二つの項の和を何度も掛けると、展開した式には同じ次数の項が繰り返し現れます。指数が大きくなるほど、すべての積を書いてから同類項をまとめる計算は長くなります。たとえば、のの係数だけを知りたい場合には、その係数を直接求める規則があると便利です。
二項定理は、非負整数乗の展開で現れる項と係数をまとめて表す公式です。展開公式の学習を一般の指数へ広げるとともに、式全体を展開せずに必要な係数を取り出すための基礎になります。
本記事では、二項定理を導入し、展開や係数の計算に用いる方法を説明します。
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二つの項の和を何度も掛けると、展開した式には同じ次数の項が繰り返し現れます。指数が大きくなるほど、すべての積を書いてから同類項をまとめる計算は長くなります。たとえば、のの係数だけを知りたい場合には、その係数を直接求める規則があると便利です。
二項定理は、非負整数乗の展開で現れる項と係数をまとめて表す公式です。展開公式の学習を一般の指数へ広げるとともに、式全体を展開せずに必要な係数を取り出すための基礎になります。
本記事では、二項定理を導入し、展開や係数の計算に用いる方法を説明します。
非負整数に対して、とし、と定めます。整数がを満たすとき、二項係数を
と定めます。特にです。組合せの数と二項係数が一致することの説明は§B4.3 順列・組合せで扱います。ここでは階乗の式から二項係数を計算します。
例 1.1.は
である。端の係数はであり、のときもである。
公式 1.2.、を整数とする。このとき
が成り立つ。ただしの場合、右辺のはとする。
証明.の場合、階乗の式を通分すると
となる。では両辺はである。▨
二項係数をごとに並べたものを、パスカルの三角形といいます。
例 1.3.の二項係数をの順に並べると
となる。
各行の端はであり、端以外の数は直前の行の隣接する二数の和です。この関係は、階乗から導いた漸化式に対応します。
公式 2.1 (二項定理).を非負整数、を実数または実数係数多項式とする。このとき
が成り立つ。指数がの因子は定数として扱い、の両辺もとする。
証明.では両辺はである。の場合に公式が成り立つとし、とする。展開したにを掛けると、端の項の係数はともにである。に対して、を生じる項は、にを掛けた項と、にを掛けた項である。その係数の和は
であるから、の場合の公式も成り立つ。したがって帰納法により、すべての非負整数について公式が成り立つ。▨
二項定理の和をの順に書いたとき、第項を一般項といいます。指定された次数の係数を求めるには、一般項の文字の次数からを定め、数値部分を計算します。
例 2.2.のの係数を求める。一般項は
である。の次数がになる条件はであり、である。したがって求める項は
となり、係数はである。
の場合も、一般項の次数を用います。係数の計算にはとが含まれるので、指数と符号をともに確かめます。
二つの冪の積では、展開の前に因子を組み替えると、現れる次数を先に定めることができます。
例 2.3.を非負整数とする。実数係数多項式として
である。最後の等式には公式 2.1を用いた。したがって、に対するの係数はであり、奇数次数の項は現れない。二つの因子を別々に展開して掛けた場合にも、奇数次数の項の係数の総和は零になる。
問題 2.4. 実数係数多項式のとの係数を求めよ。
である。和の中には偶数次数の項しかないので、はとの積だけから生じる。その係数は
である。はとの積、およびとの積から生じる。その係数は
である。▨
閑話休題:パスカルの三角形とフラクタル パスカルの三角形の数を、奇数なら黒、偶数なら白に塗り分けると、段数を増やすにつれて、シェルピンスキーのギャスケットに対応する自己相似の模様が現れます。二項係数の偶奇には、との2進表示が関係します。の各桁がの対応する桁を超えないとき、かつそのときに限り、は奇数です。この条件は、との2進法の加算で繰り上がりが生じないことと同値です。一般の素数で割った余りに対しても、進表示の各桁の二項係数から余りを求めるリュカの定理があります。整数の計算規則と、三角形の模様の繰り返しが結びついています。
1654年のパスカルとフェルマーの往復書簡では、算術三角形の論考と賭金の分配方法が論じられています。二項係数は、二項分布の確率計算にも用いられます。
条件と何を求めるかを確認してから、式と答えの対応を見比べてください。
二項定理を用いて、次の展開における指定された項の係数、または和の値を求めよ。
解法の型一般項 nCk a^(n-k) の次数が指定の次数と一致する k を求め、係数部分を計算する
(x + 3/x)^6 の展開式における定数項を求めよ。
(x² - 1/x)^4 の展開式における の係数を求めよ。
(3x + 3y)^4 の展開式における の係数を求めよ。
n 7 のとき、符号を交互につけた和 7C0 - 7C1 + 7C2 - … + (-1)^7 × 7C7 の値を求めよ。
(3x - y)^6 の展開式における y の係数を求めよ。
(x + 2y)^5 の展開式における の係数を求めよ。
n 7 のとき、和 7C0 + 2 × 7C1 + 2² × 7C2 + … + 2^7 × 7C7 の値を求めよ。
n 5 のとき、二項係数の総和 5C0 + 5C1 + … + 5C5 の値を求めよ。
n 8 のとき、符号を交互につけた和 8C0 - 8C1 + 8C2 - … + (-1)^8 × 8C8 の値を求めよ。
(2x - 3y)^4 の展開式における x の係数を求めよ。
問題を解いてから「解答・解説」を開けます。
二項定理を用いて、次の展開における指定された項の係数、または和の値を求めよ。
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