文字を含む式では、同じ式を異なる形で書くことがあります。たとえばはと等しい式です。整理する前に現れた項だけを見ていると、式全体がどのような形であるかを判断することができません。
数と文字の積を足し合わせた多項式では、同じ文字の部分を持つ項をまとめることによって、式の形を明らかにします。また、積を和へ書き直す展開も、式を比較したり計算したりするための基本的な操作です。
多項式の計算は、続く因数分解や方程式の変形の基礎となります。
本記事では、多項式の四則と展開の基本を説明します。
最終更新
文字を含む式では、同じ式を異なる形で書くことがあります。たとえばはと等しい式です。整理する前に現れた項だけを見ていると、式全体がどのような形であるかを判断することができません。
数と文字の積を足し合わせた多項式では、同じ文字の部分を持つ項をまとめることによって、式の形を明らかにします。また、積を和へ書き直す展開も、式を比較したり計算したりするための基本的な操作です。
多項式の計算は、続く因数分解や方程式の変形の基礎となります。
本記事では、多項式の四則と展開の基本を説明します。
係数を実数、文字の指数を非負整数として、のように単項式を有限個加えた式を多項式、または整式といいます。ここではを不定元とし、実数係数の多項式の全体をと書きます。文字の部分が同じ項を同類項といいます。同類項をまとめた後、係数がでない項の次数の最大値を、その多項式の次数といいます。すべての係数がの多項式を零多項式といい、ここではその次数を定めません。零多項式の次数をとする規約もあります。
例 1.1.であるから、この多項式の次数はである。整理前にが書かれていても、二次式ではない。
同類項は係数を加減して一つの項にまとめます。異なる次数の項は、それぞれの次数の項として残します。
例 2.1. 二次の項、一次の項、定数項をそれぞれまとめると
となる。
減法では、引く多項式のすべての項の符号を反転してから加えます。たとえばです。引く多項式を括弧に入れると、符号を反転する範囲が明確になります。
多項式の乗法では分配法則を使い、一方の式の各項を他方の式の各項へ掛け、同類項をまとめます。積を和の形へ書き直す操作を展開といいます。
公式 3.1.を実数または実数係数多項式とする。このとき
が成り立つ。
証明. 分配法則により
となる。をに置き換えると、差の二乗の公式を得る。また
であり
となる。三乗は二乗の公式にを掛けて
と求めることができる。▨
定理 3.2.を零多項式でない実数係数多項式とし、次数をそれぞれとする。このとき、の次数はである。
証明.の最高次の項を、の最高次の項をとする。はともにでない。積を展開したとき、次数の項はとの積からだけ生じ、その係数はである。一方の次数を最高次数より小さく選べば、積の項の次数はより小さくなる。
ならば非零の数で割ってとなるので、である。したがって、の最高次数はである。▨
例 3.3. 実数係数多項式、は、ともに二次式である。和はなので一次式であり、最高次の項が相殺されている。積の次数は、定理 3.2によりである。積をすべて展開しなくても、最高次の項がであることから四次式だと分かる。
これらの公式を逆向きに使うと、和の形の式を積の形に書き直す因数分解を行うことができます。
公式 4.1. 実数係数多項式と零多項式でない実数係数多項式に対して
を満たし、であるか、の次数がの次数より小さい実数係数多項式がただ一通り定まる。を商、を余りという。の場合は商も余りもである。
筆算では、割られる式の最高次の項を消すように商の項を選び、除式とその項の積を引きます。残った式がになるか、除式より次数が小さくなるまで繰り返します。
例 4.2.をで割る。最高次の項を割るとであるから、商にを置いて
とする。次にであるから、商にを加えて
とする。残りの次数はであり、除式の次数より小さいので終了する。したがって商は、余りはであり
となる。
§A1.10 整式の除法・剰余の定理・因数定理では、基礎の計算に続いて、余りと代入値の関係、余りがとなる条件を扱います。
展開後は、の項、の項、定数項をそれぞれ集め、同類項をまとめます。減法では、括弧を外す際に各項の符号を反転したかを確かめます。
注意 5.1. 展開の検算として、やを展開前と展開後の式へ代入し、値を比較することができる。値が異なれば計算は誤りである。ただし、いくつかの値で一致することだけでは、多項式が等しいことの証明にはならない。
閑話休題:三つの積による乗法 十進表記は、にを代入した値です。数の乗法にも、多項式の展開と同じ分配法則を使います。桁どうしの通常の筆算では、1桁どうしの乗法を約回行います。1960年、コルモゴロフはこれより本質的に速い方法はないだろうとセミナーで予想しましたが、23歳の学生カラツバが1週間後に別の方法を示したと伝えられています。
の展開で必要な係数は、、です。ここで
なので、、、の三つの積から全係数を求めることができます。桁を半分に分けてこの方法を繰り返すと、乗法の回数はおよそに減ります。
その後はフーリエ変換を使った高速乗算が開発され、2019年には級の方法が得られました。この計算量は理論限界の候補と考えられています。高速乗算は、暗号で用いる数百桁の整数の演算や、円周率の兆桁計算にも使われています。
条件と何を求めるかを確認してから、式と答えの対応を見比べてください。
実数係数の式として、次の式を展開せよ。
解法の型展開公式に当てはめる(因数分解の「答えの形」)
解法の型分配法則で各項を掛け、同類項をまとめる
問題を解いてから「解答・解説」を開けます。
実数係数の式として、次の式を展開せよ。
演習を読み込み中…
演習を読み込み中…