1 前提とする定義と事実
関数が点で微分可能であること、およびその点での微分係数と導関数は、§B2.5 多項式の微分と接線・増減・極値の§B2.5 定義 1.1に従います。本記事の定理では、点xが定義域の内部の点であるときの差の商hf(x+h)−f(x)の極限を扱います。
証明では、次の三つの事実を認めて用います。いずれの証明も§D1 ε-論法と基礎解析が与えます。
- 極限の和・積・商についての性質。各項や因子の極限が存在するとき、和・積・商の極限は極限の和・積・商に等しく、商では分母の極限が0でないことを要する。
- 内側の関数がbに近づくとき、bで連続な外側の関数の値は、そのbでの値に近づく。合成した式の極限を、外側の関数の連続性を使って計算してよいことを表す。
- 関数gが点xで連続でg(x)=0ならば、xを含むある開区間のすべての点でgの値は0でない。
2 微分可能性と連続性
積と商の微分法の証明では、差の商を変形したあとにf(x+h)やg(x+h)の極限を取ります。そこで先に、微分可能であれば値の極限がもとの値に一致することを確かめます。
定理 2.1. 関数fが点xで微分可能ならば
h→0limf(x+h)=f(x)が成り立つ。
証明.h=0のとき
f(x+h)−f(x)=hf(x+h)−f(x)⋅hと書ける。h→0のとき、右辺の第一の因子は微分係数f′(x)に近づき、第二の因子は0に近づくので、積はf′(x)⋅0=0に近づく。よってlimh→0f(x+h)=f(x)である。▨
3 積の微分法
定理 3.1 (積の微分法). 関数fとgがともに点xで微分可能であるとする。このとき積fgもxで微分可能であり
(fg)′(x)=f′(x)g(x)+f(x)g′(x)が成り立つ。
証明.h=0のとき、分子にf(x)g(x+h)を足して引くと
hf(x+h)g(x+h)−f(x)g(x)=hf(x+h)−f(x)⋅g(x+h)+f(x)⋅hg(x+h)−g(x)となる。h→0のとき、第一項の差の商はf′(x)に近づき、gはxで微分可能であるから定理 2.1によりg(x+h)はg(x)に近づく。第二項の差の商はg′(x)に近づく。よって右辺はf′(x)g(x)+f(x)g′(x)に近づき、左辺の極限が存在してこの値に等しくなる。▨
4 商の微分法
商f/gは、分母gの値が0になる点では定義されません。そこで、xの近くで分母が0にならないことを仮定します。
定理 4.1 (商の微分法). 関数fとgがともに点xで微分可能であるとし、さらにxを含むある開区間のすべての点でgの値が0でないとする。このとき商gfはxで微分可能であり
(gf)′(x)=g(x)2f′(x)g(x)−f(x)g′(x)が成り立つ。
証明. 仮定により、∣h∣が十分小さい0でないhについてg(x+h)=0であり、差の商を作ることができる。分子を通分すると
h1(g(x+h)f(x+h)−g(x)f(x))=g(x+h)g(x)1⋅hf(x+h)g(x)−f(x)g(x+h)である。右辺の第二の因子の分子にf(x)g(x)を足して引くと
hf(x+h)g(x)−f(x)g(x+h)=hf(x+h)−f(x)⋅g(x)−f(x)⋅hg(x+h)−g(x)となり、h→0のときf′(x)g(x)−f(x)g′(x)に近づく。また定理 2.1によりg(x+h)はg(x)に近づき、g(x)=0であるから、第一の因子はg(x)21に近づく。よって左辺の極限が存在してg(x)2f′(x)g(x)−f(x)g′(x)に等しくなる。▨
分子を定数関数1とすると、逆数の導関数についての次の式を得ます。
証明.定理 4.1でfを定数関数1とする。定数関数の導関数は0であるから、分子は0⋅g(x)−1⋅g′(x)=−g′(x)となる。▨
5 合成関数の微分法
合成関数f∘gが定まるのは、gの定義域に属し、かつgの値がfの定義域に入る入力の全体でした。次の定理は、その範囲に含まれる開区間の上で述べます。
定理 5.1 (合成関数の微分法).I、Jを開区間とし、gをIで定義された関数、fをJで定義された関数とする。Iのすべての点xについてg(x)∈Jであるとする。点x0∈Iについて、gがx0で微分可能であり、fがg(x0)で微分可能であるならば、合成関数f∘gはx0で微分可能であり
(f∘g)′(x0)=f′(g(x0))g′(x0)が成り立つ。すなわち、合成関数の導関数は、外側の関数の導関数に内側の関数の値を代入したものへ、内側の関数の導関数を掛けたものである。
証明.b=g(x0)と置く。Jの各点tに対して
φ(t)=⎩⎨⎧t−bf(t)−f(b)f′(b)(t=b)(t=b)と定める。fはbで微分可能であるからlimt→bφ(t)=f′(b)=φ(b)であり、φはbで連続である。また、Jのすべての点tについて
f(t)−f(b)=φ(t)(t−b)が成り立つ。t=bのときはφの定め方から、t=bのときは両辺が0であることから従う。
h=0かつx0+h∈Iとし、この等式にt=g(x0+h)∈Jを代入して両辺をhで割ると
hf(g(x0+h))−f(g(x0))=φ(g(x0+h))⋅hg(x0+h)−g(x0)となる。gはx0で微分可能であるから定理 2.1により、h→0のときg(x0+h)はbに近づく。φはbで連続であるから、φ(g(x0+h))はφ(b)=f′(b)に近づく。また第二の因子はg′(x0)に近づく。よって左辺の極限が存在してf′(b)g′(x0)に等しくなる。▨
6 xの整数乗の導関数
負の整数乗は、x=0と正の整数mについてx−m=xm1と定め、x0=1と定めます。指数が正の整数の場合は多項式の微分の§B2.5 公式 2.1を引き、負の整数の場合は逆数の導関数から導きます。
定理 6.1.nを1以上の整数とすると、すべての実数xについて
(xn)′=nxn−1が成り立つ。nを−1以下の整数とすると、0でないすべての実数xについて同じ式が成り立つ。ここでx0は、すべての実数xについて1と読む。
証明.n≥1の場合は、§B2.5 公式 2.1の(xn)′=nxn−1そのものである。
n≤−1の場合を示す。m=−nと置くとmは1以上の整数であり、x=0のときxn=xm1である。x=0のときは、xを含み0を含まない開区間をとることができ、その上でxmは0にならない。したがって公式 4.3と、いま引いた正の整数の場合により
(xn)′=−(xm)2mxm−1=−mxm−1−2m=−mx−m−1=nxn−1である。▨
n=0の場合は、定理の範囲の外にあります。x0=1は定数関数であり、その導関数は0です(§B2.5 公式 2.1)。これは0⋅x−1がx=0で0に等しいことと整合します。
7 規則を組み合わせた微分
例 7.1. 次の三つの関数の導関数を求める。
(1)y=(3x2+1)4とする。外側をt4、内側を3x2+1とみると、定理 5.1と定理 6.1により
y′=4(3x2+1)3⋅6x=24x(3x2+1)3である。すべての実数xで成り立つ。
(2)y=x2+12x+1とする。すべての実数xについてx2+1≥1>0であるから、定理 4.1を用いることができて
y′=(x2+1)22(x2+1)−(2x+1)⋅2x=(x2+1)2−2x2−2x+2である。
(3)y=x(2x−1)−3とする。2x−1=0となるx=21では(2x−1)−3が定まらないので、x=21で考える。x>21ではI=(21,∞)、J=(0,∞)、x<21ではI=(−∞,21)、J=(−∞,0)として、2x−1を内側、t−3を外側とみると、定理 5.1と定理 6.1により
((2x−1)−3)′=−3(2x−1)−4⋅2=−6(2x−1)−4である。定理 3.1により
y′=1⋅(2x−1)−3+x⋅(−6(2x−1)−4)=(2x−1)4(2x−1)−6x=(2x−1)4−4x−1である。x=21のすべてのxで成り立つ。
8 演習
問題 8.1 (帰納法による整数乗の導関数).§B2.5 公式 2.1を使わずに、積の微分法と数学的帰納法で、1以上の整数nについて、すべての実数xで(xn)′=nxn−1が成り立つことを示しなさい。
解答.
n=1のとき、h=0に対する差の商はh(x+h)−x=1であるから(x)′=1=1⋅x0である。
1以上の整数nについて(xn)′=nxn−1がすべての実数xで成り立つと仮定する。xn+1=x⋅xnであり、xとxnはすべての実数xで微分可能であるから、定理 3.1により
(xn+1)′=1⋅xn+x⋅nxn−1=xn+nxn=(n+1)xnである。ここでn−1≥0であるから、x⋅nxn−1=nxnはすべての実数xで成り立つ。数学的帰納法により、1以上のすべての整数nについて結論が成り立つ。▨
問題 8.2 (積の微分法の仮定).R上でf(x)=∣x∣、g(x)=∣x∣と定める。fgは0で微分可能であるが、fとgは0で微分可能でないことを示しなさい。これは定理 3.1の仮定が、結論の微分可能性にとって十分条件であって必要条件でないことを表す。
解答.
すべての実数xについてf(x)g(x)=∣x∣2=x2である。§B2.5 公式 2.1によりx2は0で微分可能で、(fg)′(0)=2⋅0=0である。一方、f=∣x∣は0で微分可能でない(§B2.5 例 3.4)。gもfと同じ関数であるから、0で微分可能でない。したがってfとgは定理 3.1の仮定を満たさないが、積fgは0で微分可能である。▨