1 数の範囲
ものを数える数1,2,3,…を自然数といい、自然数に0と負の数を加えた…,−2,−1,0,1,2,…を整数といいます。整数p,q、q=0を用いてp/qと表される数を有理数といいます。実数は、数直線上のすべての点に対応する数です。以下では、それぞれの全体をN≥1、Z、Q、Rと書きます。
自然数は整数に含まれます。また、整数mはm/1と表されるので有理数です。有理数は実数に含まれ、包含関係は
N≥1⊂Z⊂Q⊂R
となります。
実数のうち、有理数でない数を無理数といいます。2やπは無理数です。
例 1.1.0は自然数ではなく整数である。−2も整数であり、−2=(−2)/1と表されるので有理数でもある。3/4は有理数であるが整数ではない。2は実数であるが有理数ではなく、無理数である。整数と有理数も実数であるから、これら四つの数はすべて同じ数直線上へ表すことができる。
2 数直線
直線上に原点0、正の向き、単位の長さを決め、実数を点に対応させた直線を数直線といいます。ここでは正の向きを右にとります。原点より右に正の数、左に負の数を表し、右にある点ほど大きい数に対応します。下の図では、整数2、有理数−1/2、無理数2が同じ数直線上にあります。
3 有理数と無理数の性質
例 3.2.1/4=0.25は有限小数であり、1/3=0.333⋯は数字3が繰り返される循環小数である。
数の範囲は、計算を行った後にも確かめる必要があります。有理数を加えた場合の結果は、次のように定まります。
定理 3.3.rを有理数、uを無理数とする。このとき、r+uは無理数である。また、r=0ならばruも無理数である。
証明. 有理数p/qとs/tの和と差は(pt±sq)/(qt)と表される。ここでp,q,s,tは整数であり、q,t=0なので、和と差も有理数である。また、s/t=0ならば商はpt/(qs)と表され、有理数である。
r+uが有理数であると仮定すると、u=(r+u)−rは有理数の差なので有理数となる。これはuが無理数であることと両立しない。したがってr+uは無理数である。
r=0とする。ruが有理数であると仮定すると、u=(ru)/rは有理数の商なので有理数となる。したがってruは無理数である。▨
例 3.4.uを無理数とする。−uが有理数ならばu=0−(−u)も有理数となるので、−uも無理数である。しかし、u+(−u)=0は有理数である。したがって、無理数どうしの和が常に無理数になるわけではない。
また、0⋅u=0は有理数である。有理数と無理数の積については、有理数のほうが0でないという条件を外すことはできない。
実数は有理数と無理数に分かれます。「有理数だけではすきまが残る」という説明は直観的な説明であり、実数の完備性を厳密に構成する議論はここでは扱いません。
4 複素数への拡張
実数の二乗は非負なので、x2=−1を満たす実数はありません。二乗すると−1になる数iを導入し、実数a,bを用いてa+biと表す数を複素数といいます。iを虚数単位といいます。
例 4.1.b=0とするとa+bi=aであるから、実数も複素数に含まれる。またi2=−1であり、(−i)2=−1でもあるので、実数の範囲では解を持たなかったx2=−1は複素数の範囲ではiと−iを解にもつ。
閑話休題:数はどこまで広げられるか 負の数は借金や損失を表すために使われましたが、ヨーロッパでは中世以後も「偽の数」と呼ばれ、受け入れられるまでに時間を要しました。ゼロを数として扱う発想はインドで生まれ、無理数の発見はピタゴラス学派に衝撃を与えたと伝えられています。数の体系は、計算や方程式を扱う必要に応じて拡張されてきました。
複素数をさらに拡張した体系に四元数があります。1843年、ハミルトンは散歩の途中でi2=j2=k2=ijk=−1という関係を見いだし、橋に式を刻んだと伝えられています。四元数ではij=kですがji=−kであり、乗法は可換ではありません。四元数は3次元の回転を表すために使われ、3DCG、ゲームエンジン、宇宙機の姿勢制御に応用されています。さらに拡張した八元数では、乗法の結合法則が成り立ちません。
数の範囲を広げると、元の体系の性質がすべて保たれるとは限りません。複素数には実数の大小関係を拡張して演算と両立させる全順序を入れることができず、四元数では乗法の可換性、八元数では乗法の結合性が成り立ちません。どの方程式を解くために数を拡張するのかと、どの性質が保たれるのかは、別々に確かめる必要があります。
実数を構成して数直線の連続性を厳密に扱う議論は、§D1 ε-論法と基礎解析へ委ねます。ここでは、数直線上の点と実数が対応することを認めて用います。