1 グラフの変換と点の対応
定理 1.2.f:D→Rを関数とし、a,b,p,qを実数、a=0、b=0とする。D′={x∈R∣b(x−p)∈D}を定義域とする関数gをg(x)=af(b(x−p))+qにより定め、係数a,b,p,qのグラフの変換をΦと書く。このとき次が成り立つ。
- D′={bu+p u∈D}である。
- gの値域は{ay+q∣y∈f(D)}である。
- Φは、y=f(x)のグラフ上の点(u,f(u))(u∈D)を、y=g(x)のグラフ上の点(bu+p, af(u)+q)へ移す。y=f(x)のグラフのΦによる像は、y=g(x)のグラフに等しい。
- Φは、x軸方向の∣b∣1倍の伸縮(b<0のときは続けてy軸に関する対称移動)と、y軸方向の∣a∣倍の伸縮(a<0のときは続けてx軸に関する対称移動)を施した後に、x軸方向にp、y軸方向にqだけ平行移動する写像に等しい。
証明. 実数xに対してu=b(x−p)とおくと、b=0であるからx=bu+pである。逆に、実数uに対してx=bu+pとおくと、b(x−p)=uである。したがって、x∈D′であることは、x=bu+pを満たすu∈Dが存在することと同値であり、D′={bu+p u∈D}である。
u∈Dに対してx=bu+pとおくと、b(x−p)=uであるからg(x)=af(u)+qである。(1)により、uがDを動くときxはD′全体を動く。よってgの値域は{af(u)+q∣u∈D}={ay+q∣y∈f(D)}である。またΦ(u,f(u))=(bu+p, af(u)+q)=(x,g(x))であるから、y=f(x)のグラフ{(u,f(u))∣u∈D}のΦによる像は{(x,g(x))∣x∈D′}、すなわちy=g(x)のグラフである。
平面の点(s,t)をとる。x軸方向の∣b∣1倍の伸縮は(s,t)を(∣b∣s, t)へ移し、b<0のときに続けるy軸に関する対称移動は、この点を(−∣b∣s, t)へ移す。b>0ならば∣b∣s=bs、b<0ならば−∣b∣s=bsであるから、いずれの場合も第1座標はbsになる。同様に、y軸方向の∣a∣倍の伸縮と、a<0のときのx軸に関する対称移動によって、第2座標はatになる。伸縮と対称移動は、それぞれ第1座標と第2座標の一方だけを変えるので、施す順序によらず点(bs, at)を得る。続く平行移動により、この点は(bs+p, at+q)=Φ(s,t)へ移る。▨
次の図は、y=sinxのグラフに係数a,b,p,qのグラフの変換を施したものです。
例 1.5.f(x)=x(定義域[0,∞)、値域[0,∞))とする。
y=2x−6は、2x−6=2(x−3)よりa=1、b=2、p=3、q=0の場合である。定理 1.2により、このグラフはy=xのグラフをx軸方向に21倍に伸縮した後、x軸方向に3だけ平行移動したものであり、点(u,u)は点(2u+3, u)へ移る。定義域は{2u+3 u≥0}=[3,∞)、値域は[0,∞)である。x軸方向の移動量は、式に現れる6ではなく3である。
同じ二つの操作でも、施す順序を入れ替えると別の関数のグラフになる。y=xのグラフをx軸方向に1だけ平行移動するとy=x−1のグラフになり、続けてx軸方向に21倍に伸縮すると、公式 1.3のy=f(bx)の行によりxを2xに置き換えたy=2x−1(定義域[21,∞))のグラフになる。先にx軸方向に21倍に伸縮するとy=2xのグラフになり、続けてx軸方向に1だけ平行移動すると、xをx−1に置き換えたy=2(x−1)=2x−2(定義域[1,∞))のグラフになる。前者は2x−1=2(x−21)と書くことができ、伸縮の後に施す移動量21は、先に施した移動量1をb=2で割ったものである。
2 絶対値による折り返し
証明.(1)を示す。∣f(x)∣はf(x)が定まるx、すなわちx∈Dに対して定まるので、定義域はDであり、値域は{∣f(x)∣∣x∈D}={∣y∣∣y∈f(D)}である。x∈Dについて、f(x)≥0ならば(x,∣f(x)∣)=(x,f(x))である。f(x)<0ならば(x,∣f(x)∣)=(x,−f(x))であり、これは点(x,f(x))をx軸に関して対称移動した点である。
(2)を示す。f(∣x∣)は∣x∣∈Dを満たすxに対して定まるので、定義域は{x∈R∣∣x∣∈D}である。x≥0ならば∣x∣=xであるから、点(x,f(∣x∣))=(x,f(x))はy=f(x)のグラフのx≥0の部分の点であり、この部分の点はすべてこの形で得られる。x<0ならば∣x∣=−x>0であるから、点(x,f(∣x∣))=(x,f(−x))はy=f(x)のグラフの点(−x,f(−x))をy軸に関して対称移動した点であり、u>0を満たす点(u,f(u))の対称移動(−u,f(u))はすべてこの形で得られる。xが定義域を動くとき、∣x∣はDの0以上の要素全体を動くので、値域は{f(u)∣u∈D, u≥0}である。▨
y=∣f(x)∣とy=f(∣x∣)のどちらでも、点の対応は場所によって変わります。とくにy=f(∣x∣)では、u>0を満たす点(u,f(u))に二つの点(u,f(u))、(−u,f(u))が対応し、x<0の部分の点は用いられません。平面全体に一つの写像を施すグラフの変換とは、この性質において異なります。
例 2.2.f(x)=x2−2x(定義域D=[−1,3])とする。f(x)=(x−1)2−1であるから、f(D)=[−1,3]である。
y=∣x2−2x∣の定義域は[−1,3]、値域は{∣y∣∣−1≤y≤3}=[0,3]である。f(x)<0となるのは0<x<2のときであり、グラフのこの部分はx軸に関して対称移動されて、y=−x2+2x(0<x<2)のグラフになる。
y=f(∣x∣)=x2−2∣x∣の定義域は{x∈R∣∣x∣∈[−1,3]}=[−3,3]、値域は{f(u)∣0≤u≤3}=[−1,3]である。グラフは、y=x2−2x(0≤x≤3)のグラフと、それをy軸に関して対称移動したy=x2+2x(−3≤x≤0)のグラフを合わせたものである。もとの関数の−1≤x<0の部分は用いられず、たとえばx=−1での値はf(−1)=3ではなくf(∣−1∣)=f(1)=−1である。
3 変換後の周期
定理 3.1.f:D→Rを関数とし、a,b,p,qを実数、a=0、b=0とする。
- 関数h(x)=f(bx)(定義域{x∈R∣bx∈D})について、正の数Sがhの周期であるための必要十分条件は、∣b∣Sがfの周期であることである。とくに、fが基本周期Tをもつならば、hの基本周期は∣b∣Tである。
- 関数y=af(b(x−p))+q(定義域{x∈R∣b(x−p)∈D})の正の周期は、hの正の周期と一致する。とくに、fが基本周期Tをもつならば、y=af(b(x−p))+qの基本周期も∣b∣Tである。
証明.(1)を示す。実数cについて、「すべての実数uについて、u∈Dとu+c∈Dは同値であり、u∈Dならばf(u+c)=f(u)である」という条件を(∗)cと書く。§B2.3 定義 1.1により、正の数cについては、(∗)cはcがfの周期であることにほかならない。
実数cについて(∗)cを仮定し、実数uをとる。(∗)cをu−cに用いると、u−c∈Dとu∈Dは同値であり、u−c∈Dならばf(u)=f(u−c)である。よって、u∈Dならばu−c∈Dかつf(u−c)=f(u)であり、(∗)−cが成り立つ。cを−cに替えれば逆も成り立つので、(∗)cと(∗)−cは同値である。
正の数Sをとる。Sがhの周期であることは、すべての実数xについて、bx∈Dとbx+bS∈Dが同値であり、bx∈Dならばf(bx+bS)=f(bx)が成り立つことである。b=0であるからu=bxはxとともに実数全体を動き、この条件は(∗)bSと同値である。bSは∣b∣Sと−∣b∣Sのいずれかに等しいので、前段により、Sがhの周期であることは(∗)∣b∣S、すなわち∣b∣Sがfの周期であることと同値である。したがって、hの正の周期全体は、fの正の周期全体の各要素を∣b∣1倍した集合に等しく、fの正の周期の最小値がTならば、hの正の周期の最小値は∣b∣Tである。
(2)を示す。k(x)=af(b(x−p))+qとおくとk(x)=ah(x−p)+qであり、xがkの定義域に属することは、x−pがhの定義域に属することと同値である。正の数Sと実数xに対してt=x−pとおくと、xとx+Sがkの定義域に属するかどうかは、それぞれtとt+Sがhの定義域に属するかどうかと一致する。tとt+Sがともにhの定義域に属するとき、a=0であるから、k(x+S)=k(x)すなわちah(t+S)+q=ah(t)+qはh(t+S)=h(t)と同値である。tはxとともに実数全体を動くので、Sがkの周期であることとSがhの周期であることは同値である。これと(1)により、fが基本周期Tをもつならば、kの基本周期は∣b∣Tである。▨
f=sinとし、正弦の基本周期2π(§B2.3 定理 2.1)をTとすると、(1)からは§B2.3 定理 4.1と同じ結論が得られます。
4 三角関数の振幅・周期・位相
例 4.2.y=2sin(3x−2π)+1は、3x−2π=3(x−6π)よりa=2、b=3、p=6π、q=1の場合である。振幅は2、基本周期は32π、位相のずれは6π、値域は[−1,3]である。グラフは、y=sinxのグラフをx軸方向に31倍、y軸方向に2倍に伸縮した後、x軸方向に6π、y軸方向に1だけ平行移動したものである。x軸方向の移動量は、式に現れる2πではない。
3sinθ+cosθではr=3、s=1、R=2であり、cosφ=23、sinφ=21を満たすφ=6πをとると、3sinθ+cosθ=2sin(θ+6π)である。位相のずれは−6πであり、グラフはy=2sinθのグラフを横軸の負の向きに6πだけ平行移動したものである。
5 演習
解答.
3−x=−(x−3)であるから、y=−2−(x−3)+1は、f(x)=x(定義域[0,∞)、値域[0,∞))についてa=−2、b=−1、p=3、q=1の場合である。定理 1.2 (4)により、グラフはy=xのグラフをy軸に関して対称移動し(x軸方向の伸縮の倍率は∣b∣1=1)、y軸方向に2倍に伸縮してx軸に関して対称移動した後、x軸方向に3、y軸方向に1だけ平行移動したものである。定理 1.2 (1)により定義域は{−u+3∣u≥0}=(−∞,3]、定理 1.2 (2)により値域は{−2y+1∣y≥0}=(−∞,1]である。たとえば、y=xのグラフの端点(0,0)は(3,1)へ移る。▨
問題 5.2.y=∣sinx∣の基本周期がπであることを示せ。
解答.
y=∣sinx∣の定義域はRであるから、正の数Tが周期であるための条件は、すべての実数xについて∣sin(x+T)∣=∣sinx∣が成り立つことである。§B2.3 定理 2.1のsin(π−x)=sinxでxを−xに置き換え、sin(−x)=−sinxを用いると、sin(x+π)=sin(−x)=−sinxである。よって∣sin(x+π)∣=∣sinx∣であり、πは周期である。
逆に、Tを正の周期とすると、x=0について∣sinT∣=∣sin0∣=0であるから、sinT=0である。単位円上でy座標が0の点は(1,0)と(−1,0)だけであり、これらに対応する角はnπ(n∈Z)に限られるので、T=nπと表される。T>0よりn≥1であるから、T≥πである。したがって正の周期の最小値はπであり、基本周期はπである。y=sinxの基本周期2πと比べると、絶対値による折り返しによって基本周期が半分になっている。▨
問題 5.3.y=sin2x−3cos2x−1をy=asin(b(x−p))+q(a>0、b>0、0≤p<b2π)の形に表し、振幅、基本周期、この表し方における位相のずれ、値域を求めよ。
解答.
公式 4.1の合成の式でr=1、s=−3とするとR=2であり、cosφ=21、sinφ=−23を満たすφ=−3πをとることができる。すべての実数θについてsinθ−3cosθ=2sin(θ−3π)であるから、θ=2xとおくと
y=2sin(2x−3π)−1=2sin(2(x−6π))−1である。a=2>0、b=2>0、q=−1であり、p=6πは0≤p<22π=πを満たす。したがって、振幅は2、基本周期はπ、この表し方における位相のずれは6π、値域は[−3,1]である。▨