§A2.15曲線の媒介変数表示

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円の方程式は、円周上にある点の位置を表します。しかし、その方程式だけでは、点が円を時計回りに進むのか、反時計回りに進むのか、また何周するのかを区別することはできません。曲線上の点の集まりと、点が曲線をたどる様子とは、異なる情報です。

この両方を扱うために、横座標と縦座標を同じ変数に依存する形で表します。この方法を媒介変数表示と呼び、共通の変数を媒介変数と呼びます。円や楕円の表示では、媒介変数の範囲を変えることで、曲線の一部分だけを表したり、同じ曲線を繰り返したどったりすることができます。媒介変数表示は、方程式による図形の記述を、点の移動の記述へ広げる基本的な方法です。

本記事では、媒介変数表示による曲線の表し方と、曲線の範囲やたどり方について解説します。

1 媒介変数の範囲と曲線の像

定義 1.1 (媒介変数表示). 実数の集合IIと、II上の実数値関数f,gf,gに対して

x=f(t),y=g(t)(t∈I)x=f(t),\qquad y=g(t)\qquad(t\in I)

を曲線の 媒介変数表示 (parametric representation) と呼ぶ。変数ttを媒介変数と呼び、曲線の点の集合は{(f(t),g(t)):t∈I}\{(f(t),g(t)):t\in I\}である。IIが区間なら、ttの増加に伴って点が曲線をたどる向きも考える。

円全体は、一つのxxに二つのyyが対応する場合があるのでy=f(x)y=f(x)の形では表されません。媒介変数表示では、同じxxを異なるttの値で得ることができます。

例 1.2.r>0r>0とし、x=rcos⁡t,y=rsin⁡tx=r\cos t,y=r\sin tとする。0≤t≤π0\le t\le\piではy≥0y\ge0であり、(r,0)(r,0)から(0,r)(0,r)を経て(−r,0)(-r,0)へ、反時計回りに上半円をたどる。逆に上半円上の任意の点では(x/r)2+(y/r)2=1,y/r≥0(x/r)^2+(y/r)^2=1,y/r\ge0なので、単位円の表示からこの範囲のttを求めることができる。0≤t<2π0\le t<2\piでは円全体を反時計回りに一周し、各点を一度ずつ通る。0≤t<4π0\le t<4\piでは同じ円を二周し、各点を二度ずつ通る。実際、ttとt+2πt+2\piが同じ点を与え、同じ点を与える二つの角の差は2π2\piの整数倍に限る。閉区間[0,2π][0,2\pi]を使えば、始点と終点がともに(r,0)(r,0)となる。さらにx=rcos⁡(−t)=rcos⁡t,y=rsin⁡(−t)=−rsin⁡tx=r\cos(-t)=r\cos t,y=r\sin(-t)=-r\sin t(0≤t<2π0\le t<2\pi)では、像は同じ円だが時計回りとなる。

下の図は(x,y)=(sin⁡kt,sin⁡2t)(x,y)=(\sin kt,\sin2t)というリサージュ曲線です。二つの方向の振動を、共通のttで表しています。

2 媒介変数の消去と逆向きの確認

媒介変数を消去すると、x,yx,yだけの関係式を得ることができます。円の表示ではcos⁡2t+sin⁡2t=1\cos^2t+\sin^2t=1を用いてx2+y2=r2x^2+y^2=r^2を得ます。ただし、上半円と円全体から同じ式が得られるので、消去した方程式だけでは元の範囲を復元することができません。

注意 2.1. 消去して得た方程式と残った条件が元の像を表すためには、両方向の確認が必要である。元の表示のすべての点が方程式と残った条件を満たし、逆に、それらを満たす任意の点に対して、元の二つの式を満たす許されたttを求めることができることを確かめる。像が一致していても、たどる向きや通過回数は一致するとは限らない。ttを時間とみなす場合には、微分による速度も媒介変数表示から求める。

例 2.2.x=t2,y=tx=t^2,y=t、t≥0t\ge0の像を求める。t=yt=yを代入するとx=y2x=y^2となり、t≥0t\ge0からy≥0y\ge0が残る。逆にx=y2,y≥0x=y^2,y\ge0を満たす任意の点に対してt=yt=yと置けば、t≥0t\ge0と元の二つの式を満たす。したがって像は

{(x,y):x=y2, y≥0}\{(x,y):x=y^2,\ y\ge0\}

である。方程式x=y2x=y^2だけでは、たとえば(1,−1)(1,-1)も含まれるが、元の表示からは得られない。

例 2.3.a,b>0a,b>0とし、x=acos⁡t,y=bsin⁡tx=a\cos t,y=b\sin t、0≤t<2π0\le t<2\piとする。消去すると

x2a2+y2b2=1\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}=1

を得る。逆に、この方程式上の点では(x/a,y/b)(x/a,y/b)が単位円上にあるため、cos⁡t=x/a,sin⁡t=y/b\cos t=x/a,\sin t=y/bを満たすt∈[0,2π)t\in[0,2\pi)が一意に定まる。したがって像は楕円全体であり、(a,0)(a,0)から(0,b)(0,b)、(−a,0)(-a,0)、(0,−b)(0,-b)の順に一周する。0≤t≤π0\le t\le\piに制限した場合はy≥0y\ge0の部分だけとなり、条件を満たすttもこの範囲で求める。

問題 2.4. 単位円x2+y2=1x^2+y^2=1上の点A=(−1,0)\mathrm A=(-1,0)を固定する。実数ttに対して、A\mathrm Aを通る直線y=t(x+1)y=t(x+1)と単位円との、A\mathrm A以外の交点を求めよ。得られた媒介変数表示の像と、各点を通る回数を求めよ。

解答.

直線の式を円の式へ代入すると

x2+t2(x+1)2−1=(x+1)((1+t2)x+t2−1)=0x^2+t^2(x+1)^2-1 =(x+1)\bigl((1+t^2)x+t^2-1\bigr)=0

となる。x=−1x=-1はA\mathrm Aに対応するので、もう一つの交点は

x=1−t21+t2,y=2t1+t2(t∈R)x=\frac{1-t^2}{1+t^2},\qquad y=\frac{2t}{1+t^2}\qquad(t\in\R)

である。1+x=2/(1+t2)>01+x=2/(1+t^2)>0なので、どの実数ttに対しても交点はA\mathrm Aと異なる。

表示式からx2+y2=1x^2+y^2=1が従う。逆に、単位円上のA\mathrm A以外の点(x,y)(x,y)に対して

t=yx+1t=\frac{y}{x+1}

とおく。x2+y2=1x^2+y^2=1とx≠−1x\ne-1により

1+t2=(x+1)2+y2(x+1)2=2x+11+t^2=\frac{(x+1)^2+y^2}{(x+1)^2} =\frac{2}{x+1}

となるので、2t/(1+t2)=y2t/(1+t^2)=yであり、(1−t2)/(1+t2)=2/(1+t2)−1=x(1-t^2)/(1+t^2)=2/(1+t^2)-1=xである。したがって像は、単位円からA\mathrm Aだけを除いた集合である。各点に対応するt=y/(x+1)t=y/(x+1)は一意なので、各点を一度ずつ通る。消去して得た方程式x2+y2=1x^2+y^2=1だけでは、元の表示で通らない点A\mathrm Aも含まれる。▨

3 接線とサイクロイド

微分を学ぶと、媒介変数表示の接線や速度も調べることができます。

注意 3.1. 微分可能なf,gf,gに対して、dx/dt≠0dx/dt\ne0の点では接線の傾きを

dydx=dy/dtdx/dt\frac{dy}{dx}=\frac{dy/dt}{dx/dt}

で求める。dx/dt=0,dy/dt≠0dx/dt=0,dy/dt\ne0なら接線は鉛直となる。dx/dt=dy/dt=0dx/dt=dy/dt=0では、接線や曲線の滑らかさを別に調べる必要があり、この商の式は適用されない。

閑話休題:サイクロイドと降下のモデル 半径a>0a>0の円が直線上を滑らずに転がるとき、円周上の一点の軌跡をサイクロイドと呼びます。最初の接地点を原点とすると、媒介変数表示は

x=a(t−sin⁡t),y=a(1−cos⁡t)x=a(t-\sin t),\qquad y=a(1-\cos t)

です。円の中心の移動距離がatat、円周上の点の中心からの変位が(−asin⁡t,−acos⁡t)(-a\sin t,-a\cos t)となるので、この式を得ます。0≤t≤2π0\le t\le2\piが一つの弧に対応します。

一様な重力の下で、摩擦を受けない質点が静止状態から曲線に沿って滑るモデルでは、上下を反転したサイクロイドの適切な弧が最速降下線となります。これは、与えられた高い点から低い点までの到達時間を最小にする曲線を求める問題です。1696年にヨハン・ベルヌーイが提示した問題として知られ、変分法で扱う代表例です。

反転したサイクロイドの一つの弧には、最下点以外のどの点から静かに放しても、質点が最下点まで滑る時間が同じになる等時性もあります。ホイヘンスはこの性質を、振れ幅によらず周期が一定となる振り子の設計に用いました。等時性と最速降下性は、このモデルの運動についての性質であり、媒介変数の消去だけからは導かれません。

二つの振動を表すリサージュ図形、スピログラフの曲線、周転円による運動のモデルも、点の座標を共通の変数で表す例です。リサージュ図形では、二つの信号の振動数や位相の関係を曲線の形に対応させます。

例題

条件と何を求めるかを確認してから、式と答えの対応を見比べてください。

t の範囲を併記した媒介変数表示と直交座標の方程式を、指示された向きに変換せよ。

解法の型消去は cos²t + sin²t == 1 や 1 + tan²t == 1/cos²t のような恒等式に帰着させる

  1. 次の曲線の媒介変数表示を1つ作れ。

    x−3y=−4x-3y = -4
  2. 次の媒介変数表示から t を消去して、直交座標の方程式を求めよ。

    x=−2t+2,y=2t+3,t∈Rx = -2t + 2,\qquad y = 2t + 3,\qquad t\in\mathbb R
  3. 次の媒介変数表示から t を消去して、直交座標の方程式を求めよ。

    x=5cos⁡t,y=3tan⁡t,t∈R, cos⁡t≠0x = \dfrac{5}{\cos t},\qquad y = 3\tan t,\qquad t\in\mathbb R,\ \cos t\ne0
  4. 次の媒介変数表示から t を消去して、直交座標の方程式を求めよ。

    x=5cos⁡t+3,y=5sin⁡t+3,0≤t<2πx = 5\cos t + 3,\qquad y = 5\sin t + 3,\qquad 0\le t<2\pi
  5. 次の曲線の媒介変数表示を1つ作れ。

    x225−y216=1\dfrac{x^{2}}{25} - \dfrac{y^{2}}{16} = 1
  6. 次の媒介変数表示から t を消去して、直交座標の方程式を求めよ。

    x=−t−4,y=3t+3,t∈Rx = -t - 4,\qquad y = 3t + 3,\qquad t\in\mathbb R
  7. 次の媒介変数表示から t を消去して、直交座標の方程式を求めよ。

    x=2cos⁡t,y=4tan⁡t,t∈R, cos⁡t≠0x = \dfrac{2}{\cos t},\qquad y = 4\tan t,\qquad t\in\mathbb R,\ \cos t\ne0
  8. 次の媒介変数表示から t を消去して、直交座標の方程式を求めよ。

    x=2cos⁡t+3,y=2sin⁡t,0≤t<2πx = 2\cos t + 3,\qquad y = 2\sin t,\qquad 0\le t<2\pi
  9. 次の媒介変数表示から t を消去して、直交座標の方程式を求めよ。

    x=5cos⁡t−1,y=5sin⁡t+2,0≤t<2πx = 5\cos t - 1,\qquad y = 5\sin t + 2,\qquad 0\le t<2\pi
  10. 次の曲線の媒介変数表示を1つ作れ。

    y=(x−3)2y = (x - 3)^{2}

演習

問題を解いてから「解答・解説」を開けます。

t の範囲を併記した媒介変数表示と直交座標の方程式を、指示された向きに変換せよ。

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