§B2.4グラフ変換の一般論

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関数のグラフを動かして新しいグラフを作る操作は、グラフを読み書きするときに最もよく使う道具の一つです。y=f(x)y=f(x)のグラフを平行移動したり、座標軸に関して対称移動したりすると、y=f(x−p)+qy=f(x-p)+qやy=−f(x)y=-f(x)のグラフが得られます。

しかし、y=f(2x)y=f(2x)のように式の中のxxを定数倍した関数のグラフを求めるには、平行移動と対称移動のほかに、グラフを横や縦に引き伸ばしたり縮めたりする変換が要ります。

そこで、平行移動、対称移動、伸縮を、平面の点を点へ移す対応として、一つの見方で扱います。このとき、変換後のグラフ上の点が、もとのグラフ上のどの点から来るかが、座標の計算で分かります。たとえばy=f(2x)y=f(2x)のグラフは、y=f(x)y=f(x)のグラフを横に12\dfrac12倍に縮めたものです。式の中でxxを22倍するとグラフは横に縮むという、式の操作と図形の動きとで向きが逆になる点も、この見方では点の座標を一つ計算すれば確かめることができます。

この見方は、関数の定義域と値域がどう変わるかの追跡や、変換を重ねる順序の判断の土台になり、三角関数のグラフを読むときにも使われます。

本記事では、この一般的な枠組みの下で、グラフの変換とその応用について解説します。

1 グラフの変換と点の対応

定義 1.1 (グラフの変換).kkを正の数とする。平面の点(x,y)(x,y)を点(kx, y)(kx,\ y)へ移す写像を、yy軸を基準とするxx軸方向のkk倍の伸縮 (scaling) といい、点(x,y)(x,y)を点(x, ky)(x,\ ky)へ移す写像を、xx軸を基準とするyy軸方向のkk倍の伸縮という。基準とする軸の上の点は、伸縮によって動かない。

a,b,p,qa,b,p,qを実数とし、a≠0a\ne0、b≠0b\ne0とする。平面の点(x,y)(x,y)を点(xb+p, ay+q)\left(\dfrac{x}{b}+p,\ ay+q\right)へ移す写像を、係数a,b,p,qa,b,p,qのグラフの変換 (graph transformation) という。

定理 1.2.f:D→Rf:D\to\Rを関数とし、a,b,p,qa,b,p,qを実数、a≠0a\ne0、b≠0b\ne0とする。D′={x∈R∣b(x−p)∈D}D'=\{x\in\R\mid b(x-p)\in D\}を定義域とする関数ggをg(x)=af(b(x−p))+qg(x)=af(b(x-p))+qにより定め、係数a,b,p,qa,b,p,qのグラフの変換をΦ\Phiと書く。このとき次が成り立つ。

  1. D′={ub+p | u∈D}D'=\left\{\dfrac{u}{b}+p\ \middle|\ u\in D\right\}である。
  2. ggの値域は{ay+q∣y∈f(D)}\{ay+q\mid y\in f(D)\}である。
  3. Φ\Phiは、y=f(x)y=f(x)のグラフ上の点(u,f(u))(u,f(u))(u∈Du\in D)を、y=g(x)y=g(x)のグラフ上の点(ub+p, af(u)+q)\left(\dfrac{u}{b}+p,\ af(u)+q\right)へ移す。y=f(x)y=f(x)のグラフのΦ\Phiによる像は、y=g(x)y=g(x)のグラフに等しい。
  4. Φ\Phiは、xx軸方向の1∣b∣\dfrac{1}{|b|}倍の伸縮(b<0b<0のときは続けてyy軸に関する対称移動)と、yy軸方向の∣a∣|a|倍の伸縮(a<0a<0のときは続けてxx軸に関する対称移動)を施した後に、xx軸方向にpp、yy軸方向にqqだけ平行移動する写像に等しい。

証明. 実数xxに対してu=b(x−p)u=b(x-p)とおくと、b≠0b\ne0であるからx=ub+px=\dfrac{u}{b}+pである。逆に、実数uuに対してx=ub+px=\dfrac{u}{b}+pとおくと、b(x−p)=ub(x-p)=uである。したがって、x∈D′x\in D'であることは、x=ub+px=\dfrac{u}{b}+pを満たすu∈Du\in Dが存在することと同値であり、D′={ub+p | u∈D}D'=\left\{\dfrac{u}{b}+p\ \middle|\ u\in D\right\}である。

u∈Du\in Dに対してx=ub+px=\dfrac{u}{b}+pとおくと、b(x−p)=ub(x-p)=uであるからg(x)=af(u)+qg(x)=af(u)+qである。(1)により、uuがDDを動くときxxはD′D'全体を動く。よってggの値域は{af(u)+q∣u∈D}={ay+q∣y∈f(D)}\{af(u)+q\mid u\in D\}=\{ay+q\mid y\in f(D)\}である。またΦ(u,f(u))=(ub+p, af(u)+q)=(x,g(x))\Phi(u,f(u))=\left(\dfrac{u}{b}+p,\ af(u)+q\right)=(x,g(x))であるから、y=f(x)y=f(x)のグラフ{(u,f(u))∣u∈D}\{(u,f(u))\mid u\in D\}のΦ\Phiによる像は{(x,g(x))∣x∈D′}\{(x,g(x))\mid x\in D'\}、すなわちy=g(x)y=g(x)のグラフである。

平面の点(s,t)(s,t)をとる。xx軸方向の1∣b∣\dfrac{1}{|b|}倍の伸縮は(s,t)(s,t)を(s∣b∣, t)\left(\dfrac{s}{|b|},\ t\right)へ移し、b<0b<0のときに続けるyy軸に関する対称移動は、この点を(−s∣b∣, t)\left(-\dfrac{s}{|b|},\ t\right)へ移す。b>0b>0ならばs∣b∣=sb\dfrac{s}{|b|}=\dfrac{s}{b}、b<0b<0ならば−s∣b∣=sb-\dfrac{s}{|b|}=\dfrac{s}{b}であるから、いずれの場合も第1座標はsb\dfrac{s}{b}になる。同様に、yy軸方向の∣a∣|a|倍の伸縮と、a<0a<0のときのxx軸に関する対称移動によって、第2座標はatatになる。伸縮と対称移動は、それぞれ第1座標と第2座標の一方だけを変えるので、施す順序によらず点(sb, at)\left(\dfrac{s}{b},\ at\right)を得る。続く平行移動により、この点は(sb+p, at+q)=Φ(s,t)\left(\dfrac{s}{b}+p,\ at+q\right)=\Phi(s,t)へ移る。▨

公式 1.3.f:D→Rf:D\to\Rを関数とする。次の表の各行は、定理 1.2の係数(a,b,p,q)(a,b,p,q)を表の値にとった場合である。

式 (a,b,p,q)(a,b,p,q) 定義域 値域 グラフの変化
y=f(x−p)+qy=f(x-p)+q (1,1,p,q)(1,1,p,q) D+p={x∈R∣x−p∈D}D+p=\{x\in\R\mid x-p\in D\} {y+q∣y∈f(D)}\{y+q\mid y\in f(D)\} xx軸方向にpp、yy軸方向にqqだけ平行移動
y=af(x)y=af(x)(a≠0a\ne0) (a,1,0,0)(a,1,0,0) DD {ay∣y∈f(D)}\{ay\mid y\in f(D)\} yy軸方向に∣a∣\lvert a\rvert倍に伸縮(a<0a<0のときは続けてxx軸に関して対称移動)
y=f(bx)y=f(bx)(b≠0b\ne0) (1,b,0,0)(1,b,0,0) {x∈R∣bx∈D}\{x\in\R\mid bx\in D\} f(D)f(D) xx軸方向に1∣b∣\dfrac{1}{\lvert b\rvert}倍に伸縮(b<0b<0のときは続けてyy軸に関して対称移動)
y=−f(x)y=-f(x) (−1,1,0,0)(-1,1,0,0) DD {−y∣y∈f(D)}\{-y\mid y\in f(D)\} xx軸に関して対称移動
y=f(−x)y=f(-x) (1,−1,0,0)(1,-1,0,0) {x∈R∣−x∈D}\{x\in\R\mid -x\in D\} f(D)f(D) yy軸に関して対称移動

平行移動の行は§B2.2 定理 1.1と、対称移動の二つの行は§B2.2 定理 2.1と一致する。

注意 1.4.xx軸方向では、点の動きは式の中でxxに施す操作の逆になる。定理 1.2 (3)により点の第1座標はuuからub+p\dfrac{u}{b}+pへ移るので、xxをbxbxに置き換えると点の第1座標は1b\dfrac{1}{b}倍になり、xxをx−px-pに置き換えると点の第1座標はppだけ増える。たとえばy=f(2x)y=f(2x)のグラフは、y=f(x)y=f(x)のグラフをxx軸方向に12\dfrac12倍に縮めたものである。一方、点の第2座標はvvからav+qav+qへ移るので、yy軸方向では、関数の値をaa倍してqqを加える式の操作が、そのまま点の動きになる。

af(b(x−p))+qaf(b(x-p))+qの値はx−px-p、b(x−p)b(x-p)、f(b(x−p))f(b(x-p))の順に計算するが、もとのグラフには定理 1.2 (4)のとおり伸縮と対称移動を先に、平行移動を後に施す。平行移動を先に施す場合、その移動量はpp、qqとは限らない。平行移動(x,y)↦(x+bp, y+qa)(x,y)\mapsto\left(x+bp,\ y+\dfrac{q}{a}\right)を施した後に写像(x,y)↦(xb, ay)(x,y)\mapsto\left(\dfrac{x}{b},\ ay\right)を施すと、点(x,y)(x,y)は(x+bpb, a(y+qa))=(xb+p, ay+q)\left(\dfrac{x+bp}{b},\ a\left(y+\dfrac{q}{a}\right)\right)=\left(\dfrac{x}{b}+p,\ ay+q\right)へ移るので、先に施す平行移動の量はxx軸方向にbpbp、yy軸方向にqa\dfrac{q}{a}である。

a=0a=0のとき、y=af(b(x−p))+qy=af(b(x-p))+qは定義域{x∈R∣b(x−p)∈D}\{x\in\R\mid b(x-p)\in D\}上の定数関数qqであり、点(x,y)(x,y)を(xb+p, q)\left(\dfrac{x}{b}+p,\ q\right)へ移す写像は、平面全体を直線y=qy=qの上へ写す。この写像は異なる点を同じ点へ移すので、グラフの変換には含めない。

次の図は、y=sin⁡xy=\sin xのグラフに係数a,b,p,qa,b,p,qのグラフの変換を施したものです。

例 1.5.f(x)=xf(x)=\sqrt{x}(定義域[0,∞)[0,\infty)、値域[0,∞)[0,\infty))とする。

y=2x−6y=\sqrt{2x-6}は、2x−6=2(x−3)2x-6=2(x-3)よりa=1a=1、b=2b=2、p=3p=3、q=0q=0の場合である。定理 1.2により、このグラフはy=xy=\sqrt{x}のグラフをxx軸方向に12\dfrac12倍に伸縮した後、xx軸方向に33だけ平行移動したものであり、点(u,u)(u,\sqrt{u})は点(u2+3, u)\left(\dfrac{u}{2}+3,\ \sqrt{u}\right)へ移る。定義域は{u2+3 | u≥0}=[3,∞)\left\{\dfrac{u}{2}+3\ \middle|\ u\ge0\right\}=[3,\infty)、値域は[0,∞)[0,\infty)である。xx軸方向の移動量は、式に現れる66ではなく33である。

同じ二つの操作でも、施す順序を入れ替えると別の関数のグラフになる。y=xy=\sqrt{x}のグラフをxx軸方向に11だけ平行移動するとy=x−1y=\sqrt{x-1}のグラフになり、続けてxx軸方向に12\dfrac12倍に伸縮すると、公式 1.3のy=f(bx)y=f(bx)の行によりxxを2x2xに置き換えたy=2x−1y=\sqrt{2x-1}(定義域[12,∞)\left[\dfrac12,\infty\right))のグラフになる。先にxx軸方向に12\dfrac12倍に伸縮するとy=2xy=\sqrt{2x}のグラフになり、続けてxx軸方向に11だけ平行移動すると、xxをx−1x-1に置き換えたy=2(x−1)=2x−2y=\sqrt{2(x-1)}=\sqrt{2x-2}(定義域[1,∞)[1,\infty))のグラフになる。前者は2x−1=2(x−12)\sqrt{2x-1}=\sqrt{2\left(x-\dfrac12\right)}と書くことができ、伸縮の後に施す移動量12\dfrac12は、先に施した移動量11をb=2b=2で割ったものである。

2 絶対値による折り返し

公式 2.1.f:D→Rf:D\to\Rを関数とする。

  1. y=∣f(x)∣y=|f(x)|の定義域はDD、値域は{∣y∣∣y∈f(D)}\{|y|\mid y\in f(D)\}である。このグラフは、y=f(x)y=f(x)のグラフの点のうち、f(x)≥0f(x)\ge0を満たす点をそのまま残し、f(x)<0f(x)<0を満たす点をxx軸に関して対称移動したものである。
  2. y=f(∣x∣)y=f(|x|)の定義域は{x∈R∣∣x∣∈D}\{x\in\R\mid |x|\in D\}、値域は{f(u)∣u∈D, u≥0}\{f(u)\mid u\in D,\ u\ge0\}である。このグラフは、y=f(x)y=f(x)のグラフのx≥0x\ge0の部分と、その部分をyy軸に関して対称移動した図形とを合わせたものである。

証明.(1)を示す。∣f(x)∣|f(x)|はf(x)f(x)が定まるxx、すなわちx∈Dx\in Dに対して定まるので、定義域はDDであり、値域は{∣f(x)∣∣x∈D}={∣y∣∣y∈f(D)}\{|f(x)|\mid x\in D\}=\{|y|\mid y\in f(D)\}である。x∈Dx\in Dについて、f(x)≥0f(x)\ge0ならば(x,∣f(x)∣)=(x,f(x))(x,|f(x)|)=(x,f(x))である。f(x)<0f(x)<0ならば(x,∣f(x)∣)=(x,−f(x))(x,|f(x)|)=(x,-f(x))であり、これは点(x,f(x))(x,f(x))をxx軸に関して対称移動した点である。

(2)を示す。f(∣x∣)f(|x|)は∣x∣∈D|x|\in Dを満たすxxに対して定まるので、定義域は{x∈R∣∣x∣∈D}\{x\in\R\mid |x|\in D\}である。x≥0x\ge0ならば∣x∣=x|x|=xであるから、点(x,f(∣x∣))=(x,f(x))(x,f(|x|))=(x,f(x))はy=f(x)y=f(x)のグラフのx≥0x\ge0の部分の点であり、この部分の点はすべてこの形で得られる。x<0x<0ならば∣x∣=−x>0|x|=-x>0であるから、点(x,f(∣x∣))=(x,f(−x))(x,f(|x|))=(x,f(-x))はy=f(x)y=f(x)のグラフの点(−x,f(−x))(-x,f(-x))をyy軸に関して対称移動した点であり、u>0u>0を満たす点(u,f(u))(u,f(u))の対称移動(−u,f(u))(-u,f(u))はすべてこの形で得られる。xxが定義域を動くとき、∣x∣|x|はDDの00以上の要素全体を動くので、値域は{f(u)∣u∈D, u≥0}\{f(u)\mid u\in D,\ u\ge0\}である。▨

y=∣f(x)∣y=|f(x)|とy=f(∣x∣)y=f(|x|)のどちらでも、点の対応は場所によって変わります。とくにy=f(∣x∣)y=f(|x|)では、u>0u>0を満たす点(u,f(u))(u,f(u))に二つの点(u,f(u))(u,f(u))、(−u,f(u))(-u,f(u))が対応し、x<0x<0の部分の点は用いられません。平面全体に一つの写像を施すグラフの変換とは、この性質において異なります。

例 2.2.f(x)=x2−2xf(x)=x^2-2x(定義域D=[−1,3]D=[-1,3])とする。f(x)=(x−1)2−1f(x)=(x-1)^2-1であるから、f(D)=[−1,3]f(D)=[-1,3]である。

y=∣x2−2x∣y=|x^2-2x|の定義域は[−1,3][-1,3]、値域は{∣y∣∣−1≤y≤3}=[0,3]\{|y|\mid -1\le y\le3\}=[0,3]である。f(x)<0f(x)<0となるのは0<x<20<x<2のときであり、グラフのこの部分はxx軸に関して対称移動されて、y=−x2+2xy=-x^2+2x(0<x<20<x<2)のグラフになる。

y=f(∣x∣)=x2−2∣x∣y=f(|x|)=x^2-2|x|の定義域は{x∈R∣∣x∣∈[−1,3]}=[−3,3]\{x\in\R\mid |x|\in[-1,3]\}=[-3,3]、値域は{f(u)∣0≤u≤3}=[−1,3]\{f(u)\mid 0\le u\le3\}=[-1,3]である。グラフは、y=x2−2xy=x^2-2x(0≤x≤30\le x\le3)のグラフと、それをyy軸に関して対称移動したy=x2+2xy=x^2+2x(−3≤x≤0-3\le x\le0)のグラフを合わせたものである。もとの関数の−1≤x<0-1\le x<0の部分は用いられず、たとえばx=−1x=-1での値はf(−1)=3f(-1)=3ではなくf(∣−1∣)=f(1)=−1f(|-1|)=f(1)=-1である。

3 変換後の周期

定理 3.1.f:D→Rf:D\to\Rを関数とし、a,b,p,qa,b,p,qを実数、a≠0a\ne0、b≠0b\ne0とする。

  1. 関数h(x)=f(bx)h(x)=f(bx)(定義域{x∈R∣bx∈D}\{x\in\R\mid bx\in D\})について、正の数SSがhhの周期であるための必要十分条件は、∣b∣S|b|Sがffの周期であることである。とくに、ffが基本周期TTをもつならば、hhの基本周期はT∣b∣\dfrac{T}{|b|}である。
  2. 関数y=af(b(x−p))+qy=af(b(x-p))+q(定義域{x∈R∣b(x−p)∈D}\{x\in\R\mid b(x-p)\in D\})の正の周期は、hhの正の周期と一致する。とくに、ffが基本周期TTをもつならば、y=af(b(x−p))+qy=af(b(x-p))+qの基本周期もT∣b∣\dfrac{T}{|b|}である。

証明.(1)を示す。実数ccについて、「すべての実数uuについて、u∈Du\in Dとu+c∈Du+c\in Dは同値であり、u∈Du\in Dならばf(u+c)=f(u)f(u+c)=f(u)である」という条件を(∗)c(\ast)_cと書く。§B2.3 定義 1.1により、正の数ccについては、(∗)c(\ast)_cはccがffの周期であることにほかならない。

実数ccについて(∗)c(\ast)_cを仮定し、実数uuをとる。(∗)c(\ast)_cをu−cu-cに用いると、u−c∈Du-c\in Dとu∈Du\in Dは同値であり、u−c∈Du-c\in Dならばf(u)=f(u−c)f(u)=f(u-c)である。よって、u∈Du\in Dならばu−c∈Du-c\in Dかつf(u−c)=f(u)f(u-c)=f(u)であり、(∗)−c(\ast)_{-c}が成り立つ。ccを−c-cに替えれば逆も成り立つので、(∗)c(\ast)_cと(∗)−c(\ast)_{-c}は同値である。

正の数SSをとる。SSがhhの周期であることは、すべての実数xxについて、bx∈Dbx\in Dとbx+bS∈Dbx+bS\in Dが同値であり、bx∈Dbx\in Dならばf(bx+bS)=f(bx)f(bx+bS)=f(bx)が成り立つことである。b≠0b\ne0であるからu=bxu=bxはxxとともに実数全体を動き、この条件は(∗)bS(\ast)_{bS}と同値である。bSbSは∣b∣S|b|Sと−∣b∣S-|b|Sのいずれかに等しいので、前段により、SSがhhの周期であることは(∗)∣b∣S(\ast)_{|b|S}、すなわち∣b∣S|b|Sがffの周期であることと同値である。したがって、hhの正の周期全体は、ffの正の周期全体の各要素を1∣b∣\dfrac{1}{|b|}倍した集合に等しく、ffの正の周期の最小値がTTならば、hhの正の周期の最小値はT∣b∣\dfrac{T}{|b|}である。

(2)を示す。k(x)=af(b(x−p))+qk(x)=af(b(x-p))+qとおくとk(x)=ah(x−p)+qk(x)=ah(x-p)+qであり、xxがkkの定義域に属することは、x−px-pがhhの定義域に属することと同値である。正の数SSと実数xxに対してt=x−pt=x-pとおくと、xxとx+Sx+Sがkkの定義域に属するかどうかは、それぞれttとt+St+Sがhhの定義域に属するかどうかと一致する。ttとt+St+Sがともにhhの定義域に属するとき、a≠0a\ne0であるから、k(x+S)=k(x)k(x+S)=k(x)すなわちah(t+S)+q=ah(t)+qah(t+S)+q=ah(t)+qはh(t+S)=h(t)h(t+S)=h(t)と同値である。ttはxxとともに実数全体を動くので、SSがkkの周期であることとSSがhhの周期であることは同値である。これと(1)により、ffが基本周期TTをもつならば、kkの基本周期はT∣b∣\dfrac{T}{|b|}である。▨

f=sin⁡f=\sinとし、正弦の基本周期2π2\pi(§B2.3 定理 2.1)をTTとすると、(1)からは§B2.3 定理 4.1と同じ結論が得られます。

4 三角関数の振幅・周期・位相

公式 4.1.a,b,p,qa,b,p,qを実数とし、a≠0a\ne0、b≠0b\ne0とする。関数y=asin⁡(b(x−p))+qy=a\sin(b(x-p))+q(定義域R\R)について、∣a∣|a|を振幅、ppを位相のずれという。同じ関数は、ppを2π∣b∣\dfrac{2\pi}{|b|}の整数倍だけずらしても、aaを−a-aに替えてppをπ∣b∣\dfrac{\pi}{|b|}だけずらしても(sin⁡(θ±π)=−sin⁡θ\sin(\theta\pm\pi)=-\sin\thetaによる)表されるので、位相のずれは関数だけからは一つに定まらず、関数をこの形に表したときのppとして読む。この関数のグラフは、y=sin⁡xy=\sin xのグラフを係数a,b,p,qa,b,p,qのグラフの変換で移したものであり、基本周期は2π∣b∣\dfrac{2\pi}{|b|}、値域は[q−∣a∣, q+∣a∣][q-|a|,\ q+|a|]である。実際、正弦の定義域はR\R、値域は[−1,1][-1,1]、基本周期は2π2\piである(§B2.3 定理 2.1)から、グラフと値域は定理 1.2により、基本周期は定理 3.1 (2)により得られる。

また、実数r,sr,sが(r,s)≠(0,0)(r,s)\ne(0,0)を満たすとき、R=r2+s2R=\sqrt{r^2+s^2}とおき、

cos⁡φ=rR,sin⁡φ=sR\cos\varphi=\frac rR,\qquad \sin\varphi=\frac sR

を満たす実数φ\varphiを選ぶと、加法定理により、すべての実数θ\thetaについて

rsin⁡θ+scos⁡θ=Rsin⁡(θ+φ)r\sin\theta+s\cos\theta=R\sin(\theta+\varphi)

である。右辺はRsin⁡(θ−(−φ))R\sin(\theta-(-\varphi))と書くことができるので、RRが振幅、−φ-\varphiが位相のずれである。

例 4.2.y=2sin⁡(3x−π2)+1y=2\sin\left(3x-\dfrac{\pi}{2}\right)+1は、3x−π2=3(x−π6)3x-\dfrac{\pi}{2}=3\left(x-\dfrac{\pi}{6}\right)よりa=2a=2、b=3b=3、p=π6p=\dfrac{\pi}{6}、q=1q=1の場合である。振幅は22、基本周期は2π3\dfrac{2\pi}{3}、位相のずれはπ6\dfrac{\pi}{6}、値域は[−1,3][-1,3]である。グラフは、y=sin⁡xy=\sin xのグラフをxx軸方向に13\dfrac13倍、yy軸方向に22倍に伸縮した後、xx軸方向にπ6\dfrac{\pi}{6}、yy軸方向に11だけ平行移動したものである。xx軸方向の移動量は、式に現れるπ2\dfrac{\pi}{2}ではない。

3sin⁡θ+cos⁡θ\sqrt3\sin\theta+\cos\thetaではr=3r=\sqrt3、s=1s=1、R=2R=2であり、cos⁡φ=32\cos\varphi=\dfrac{\sqrt3}{2}、sin⁡φ=12\sin\varphi=\dfrac12を満たすφ=π6\varphi=\dfrac{\pi}{6}をとると、3sin⁡θ+cos⁡θ=2sin⁡(θ+π6)\sqrt3\sin\theta+\cos\theta=2\sin\left(\theta+\dfrac{\pi}{6}\right)である。位相のずれは−π6-\dfrac{\pi}{6}であり、グラフはy=2sin⁡θy=2\sin\thetaのグラフを横軸の負の向きにπ6\dfrac{\pi}{6}だけ平行移動したものである。

5 演習

問題 5.1.y=−23−x+1y=-2\sqrt{3-x}+1のグラフは、y=xy=\sqrt{x}のグラフにどの伸縮・対称移動・平行移動をどの順に施したものか答えよ。また、定義域と値域を求めよ。

解答.

3−x=−(x−3)3-x=-(x-3)であるから、y=−2−(x−3)+1y=-2\sqrt{-(x-3)}+1は、f(x)=xf(x)=\sqrt{x}(定義域[0,∞)[0,\infty)、値域[0,∞)[0,\infty))についてa=−2a=-2、b=−1b=-1、p=3p=3、q=1q=1の場合である。定理 1.2 (4)により、グラフはy=xy=\sqrt{x}のグラフをyy軸に関して対称移動し(xx軸方向の伸縮の倍率は1∣b∣=1\dfrac{1}{|b|}=1)、yy軸方向に22倍に伸縮してxx軸に関して対称移動した後、xx軸方向に33、yy軸方向に11だけ平行移動したものである。定理 1.2 (1)により定義域は{−u+3∣u≥0}=(−∞,3]\{-u+3\mid u\ge0\}=(-\infty,3]、定理 1.2 (2)により値域は{−2y+1∣y≥0}=(−∞,1]\{-2y+1\mid y\ge0\}=(-\infty,1]である。たとえば、y=xy=\sqrt{x}のグラフの端点(0,0)(0,0)は(3,1)(3,1)へ移る。▨

問題 5.2.y=∣sin⁡x∣y=|\sin x|の基本周期がπ\piであることを示せ。

解答.

y=∣sin⁡x∣y=|\sin x|の定義域はR\Rであるから、正の数TTが周期であるための条件は、すべての実数xxについて∣sin⁡(x+T)∣=∣sin⁡x∣|\sin(x+T)|=|\sin x|が成り立つことである。§B2.3 定理 2.1のsin⁡(π−x)=sin⁡x\sin(\pi-x)=\sin xでxxを−x-xに置き換え、sin⁡(−x)=−sin⁡x\sin(-x)=-\sin xを用いると、sin⁡(x+π)=sin⁡(−x)=−sin⁡x\sin(x+\pi)=\sin(-x)=-\sin xである。よって∣sin⁡(x+π)∣=∣sin⁡x∣|\sin(x+\pi)|=|\sin x|であり、π\piは周期である。

逆に、TTを正の周期とすると、x=0x=0について∣sin⁡T∣=∣sin⁡0∣=0|\sin T|=|\sin 0|=0であるから、sin⁡T=0\sin T=0である。単位円上でyy座標が00の点は(1,0)(1,0)と(−1,0)(-1,0)だけであり、これらに対応する角はnπn\pi(n∈Zn\in\Z)に限られるので、T=nπT=n\piと表される。T>0T>0よりn≥1n\ge1であるから、T≥πT\ge\piである。したがって正の周期の最小値はπ\piであり、基本周期はπ\piである。y=sin⁡xy=\sin xの基本周期2π2\piと比べると、絶対値による折り返しによって基本周期が半分になっている。▨

問題 5.3.y=sin⁡2x−3cos⁡2x−1y=\sin 2x-\sqrt3\cos 2x-1をy=asin⁡(b(x−p))+qy=a\sin(b(x-p))+q(a>0a>0、b>0b>0、0≤p<2πb0\le p<\dfrac{2\pi}{b})の形に表し、振幅、基本周期、この表し方における位相のずれ、値域を求めよ。

解答.

公式 4.1の合成の式でr=1r=1、s=−3s=-\sqrt3とするとR=2R=2であり、cos⁡φ=12\cos\varphi=\dfrac12、sin⁡φ=−32\sin\varphi=-\dfrac{\sqrt3}{2}を満たすφ=−π3\varphi=-\dfrac{\pi}{3}をとることができる。すべての実数θ\thetaについてsin⁡θ−3cos⁡θ=2sin⁡(θ−π3)\sin\theta-\sqrt3\cos\theta=2\sin\left(\theta-\dfrac{\pi}{3}\right)であるから、θ=2x\theta=2xとおくと

y=2sin⁡(2x−π3)−1=2sin⁡(2(x−π6))−1y=2\sin\left(2x-\frac{\pi}{3}\right)-1=2\sin\left(2\left(x-\frac{\pi}{6}\right)\right)-1

である。a=2>0a=2>0、b=2>0b=2>0、q=−1q=-1であり、p=π6p=\dfrac{\pi}{6}は0≤p<2π2=π0\le p<\dfrac{2\pi}{2}=\piを満たす。したがって、振幅は22、基本周期はπ\pi、この表し方における位相のずれはπ6\dfrac{\pi}{6}、値域は[−3,1][-3,1]である。▨

例題

条件と何を求めるかを確認してから、式と答えの対応を見比べてください。

次の問いに答えよ(y == f(x) のグラフに施す変換を考える。x 方向の変換は式の上では逆に効くことに注意: y == f(bx) は x 方向に 1/b 倍)。

解法の型点の移動で考える。(X, Y) →\to (kX, Y) なら X == x/k を代入して y == f(x/k)。式を評価する順序とグラフへ変換を施す順序を区別し、y == a f(b(x − p)) + q は「x 方向に 1/b 倍 →\to y 方向に a 倍 →\to (p, q) 平行移動」の順と点対応から定める

  1. f(x) == x - 2 とする。y == |f(x)| と y == f(|x|) を場合分けして表し、2つのグラフが一致するかどうか答えよ。

    f(x)=x−2f(x) = x-2
  2. f(x) == 2x - 6 とする。y == |f(x)| と y == f(|x|) を場合分けして表し、2つのグラフが一致するかどうか答えよ。

    f(x)=2x−6f(x) = 2x-6
  3. y == f(x) のグラフに次の2つの手順で変換を施す。(A) y 軸方向に 4 だけ平行移動してから、y 軸方向に 1/2 倍する。(B) y 軸方向に 1/2 倍してから、y 軸方向に 4 だけ平行移動する。それぞれで得られるグラフの方程式を求め、一致するかどうか答えよ。

    y=f(x)y = f(x)
  4. 次の関数のグラフは、y == f(x) のグラフにどのような変換をどの順に施して得られるか答えよ(拡大縮小・平行移動の順序に注意)。

    y=12f(3(x−4))−4y = \dfrac{1}{2}f\left(3\left(x - 4\right)\right) - 4
  5. f(x) == x - 1 とする。y == |f(x)| と y == f(|x|) を場合分けして表し、2つのグラフが一致するかどうか答えよ。

    f(x)=x−1f(x) = x-1
  6. f(x) == 2x - 2 とする。y == |f(x)| と y == f(|x|) を場合分けして表し、2つのグラフが一致するかどうか答えよ。

    f(x)=2x−2f(x) = 2x-2
  7. 次の f について、指定された式で表されるグラフ(直線 y == x に関する対称移動)の式を求めよ。

    f(x)=2x⟹y=f−1(x)= ?f(x) = 2^{x} \qquad \Longrightarrow \qquad y = f^{-1}(x) = \ ?
  8. 次の f について、指定された式で表されるグラフ(原点に関する対称移動)の式を求めよ。

    f(x)=x2−2x⟹y=−f(−x)= ?f(x) = x^{2} - 2x \qquad \Longrightarrow \qquad y = -f(-x) = \ ?
  9. 次の f について、指定された式で表されるグラフ(y 軸に関する対称移動)の式を求めよ。

    f(x)=1x−1⟹y=f(−x)= ?f(x) = \dfrac{1}{x - 1} \qquad \Longrightarrow \qquad y = f(-x) = \ ?
  10. 次の関数のグラフは、y == f(x) のグラフにどのような変換をどの順に施して得られるか答えよ(拡大縮小・平行移動の順序に注意)。

    y=3f(2(x−1))+3y = 3f\left(2\left(x - 1\right)\right) + 3

演習

問題を解いてから「解答・解説」を開けます。

次の問いに答えよ(y == f(x) のグラフに施す変換を考える。x 方向の変換は式の上では逆に効くことに注意: y == f(bx) は x 方向に 1/b 倍)。

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