1 周期と基本周期
定義 1.1 (周期と基本周期). 定義域がDである関数fについて、正の数Tが周期 (period) であるとは、すべての実数xについて
x∈D⟺x+T∈D
が成り立ち、さらにx∈Dならばf(x+T)=f(x)が成り立つことである。定義域についての条件はD+T=Dとも書く。正の周期のうち最小のものが存在するとき、その周期を基本周期 (fundamental period) という。
例 1.2. 定数関数f(x)=c(定義域R)では、すべての正の数Tが周期である。正の周期に最小のものは無いので、基本周期をもたない。
Tが周期ならば2Tも周期であり、周期は一つとは限りません。以下では、基本周期を指すことを明示して「基本周期」と書きます。
2 y=sinxとy=cosx
定理 2.1.sinxとcosxの定義域はR、値域は[−1,1]である。さらに、すべての実数xについて
sin(−x)=−sinx,cos(−x)=cosx,sin(π−x)=sinx,sin(x+2π)=sinx,cos(x+2π)=cosxが成り立つ。正弦は奇関数、余弦は偶関数であり(§B2.2 定義 3.1)、いずれの基本周期も2πである。
証明. 実数xに対応する単位円上の点(cosx,sinx)を固定する。実数xが動くとこの点は単位円全体を動くので、二つの座標がとる値の範囲はいずれも[−1,1]である。また、逆向きに角xだけ回転した点は(cosx,−sinx)であるから、sin(−x)=−sinxとcos(−x)=cosxが成り立つ。角π−xに対応する点は(−cosx,sinx)であるから、sin(π−x)=sinxである。定義域Rは−R=Rを満たすので、正弦は奇関数、余弦は偶関数である。一周にあたる2πだけ回転しても点は変わらないため、2πは正弦と余弦の周期である。
正弦の正の周期をTとする。周期の条件からsin(π/2+T)=sin(π/2)=1である。単位円上でy座標が1の点は(0,1)だけであり、これに対応する角はπ/2+2nπ(n∈Z)に限られるので、T=2nπと書ける。T>0よりn≥1であるからT≥2πであり、正弦の基本周期は2πである。余弦の正の周期をTとすると、cosT=cos0=1である。単位円上でx座標が1の点は(1,0)だけであり、これに対応する角は2nπ(n∈Z)に限られるので、同様にT≥2πであり、余弦の基本周期も2πである。▨
横軸は弧度法で測った角x、縦軸は関数の値yです。図に描かれた範囲の外側の形は、周期性から定まります。
二つのグラフは、形が同じで位置だけが違います。実際、
cosx=sin(x+2π)
なので、y=cosxはy=sinxをx方向に−2πだけ平行移動したものです。
3 y=tanxと漸近線
定義 3.1 (漸近線).fを関数、aを実数とする。x→a+0またはx→a−0のとき、f(x)が正の無限大または負の無限大に発散する(§B1.10 定義 2.1)ならば、直線x=aをy=f(x)の垂直漸近線 (vertical asymptote) という。x→+∞またはx→−∞のとき、f(x)が実数qに限りなく近づくならば、直線y=qをy=f(x)の水平漸近線 (horizontal asymptote) という。
定理 3.2.tanx=cosxsinxの定義域は
R∖{2π+nπn∈Z}であり、値域はRである。正接は奇関数であり(§B2.2 定義 3.1)、基本周期はπである。各整数nについて、x→2π+nπ−0のときtanx→∞、x→2π+nπ+0のときtanx→−∞であり、直線x=2π+nπは垂直漸近線である。
証明.cosx=0を満たす実数xを固定し、tanx=sinx/cosxを用いる。分母が0になるのはx=π/2+nπ(n∈Z)のときであるから、定義域は主張の集合である。任意の実数yに対して、単位円上の点
(1+y21,1+y2y)に対応する角をxとすればtanx=yとなるので、値域はRである。定義域から除かれるπ/2+nπの全体は、−(π/2+nπ)=π/2+(−n−1)πより符号を替えても変わらないので、定義域は−D=Dを満たす。sin(−x)=−sinxとcos(−x)=cosxからtan(−x)=−tanxが成り立つので、正接は奇関数である。
角を半周動かすと正弦と余弦の符号が同時に反転するから、定義域のすべてのxについてtan(x+π)=tanxが成り立ち、πは周期である。正接の正の周期をTとすると、0が定義域に属するのでTも属し、tanT=tan0=0である。cosT=0であるからsinT=0であり、単位円上でy座標が0の点は(±1,0)だけなので、対応する角はnπ(n∈Z)に限られる。T>0よりT=nπのnは正の整数であるからT≥πであり、正接の基本周期はπである。
xがπ/2に近づくとき、∣sinx∣は1に近づき、∣cosx∣は0に近づくので、∣tanx∣はいくらでも大きくなる。π/2の近くでx<π/2のときcosx>0かつsinx>0であるからx→π/2−0でtanx→∞であり、π/2<xのとき(π/2の近くで)cosx<0かつsinx>0であるからx→π/2+0でtanx→−∞である。一般のnについては、tan(x+nπ)=tanxよりx→π/2+nπ∓0の挙動はx→π/2∓0の挙動に等しい。ゆえにx=π/2+nπは垂直漸近線である。▨
横軸は弧度法で測った角x、縦軸はtanxの値です。グラフが途切れて見える位置はx=π/2+nπであり、そこに点があるのではなく関数が定義されていない点です。縦の表示範囲は−4≤y≤4なので、漸近線の近くは途中までしか描かれていません。
4 y=sinbxの周期
定理 4.1.b=0のとき、y=sinbxの基本周期は∣b∣2πである。
証明.y=sinbxの定義域はRなので、正の数Tが周期であるための条件は、すべての実数xについてsin(bx+bT)=sinbxが成り立つことである。b=0よりu=bxは実数全体を動くので、この条件は、すべての実数uについてsin(u+bT)=sinuが成り立つことと同値である。
Tをy=sinbxの正の周期とする。b>0ならばbT=∣b∣Tである。b<0ならばbT=−∣b∣Tであり、sin(u−∣b∣T)=sinuのuをu+∣b∣Tに置き換えるとsinu=sin(u+∣b∣T)を得る。いずれの場合も∣b∣Tは正弦の正の周期であるから、定理 2.1より∣b∣T≥2π、すなわちT≥2π/∣b∣である。
逆にT=2π/∣b∣とするとbT=±2πである。sin(u+2π)=sinuであり、このuをu−2πに置き換えるとsin(u−2π)=sinuでもあるから、すべての実数uについてsin(u+bT)=sinuが成り立つ。ゆえに2π/∣b∣は周期であり、正の周期の最小値は2π/∣b∣である。▨
振幅・周期・位相をまとめて扱う枠組みは
§B2.4 グラフ変換の一般論で整理します。
5 グラフから読み取れる性質
- 方程式の解の個数。sinx=kの解は、y=sinxのグラフと直線y=kの交点のx座標です。任意の実数aに対して、半開区間[a,a+2π)では、∣k∣>1なら解はなく、∣k∣=1なら解は1個、∣k∣<1なら解は2個あります。2πごとに同じ値が繰り返されるので、個数はaによらず[−π/2,3π/2)で数えれば足ります。この区間でsinxは[−π/2,π/2]で−1から1へ増加し、[π/2,3π/2)で1から−1(3π/2では−1をとるが区間に含まれない)へ減少します。∣k∣<1のとき、増加の側の解αに対してsin(π−α)=sinα=kよりπ−αが減少の側の解です。
- 増減。 単位円上の点が反時計回りに動くとき、そのy座標であるsinxは、点が最下点から最上点へ向かう[−2π,2π]で増加し、最上点から最下点へ向かう[2π,23π]で減少します。x座標であるcosxは[0,π]で減少し、[π,2π]で増加します。以後はこの繰り返しです。tanxは、直線x=1上の点のy座標として読めます。角が−2πから2πまで増えるあいだ、この点は直線上を下から上へ動くので、tanxは各区間(−2π+nπ, 2π+nπ)で増加します。これらは図からの読み取りであり、導関数による確認は§B2.11 三角関数の微分 Iと§B2.12 三角関数の微分 IIで行います。
- 不等式の解の範囲。sinx>kを満たすxは、交点で区切られた区間として読めます。
三角関数を含む方程式・不等式を実際に解く手順は
§A2.4 三角関数を含む方程式・不等式で扱います。
6 演習
問題 6.1 (三角関数のグラフの性質).
- y=sinx、y=cosx、y=tanxについて、定義域、値域、基本周期、偶関数か奇関数かを表にまとめよ。
- y=cosxがy=sinxの平行移動であることを、加法定理を使わずに単位円上の点の座標から説明せよ。
- y=tan2xの基本周期と、定義されないxをすべて求めよ。
- 0≤x<2πの範囲でcosx=31の解が何個あるかを、グラフから答えよ。また、同じ範囲でtanx=100の解が何個あるかも答えよ。
解答.
- sinxの定義域はR、値域は[−1,1]、基本周期は2πであり、奇関数である。cosxの定義域はR、値域は[−1,1]、基本周期は2πであり、偶関数である。tanxの定義域はR∖{π/2+nπ∣n∈Z}、値域はR、基本周期はπであり、奇関数である。
- 単位円上で角xに対応する点を反時計回りにπ/2だけ回転すると、もとの点のx座標が移動後の点のy座標になる。したがってcosx=sin(x+π/2)であり、y=cosxはy=sinxをx方向に−π/2だけ平行移動したグラフである。
- tan2xの定義域は2x=π/2+nπ、すなわちx=π/4+nπ/2(n∈Z)であり、定義されない点はこれらである。T>0がtan2xの周期ならば、すべての定義域のxについてtan(2x+2T)=tan2xが成り立つ。2xはtanの定義域全体を動くので、2Tはtanの正の周期であり、2T≥πすなわちT≥π/2である。逆にT=π/2とすると、2(x+π/2)=2x+πであるからtan(2x+π)=tan2xであり、定義されない点の集合もπ/2の移動で保たれる。ゆえに基本周期はπ/2である。
- 0≤x<2πでcosxは[0,π]で1から−1へ減少し、[π,2π)で−1から1へ増加する(2πでの値1には達しない)。−1<1/3<1なので、各区間でcosx=1/3をとる点が1個ずつあり、解は2個である。tanx=100については、0<x0<π/2でtanx0=100をとるx0が存在する。tanxは各区間(−π/2+nπ,π/2+nπ)で増加するので、各区間の解は高々1個であり、周期πより、解はx0+nπ(n∈Z)の形ですべてである。0≤x0+nπ<2πを満たす整数nは0,1だけであるから、解は2個である。
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閑話休題:「三角」関数がなぜ波になるのか 三角法はもともと、天文学の計算のために円の弦の長さを角ごとに並べた表として生まれ、のちに直角三角形の辺の比として整理されました。角を入れると長さや比が返ってくる、という表であって、波とは何の関係もありません。
それが波の形になるのは、定義を単位円へ移したときです。円周上を一定の速さで回る点のy座標を、時間の関数として記録すると、それがそのままsinのグラフになります。