§E7.44コホモロジー次元

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群コホモロジーが非零となる次数は、群だけでなく係数への作用にも依存する。群の性質として高次の消滅を捉えるには、すべての係数加群に共通する次数の上限を考える必要がある。例えば、自由群では任意の係数に対して二次以上が消滅するが、位数二の巡回群では自明な整数係数のコホモロジーがすべての正偶数次数で非零となる。

コホモロジー次元は、この消滅の上限を記述する基本的な不変量である。整数群環上の自明加群の射影次元として定義され、有限な長さの射影分解が存在することと、すべての係数に対する高次のコホモロジーの消滅を結び付ける。本記事では、群のコホモロジー次元と、群の構造に応じた基本的な計算を解説する。

1 コホモロジー次元と消滅

定義 1.1.GGを群とし、整数群環R=Z[G]R=\Z[G]上の自明左加群Z\Zを考える。Z\Zの射影次元 (projective dimension)pd⁡RZ\operatorname{pd}_R\Zを、射影左RR-加群P0,…,PdP_0,\ldots,P_dからなる完全列

0⟶Pd⟶⋯⟶P0⟶Z⟶00\longrightarrow P_d\longrightarrow\cdots\longrightarrow P_0 \longrightarrow\Z\longrightarrow0

が存在する非負整数ddの最小値とする。そのような非負整数が存在しないときは、pd⁡RZ=∞\operatorname{pd}_R\Z=\inftyとする。GGのコホモロジー次元 (cohomological dimension) を

cd⁡G:=pd⁡Z[G]Z\operatorname{cd}G:=\operatorname{pd}_{\Z[G]}\Z

と定める。値の集合N≥0∪{∞}\N\cup\{\infty\}では、すべての非負整数を∞\inftyより小さいものとする。

命題 1.2.GGを群、R=Z[G]R=\Z[G]、ddを非負整数とする。次の条件は同値である。

  1. cd⁡G≤d\operatorname{cd}G\le dである。
  2. 任意の左RR-加群MMに対してHd+1(G,M)=0H^{d+1}(G,M)=0である。
  3. 任意の左RR-加群MMと任意の整数n>dn>dに対してHn(G,M)=0H^n(G,M)=0である。

証明.条件 (a)⇒\Rightarrow(c)を示す。Z\Zの長さdd以下の射影分解P∙P_\bulletを取り、分解の長さより上の項を零とする。任意の左RR-加群MMに対して、Hom⁡R(P∙,M)\Hom_R(P_\bullet,M)の次数ddより上の項は零である。§E7.35 系 4.4により、そのコホモロジーはHn(G,M)H^n(G,M)に同型であるから、すべてのn>dn>dでHn(G,M)=0H^n(G,M)=0である。

n=d+1n=d+1とすることで条件 (c)⇒\Rightarrow(b)が従う。

条件 (b)⇒\Rightarrow(a)を示す。任意の左RR-加群MMに対してHd+1(G,M)=0H^{d+1}(G,M)=0と仮定する。§E7.35 定義 4.1により、Ext⁡Rd+1(Z,M)=0\operatorname{Ext}_R^{d+1}(\Z,M)=0である。d=0d=0ならば、全係数に対する射影性判定§E6.39 定理 3.3によりZ\Zは射影的である。従って恒等写像Z→Z\Z\to\Zは長さ零の射影分解を与え、cd⁡G=0\operatorname{cd}G=0である。

d≥1d\ge1とし、§E6.38 定理 1.3により自明左RR-加群Z\Zの射影分解を取る。K0=ZK_0=\Zとし、その分解から0≤j<d0\le j<dに対して短完全列

0⟶Kj+1⟶Pj⟶Kj⟶00\longrightarrow K_{j+1}\longrightarrow P_j\longrightarrow K_j\longrightarrow0

を取る。ここでK1K_1は添加射P0→ZP_0\to\Zの核であり、Kj+1K_{j+1}はPj→KjP_j\to K_jの核である。反復次元移動§E6.39 系 3.2をs=ds=d、n=1n=1、第一変数Z\Z、第二変数の任意の左RR-加群MMに適用すると、

Ext⁡R1(Kd,M)≅Ext⁡Rd+1(Z,M)=0\operatorname{Ext}_R^1(K_d,M) \cong\operatorname{Ext}_R^{d+1}(\Z,M)=0

となる。§E6.39 定理 3.3によりKdK_dは射影的である。従って完全列

0⟶Kd⟶Pd−1⟶⋯⟶P0⟶Z⟶00\longrightarrow K_d\longrightarrow P_{d-1}\longrightarrow\cdots \longrightarrow P_0\longrightarrow\Z\longrightarrow0

は長さddの射影分解であり、cd⁡G≤d\operatorname{cd}G\le dである。▨

命題 1.3. 群GGに対して、cd⁡G=0\operatorname{cd}G=0であるための必要十分条件は、GGが自明群であることである。

証明. 必要性を示す。cd⁡G=0\operatorname{cd}G=0と仮定すると、Z\Zは左R=Z[G]R=\Z[G]-加群として射影的である。添加写像ε ⁣:R→Z\ep\colon R\to\Zは§E7.35 命題 1.2の左RR-線形写像であり、ε(1)=1\ep(1)=1により全射である。§E6.16 命題 1.2 (2)により、ε\epは左RR-線形な切断s ⁣:Z→Rs\colon\Z\to Rをもつ。a=s(1)a=s(1)とおくと、aaは有限台の群環の元であり、ε(a)=1\ep(a)=1である。Z\Zの作用は自明であるから、すべてのg∈Gg\in Gについてga=s(g⋅1)=s(1)=aga=s(g\cdot1)=s(1)=aである。

a=∑h∈Gahha=\sum_{h\in G}a_hhと書くと、ga=aga=aのggにおける係数を比較することでag=a1a_g=a_1を得る。従ってすべての係数は一つの整数c=a1c=a_1に等しい。GGが無限群ならば、aaの台が有限であるためc=0c=0となり、a=0a=0となる。これはε(a)=1\ep(a)=1と両立しないので、GGは有限群である。m=∣G∣m=|G|とおくと、a=c∑g∈Gga=c\sum_{g\in G}gであり、1=ε(a)=mc1=\ep(a)=mcとなる。mmは正整数、ccは整数であるからm=1m=1であり、GGは自明群である。

十分性を示す。G={1}G=\{1\}ならばZ[G]=Z\Z[G]=\Zであり、自明加群Z\Zは階数一の自由Z\Z-加群である。従ってZ\Zは射影的であり、恒等写像による長さ零の分解からcd⁡G=0\operatorname{cd}G=0である。▨

2 自由群と自由アーベル群

命題 2.1.XXを任意の集合、F(X)F(X)をXX上の自由群とする。X=∅X=\varnothingならばcd⁡F(X)=0\operatorname{cd}F(X)=0であり、X≠∅X\ne\varnothingならばcd⁡F(X)=1\operatorname{cd}F(X)=1である。

証明.X=∅X=\varnothingならばF(X)F(X)は自明群であり、命題 1.3によりcd⁡F(X)=0\operatorname{cd}F(X)=0である。X≠∅X\ne\varnothingとする。自由群の増大イデアルの基底§E7.41 定理 1.1が与える自由分解は長さ一であるから、cd⁡F(X)≤1\operatorname{cd}F(X)\le1である。F(X)F(X)は非自明群であるから、零次元の判定命題 1.3によりcd⁡F(X)≠0\operatorname{cd}F(X)\ne0である。よってcd⁡F(X)=1\operatorname{cd}F(X)=1である。▨

命題 2.2. 任意の非負整数nnに対して、自由アーベル群Zn\Z^nのコホモロジー次元はnnである。

証明.n=0n=0ならばZ0\Z^0は自明群であり、命題 1.3によりcd⁡Z0=0\operatorname{cd}\Z^0=0である。n≥1n\ge1とする。§E7.41 定理 3.1の自由分解は、次数nnより上の基底が空であるため長さnnである。従ってcd⁡Zn≤n\operatorname{cd}\Z^n\le nである。自明整数係数について、§E7.41 系 3.2により

Hn(Zn,Z)≅ZH^n(\Z^n,\Z)\cong\Z

である。もしcd⁡Zn≤n−1\operatorname{cd}\Z^n\le n-1ならば、命題 1.2によりHn(Zn,Z)=0H^n(\Z^n,\Z)=0となり、Z\Zに同型であることと両立しない。よってcd⁡Zn=n\operatorname{cd}\Z^n=nである。▨

3 部分群と有限位数元

命題 3.1.GGを群、H≤GH\le Gを任意の部分群とする。このとき

cd⁡H≤cd⁡G\operatorname{cd}H\le\operatorname{cd}G

が成り立つ。

証明.cd⁡G=d<∞\operatorname{cd}G=d<\inftyならば、自明左Z[G]\Z[G]-加群Z\Zの長さddの射影分解を取る。§E7.39 補題 2.2により、この分解をHHに制限すると、自明左Z[H]\Z[H]-加群Z\Zの長さddの射影分解を得る。従ってcd⁡H≤d=cd⁡G\operatorname{cd}H\le d=\operatorname{cd}Gである。cd⁡G=∞\operatorname{cd}G=\inftyならば、コホモロジー次元の値域からcd⁡H≤∞=cd⁡G\operatorname{cd}H\le\infty=\operatorname{cd}Gである。▨

命題 3.2. 群GGが非自明な有限位数元をもつならば、cd⁡G=∞\operatorname{cd}G=\inftyである。

証明. 非自明な有限位数元g∈Gg\in Gを取り、その位数をm≥2m\ge2とする。部分群C=⟨g⟩C=\langle g\rangleは位数mmの巡回群である。§E7.38 例 2.2により、自明整数係数について、すべての整数q≥1q\ge1に対して

H2q(C,Z)≅Z/mZ≠0H^{2q}(C,\Z)\cong\Z/m\Z\ne0

である。もしcd⁡C=d<∞\operatorname{cd}C=d<\inftyならば、2q>d2q>dとなる整数q≥1q\ge1を取る。命題 1.2によりH2q(C,Z)=0H^{2q}(C,\Z)=0となり、非零であることと両立しない。従ってcd⁡C=∞\operatorname{cd}C=\inftyである。部分群への単調性命題 3.1により、∞=cd⁡C≤cd⁡G\infty=\operatorname{cd}C\le\operatorname{cd}Gであり、cd⁡G=∞\operatorname{cd}G=\inftyである。▨

4 有限指数部分群

注意 4.1. Serre の有限指数定理によれば、GGがねじれのない群、H≤GH\le Gが有限指数の部分群であるならば、

cd⁡H=cd⁡G\operatorname{cd}H=\operatorname{cd}G

が成り立つ。この等式には、双方が無限大である場合も含まれる。この定理の証明は参考文献に委ねる。

参考文献

  1. Kenneth S. Brown, Cohomology of Groups, Graduate Texts in Mathematics 87, Springer, New York, 1982.群のコホモロジー次元と、自由群、自由アーベル群、および有限位数元に関する基本的な結果を参考にした。
  2. Jean-Pierre Serre, Cohomologie des groupes discrets, in: Prospects in Mathematics, Annals of Mathematics Studies 70, Princeton University Press, 1971, pp. 77–169.ねじれのない群とその有限指数部分群のコホモロジー次元が一致する定理を紹介した。

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