§A1.7不等式の基本操作

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数直線上で、実数xxと33との距離が22以下になる範囲を求めるとします。距離がちょうど22になる点だけを求めても、求める範囲全体は定まりません。距離が小さい点も含めて、大小の条件を満たす値を調べる必要があります。

この条件は、不等式∣x−3∣≤2|x-3|\le2で表されます。式を変形して解の範囲を求める場合にも、変形の前後でその条件を満たす値が変わらないことが必要です。

本記事では、不等式の変形と数直線上の範囲との対応を調べ、大小の条件を満たす実数を求めます。

1 不等式の同値変形

不等式は、二つの式の大小関係を<,>,≤,≥<,>,\le,\geで表した式です。ここでは係数と変数を実数とします。不等式の解はその関係を満たす変数の値であり、解くとは解の集合を求めることです。解の集合が等しい不等式への変形を同値変形といいます。

公式 1.1.u,v,ku,v,kを実数とする。両辺への同じ数の加減は不等号の向きを変えず、

u<v  ⟺  u+k<v+ku<v\iff u+k<v+k

となる。k>0k>0なら

u<v  ⟺  ku<kv  ⟺  u/k<v/ku<v\iff ku<kv\iff u/k<v/k

であり、k<0k<0なら

u<v  ⟺  ku>kv  ⟺  u/k>v/ku<v\iff ku>kv\iff u/k>v/k

である。<,><,>をそれぞれ≤,≥\le,\geに変えても成り立つ。

正の数による乗法と加法で大小が保たれることを用います。負の数の場合は、たとえばu<vu<vの両辺からu+vu+vを引くと−v<−u-v<-uとなります。正の数−k-kを掛ければkv<kukv<kuとなるので、負数倍では向きが反転します。各操作は逆の操作で元へ戻るため同値性を保ちます。両辺を00で割ることはできず、00倍すると大小の情報が失われます。

例 1.2.−2x<6-2x<6の両辺を負の数−2-2で割るとx>−3x>-3となる。

両辺に文字を含む不等式2x+3>5x−62x+3>5x-6では、両辺から5x+35x+3を引き、両辺を−3-3で割ると

2x+3>5x−6  ⟺  −3x>−9  ⟺  x<32x+3>5x-6\iff-3x>-9\iff x<3

となる。したがって解はx<3x<3であり、x=3x=3は元の両辺を等しくするので解には含まれない。

問題 1.3.ttを実数とする。不等式

(t−1)x≤t2−1(t-1)x\le t^2-1

を満たす実数xxの範囲を、ttの値によって場合分けして求めよ。

解答.

t2−1=(t−1)(t+1)t^2-1=(t-1)(t+1)である。t>1t>1の場合にはt−1>0t-1>0なので、両辺をt−1t-1で割ると、解はx≤t+1x\le t+1となる。t<1t<1の場合にはt−1<0t-1<0なので、不等号を反転させて、解はx≥t+1x\ge t+1となる。

t=1t=1の場合には、元の不等式は0≤00\le0である。したがって、すべての実数xxが解である。この場合にはt−1t-1で割ることはできない。t≠1t\ne1のときに得た式へ単にt=1t=1を代入すると、x≤2x\le2またはx≥2x\ge2となり、元の不等式の解全体を表さない。▨

負数倍による反転は、数直線の順序とも一致します。1<21<2の両辺を−1-1倍すると−1>−2-1>-2であり、負数になった後では−1-1のほうが大きい数です。

2 連立不等式

複数の不等式を同時に満たす解を求めるものを連立不等式といいます。その解は、それぞれの不等式の解の共通部分です。数直線で範囲を重ねる場合にも、境界の点が両方の解に含まれるかを確認します。

例 2.1.2x+3>5x−62x+3>5x-6とx≥−1x\ge-1を同時に満たす実数xxを求める。最初の不等式の解はx<3x<3であるから、共通範囲は

−1≤x<3-1\le x<3

となる。x=−1x=-1は両方を満たすが、x=3x=3は最初の不等式を満たさない。

3 絶対値を含む不等式

∣x−c∣|x-c|は数直線上のxxとccの距離です。距離が指定された値より小さい場合はccの両側の区間を、大きい場合はその区間の外を調べます。

公式 3.1.x,c,ax,c,aを実数、a>0a>0とする。このとき

∣x−c∣<a  ⟺  c−a<x<c+a,∣x−c∣>a  ⟺  x<c−a または x>c+a|x-c|<a\iff c-a<x<c+a,\qquad |x-c|>a\iff x<c-a\ \text{または}\ x>c+a

である。また

∣x−c∣≤a  ⟺  c−a≤x≤c+a,∣x−c∣≥a  ⟺  x≤c−a または x≥c+a|x-c|\le a\iff c-a\le x\le c+a,\qquad |x-c|\ge a\iff x\le c-a\ \text{または}\ x\ge c+a

である。c=0c=0とすれば∣x∣|x|の不等式を得る。

注意 3.2.x,c,ax,c,aを実数とする。∣x−c∣|x-c|は非負なので、a<0a<0のとき∣x−c∣<a|x-c|<aと∣x−c∣≤a|x-c|\le aは解をもたず、∣x−c∣>a|x-c|>aと∣x−c∣≥a|x-c|\ge aはすべての実数が解である。

a=0a=0のとき、∣x−c∣<0|x-c|<0は解なし、∣x−c∣≤0|x-c|\le0はx=cx=c、∣x−c∣>0|x-c|>0はx≠cx\ne c、∣x−c∣≥0|x-c|\ge0はすべての実数が解となる。

例 3.3.∣x−3∣≤2|x-3|\le2は33からの距離が22以下であることを表すので、解は1≤x≤51\le x\le5である。内部の式x−3x-3の符号で分けても同じ答えを得る。

x≥3x\ge3の場合は∣x−3∣=x−3|x-3|=x-3であり、x−3≤2x-3\le2からx≤5x\le5となる。場合分けの条件とあわせて3≤x≤53\le x\le5を得る。

x<3x<3の場合は∣x−3∣=3−x|x-3|=3-xであり、3−x≤23-x\le2からx≥1x\ge1となる。場合分けの条件とあわせて1≤x<31\le x<3を得る。

二つの範囲を合わせると1≤x≤51\le x\le5である。両端では絶対値が22となるため、広義不等号の解に含まれる。

問題 3.4. 実数xxについて

∣x−1∣≤2x+1|x-1|\le2x+1

を解け。また、この不等式の両辺を二乗するだけでは同値変形にならないことを、具体的なxxの値で示せ。

解答.

左辺は非負なので、解は2x+1≥02x+1\ge0、すなわちx≥−1/2x\ge-1/2を満たさなければならない。

x≥1x\ge1の場合には∣x−1∣=x−1|x-1|=x-1であり、

x−1≤2x+1  ⟺  x≥−2x-1\le2x+1\iff x\ge-2

となる。場合分けの条件と合わせると、x≥1x\ge1のすべての実数が解である。

x<1x<1の場合には∣x−1∣=1−x|x-1|=1-xであり、

1−x≤2x+1  ⟺  x≥01-x\le2x+1\iff x\ge0

となる。場合分けの条件と合わせると0≤x<10\le x<1が解である。二つの場合を合わせて、解はx≥0x\ge0となる。得た範囲では右辺も非負である。

x=−3x=-3では元の不等式は4≤−54\le-5となり、成り立たない。しかし、両辺を二乗した不等式では16≤2516\le25となり、成り立つ。二乗によって右辺の符号の情報を失ったため、元の不等式を満たさない値が加わっている。▨

負の係数が文字の前にある場合も、除法の符号を確認します。たとえば−x<5-x<5の両辺を−1-1で割るとx>−5x>-5となります。絶対値では、右辺の符号と、距離が区間の内側・外側のどちらを表すかを区別すると、答えが一つの区間か二つの範囲かを判断することができます。

例題

条件と何を求めるかを確認してから、式と答えの対応を見比べてください。

x を実数とする。次の一次不等式を解け。

解法の型負の数で割るときは不等号の向きが反転する

  1. (1)−2x+8≤5-2x+8 \le 5
  2. (2)11>−x+511 > -x+5
  3. (3)−x−3≤3-x-3 \le 3
  4. (4)x≥3x \ge 3
  5. (5)−x+8<x+5-x+8 < x+5

x を実数とする。次の絶対値不等式を解け。

解法の型|x − a| は「a からの距離」。< は近い側、> は遠い側

  1. (1)∣x+4∣<6|x+4| < 6
  2. (2)∣x+4∣≥3|x+4| \ge 3
  3. (3)∣x−5∣<2|x-5| < 2
  4. (4)∣x+2∣>4|x+2| > 4
  5. (5)∣x+2∣>1|x+2| > 1

演習

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