§B2.3三角関数のグラフ

最終更新

横軸を弧度法で測った角として、正弦、余弦、正接のグラフを扱います。各関数の定義域、値域、周期、対称性を調べ、グラフから方程式や不等式の解の範囲を読み取ります。

1 周期と基本周期

定義 1.1 (周期と基本周期). 定義域がDDである関数ffについて、正の数TTが周期 (period) であるとは、すべての実数xxについて

x∈D⟺x+T∈Dx\in D\quad\Longleftrightarrow\quad x+T\in D

が成り立ち、さらにx∈Dx\in Dならばf(x+T)=f(x)f(x+T)=f(x)が成り立つことである。定義域についての条件はD+T=DD+T=Dとも書く。正の周期のうち最小のものが存在するとき、その周期を基本周期 (fundamental period) という。

例 1.2. 定数関数f(x)=cf(x)=c(定義域R\mathbb R)では、すべての正の数TTが周期である。正の周期に最小のものは無いので、基本周期をもたない。

TTが周期ならば2T2Tも周期であり、周期は一つとは限りません。以下では、基本周期を指すことを明示して「基本周期」と書きます。

2 y=sin⁡xy = \sin xとy=cos⁡xy = \cos x

定理 2.1.sin⁡x\sin xとcos⁡x\cos xの定義域はR\mathbb R、値域は[−1,1][-1,1]である。さらに、すべての実数xxについて

sin⁡(−x)=−sin⁡x,cos⁡(−x)=cos⁡x,sin⁡(π−x)=sin⁡x,\sin(-x)=-\sin x,\qquad \cos(-x)=\cos x,\qquad \sin(\pi-x)=\sin x,sin⁡(x+2π)=sin⁡x,cos⁡(x+2π)=cos⁡x\sin(x+2\pi)=\sin x,\qquad \cos(x+2\pi)=\cos x

が成り立つ。正弦は奇関数、余弦は偶関数であり(§B2.2 定義 3.1)、いずれの基本周期も2π2\piである。

証明. 実数xxに対応する単位円上の点(cos⁡x,sin⁡x)(\cos x,\sin x)を固定する。実数xxが動くとこの点は単位円全体を動くので、二つの座標がとる値の範囲はいずれも[−1,1][-1,1]である。また、逆向きに角xxだけ回転した点は(cos⁡x,−sin⁡x)(\cos x,-\sin x)であるから、sin⁡(−x)=−sin⁡x\sin(-x)=-\sin xとcos⁡(−x)=cos⁡x\cos(-x)=\cos xが成り立つ。角π−x\pi-xに対応する点は(−cos⁡x,sin⁡x)(-\cos x,\sin x)であるから、sin⁡(π−x)=sin⁡x\sin(\pi-x)=\sin xである。定義域R\mathbb Rは−R=R-\mathbb R=\mathbb Rを満たすので、正弦は奇関数、余弦は偶関数である。一周にあたる2π2\piだけ回転しても点は変わらないため、2π2\piは正弦と余弦の周期である。

正弦の正の周期をTTとする。周期の条件からsin⁡(π/2+T)=sin⁡(π/2)=1\sin(\pi/2+T)=\sin(\pi/2)=1である。単位円上でyy座標が11の点は(0,1)(0,1)だけであり、これに対応する角はπ/2+2nπ\pi/2+2n\pi(n∈Zn\in\mathbb Z)に限られるので、T=2nπT=2n\piと書ける。T>0T>0よりn≥1n\ge1であるからT≥2πT\ge2\piであり、正弦の基本周期は2π2\piである。余弦の正の周期をTTとすると、cos⁡T=cos⁡0=1\cos T=\cos0=1である。単位円上でxx座標が11の点は(1,0)(1,0)だけであり、これに対応する角は2nπ2n\pi(n∈Zn\in\mathbb Z)に限られるので、同様にT≥2πT\ge2\piであり、余弦の基本周期も2π2\piである。▨

横軸は弧度法で測った角xx、縦軸は関数の値yyです。図に描かれた範囲の外側の形は、周期性から定まります。

二つのグラフは、形が同じで位置だけが違います。実際、

cos⁡x=sin⁡(x+π2)\cos x = \sin\left(x + \frac{\pi}{2}\right)

なので、y=cos⁡xy = \cos xはy=sin⁡xy = \sin xをxx方向に−π2-\dfrac{\pi}{2}だけ平行移動したものです。

3 y=tan⁡xy = \tan xと漸近線

定義 3.1 (漸近線).ffを関数、aaを実数とする。x→a+0x\to a+0またはx→a−0x\to a-0のとき、f(x)f(x)が正の無限大または負の無限大に発散する(§B1.10 定義 2.1)ならば、直線x=ax=aをy=f(x)y=f(x)の垂直漸近線 (vertical asymptote) という。x→+∞x\to+\inftyまたはx→−∞x\to-\inftyのとき、f(x)f(x)が実数qqに限りなく近づくならば、直線y=qy=qをy=f(x)y=f(x)の水平漸近線 (horizontal asymptote) という。

定理 3.2.tan⁡x=sin⁡xcos⁡x\tan x=\dfrac{\sin x}{\cos x}の定義域は

R∖{π2+nπ|n∈Z}\mathbb R\setminus\left\{\frac{\pi}{2}+n\pi\mathrel{}\middle|\mathrel{}n\in\mathbb Z\right\}

であり、値域はR\mathbb Rである。正接は奇関数であり(§B2.2 定義 3.1)、基本周期はπ\piである。各整数nnについて、x→π2+nπ−0x\to\dfrac{\pi}{2}+n\pi-0のときtan⁡x→∞\tan x\to\infty、x→π2+nπ+0x\to\dfrac{\pi}{2}+n\pi+0のときtan⁡x→−∞\tan x\to-\inftyであり、直線x=π2+nπx=\dfrac{\pi}{2}+n\piは垂直漸近線である。

証明.cos⁡x≠0\cos x\ne0を満たす実数xxを固定し、tan⁡x=sin⁡x/cos⁡x\tan x=\sin x/\cos xを用いる。分母が00になるのはx=π/2+nπx=\pi/2+n\pi(n∈Zn\in\mathbb Z)のときであるから、定義域は主張の集合である。任意の実数yyに対して、単位円上の点

(11+y2,y1+y2)\left(\frac{1}{\sqrt{1+y^2}},\frac{y}{\sqrt{1+y^2}}\right)

に対応する角をxxとすればtan⁡x=y\tan x=yとなるので、値域はR\mathbb Rである。定義域から除かれるπ/2+nπ\pi/2+n\piの全体は、−(π/2+nπ)=π/2+(−n−1)π-(\pi/2+n\pi)=\pi/2+(-n-1)\piより符号を替えても変わらないので、定義域は−D=D-D=Dを満たす。sin⁡(−x)=−sin⁡x\sin(-x)=-\sin xとcos⁡(−x)=cos⁡x\cos(-x)=\cos xからtan⁡(−x)=−tan⁡x\tan(-x)=-\tan xが成り立つので、正接は奇関数である。

角を半周動かすと正弦と余弦の符号が同時に反転するから、定義域のすべてのxxについてtan⁡(x+π)=tan⁡x\tan(x+\pi)=\tan xが成り立ち、π\piは周期である。正接の正の周期をTTとすると、00が定義域に属するのでTTも属し、tan⁡T=tan⁡0=0\tan T=\tan0=0である。cos⁡T≠0\cos T\ne0であるからsin⁡T=0\sin T=0であり、単位円上でyy座標が00の点は(±1,0)(\pm1,0)だけなので、対応する角はnπn\pi(n∈Zn\in\mathbb Z)に限られる。T>0T>0よりT=nπT=n\piのnnは正の整数であるからT≥πT\ge\piであり、正接の基本周期はπ\piである。

xxがπ/2\pi/2に近づくとき、∣sin⁡x∣|\sin x|は11に近づき、∣cos⁡x∣|\cos x|は00に近づくので、∣tan⁡x∣|\tan x|はいくらでも大きくなる。π/2\pi/2の近くでx<π/2x<\pi/2のときcos⁡x>0\cos x>0かつsin⁡x>0\sin x>0であるからx→π/2−0x\to\pi/2-0でtan⁡x→∞\tan x\to\inftyであり、π/2<x\pi/2<xのとき(π/2\pi/2の近くで)cos⁡x<0\cos x<0かつsin⁡x>0\sin x>0であるからx→π/2+0x\to\pi/2+0でtan⁡x→−∞\tan x\to-\inftyである。一般のnnについては、tan⁡(x+nπ)=tan⁡x\tan(x+n\pi)=\tan xよりx→π/2+nπ∓0x\to\pi/2+n\pi\mp0の挙動はx→π/2∓0x\to\pi/2\mp0の挙動に等しい。ゆえにx=π/2+nπx=\pi/2+n\piは垂直漸近線である。▨

横軸は弧度法で測った角xx、縦軸はtan⁡x\tan xの値です。グラフが途切れて見える位置はx=π/2+nπx = \pi/2 + n\piであり、そこに点があるのではなく関数が定義されていない点です。縦の表示範囲は−4≤y≤4-4 \le y \le 4なので、漸近線の近くは途中までしか描かれていません。

4 y=sin⁡bxy = \sin bxの周期

定理 4.1.b≠0b\ne0のとき、y=sin⁡bxy=\sin bxの基本周期は2π∣b∣\dfrac{2\pi}{|b|}である。

証明.y=sin⁡bxy=\sin bxの定義域はR\mathbb Rなので、正の数TTが周期であるための条件は、すべての実数xxについてsin⁡(bx+bT)=sin⁡bx\sin(bx+bT)=\sin bxが成り立つことである。b≠0b\ne0よりu=bxu=bxは実数全体を動くので、この条件は、すべての実数uuについてsin⁡(u+bT)=sin⁡u\sin(u+bT)=\sin uが成り立つことと同値である。

TTをy=sin⁡bxy=\sin bxの正の周期とする。b>0b>0ならばbT=∣b∣TbT=|b|Tである。b<0b<0ならばbT=−∣b∣TbT=-|b|Tであり、sin⁡(u−∣b∣T)=sin⁡u\sin(u-|b|T)=\sin uのuuをu+∣b∣Tu+|b|Tに置き換えるとsin⁡u=sin⁡(u+∣b∣T)\sin u=\sin(u+|b|T)を得る。いずれの場合も∣b∣T|b|Tは正弦の正の周期であるから、定理 2.1より∣b∣T≥2π|b|T\ge2\pi、すなわちT≥2π/∣b∣T\ge2\pi/|b|である。

逆にT=2π/∣b∣T=2\pi/|b|とするとbT=±2πbT=\pm2\piである。sin⁡(u+2π)=sin⁡u\sin(u+2\pi)=\sin uであり、このuuをu−2πu-2\piに置き換えるとsin⁡(u−2π)=sin⁡u\sin(u-2\pi)=\sin uでもあるから、すべての実数uuについてsin⁡(u+bT)=sin⁡u\sin(u+bT)=\sin uが成り立つ。ゆえに2π/∣b∣2\pi/|b|は周期であり、正の周期の最小値は2π/∣b∣2\pi/|b|である。▨

振幅・周期・位相をまとめて扱う枠組みは §B2.4 グラフ変換の一般論で整理します。

5 グラフから読み取れる性質

  • 方程式の解の個数。sin⁡x=k\sin x = kの解は、y=sin⁡xy = \sin xのグラフと直線y=ky = kの交点のxx座標です。任意の実数aaに対して、半開区間[a,a+2π)[a,a+2\pi)では、∣k∣>1|k|>1なら解はなく、∣k∣=1|k|=1なら解は1個、∣k∣<1|k|<1なら解は2個あります。2π2\piごとに同じ値が繰り返されるので、個数はaaによらず[−π/2,3π/2)[-\pi/2,3\pi/2)で数えれば足ります。この区間でsin⁡x\sin xは[−π/2,π/2][-\pi/2,\pi/2]で−1-1から11へ増加し、[π/2,3π/2)[\pi/2,3\pi/2)で11から−1-1(3π/23\pi/2では−1-1をとるが区間に含まれない)へ減少します。∣k∣<1|k|<1のとき、増加の側の解α\alphaに対してsin⁡(π−α)=sin⁡α=k\sin(\pi-\alpha)=\sin\alpha=kよりπ−α\pi-\alphaが減少の側の解です。
  • 増減。 単位円上の点が反時計回りに動くとき、そのyy座標であるsin⁡x\sin xは、点が最下点から最上点へ向かう[−π2, π2]\left[-\dfrac{\pi}{2},\, \dfrac{\pi}{2}\right]で増加し、最上点から最下点へ向かう[π2, 3π2]\left[\dfrac{\pi}{2},\, \dfrac{3\pi}{2}\right]で減少します。xx座標であるcos⁡x\cos xは[0,π][0,\pi]で減少し、[π,2π][\pi,2\pi]で増加します。以後はこの繰り返しです。tan⁡x\tan xは、直線x=1x=1上の点のyy座標として読めます。角が−π2-\dfrac{\pi}{2}からπ2\dfrac{\pi}{2}まで増えるあいだ、この点は直線上を下から上へ動くので、tan⁡x\tan xは各区間(−π2+nπ, π2+nπ)\left(-\dfrac{\pi}{2}+n\pi,\ \dfrac{\pi}{2}+n\pi\right)で増加します。これらは図からの読み取りであり、導関数による確認は§B2.11 三角関数の微分 Iと§B2.12 三角関数の微分 IIで行います。
  • 不等式の解の範囲。sin⁡x>k\sin x > kを満たすxxは、交点で区切られた区間として読めます。

三角関数を含む方程式・不等式を実際に解く手順は §A2.4 三角関数を含む方程式・不等式で扱います。

6 演習

問題 6.1 (三角関数のグラフの性質).

  1. y=sin⁡xy = \sin x、y=cos⁡xy = \cos x、y=tan⁡xy = \tan xについて、定義域、値域、基本周期、偶関数か奇関数かを表にまとめよ。
  2. y=cos⁡xy = \cos xがy=sin⁡xy = \sin xの平行移動であることを、加法定理を使わずに単位円上の点の座標から説明せよ。
  3. y=tan⁡2xy = \tan 2xの基本周期と、定義されないxxをすべて求めよ。
  4. 0≤x<2π0 \le x < 2\piの範囲でcos⁡x=13\cos x = \dfrac{1}{3}の解が何個あるかを、グラフから答えよ。また、同じ範囲でtan⁡x=100\tan x = 100の解が何個あるかも答えよ。
解答.
  1. sin⁡x\sin xの定義域はR\mathbb R、値域は[−1,1][-1,1]、基本周期は2π2\piであり、奇関数である。cos⁡x\cos xの定義域はR\mathbb R、値域は[−1,1][-1,1]、基本周期は2π2\piであり、偶関数である。tan⁡x\tan xの定義域はR∖{π/2+nπ∣n∈Z}\mathbb R\setminus\{\pi/2+n\pi\mid n\in\mathbb Z\}、値域はR\mathbb R、基本周期はπ\piであり、奇関数である。
  2. 単位円上で角xxに対応する点を反時計回りにπ/2\pi/2だけ回転すると、もとの点のxx座標が移動後の点のyy座標になる。したがってcos⁡x=sin⁡(x+π/2)\cos x=\sin(x+\pi/2)であり、y=cos⁡xy=\cos xはy=sin⁡xy=\sin xをxx方向に−π/2-\pi/2だけ平行移動したグラフである。
  3. tan⁡2x\tan 2xの定義域は2x≠π/2+nπ2x\ne\pi/2+n\pi、すなわちx≠π/4+nπ/2x\ne\pi/4+n\pi/2(n∈Zn\in\mathbb Z)であり、定義されない点はこれらである。T>0T>0がtan⁡2x\tan2xの周期ならば、すべての定義域のxxについてtan⁡(2x+2T)=tan⁡2x\tan(2x+2T)=\tan2xが成り立つ。2x2xはtan⁡\tanの定義域全体を動くので、2T2Tはtan⁡\tanの正の周期であり、2T≥π2T\ge\piすなわちT≥π/2T\ge\pi/2である。逆にT=π/2T=\pi/2とすると、2(x+π/2)=2x+π2(x+\pi/2)=2x+\piであるからtan⁡(2x+π)=tan⁡2x\tan(2x+\pi)=\tan2xであり、定義されない点の集合もπ/2\pi/2の移動で保たれる。ゆえに基本周期はπ/2\pi/2である。
  4. 0≤x<2π0\le x<2\piでcos⁡x\cos xは[0,π][0,\pi]で11から−1-1へ減少し、[π,2π)[\pi,2\pi)で−1-1から11へ増加する(2π2\piでの値11には達しない)。−1<1/3<1-1<1/3<1なので、各区間でcos⁡x=1/3\cos x=1/3をとる点が1個ずつあり、解は2個である。tan⁡x=100\tan x=100については、0<x0<π/20<x_0<\pi/2でtan⁡x0=100\tan x_0=100をとるx0x_0が存在する。tan⁡x\tan xは各区間(−π/2+nπ,π/2+nπ)(-\pi/2+n\pi,\pi/2+n\pi)で増加するので、各区間の解は高々1個であり、周期π\piより、解はx0+nπx_0+n\pi(n∈Zn\in\mathbb Z)の形ですべてである。0≤x0+nπ<2π0\le x_0+n\pi<2\piを満たす整数nnは0,10,1だけであるから、解は2個である。

▨

閑話休題:「三角」関数がなぜ波になるのか 三角法はもともと、天文学の計算のために円の弦の長さを角ごとに並べた表として生まれ、のちに直角三角形の辺の比として整理されました。角を入れると長さや比が返ってくる、という表であって、波とは何の関係もありません。

それが波の形になるのは、定義を単位円へ移したときです。円周上を一定の速さで回る点のyy座標を、時間の関数として記録すると、それがそのままsin⁡\sinのグラフになります。

前提記事