1 一周期の解と一般解
未知角が動く範囲を指定してから、単位円上の点の座標を角へ戻します。範囲が実数全体なら、周期によってすべての解を表します。
例 1.1.0≤θ<2πでsinθ=1/2を解く。単位円と直線y=1/2の交点は
(x,y)=(23,21),(−23,21)であり、対応する角はθ=π/6,5π/6である。実数全体での一般解は
θ=6π+2kπまたはθ=65π+2kπ(k∈Z).
例 1.2.0≤θ<2πでsinθ>1/2となるのは、単位円上のy>1/2の弧に対応する角である。したがって
6π<θ<65π.実数全体での解は
6π+2kπ<θ<65π+2kπ(k∈Z).等号を満たす二つの角は狭義不等式の解に含まれない。
2 角の置換と合成
例 2.2.0≤θ<2πで3sinθ+cosθ=1を解く。§A2.3 公式 4.1により2sin(θ+π/6)=1である。u=θ+π/6とするとπ/6≤u<13π/6なので、u=π/6,5π/6である。よって
θ=0,32π.実数全体での一般解はθ=2kπまたはθ=2π/3+2kπ(k∈Z)である。
3 倍角公式と三角関数の値の置換
角が異なる三角関数が混在する場合には、倍角公式を用いて同じ角の三角関数へそろえます。置換後の不等式を解いた後、元の角の範囲へ戻します。
例 3.1.0≤θ<2πでcos2θ>sinθを解く。§A2.3 公式 2.1によりcos2θ=1−2sin2θなので、t=sinθと置くと
1−2t2>t⟺(2t−1)(t+1)<0.したがって−1<t<1/2である。単位円上でsinθ<1/2となる角は[0,π/6)∪(5π/6,2π)であり、sinθ=−1となる3π/2を除く。答えは
θ∈[0,6π)∪(65π,23π)∪(23π,2π).π/6,5π/6,3π/2は元の式で等号となるため含まれず、0は1>0を満たすため含まれる。
問題 3.2. 実数mに対して、0≤θ<2πにおける方程式
sin2θ−sinθ=mの異なる解の個数を求めよ。
解答.
t=sinθと置くと、−1≤t≤1の範囲でt2−t−m=0を解くことになる。m<−1/4なら判別式1+4mが負なので、解はない。m≥−1/4なら二次方程式の根は
t−=21−1+4m,t+=21+1+4mである。t−が[−1,1]に属する条件はm≤2、t+が[−1,1]に属する条件はm≤0である。
単位円と水平線y=tとの交点は、−1<t<1なら二点、t=±1なら一点である。区間0≤θ<2πでは各交点に一つの角が対応する。異なるtに対応する角が重なることはない。
m=−1/4では二次方程式の二根がt=1/2に重なるので、角の解は2個である。m=0ではt=0,1であり、角の解は0,π,π/2の3個である。m=2では許される根はt=−1だけなので、角の解は3π/2の1個である。他の区間では許される根の個数から、次の表を得る。
| mの範囲 |
m<−1/4 |
m=−1/4 |
−1/4<m<0 |
m=0 |
0<m<2 |
m=2 |
m>2 |
| 角の解の個数 |
0 |
2 |
4 |
3 |
2 |
1 |
0 |
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4 定義域と変形後の候補
例 4.1.0≤θ<2πでtanθcosθ=1を解く。元の式はcosθ=0の場合に限り定義され、その範囲ではsinθ=1と同値である。候補θ=π/2ではcosθ=0なので元の式が定義されない。したがって解はない。
例 4.2.0≤θ<2πでsinθ=cosθを解く。二乗するとsin2θ=cos2θとなり、候補はπ/4,3π/4,5π/4,7π/4である。二乗した等式は正弦と余弦が反対の符号の場合も含む。元の等式へ代入すると3π/4,7π/4は除かれ、答えはθ=π/4,5π/4となる。
閑話休題:三角関数による三次方程式の解 カルダノの公式は、三次方程式を根号によって解く公式です。有理係数の既約な三次式が相異なる三つの実根をもつ場合には、公式の途中に非実数の平方根が現れます。この場合は「還元不能の場合」と呼ばれ、実数の根号だけによる表示の制約はガロア理論で扱います。重根や可約な三次式まで含む主張ではありません。
一方、加法定理と倍角公式から
cos3θ=cos(2θ+θ)=(2cos2θ−1)cosθ−2sin2θcosθ=4cos3θ−3cosθを得ます。x=2cosθと置くと、x3−3x=1はcos3θ=1/2に変わります。0≤θ≤πとすると0≤3θ≤3πであり、解は
3θ=3π,35π,37π.したがって元の方程式の解は
x=2cos9π,2cos95π,2cos97πです。三つの角は[0,π]で異なり、この区間では余弦が狭義に減少するため、得られた三つの実数も異なります。三次方程式の相異なる根は三つまでなので、すべての根を得ています。