1 媒介変数の範囲と曲線の像
定義 1.1 (媒介変数表示). 実数の集合Iと、I上の実数値関数f,gに対して
x=f(t),y=g(t)(t∈I)を曲線の 媒介変数表示 (parametric representation) と呼ぶ。変数tを媒介変数と呼び、曲線の点の集合は{(f(t),g(t)):t∈I}である。Iが区間なら、tの増加に伴って点が曲線をたどる向きも考える。
円全体は、一つのxに二つのyが対応する場合があるのでy=f(x)の形では表されません。媒介変数表示では、同じxを異なるtの値で得ることができます。
例 1.2.r>0とし、x=rcost,y=rsintとする。0≤t≤πではy≥0であり、(r,0)から(0,r)を経て(−r,0)へ、反時計回りに上半円をたどる。逆に上半円上の任意の点では(x/r)2+(y/r)2=1,y/r≥0なので、単位円の表示からこの範囲のtを求めることができる。0≤t<2πでは円全体を反時計回りに一周し、各点を一度ずつ通る。0≤t<4πでは同じ円を二周し、各点を二度ずつ通る。実際、tとt+2πが同じ点を与え、同じ点を与える二つの角の差は2πの整数倍に限る。閉区間[0,2π]を使えば、始点と終点がともに(r,0)となる。さらにx=rcos(−t)=rcost,y=rsin(−t)=−rsint(0≤t<2π)では、像は同じ円だが時計回りとなる。
下の図は(x,y)=(sinkt,sin2t)というリサージュ曲線です。二つの方向の振動を、共通のtで表しています。
2 媒介変数の消去と逆向きの確認
媒介変数を消去すると、x,yだけの関係式を得ることができます。円の表示ではcos2t+sin2t=1を用いてx2+y2=r2を得ます。ただし、上半円と円全体から同じ式が得られるので、消去した方程式だけでは元の範囲を復元することができません。
例 2.2.x=t2,y=t、t≥0の像を求める。t=yを代入するとx=y2となり、t≥0からy≥0が残る。逆にx=y2,y≥0を満たす任意の点に対してt=yと置けば、t≥0と元の二つの式を満たす。したがって像は
{(x,y):x=y2, y≥0}である。方程式x=y2だけでは、たとえば(1,−1)も含まれるが、元の表示からは得られない。
例 2.3.a,b>0とし、x=acost,y=bsint、0≤t<2πとする。消去すると
a2x2+b2y2=1を得る。逆に、この方程式上の点では(x/a,y/b)が単位円上にあるため、cost=x/a,sint=y/bを満たすt∈[0,2π)が一意に定まる。したがって像は楕円全体であり、(a,0)から(0,b)、(−a,0)、(0,−b)の順に一周する。0≤t≤πに制限した場合はy≥0の部分だけとなり、条件を満たすtもこの範囲で求める。
問題 2.4. 単位円x2+y2=1上の点A=(−1,0)を固定する。実数tに対して、Aを通る直線y=t(x+1)と単位円との、A以外の交点を求めよ。得られた媒介変数表示の像と、各点を通る回数を求めよ。
解答.
直線の式を円の式へ代入すると
x2+t2(x+1)2−1=(x+1)((1+t2)x+t2−1)=0となる。x=−1はAに対応するので、もう一つの交点は
x=1+t21−t2,y=1+t22t(t∈R)である。1+x=2/(1+t2)>0なので、どの実数tに対しても交点はAと異なる。
表示式からx2+y2=1が従う。逆に、単位円上のA以外の点(x,y)に対して
t=x+1yとおく。x2+y2=1とx=−1により
1+t2=(x+1)2(x+1)2+y2=x+12となるので、2t/(1+t2)=yであり、(1−t2)/(1+t2)=2/(1+t2)−1=xである。したがって像は、単位円からAだけを除いた集合である。各点に対応するt=y/(x+1)は一意なので、各点を一度ずつ通る。消去して得た方程式x2+y2=1だけでは、元の表示で通らない点Aも含まれる。▨
3 接線とサイクロイド
微分を学ぶと、媒介変数表示の接線や速度も調べることができます。
閑話休題:サイクロイドと降下のモデル 半径a>0の円が直線上を滑らずに転がるとき、円周上の一点の軌跡をサイクロイドと呼びます。最初の接地点を原点とすると、媒介変数表示は
x=a(t−sint),y=a(1−cost)です。円の中心の移動距離がat、円周上の点の中心からの変位が(−asint,−acost)となるので、この式を得ます。0≤t≤2πが一つの弧に対応します。
一様な重力の下で、摩擦を受けない質点が静止状態から曲線に沿って滑るモデルでは、上下を反転したサイクロイドの適切な弧が最速降下線となります。これは、与えられた高い点から低い点までの到達時間を最小にする曲線を求める問題です。1696年にヨハン・ベルヌーイが提示した問題として知られ、変分法で扱う代表例です。
反転したサイクロイドの一つの弧には、最下点以外のどの点から静かに放しても、質点が最下点まで滑る時間が同じになる等時性もあります。ホイヘンスはこの性質を、振れ幅によらず周期が一定となる振り子の設計に用いました。等時性と最速降下性は、このモデルの運動についての性質であり、媒介変数の消去だけからは導かれません。
二つの振動を表すリサージュ図形、スピログラフの曲線、周転円による運動のモデルも、点の座標を共通の変数で表す例です。リサージュ図形では、二つの信号の振動数や位相の関係を曲線の形に対応させます。