§A1.5一次・二次方程式と解の公式

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文字を含む等式を満たす値は、一つとは限りません。たとえばx(x−1)=0x(x-1)=0は、x=0x=0のときにもx=1x=1のときにも成り立ちます。等式を満たす値の一つを確かめるだけでは、ほかに値があるかどうかは分かりません。

方程式の解をすべて求めるためには、式の変形によって元の等式と同じ解が保たれるかを確かめることが重要です。

本記事では、実数の範囲で一次方程式と二次方程式の解を求める基本を説明します。

1 方程式の解と同値変形

文字を含む等式を方程式といい、等式を成り立たせる文字の値を解といいます。ここでは係数を実数とし、実数の解をすべて求めます。二つの方程式の解の集合が等しいとき、二つの方程式は同値であるといいます。方程式を同値な方程式へ変える操作を同値変形といいます。

両辺に同じ数や式を加える操作、両辺から同じ数や式を引く操作は、逆の操作で元へ戻すことができるので同値変形です。両辺に同じ非零の数を掛ける操作、両辺を同じ非零の数で割る操作も同値変形です。

注意 1.1.x(x−1)=0x(x-1)=0の実数解は0,10,1である。両辺をxxで割ってx−1=0x-1=0とすると、解00が失われる。xxで割る操作が同値性を保つのはx≠0x\ne0の範囲である。x=0x=0の場合を別に調べる必要がある。

2 一次方程式

a,ba,bを実数、a≠0a\ne0とします。一次方程式ax+b=0ax+b=0の両辺からbbを引くとax=−bax=-bとなり、両辺をaaで割るとx=−b/ax=-b/aとなります。

例 2.1.3x−6=03x-6=0の両辺に66を加え、両辺を非零の数33で割ると

3x−6=0  ⟺  3x=6  ⟺  x=23x-6=0\iff3x=6\iff x=2

となる。したがって実数解は22である。

等式の一方の辺の項を、符号を変えて他方の辺へ移す操作を移項といいます。移項は、両辺に同じ式を加減する操作の略記です。

3 因数分解による二次方程式の解法

a,b,ca,b,cを実数、a≠0a\ne0としたax2+bx+c=0ax^2+bx+c=0を二次方程式といいます。因数分解の形が分かる場合は、次の実数の性質を使います。

公式 3.1. 実数u,vu,vに対して、uv=0uv=0であることと、u=0u=0またはv=0v=0であることは同値である。

証明.uv=0uv=0とする。u=0u=0ならば結論が成り立つ。u≠0u\ne0ならば両辺をuuで割ってv=0v=0を得る。逆に、u=0u=0またはv=0v=0ならばuv=0uv=0である。▨

例 3.2.p,qp,qを実数とする。公式 3.1により

(x−p)(x−q)=0  ⟺  x=p または x=q(x-p)(x-q)=0\iff x=p\ \text{または}\ x=q

である。p=qp=qのときは一つの実数解である。求めた値を元の積へ代入すると、一方の因子が00となる。

4 平方完成

二次式を、一次式の二乗と定数を用いて書き直す操作を平方完成といいます。方程式を二乗の形にすると、平方根を用いて解を求めることができます。

例 4.1.x2−6x+5=(x−3)2−4x^2-6x+5=(x-3)^2-4であるから

x2−6x+5=0  ⟺  (x−3)2=4  ⟺  x−3=2 または x−3=−2x^2-6x+5=0\iff(x-3)^2=4\iff x-3=2\ \text{または}\ x-3=-2

となる。したがって実数解は1,51,5である。

公式 4.2.a,b,c,xa,b,c,xを実数、a≠0a\ne0とし、D=b2−4acD=b^2-4acと置く。このとき

ax2+bx+c=a(x+b2a)2−D4aax^2+bx+c=a\left(x+\frac b{2a}\right)^2-\frac D{4a}

が成り立つ。したがって

ax2+bx+c=0  ⟺  (x+b2a)2=D4a2ax^2+bx+c=0\iff\left(x+\frac b{2a}\right)^2=\frac D{4a^2}

である。

証明.a≠0a\ne0なのでb/(2a)b/(2a)が定まる。二乗を展開すると

a(x+b2a)2=ax2+bx+b24aa\left(x+\frac b{2a}\right)^2=ax^2+bx+\frac{b^2}{4a}

となる。両辺にc−b2/(4a)=−D/(4a)c-b^2/(4a)=-D/(4a)を加えると、最初の等式を得る。方程式の両辺にD/(4a)D/(4a)を加え、非零の数aaで割ると、二乗の方程式との同値性を得る。▨

5 解の公式と判別式

D=b2−4acD=b^2-4acを二次方程式の判別式といいます。平方完成で得た二乗の方程式の右辺は、4a2>04a^2>0なのでDDと同じ符号です。実数の二乗が非負であることから、DDの符号によって実数解を分類します。

公式 5.1.a,b,ca,b,cを実数、a≠0a\ne0とし、D=b2−4acD=b^2-4acと置く。二次方程式ax2+bx+c=0ax^2+bx+c=0の実数解は次のように定まる。

  1. D>0D>0のとき、異なる二つの実数解(−b+D)/(2a)(-b+\sqrt D)/(2a)、(−b−D)/(2a)(-b-\sqrt D)/(2a)をもつ。
  2. D=0D=0のとき、実数解は−b/(2a)-b/(2a)の一つであり、重解という。
  3. D<0D<0のとき、実数解をもたない。

D≥0D\ge0の場合の解をまとめて

x=−b±b2−4ac2ax=\frac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}

と書く。これを二次方程式の解の公式という。

証明.公式 4.2の二乗の方程式の両辺に非零の数4a24a^2を掛けると

ax2+bx+c=0  ⟺  (2ax+b)2=Dax^2+bx+c=0\iff(2ax+b)^2=D

となる。D<0D<0ならば、実数の二乗は非負なので実数解はない。

D≥0D\ge0ならば、平方根の定義と2a≠02a\ne0により

(2ax+b)2=D  ⟺  2ax+b=±D  ⟺  x=−b±D2a(2ax+b)^2=D \iff 2ax+b=\pm\sqrt D \iff x=\frac{-b\pm\sqrt D}{2a}

となる。D=0D=0ならば実数解は−b/(2a)-b/(2a)の一つである。D>0D>0ならばD>0\sqrt D>0なので二つの解は異なる。▨

因数分解の形が分かる式では一次因子を00と置く方法を使い、二乗の形への変形では平方完成を使います。一般の係数については、平方完成から導いた解の公式を使うことができます。ただし実数の計算として根号を使うのはD≥0D\ge0の場合です。

問題 5.2.ttを実数とする。方程式

tx2−(t+1)x+1=0tx^2-(t+1)x+1=0

の実数解をすべて求めよ。また、異なる実数解の個数をttによって分類せよ。

解答.

左辺は

tx2−(t+1)x+1=(x−1)(tx−1)tx^2-(t+1)x+1=(x-1)(tx-1)

と因数分解される。したがって、元の方程式はx=1x=1またはtx=1tx=1と同値である。

t=0t=0のとき、tx=1tx=1を満たす実数はなく、元の方程式は−x+1=0-x+1=0である。実数解はx=1x=1の一つである。

t≠0t\ne0のとき、実数解はx=1x=1とx=1/tx=1/tである。二つが一致するのはt=1t=1のときに限る。よって、t=1t=1では重解x=1x=1の一つであり、t≠0,1t\ne0,1では異なる二つの実数解1,1/t1,1/tをもつ。

t≠0t\ne0の場合には、解の公式でも判別式を

D=(t+1)2−4t=(t−1)2D=(t+1)^2-4t=(t-1)^2

と求めることができる。D=0D=0となるのはt=1t=1であり、因数分解による分類と一致する。ただしt=0t=0では二次の係数が0になるため、解の公式を適用せず、一次方程式として扱う。▨

下の図はa=1a=1の場合です。横軸にxx、縦軸にyyをとり、y=x2+bx+cy=x^2+bx+cを満たす点(x,y)(x,y)を描いています。xx軸上ではy=0y=0なので、グラフとxx軸の共有点のxx座標は方程式の実数解です。b,cb,cを動かすと、D=b2−4cD=b^2-4cの符号に応じて共有点の個数が変わります。

6 解の公式の範囲と検算

求めた解を元の式へ代入すると、計算の検算を行うことができます。

注意 6.1.D<0D<0の場合の「解なし」は、実数の範囲で解がないという意味である。複素数まで範囲を広げると解は存在し、§A1.13 複素数の四則と解と係数の関係で扱う。

例題

条件と何を求めるかを確認してから、式と答えの対応を見比べてください。

x を実数とする。次の一次方程式を解け。

解法の型移項して ax=bax=b の形に集める

  1. (1)0=−3x−20 = -3x-2
  2. (2)4x+13=2x+14x+13 = 2x+1
  3. (3)5x−2=3x+45x-2 = 3x+4
  4. (4)3x+11=x+63x+11 = x+6

x を実数とする。次の実数係数二次方程式を解け。

解法の型左辺を因数分解して「積 == 0」に持ち込む

  1. (1)2x2+14x+20=02x^{2}+14x+20 = 0
  2. (2)2x2−2x−12=02x^{2}-2x-12 = 0
  3. (3)x2+x−30=0x^{2}+x-30 = 0
  4. (4)x2−3x−4=0x^{2}-3x-4 = 0

x を実数とする。次の実数係数二次方程式を解け(解は簡約した形で答えること)。

解法の型解の公式 x=−b±b2−4ac2ax=\dfrac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}

  1. (1)3x2−x−3=03x^{2}-x-3 = 0
  2. (2)x2+7x+4=0x^{2}+7x+4 = 0
  3. (3)x2−6x+4=0x^{2}-6x+4 = 0
  4. (4)x2−7x−1=0x^{2}-7x-1 = 0

演習

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