化を見るだけでは足りません。移った先の関数の定義域と値域も、もとの関数の定義域と値域から求める必要があります。

そこで、グラフ上の点の移動に応じて、式、定義域、値域の三つがそれぞれどう移るかを照合します。

本記事では、平行移動と対称移動の式、定義域、値域について解説します。

1 平行移動

関数f:D→Rf:D\to\mathbb RとDDの部分集合SSに対し、SSの各元にffを施した値の集合をf(S)={f(x)∣x∈S}f(S)=\{f(x)\mid x\in S\}と書きます。特にf(D)f(D)はffの値域です。またD+p={x+p∣x∈D}D+p=\{x+p\mid x\in D\}、−D={−x∣x∈D}-D=\{-x\mid x\in D\}、f(D)+q={y+q∣y∈f(D)}f(D)+q=\{y+q\mid y\in f(D)\}、−f(D)={−y∣y∈f(D)}-f(D)=\{-y\mid y\in f(D)\}と書きます。

定理 1.1.f:D→Rf:D\to\mathbb Rを関数とし、p,qp,qを実数とする。y=f(x)y=f(x)のグラフをxx軸方向にpp、yy軸方向にqqだけ平行移動したグラフは

y=f(x−p)+qy=f(x-p)+q

で表される。変換後の定義域はD+pD+p、値域はf(D)+qf(D)+qである。p<0p<0のときは左へ∣p∣|p|だけ、q<0q<0のときは下へ∣q∣|q|だけ動かすことになる。

証明. もとのグラフは{(t,f(t))∣t∈D}\{(t,f(t))\mid t\in D\}である。平行移動後のグラフG′G'は{(t+p,f(t)+q)∣t∈D}\{(t+p,f(t)+q)\mid t\in D\}であり、点(x,y)(x,y)について次の同値が成り立つ。

(x,y)∈G′(x,y)\in G'  ⟺  \iffあるt∈Dt\in Dについてx=t+px=t+pかつy=f(t)+qy=f(t)+q  ⟺  \iffx−p∈Dx-p\in Dかつy=f(x−p)+qy=f(x-p)+q。

最後の同値では、x=t+px=t+pからt=x−pt=x-pと定まることを用いた。したがってG′G'は、x∈D+px\in D+pにf(x−p)+qf(x-p)+qを対応させる関数のグラフであり、式はy=f(x−p)+qy=f(x-p)+q、定義域はD+pD+pである。値域は{f(x−p)+q∣x∈D+p}\{f(x-p)+q\mid x\in D+p\}であり、x−px-pがDDを動くのでf(D)+qf(D)+qに等しい。▨

例 1.2.f(x)=xf(x)=\sqrt{x}(定義域[0,∞)[0,\infty)、値域[0,∞)[0,\infty))をxx軸方向に22、yy軸方向に−3-3だけ移動する。変換後の関数はy=x−2−3y=\sqrt{x-2}-3、定義域は[2,∞)[2,\infty)、値域は[−3,∞)[-3,\infty)である。

例 1.3.f(x)=x2f(x)=x^2(定義域[−1,2][-1,2]、値域[0,4][0,4])をxx軸方向に−1-1、yy軸方向に22だけ移動する。変換後の関数はy=(x+1)2+2y=(x+1)^2+2、定義域は[−2,1][-2,1]、値域は[2,6][2,6]である。

2 対称移動

定理 2.1.f:D→Rf:D\to\mathbb Rを関数とする。y=f(x)y=f(x)のグラフをxx軸、yy軸、原点に関して対称移動したグラフは、それぞれ

y=−f(x),y=f(−x),y=−f(−x)y=-f(x),\qquad y=f(-x),\qquad y=-f(-x)

で表される。定義域と値域は次のとおりである。

対称移動 式 定義域 値域
xx軸 y=−f(x)y=-f(x) DD −f(D)-f(D)
yy軸 y=f(−x)y=f(-x) −D-D f(D)f(D)
原点 y=−f(−x)y=-f(-x) −D-D −f(D)-f(D)

証明.xx軸、yy軸、原点に関する対称移動は、点(x,y)(x,y)をそれぞれ(x,−y)(x,-y)、(−x,y)(-x,y)、(−x,−y)(-x,-y)へ移し、どれも二回施すと元に戻る。したがって点(x,y)(x,y)が移動後のグラフ上にあることは、(x,−y)(x,-y)、(−x,y)(-x,y)、(−x,−y)(-x,-y)のそれぞれがもとのグラフ上にあることと同値である。もとのグラフ上にあるとは、第一座標がDDに属し、第二座標がその点でのffの値に等しいことである。よって

  • xx軸:x∈Dx\in Dかつ−y=f(x)-y=f(x)  ⟺  \iffx∈Dx\in Dかつy=−f(x)y=-f(x)
  • yy軸:−x∈D-x\in Dかつy=f(−x)y=f(-x)  ⟺  \iffx∈−Dx\in -Dかつy=f(−x)y=f(-x)
  • 原点:−x∈D-x\in Dかつ−y=f(−x)-y=f(-x)  ⟺  \iffx∈−Dx\in -Dかつy=−f(−x)y=-f(-x)

である。これが三つの式と定義域を与える。値域は、xx軸の場合は{−f(x)∣x∈D}=−f(D)\{-f(x)\mid x\in D\}=-f(D)、yy軸の場合は{f(−x)∣x∈−D}=f(D)\{f(-x)\mid x\in -D\}=f(D)、原点の場合は{−f(−x)∣x∈−D}=−f(D)\{-f(-x)\mid x\in -D\}=-f(D)である。▨

例 2.2.y=xy=\sqrt{x}をyy軸に関して対称移動するとy=−xy=\sqrt{-x}となる。定義域は(−∞,0](-\infty,0]、値域は[0,∞)[0,\infty)である。xx軸に関して対称移動するとy=−xy=-\sqrt{x}となり、定義域は[0,∞)[0,\infty)、値域は(−∞,0](-\infty,0]である。

例 2.3.f(x)=x2−2xf(x)=x^2-2x(定義域[0,3][0,3])を原点に関して対称移動する。f(D)f(D)はf(x)=(x−1)2−1f(x)=(x-1)^2-1から[−1,3][-1,3]である。移動後の式はy=−f(−x)=−x2−2xy=-f(-x)=-x^2-2x、定義域は−D=[−3,0]-D=[-3,0]、値域は−f(D)=[−3,1]-f(D)=[-3,1]である。この結果は、yy軸に関して対称移動してy=f(−x)y=f(-x)とし、続けてxx軸に関して対称移動してy=−f(−x)y=-f(-x)を得ることと一致する。

3 偶関数と奇関数

定義 3.1 (偶関数と奇関数).f:D→Rf:D\to\mathbb Rを関数とする。D=−DD=-D(すなわちx∈Dx\in Dならば−x∈D-x\in D)であり、すべてのx∈Dx\in Dについて

f(−x)=f(x)f(-x)=f(x)

が成り立つとき、ffを偶関数 (even function) という。D=−DD=-Dであり、すべてのx∈Dx\in Dについて

f(−x)=−f(x)f(-x)=-f(x)

が成り立つとき、ffを奇関数 (odd function) という。

D=−DD=-Dの条件は式の等号から導かれません。たとえばx2x^2を定義域[−1,2][-1,2]で考えると、xxと−x-xがともに定義域に入る範囲ではf(−x)=f(x)f(-x)=f(x)ですが、−2-2が定義域にないので偶関数ではありません。

注意 3.2 (偶関数・奇関数とグラフの対称性).f:D→Rf:D\to\mathbb Rについて、ffが偶関数であることと、グラフがyy軸に関して対称であること(yy軸に関する対称移動でグラフが自身に重なること)は同値である。ffが奇関数であることと、グラフが原点に関して対称であることも同値である。

実際、定理定理 2.1により、yy軸に関する対称移動後のグラフは、定義域−D-Dの関数x↦f(−x)x\mapsto f(-x)のグラフである。二つの関数のグラフが一致することは、定義域が一致する(−D=D-D=D)ことと、すべてのx∈Dx\in Dで値が一致する(f(−x)=f(x)f(-x)=f(x))ことの両方と同値であり、これは偶関数の定義そのものである。原点の場合は、移動後の関数x↦−f(−x)x\mapsto -f(-x)について同じ議論を行えばよく、f(x)=−f(−x)f(x)=-f(-x)すなわち奇関数の条件を得る。

4 演習

問題 4.1 (平行移動・対称移動・偶奇).

  1. y=x2y=x^2(定義域[−1,2][-1,2])をxx軸方向に−2-2、yy軸方向に11だけ平行移動した式、定義域、値域を求めよ。
  2. y=x+1y=\sqrt{x+1}をyy軸、次にxx軸に関して対称移動した式、定義域、値域を求めよ。さらに、原点に関して対称移動した結果と一致することを確かめよ。
  3. x3x^3(定義域[−2,2][-2,2])とx2x^2(定義域[−1,2][-1,2])について、偶関数か奇関数かを、それぞれ判定せよ。
解答.
  1. 式はy=(x+2)2+1y=(x+2)^2+1、定義域はD+(−2)=[−3,0]D+(-2)=[-3,0]、値域は[0,4]+1=[1,5][0,4]+1=[1,5]である。
  2. yy軸に関して移すとy=−x+1=1−xy=\sqrt{-x+1}=\sqrt{1-x}、定義域は(−∞,1](-\infty,1]である。続けてxx軸に関して移すとy=−1−xy=-\sqrt{1-x}、定義域は(−∞,1](-\infty,1]、値域は(−∞,0](-\infty,0]である。一方、原点に関して移すとy=−f(−x)=−1−xy=-f(-x)=-\sqrt{1-x}、定義域は−D=(−∞,1]-D=(-\infty,1]、値域は−f(D)=(−∞,0]-f(D)=(-\infty,0]であり、一致する。
  3. x3x^3は、D=[−2,2]=−DD=[-2,2]=-Dであり(−x)3=−x3(-x)^3=-x^3が成り立つので、奇関数である。偶関数ではない(たとえばx=1x=1でf(−1)=−1≠f(1)=1f(-1)=-1\ne f(1)=1)。x2x^2は、−D=[−2,1]≠[−1,2]=D-D=[-2,1]\ne[-1,2]=Dなので、f(−x)=f(x)f(-x)=f(x)が成り立つ点があっても偶関数でも奇関数でもない。

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例題

条件と何を求めるかを確認してから、式と答えの対応を見比べてください。

次の平行移動によって得られる放物線の方程式を求めよ。

解法の型xx 方向 pp、yy 方向 qq の平行移動は x↦x−p,y↦y−qx\mapsto x-p,\quad y\mapsto y-q の置き換え

  1. y=2x2y=2x^2 のグラフを xx 軸方向に −1-1、yy 軸方向に −4-4 だけ平行移動して得られる放物線の方程式を求めよ。

    y=2x2y = 2x^{2}
  2. y=x2y=x^2 のグラフを xx 軸方向に −3-3、yy 軸方向に −3-3 だけ平行移動して得られる放物線の方程式を求めよ。

    y=x2y = x^{2}
  3. y=−x2y=-x^2 のグラフを xx 軸方向に 44、yy 軸方向に 44 だけ平行移動して得られる放物線の方程式を求めよ。

    y=−x2y = -x^{2}

演習

問題を解いてから「解答・解説」を開けます。

次の平行移動によって得られる放物線の方程式を求めよ。

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