§A2.4三角関数を含む方程式・不等式

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三角関数を含む方程式では、角から値を求める計算とは逆に、値から角を求めます。たとえば、正弦が2分の1となる角は、一周の中に二つあり、さらに一周分の回転を加えても同じ値をとります。したがって、三角関数の値が分かっても、角が一つに定まるとは限りません。単位円は、等式や不等式を満たす角を点や弧として捉え、解の全体を調べるための基本的な方法を与えます。本記事では、三角関数を含む方程式と不等式の解き方を解説します。

1 一周期の解と一般解

未知角が動く範囲を指定してから、単位円上の点の座標を角へ戻します。範囲が実数全体なら、周期によってすべての解を表します。

例 1.1.0≤θ<2π0\le\theta<2\piでsin⁡θ=1/2\sin\theta=1/2を解く。単位円と直線y=1/2y=1/2の交点は

(x,y)=(32,12),(−32,12)(x,y)=\left(\frac{\sqrt3}{2},\frac12\right),\quad \left(-\frac{\sqrt3}{2},\frac12\right)

であり、対応する角はθ=π/6,5π/6\theta=\pi/6,5\pi/6である。実数全体での一般解は

θ=π6+2kπまたはθ=5π6+2kπ(k∈Z).\theta=\frac\pi6+2k\pi\quad\text{または}\quad \theta=\frac{5\pi}{6}+2k\pi\qquad(k\in\Z).

例 1.2.0≤θ<2π0\le\theta<2\piでsin⁡θ>1/2\sin\theta>1/2となるのは、単位円上のy>1/2y>1/2の弧に対応する角である。したがって

π6<θ<5π6.\frac\pi6<\theta<\frac{5\pi}{6}.

実数全体での解は

π6+2kπ<θ<5π6+2kπ(k∈Z).\frac\pi6+2k\pi<\theta<\frac{5\pi}{6}+2k\pi\qquad(k\in\Z).

等号を満たす二つの角は狭義不等式の解に含まれない。

2 角の置換と合成

例 2.1.0≤θ<2π0\le\theta<2\piでsin⁡2θ=1/2\sin2\theta=1/2を解く。u=2θu=2\thetaと置くと0≤u<4π0\le u<4\piである。この範囲では

u=π6,5π6,13π6,17π6u=\frac\pi6,\frac{5\pi}{6},\frac{13\pi}{6},\frac{17\pi}{6}

となるから

θ=π12,5π12,13π12,17π12.\theta=\frac\pi{12},\frac{5\pi}{12},\frac{13\pi}{12},\frac{17\pi}{12}.

置換後も一周期だけを調べると、後半の二つの解を取りこぼす。

例 2.2.0≤θ<2π0\le\theta<2\piで3sin⁡θ+cos⁡θ=1\sqrt3\sin\theta+\cos\theta=1を解く。§A2.3 公式 4.1により2sin⁡(θ+π/6)=12\sin(\theta+\pi/6)=1である。u=θ+π/6u=\theta+\pi/6とするとπ/6≤u<13π/6\pi/6\le u<13\pi/6なので、u=π/6,5π/6u=\pi/6,5\pi/6である。よって

θ=0,2π3.\theta=0,\frac{2\pi}{3}.

実数全体での一般解はθ=2kπ\theta=2k\piまたはθ=2π/3+2kπ\theta=2\pi/3+2k\pi(k∈Zk\in\Z)である。

3 倍角公式と三角関数の値の置換

角が異なる三角関数が混在する場合には、倍角公式を用いて同じ角の三角関数へそろえます。置換後の不等式を解いた後、元の角の範囲へ戻します。

例 3.1.0≤θ<2π0\le\theta<2\piでcos⁡2θ>sin⁡θ\cos2\theta>\sin\thetaを解く。§A2.3 公式 2.1によりcos⁡2θ=1−2sin⁡2θ\cos2\theta=1-2\sin^2\thetaなので、t=sin⁡θt=\sin\thetaと置くと

1−2t2>t  ⟺  (2t−1)(t+1)<0.1-2t^2>t\quad\iff\quad(2t-1)(t+1)<0.

したがって−1<t<1/2-1<t<1/2である。単位円上でsin⁡θ<1/2\sin\theta<1/2となる角は[0,π/6)∪(5π/6,2π)[0,\pi/6)\cup(5\pi/6,2\pi)であり、sin⁡θ=−1\sin\theta=-1となる3π/23\pi/2を除く。答えは

θ∈[0,π6)∪(5π6,3π2)∪(3π2,2π).\theta\in\left[0,\frac\pi6\right) \cup\left(\frac{5\pi}{6},\frac{3\pi}{2}\right) \cup\left(\frac{3\pi}{2},2\pi\right).

π/6,5π/6,3π/2\pi/6,5\pi/6,3\pi/2は元の式で等号となるため含まれず、00は1>01>0を満たすため含まれる。

問題 3.2. 実数mmに対して、0≤θ<2π0\le\theta<2\piにおける方程式

sin⁡2θ−sin⁡θ=m\sin^2\theta-\sin\theta=m

の異なる解の個数を求めよ。

解答.

t=sin⁡θt=\sin\thetaと置くと、−1≤t≤1-1\le t\le1の範囲でt2−t−m=0t^2-t-m=0を解くことになる。m<−1/4m<-1/4なら判別式1+4m1+4mが負なので、解はない。m≥−1/4m\ge-1/4なら二次方程式の根は

t−=1−1+4m2,t+=1+1+4m2t_- =\frac{1-\sqrt{1+4m}}2,\qquad t_+ =\frac{1+\sqrt{1+4m}}2

である。t−t_-が[−1,1][-1,1]に属する条件はm≤2m\le2、t+t_+が[−1,1][-1,1]に属する条件はm≤0m\le0である。

単位円と水平線y=ty=tとの交点は、−1<t<1-1<t<1なら二点、t=±1t=\pm1なら一点である。区間0≤θ<2π0\le\theta<2\piでは各交点に一つの角が対応する。異なるttに対応する角が重なることはない。

m=−1/4m=-1/4では二次方程式の二根がt=1/2t=1/2に重なるので、角の解は2個である。m=0m=0ではt=0,1t=0,1であり、角の解は0,π,π/20,\pi,\pi/2の3個である。m=2m=2では許される根はt=−1t=-1だけなので、角の解は3π/23\pi/2の1個である。他の区間では許される根の個数から、次の表を得る。

mmの範囲 m<−1/4m<-1/4 m=−1/4m=-1/4 −1/4<m<0-1/4<m<0 m=0m=0 0<m<20<m<2 m=2m=2 m>2m>2
角の解の個数 00 22 44 33 22 11 00

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4 定義域と変形後の候補

例 4.1.0≤θ<2π0\le\theta<2\piでtan⁡θcos⁡θ=1\tan\theta\cos\theta=1を解く。元の式はcos⁡θ≠0\cos\theta\ne0の場合に限り定義され、その範囲ではsin⁡θ=1\sin\theta=1と同値である。候補θ=π/2\theta=\pi/2ではcos⁡θ=0\cos\theta=0なので元の式が定義されない。したがって解はない。

例 4.2.0≤θ<2π0\le\theta<2\piでsin⁡θ=cos⁡θ\sin\theta=\cos\thetaを解く。二乗するとsin⁡2θ=cos⁡2θ\sin^2\theta=\cos^2\thetaとなり、候補はπ/4,3π/4,5π/4,7π/4\pi/4,3\pi/4,5\pi/4,7\pi/4である。二乗した等式は正弦と余弦が反対の符号の場合も含む。元の等式へ代入すると3π/4,7π/43\pi/4,7\pi/4は除かれ、答えはθ=π/4,5π/4\theta=\pi/4,5\pi/4となる。

注意 4.3.t=sin⁡θt=\sin\thetaまたはt=cos⁡θt=\cos\thetaと置いた場合には、−1≤t≤1-1\le t\le1の候補だけを角へ戻す。角を2θ2\thetaやθ+φ\theta+\varphiに置き換える場合には、指定された角の範囲も変換する。式を二乗した場合や分母を払った場合には、得られた候補が元の式とその定義域を満たすかを確認する。

閑話休題:三角関数による三次方程式の解 カルダノの公式は、三次方程式を根号によって解く公式です。有理係数の既約な三次式が相異なる三つの実根をもつ場合には、公式の途中に非実数の平方根が現れます。この場合は「還元不能の場合」と呼ばれ、実数の根号だけによる表示の制約はガロア理論で扱います。重根や可約な三次式まで含む主張ではありません。

一方、加法定理と倍角公式から

cos⁡3θ=cos⁡(2θ+θ)=(2cos⁡2θ−1)cos⁡θ−2sin⁡2θcos⁡θ=4cos⁡3θ−3cos⁡θ\cos3\theta=\cos(2\theta+\theta) =(2\cos^2\theta-1)\cos\theta-2\sin^2\theta\cos\theta =4\cos^3\theta-3\cos\theta

を得ます。x=2cos⁡θx=2\cos\thetaと置くと、x3−3x=1x^3-3x=1はcos⁡3θ=1/2\cos3\theta=1/2に変わります。0≤θ≤π0\le\theta\le\piとすると0≤3θ≤3π0\le3\theta\le3\piであり、解は

3θ=π3,5π3,7π3.3\theta=\frac\pi3,\frac{5\pi}{3},\frac{7\pi}{3}.

したがって元の方程式の解は

x=2cos⁡π9,2cos⁡5π9,2cos⁡7π9x=2\cos\frac\pi9,\quad2\cos\frac{5\pi}{9},\quad2\cos\frac{7\pi}{9}

です。三つの角は[0,π][0,\pi]で異なり、この区間では余弦が狭義に減少するため、得られた三つの実数も異なります。三次方程式の相異なる根は三つまでなので、すべての根を得ています。

例題

条件と何を求めるかを確認してから、式と答えの対応を見比べてください。

次の方程式を解け(0≤x<2π0\leq{x}<2\pi)。

解法の型単位円で「値を満たす角が何個あるか」を必ず図で確認

  1. 例題 1

    sin⁡x=32\sin x = \dfrac{\sqrt{3}}{2}
  2. 例題 2

    tan⁡x=−3\tan x = -\sqrt{3}
  3. 例題 3

    sin⁡x=−12\sin x = -\dfrac{1}{2}
  4. 例題 4

    tan⁡x=13\tan x = \dfrac{1}{\sqrt{3}}
  5. 例題 5

    tan⁡x=1\tan x = 1
  6. 例題 6

    cos⁡x=−22\cos x = -\dfrac{\sqrt{2}}{2}
  7. 例題 7

    sin⁡x=12\sin x = \dfrac{1}{2}
  8. 例題 8

    cos⁡x=−1\cos x = -1
  9. 例題 9

    cos⁡x=0\cos x = 0
  10. 例題 10

    sin⁡x=−1\sin x = -1

演習

問題を解いてから「解答・解説」を開けます。

次の方程式を解け(0≤x<2π0\leq{x}<2\pi)。

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