二つの零でないベクトルを同じ始点に置くと、二つの向きがなす角を考えることができます。たとえば、一方の向きを固定して他方の向きを変えると、直角をなす場合や、互いに逆向きになる場合が現れます。向きの関係を成分の計算で調べるには、角と成分を結び付ける演算が必要です。
内積は、二つのベクトルの成分から計算される実数であり、長さとなす角によっても表されます。図形の角や直交の関係を座標で扱う際に、内積が基本的な役割を果たします。本記事では、内積の二つの表し方を結び付け、図形への応用を説明します。
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二つの零でないベクトルを同じ始点に置くと、二つの向きがなす角を考えることができます。たとえば、一方の向きを固定して他方の向きを変えると、直角をなす場合や、互いに逆向きになる場合が現れます。向きの関係を成分の計算で調べるには、角と成分を結び付ける演算が必要です。
内積は、二つのベクトルの成分から計算される実数であり、長さとなす角によっても表されます。図形の角や直交の関係を座標で扱う際に、内積が基本的な役割を果たします。本記事では、内積の二つの表し方を結び付け、図形への応用を説明します。
定義 1.1 (内積). 実成分の平面ベクトル、の 内積 (inner product) を
で定める。空間ベクトル、では
で定める。内積の値は実数であり、どちらかのベクトルが零ならである。
定理 2.1. 平面または空間の非零ベクトルがなす角をとすると
したがって、内積を長さと角による右辺で定義しても、成分による定義と一致する。
証明. 二つのベクトルを同じ始点に置き、終点をとする。成分の差の平方を展開すると、平面でも空間でも
となる。二つのベクトルが平行でない場合、が定める平面上の三角形に余弦定理§A2.1 定理 3.2を用いると
を得る。空間の場合にも、この平面上での辺の長さは空間の成分で計算した長さと同じである。二つの等式を比較すると角による表示を得る。平行な場合には()と書く。であり、である。なら、ならなので、どちらの場合も角による表示が成り立つ。▨
非零ベクトルのなす角を成分から求めるには、次の式を使います。
定義 3.1 (直交). 平面または空間のベクトルが 直交 (orthogonality) するとは、であることをいう。零ベクトルはすべてのベクトルに直交する。両ベクトルが非零なら、直交はなす角がであることと同値である。
非零の場合の同値性は、角の式と、の範囲ではがに限ることから従います。
定義 3.2 (符号付き射影の長さ). 平面または空間のベクトルとを同じ始点に置き、の終点をとする。を通りの方向に延びる直線へ、から下ろした垂線の足をとする。がからと同じ向きにあるときは、逆向きにあるときは、のときはを、の方向への 符号付き射影の長さ (signed projection length) と呼ぶ。
公式 3.3. 平面または空間のベクトルを基準の向きとすると、の方向への符号付き射影の長さは
ならであり、ならである。
証明.のとき、とのなす角をとする。余弦の定義と射影の符号からである。平行な場合にも、を代入すれば同じ式が成り立つ。定理 2.1の等式をで割ると公式を得る。のときは垂線の足が始点に一致するのでであり、成分による内積もである。▨
下の図では、射影の符号付きの長さが緑点の座標となり、その値の倍が内積です。
例 3.4.、では、、、である。したがって
射影はと逆向きなので符号が負となる。一方、に対してはであり、両ベクトルは直交する。
問題 3.5. 座標平面上の点、、をとる。点から直線に下ろした垂線の足をとする。の方向への符号付き射影の長さ、点の座標、距離を求め、点が線分のどちら側にあるかを述べよ。
、とおく。、なので、公式 3.3により、符号付き射影の長さは
である。は直線の正の向きを表す単位ベクトルだから、
したがって
実際、なので、求めた点は垂線の足である。であるから、点は点側の延長上にある。射影の長さが負となることは、点が点からと逆向きにあることに対応する。▨
注意 3.6. 非零ベクトルの内積が負なら、なす角の範囲はであり、逆向きの平角も含む。角を求める際には、長さの積で割った余弦の値を用いる。三次元の外積は二つのベクトルからベクトルを作る別の演算である。図形の条件を成分の式に直す場合には、直交を内積として表し、線分上の点を位置ベクトルの内分式で表すなど、条件ごとに対応する式を用いる。
閑話休題:コサイン類似度と埋め込み 非零ベクトルに対するは、からの値をとり、コサイン類似度と呼ばれます。三成分より多い場合にも、対応する成分の積を足す内積と、平方和の平方根である長さを用いて同じ比を定めます。文書を単語の出現回数のベクトルで表す検索モデルでは、質問文と文書のコサイン類似度を比較します。視聴履歴をベクトルで表す推薦モデルでも、ユーザー間の類似度の指標として用いることができます。
言葉の埋め込みは、学習によって単語などを多成分のベクトルとして表す方法です。学習した表示によっては、意味の近い語のコサイン類似度が高くなるほか、
のように、語の関係がベクトルの差と和によって近似的に表される場合があります。この近似の精度は、学習データとベクトルの作り方に依存します。言語モデルでも語などを多成分のベクトルで表し、内積はベクトル間の関係を計算する演算の一つとして用いられます。
条件と何を求めるかを確認してから、式と答えの対応を見比べてください。
実ベクトルを扱う。次の問いに答えよ。
解法の型内積 = 成分の積の和。垂直 内積 =
内積を計算せよ。
内積を計算せよ。
内積を計算せよ。
ベクトルが垂直になる t を求めよ。
内積を計算せよ。
内積を計算せよ。
ベクトルが垂直になる t を求めよ。
内積を計算せよ。
内積を計算せよ。
ベクトルが垂直になる t を求めよ。
問題を解いてから「解答・解説」を開けます。
実ベクトルを扱う。次の問いに答えよ。
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