§A2.16極座標と極方程式

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平面上の点を表す直交座標は、横と縦の位置を指定します。一方、原点を中心とする円では、原点からの距離が一定であることが図形の特徴です。このような距離や方向に関わる特徴は、横と縦の座標よりも、距離と角を用いる方が直接表すことができます。

原点からの距離と、基準となる方向から測った角による点の表し方を、極座標と呼びます。極座標は、原点の周りの図形を扱う基本的な方法であり、たとえば原点中心の円は、距離を一定とする式で表されます。ただし、角を一周分増やしても同じ点を表すため、座標の組と点が一対一に対応するとは限りません。

本記事では、極座標の基本的な性質と、距離と角の関係式が表す曲線について解説します。

1 直交座標との変換

定義 1.1 (極座標). 原点O=(0,0)\mathrm O=(0,0)と正のxx軸を基準とする。非零の点に対して、原点からの距離r>0r>0と、正のxx軸から反時計回りに測る角θ\thetaの組(r,θ)(r,\theta)を 極座標 (polar coordinates) と呼ぶ。角はラジアンで測り、θ\thetaとθ+2kπ\theta+2k\pi(k∈Zk\in\Z)は同じ方向を表す。原点ではr=0r=0とし、角は任意である。

公式 1.2. 距離としてr≥0r\ge0を用いる極座標と直交座標の関係は

x=rcos⁡θ,y=rsin⁡θ,r=x2+y2x=r\cos\theta,\qquad y=r\sin\theta,\qquad r=\sqrt{x^2+y^2}

である。(x,y)≠(0,0)(x,y)\ne(0,0)では、cos⁡θ=x/r\cos\theta=x/rとsin⁡θ=y/r\sin\theta=y/rの両方を満たす角を選ぶ。

証明. 単位円上の点(cos⁡θ,sin⁡θ)(\cos\theta,\sin\theta)の位置ベクトルをrr倍すると、二つの座標の式を得る。平方和はx2+y2=r2x^2+y^2=r^2であり、r≥0r\ge0から距離の式を得る。逆に、非零の点では(x/r)2+(y/r)2=1(x/r)^2+(y/r)^2=1なので、指定された正弦と余弦をもつ角が存在する。▨

例 1.3.P=(−3,1)\mathrm P=(-\sqrt3,1)に対して、r=3+1=2r=\sqrt{3+1}=2である。cos⁡θ=−3/2\cos\theta=-\sqrt3/2、sin⁡θ=1/2\sin\theta=1/2なので、0≤θ<2π0\le\theta<2\piの範囲ではθ=5π/6\theta=5\pi/6となる。tan⁡θ=−1/3\tan\theta=-1/\sqrt3だけでは第2象限と第4象限を区別することができない。x=0,y>0x=0,y>0ならθ=π/2\theta=\pi/2、x=0,y<0x=0,y<0ならθ=3π/2\theta=3\pi/2であり、正接の式を使わずに選ぶ。

2 符号付きの半径と点の表し方

曲線の表示ではrrに負の実数も許す規約を使うことがあります。この場合、rrは距離そのものではなく、指定した方向に沿う符号付きの長さです。変換式x=rcos⁡θ,y=rsin⁡θx=r\cos\theta,y=r\sin\thetaはそのまま用い、原点からの距離は∣r∣=x2+y2|r|=\sqrt{x^2+y^2}となります。

注意 2.1. 符号付きの半径では、(r,θ)(r,\theta)と(−r,θ+π)(-r,\theta+\pi)が同じ点を表す。実際、cos⁡(θ+π)=−cos⁡θ\cos(\theta+\pi)=-\cos\theta、sin⁡(θ+π)=−sin⁡θ\sin(\theta+\pi)=-\sin\thetaなので、二つの直交座標は一致する。角への2kπ2k\piの加算も同じ点を与える。r=0r=0ではすべての角が原点を表すが、ある極方程式を満たす座標の組は、その方程式の条件も満たす必要がある。

3 極方程式

定義 3.1 (極方程式).r,θr,\thetaの関係式を満たす組から、x=rcos⁡θ,y=rsin⁡θx=r\cos\theta,y=r\sin\thetaによって曲線の点を表す式を 極方程式 (polar equation) と呼ぶ。半径の符号の規約と角の範囲を合わせて指定する。

実数の集合II上の実数値関数ffによる極方程式r=f(θ)r=f(\theta)(θ∈I\theta\in I)は、変換式へ代入すると

x=f(θ)cos⁡θ,y=f(θ)sin⁡θ(θ∈I)x=f(\theta)\cos\theta,\qquad y=f(\theta)\sin\theta\qquad(\theta\in I)

という媒介変数表示になります。半径を非負に限る場合は、IIの中でもf(θ)≥0f(\theta)\ge0を満たす角だけを用います。

r=ar=a(a>0a>0、角は一周全体)は原点中心の半径aaの円です。θ=α\theta=\alphaは、r∈Rr\in\Rなら原点を通る直線、r≥0r\ge0なら原点から出る半直線となります。

例 3.2.r=2cos⁡θr=2\cos\thetaの像を求める。まずr≥0r\ge0とし、−π/2≤θ<π/2-\pi/2\le\theta<\pi/2とする。変換式へ代入すると

x=2cos⁡2θ=1+cos⁡2θ,y=2cos⁡θsin⁡θ=sin⁡2θx=2\cos^2\theta=1+\cos2\theta,\qquad y=2\cos\theta\sin\theta=\sin2\theta

となる。2θ2\thetaは−π≤2θ<π-\pi\le2\theta<\piの範囲を増加するので、点(x−1,y)(x-1,y)は単位円を反時計回りに一周し、各点を一度ずつ通る。したがって、像は

(x−1)2+y2=1(x-1)^2+y^2=1

で表される円全体であり、中心は(1,0)(1,0)、半径は11である。この方程式はx2+y2=2xx^2+y^2=2xと同値である。原点はr=0,θ=−π/2r=0,\theta=-\pi/2で得られる。

符号付きのrrを許し、0≤θ<2π0\le\theta<2\piとすると、2θ2\thetaは0≤2θ<4π0\le2\theta<4\piの範囲を動くので、同じ円を反時計回りに二周する。θ\thetaとθ+π\theta+\piでは半径の符号も反転し、同じ点を与える。原点を表すのは、この角の範囲ではθ=π/2,3π/2\theta=\pi/2,3\pi/2である。原点を表す任意の角が極方程式を満たすわけではない。

問題 3.3. 符号付きの半径を許し、0≤θ<2π0\le\theta<2\piとする。極方程式r=2cos⁡θr=2\cos\thetaとr=2sin⁡θr=2\sin\thetaが表す二つの曲線の交点を、直交座標で求めよ。また、2cos⁡θ=2sin⁡θ2\cos\theta=2\sin\thetaを解くだけでは、すべての交点が求まらない理由を述べよ。

解答.

各極方程式の両辺をrr倍して直交座標へ変換すると

x2+y2=2x,x2+y2=2yx^2+y^2=2x,\qquad x^2+y^2=2y

を得る。第一の曲線は例 3.2で求めた円全体である。第二の曲線を直接変換すると

x=2sin⁡θcos⁡θ=sin⁡2θ,y=2sin⁡2θ=1−cos⁡2θx=2\sin\theta\cos\theta=\sin2\theta,\qquad y=2\sin^2\theta=1-\cos2\theta

となる。0≤2θ<4π0\le2\theta<4\piなので、点(x,y−1)(x,y-1)は単位円を二周する。したがって、第二の式の像もx2+(y−1)2=1x^2+(y-1)^2=1の円全体である。原点はr=0,θ=0r=0,\theta=0で得られる。

二つの直交方程式からx=yx=yとなり、2x2=2x2x^2=2xよりx=0,1x=0,1を得る。したがって交点は(0,0)(0,0)と(1,1)(1,1)である。

一方、cos⁡θ=sin⁡θ\cos\theta=\sin\thetaの解は、指定された範囲でθ=π/4,5π/4\theta=\pi/4,5\pi/4である。対応する半径はそれぞれ2,−2\sqrt2,-\sqrt2であり、どちらの組も点(1,1)(1,1)を表す。原点は第一の極方程式ではθ=π/2,3π/2\theta=\pi/2,3\pi/2、第二の極方程式ではθ=0,π\theta=0,\piに対応する。原点は二つの曲線に属するが、両方の極方程式を満たして原点を表す共通の組(r,θ)(r,\theta)は存在しない。▨

下の図のr=cos⁡(kθ)r=\cos(k\theta)はバラ曲線です。図では符号付きの半径と0≤θ<2π0\le\theta<2\piを用いています。

図の曲線の花弁数は、正整数kkが奇数ならkk、偶数なら2k2kです。最大の距離∣r∣=1|r|=1を与える角はθ=mπ/k\theta=m\pi/kであり、mmが奇数の場合にはr=−1r=-1なので、点の向きは角θ\thetaからπ\piずれます。このため、奇数のkkではθ\thetaとθ+π\theta+\piが同じ花弁を与え、偶数のkkでは異なる花弁を与えます。

4 複素数の極形式との関係

複素数z=x+iyz=x+iyの極形式r(cos⁡θ+isin⁡θ)r(\cos\theta+i\sin\theta)は、r>0r>0なら点(x,y)(x,y)の極座標に対応します。複素数の積が与える回転と拡大・縮小は、極座標では角の加算と半径の定数倍として表されます。

閑話休題:極座標で表すモデル 対数螺旋は、定数a>0,b≠0a>0,b\ne0に対する極方程式r=aebθr=ae^{b\theta}(θ∈R\theta\in\R)で表され、等角螺旋とも呼ばれます。角をδ\deltaだけ増やすと

r(θ+δ)=aeb(θ+δ)=ebδr(θ)r(\theta+\delta)=ae^{b(\theta+\delta)}=e^{b\delta}r(\theta)

となります。したがって、原点を中心にδ\deltaだけ回転し、距離をebδe^{b\delta}倍する操作が、螺旋上の点を同じ螺旋上の点へ移します。この回転を伴う拡大が自己相似性を表します。オウムガイの殻、松ぼっくり、台風の雲、渦巻銀河の腕などを、対数螺旋によって近似するモデルがあります。

ひまわりの種などの配置を表すモデルでは、隣り合う点の角の差を黄金角、約137.5∘137.5^\circとします。これは一周を黄金比で分けた小さい方の角です。配置に現れる螺旋の本数として、フィボナッチ数21,34,55,…21,34,55,\ldotsを扱うモデルもあります。密度や最適性を論じるには、各点の半径と大きさ、配置する点の数などの条件を別に定める必要があります。黄金角だけから、任意の配置が最も密になるとは結論されません。

レーダーやソナーで測る距離と方向、電波の方向ごとの強さも、極座標で表すことができます。自然の形を近似する場合には、モデルが合う範囲と観測上の条件を確かめます。

5 角の範囲と曲線の像

注意 5.1. 曲線を図示するときには、許された角から半径を求め、符号付きの変換式で点の位置を計算する。半径の符号と角の範囲を変えると、像が同じでも通過回数やたどる向きが変わる場合がある。直交方程式へ変換するときには、原点を除いて割り算を行った場合の原点の所属も別に確かめる。

例題

条件と何を求めるかを確認してから、式と答えの対応を見比べてください。

直交変換では標準極座標 r≥0r\ge0、角度はラジアン、θ∈R\theta\in R とする。極方程式では必要に応じて符号付き r も許し、x == r cos θ\theta、y == r sin θ\theta、r² == x² + y² を使う。分母が現れる場合はその非零条件も確認して答えよ。

解法の型両辺に r を掛けて r cos θ\theta== x、r sin θ\theta== y、r² == x² + y² を作り出すのが定石

  1. 次の極方程式を、直交座標の方程式に直せ。

    r=5cos⁡θ,cos⁡θ≠0r = \dfrac{5}{\cos\theta},\qquad \cos\theta\ne0
  2. 次の2次曲線の極方程式について、離心率 e を求め、曲線の種類を判定せよ。

    r=21+cos⁡θ,1+1cos⁡θ≠0r = \dfrac{2}{1 + \cos\theta},\qquad 1 + 1\cos\theta\ne0
  3. 次の極方程式(心臓形)を、直交座標の方程式に直せ。

    r=2(1+cos⁡θ)r = 2(1 + \cos\theta)
  4. 次の直交座標の方程式を、極方程式に直せ。

    x2+y2=16x^{2} + y^{2} = 16
  5. 次の直交座標の方程式を、極方程式に直せ。

    (x−4)2+y2=16(x - 4)^{2} + y^{2} = 16
  6. 次の極方程式(レムニスケート)を、直交座標の方程式に直せ。

    r2=16cos⁡2θr^{2} = 16\cos 2\theta
  7. 次の極方程式を、直交座標の方程式に直せ。

    r=1cos⁡θ,cos⁡θ≠0r = \dfrac{1}{\cos\theta},\qquad \cos\theta\ne0
  8. 次の直交座標の方程式を、極方程式に直せ。

    x2+y2=9x^{2} + y^{2} = 9
  9. 次の直交座標の方程式を、極方程式に直せ。

    y=1,sin⁡θ≠0y = 1,\qquad \sin\theta\ne0
  10. 次の極方程式を、直交座標の方程式に直せ。

    r=3cos⁡θ,cos⁡θ≠0r = \dfrac{3}{\cos\theta},\qquad \cos\theta\ne0

演習

問題を解いてから「解答・解説」を開けます。

直交変換では標準極座標 r≥0r\ge0、角度はラジアン、θ∈R\theta\in R とする。極方程式では必要に応じて符号付き r も許し、x == r cos θ\theta、y == r sin θ\theta、r² == x² + y² を使う。分母が現れる場合はその非零条件も確認して答えよ。

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