1 曲線の凹凸と変曲点
定義 1.1 (下に凸・上に凸). 関数fは開区間Jの各点で微分可能であるとする。Jの各点cに、曲線y=f(x)の点(c,f(c))における接線の傾きf′(c)を対応させる関数f′が、J上で狭義単調増加であるとき、曲線y=f(x)はJで下に凸 (convex) であるという。f′がJ上で狭義単調減少であるとき、曲線y=f(x)はJで上に凸 (concave) であるという。
定義 1.3 (高次導関数と変曲点). 関数fの導関数f′が微分可能であるとき、f′の導関数をf′′と書き、fの第2次導関数 (second derivative) という。一般に、f(1)=f′とし、正の整数nについてf(n)が定まり、さらに微分可能であるとき、f(n)の導関数をf(n+1)と書く。f(n)をfの第n次導関数 (n-th derivative) という。f(2)=f′′であり、f(3)をf′′′とも書く。第2次以上の導関数を高次導関数 (higher-order derivative) という。
開区間Iの各点でfが微分可能であり、さらにf′がIの各点で微分可能であるとき、fはIで2回微分可能 (twice differentiable) であるという。
fを開区間Iで2回微分可能な関数とし、a∈Iとする。ある正の数δについて(a−δ,a+δ)⊆Iであり、曲線y=f(x)が(a−δ,a)と(a,a+δ)の一方で下に凸、他方で上に凸であるとき、点(a,f(a))を曲線y=f(x)の変曲点 (inflection point) という。
例 1.4.R上でf(x)=x4と定める。§B2.5 公式 2.1を繰り返し用いると、すべての実数xについて
f′(x)=4x3,f′′(x)=12x2,f′′′(x)=24x,f(4)(x)=24である。f(5)は定数関数0であり、定数関数0の導関数は定数関数0であるから、5以上のすべての整数nについてf(n)(x)=0である。とくに、fはRで2回微分可能である。
定理 1.5. 関数fは開区間Iで2回微分可能であるとする。Iのすべてのxについてf′′(x)>0ならば、曲線y=f(x)はIで下に凸である。Iのすべてのxについてf′′(x)<0ならば、曲線y=f(x)はIで上に凸である。
証明.fはIで2回微分可能であるから、f′は開区間Iの各点で微分可能であり、その導関数はf′′である。したがって、§B2.5 定理 4.2を関数f′と開区間Iに適用することができる。Iのすべてのxでf′′(x)>0ならば、§B2.5 定理 4.2 (1)によりf′はI上で狭義単調増加であるから、曲線y=f(x)はIで下に凸である。Iのすべてのxでf′′(x)<0ならば、§B2.5 定理 4.2 (2)によりf′はI上で狭義単調減少であるから、曲線y=f(x)はIで上に凸である。▨
定理 1.7. 関数fは開区間Iで2回微分可能であるとし、a∈Iとする。点(a,f(a))が曲線y=f(x)の変曲点ならば、f′′(a)=0である。
証明. 変曲点の定義により、ある正の数δについて(a−δ,a+δ)⊆Iであり、曲線y=f(x)は(a−δ,a)と(a,a+δ)の一方で下に凸、他方で上に凸である。
曲線が(a−δ,a)で下に凸であり、(a,a+δ)で上に凸であるとする。f′はaで微分可能であるから、§B2.10 定理 2.1により、t→aのときf′(t)→f′(a)であり、§B1.10 定理 2.2により、t→a−0のときもt→a+0のときもf′(t)→f′(a)である。a−δ<x<aを満たすxをとる。f′は(a−δ,a)上で狭義単調増加であるから、x<t<aを満たすすべてのtについてf′(x)<f′(t)である。t→a−0とすると、§B1.10 定理 3.1 (4)によりf′(x)≤f′(a)である。a<x<a+δを満たすxをとる。f′は(a,a+δ)上で狭義単調減少であるから、a<t<xを満たすすべてのtについてf′(x)<f′(t)である。t→a+0とすると、§B1.10 定理 3.1 (4)によりf′(x)≤f′(a)である。したがって、開区間(a−δ,a+δ)のすべてのxについてf′(x)≤f′(a)であり、f′はaで極大である。aはf′の定義域に含まれる開区間Iの点であり、f′はaで微分可能であるから、§B2.5 定理 3.3をf′に適用するとf′′(a)=(f′)′(a)=0である。
曲線が(a−δ,a)で上に凸であり、(a,a+δ)で下に凸であるとする。g=−fとおくと、§B2.5 公式 2.1によりgはIで2回微分可能であり、g′=−f′、g′′=−f′′である。f′は(a−δ,a)上で狭義単調減少であるからg′は(a−δ,a)上で狭義単調増加であり、f′は(a,a+δ)上で狭義単調増加であるからg′は(a,a+δ)上で狭義単調減少である。したがって、曲線y=g(x)は(a−δ,a)で下に凸であり、(a,a+δ)で上に凸である。前段の議論をgに適用するとg′′(a)=0であり、f′′(a)=−g′′(a)=0である。▨
開区間Iで2回微分可能な関数fとa∈Iについて、f′′(a)=0は点(a,f(a))が変曲点であるための必要条件ですが、十分条件ではありません。一方、ある正の数δについて(a−δ,a+δ)⊆Iであり、f′′(x)が(a−δ,a)のすべての点で正、(a,a+δ)のすべての点で負である場合、またはその逆の場合には、定理 1.5により曲線y=f(x)は(a−δ,a)と(a,a+δ)の一方で下に凸、他方で上に凸であり、点(a,f(a))は変曲点です。そこで変曲点を求めるときは、f′′(x)=0を満たすxを候補とし、その前後でf′′(x)の符号が実際に変わるかを確かめます。
例 1.8.R上でf(x)=x4と定める。例 1.4によりf′′(x)=12x2であり、f′′(0)=0である。x=0を満たすすべてのxでf′′(x)>0であるから、定理 1.5により、曲線y=x4は(−∞,0)でも(0,∞)でも下に凸であり、f′は(−∞,0)上と(0,∞)上でそれぞれ狭義単調増加である。正の数δをどのようにとっても、f′は(−δ,0)上と(0,δ)上でそれぞれ狭義単調増加であるから、どちらの区間の上でも狭義単調減少でなく、曲線はどちらの区間でも上に凸でない。したがって、f′′(0)=0であるが点(0,0)は変曲点ではなく、定理 1.7の逆は成り立たない。
2 増減と凹凸の表
例 2.1.R上でf(x)=x3−3xと定める。§B2.5 例 4.6で求めたとおり、f′(x)=3(x+1)(x−1)であり、fは(−∞,−1]上と[1,∞)上で狭義単調増加、[−1,1]上で狭義単調減少であって、−1で極大値2をとり、1で極小値−2をとる。さらにf′′(x)=6xであり、f′′(x)はx<0で負、x>0で正である。定理 1.5により、曲線y=f(x)は(−∞,0)で上に凸であり、(0,∞)で下に凸である。とくに、曲線は(−1,0)で上に凸、(0,1)で下に凸であるから、δ=1として、点(0,0)は変曲点である。f′′(x)=0を満たすxは0だけであるから、定理 1.7により、ほかに変曲点はない。
f′とf′′の符号が変わるx=−1,0,1で区切り、導関数と第2次導関数の符号、増減と凹凸、区切りの点での値を一つの表にまとめる。
| x |
(−∞,−1) |
−1 |
(−1,0) |
0 |
(0,1) |
1 |
(1,∞) |
| f′(x) |
+ |
0 |
− |
−3 |
− |
0 |
+ |
| f′′(x) |
− |
−6 |
− |
0 |
+ |
6 |
+ |
| f(x) |
増加・上に凸 |
2 |
減少・上に凸 |
0 |
減少・下に凸 |
−2 |
増加・下に凸 |
表の「増加」「減少」は、その列の区間でfが狭義単調増加、狭義単調減少であることを表し、「上に凸」「下に凸」は、その列の区間で曲線y=f(x)が上に凸、下に凸であることを表す。
3 微分を用いる不等式の証明
定理 3.1.Iを区間とし(有界でなくてもよく、端点を含むかどうかも問わない)、a∈Iとする。関数Fの定義域はIを含み、FはI上で連続であり、Iの内部の各点で微分可能で、Iの内部のすべてのxについてF′(x)≥0であるとする。このとき、FはI上で広義単調増加であり、x≥aを満たすすべてのx∈IについてF(x)≥F(a)、x≤aを満たすすべてのx∈IについてF(x)≤F(a)である。とくに、F(a)=0ならば、x≥aを満たすすべてのx∈IについてF(x)≥0である。
証明.§B2.5 定理 4.2 (3)により、FはI上で広義単調増加である。x∈Iをとる。x>aならば、広義単調増加の定義によりF(a)≤F(x)であり、x<aならばF(x)≤F(a)であり、x=aならばF(x)=F(a)である。したがって、x≥aを満たすすべてのx∈IについてF(x)≥F(a)、x≤aを満たすすべてのx∈IについてF(x)≤F(a)である。F(a)=0ならば、x≥aを満たすすべてのx∈IについてF(x)≥F(a)=0である。▨
例 3.2.x≥0を満たすすべてのxについてx3+1≥x2+xであることを示す。R上でF(x)=x3−x2−x+1と定めると、
F′(x)=3x2−2x−1=(3x+1)(x−1)である。FはRの各点で微分可能であるから、§B2.10 定理 2.1によりRの各点で連続である。また、F(1)=0である。
区間[1,∞)の内部(1,∞)のすべてのxについて、3x+1>0かつx−1>0であるからF′(x)>0である。定理 3.1をI=[1,∞)、a=1として用いると、x≥1を満たすすべてのxについてF(x)≥F(1)=0である。
区間[0,1]の内部(0,1)のすべてのxについて、3x+1>0かつx−1<0であるからF′(x)<0である。G=−Fとおくと、Gは[0,1]上で連続であり、(0,1)のすべてのxについてG′(x)=−F′(x)>0である。定理 3.1を関数GにI=[0,1]、a=1として用いると、0≤x≤1を満たすすべてのxについてG(x)≤G(1)=0、すなわちF(x)≥0である。
したがって、x≥0を満たすすべてのxについてF(x)≥0、すなわちx3+1≥x2+xである。なお、F(x)=(x−1)2(x+1)と因数分解しても、同じ結論を直接確かめることができる。
例 3.3. 角を弧度法で測る。x≥0を満たすすべてのxについてsinx≤xであり、すべての実数xについてcosx≥1−2x2であることを示す。
R上でF(x)=x−sinxと定める。§B2.11 定理 4.1により、FはRの各点で微分可能であり、F′(x)=1−cosxである。§B2.10 定理 2.1によりFはRの各点で連続である。すべての実数xでcosx≤1であるから、F′(x)≥0である。F(0)=0であるから、定理 3.1をI=R、a=0として用いると、x≥0を満たすすべてのxについてF(x)≥0、すなわちsinx≤xである。
R上でG(x)=cosx−1+2x2と定める。§B2.11 定理 4.1により、GはRの各点で微分可能であり、G′(x)=−sinx+x=F(x)である。§B2.10 定理 2.1によりGはRの各点で連続であり、とくに区間[0,∞)上で連続である。前段により、[0,∞)の内部(0,∞)のすべてのxについてG′(x)=F(x)≥0である。G(0)=cos0−1=0であるから、定理 3.1をI=[0,∞)、a=0として用いると、x≥0を満たすすべてのxについてG(x)≥0である。x<0ならば−x>0であり、cos(−x)=cosxであるからG(x)=G(−x)≥0である。したがって、すべての実数xについてG(x)≥0、すなわちcosx≥1−2x2である。
4 演習
問題 4.1 (分数関数の変曲点).R上でf(x)=x2+1xと定める。f′′(x)の符号を調べて曲線y=f(x)の凹凸を調べ、変曲点をすべて求めよ。
解答.
すべての実数xでx2+1>0であるから、§B2.10 定理 4.1によりfはRの各点で微分可能であり、
f′(x)=(x2+1)21⋅(x2+1)−x⋅2x=(x2+1)21−x2である。分母の(x2+1)2=x4+2x2+1は多項式であり、その導関数は4x3+4x=4x(x2+1)である。すべての実数xで(x2+1)2>0であるから、再び§B2.10 定理 4.1によりf′はRの各点で微分可能であり、
f′′(x)=(x2+1)4−2x(x2+1)2−(1−x2)⋅4x(x2+1)=(x2+1)3−2x(x2+1)−4x(1−x2)=(x2+1)32x(x2−3)である。したがって、fはRで2回微分可能である。(x2+1)3>0であるから、f′′(x)の符号は2x(x+3)(x−3)の符号に等しく、x<−3と0<x<3で負、−3<x<0とx>3で正である。定理 1.5により、曲線y=f(x)は(−∞,−3)と(0,3)で上に凸であり、(−3,0)と(3,∞)で下に凸である。
δ=3とする。曲線は(−23,−3)で上に凸、(−3,0)で下に凸であるから、点(−3,f(−3))は変曲点である。曲線は(−3,0)で下に凸、(0,3)で上に凸であるから、点(0,f(0))は変曲点である。曲線は(0,3)で上に凸、(3,23)で下に凸であるから、点(3,f(3))は変曲点である。f′′(x)=0を満たすxは−3、0、3だけであるから、定理 1.7により、ほかに変曲点はない。f(−3)=−43、f(0)=0、f(3)=43であるから、変曲点は(−3,−43)、(0,0)、(3,43)である。▨
問題 4.2 (傾きが 0 の変曲点).R上でf(x)=x4−4x3と定める。増減と凹凸を一つの表にまとめ、fの極値と曲線y=f(x)の変曲点をすべて求めよ。また、f′(0)=0であるが、fは0で極値をとらないことを示せ。
解答.
§B2.5 公式 2.1により、
f′(x)=4x3−12x2=4x2(x−3),f′′(x)=12x2−24x=12x(x−2)であり、fはRで2回微分可能である。f′(x)はx<0と0<x<3で負、x>3で正であり、f′′(x)はx<0とx>2で正、0<x<2で負である。fはRの各点で微分可能であるから、§B2.10 定理 2.1によりRの各点で連続である。§B2.5 定理 4.2により、fは(−∞,0]上と[0,3]上でそれぞれ狭義単調減少であり、[3,∞)上で狭義単調増加である。定理 1.5により、曲線y=f(x)は(−∞,0)と(2,∞)で下に凸であり、(0,2)で上に凸である。f(0)=0、f(2)=−16、f(3)=−27、f′(2)=−16、f′′(3)=36であるから、増減と凹凸の表は次のとおりである。
| x |
(−∞,0) |
0 |
(0,2) |
2 |
(2,3) |
3 |
(3,∞) |
| f′(x) |
− |
0 |
− |
−16 |
− |
0 |
+ |
| f′′(x) |
+ |
0 |
− |
0 |
+ |
36 |
+ |
| f(x) |
減少・下に凸 |
0 |
減少・上に凸 |
−16 |
減少・下に凸 |
−27 |
増加・下に凸 |
表の読み方は例 2.1の表と同じである。
δ=3とすると、0<x<3でf′(x)<0、3<x<6でf′(x)>0であるから、§B2.5 定理 4.5 (2)によりfは3で極小であり、極小値はf(3)=−27である。fは(−∞,0]上と[0,3]上で狭義単調減少であるから、x<0ならばf(x)>f(0)であり、0<x≤3ならばf(x)<f(0)である。0を含むどの開区間も、f(x)>f(0)を満たすx<0と、f(x)<f(0)を満たす0<x≤3を含むので、fは0で極大でも極小でもない。fはRの各点で微分可能であり、f′(x)=0を満たすxは0と3だけであるから、§B2.5 定理 3.3により、fの極値は3における極小値−27だけである。とくに、f′(0)=0であるが、fは0で極値をとらない。
曲線は(−2,0)で下に凸、(0,2)で上に凸であるから、δ=2として、点(0,0)は変曲点である。曲線は(1,2)で上に凸、(2,3)で下に凸であるから、δ=1として、点(2,−16)は変曲点である。f′′(x)=0を満たすxは0と2だけであるから、定理 1.7により、ほかに変曲点はない。f′(0)=0であるから、変曲点(0,0)における接線はy=0であり、その傾きは0である。▨
問題 4.3 (2次式の不等式).R上でF(x)=x2−2x+1と定める。定理 3.1を用いて、すべての実数xについてF(x)≥0であることを示し、Fの最小値を求めよ。
解答.
F′(x)=2x−2=2(x−1)である。FはRの各点で微分可能であるから、§B2.10 定理 2.1によりRの各点で連続である。また、F(1)=0である。区間[1,∞)の内部(1,∞)のすべてのxでF′(x)>0であるから、定理 3.1をI=[1,∞)、a=1として用いると、x≥1を満たすすべてのxでF(x)≥F(1)=0である。G=−Fとおくと、G′(x)=−2(x−1)であり、区間(−∞,1]の内部(−∞,1)のすべてのxでG′(x)>0である。定理 3.1を関数GにI=(−∞,1]、a=1として用いると、x≤1を満たすすべてのxでG(x)≤G(1)=0、すなわちF(x)≥0である。したがって、すべての実数xでF(x)≥0=F(1)であり、Fはx=1で最小値0をとる。▨