1 コホモロジー次元と消滅
定義 1.1.Gを群とし、整数群環R=Z[G]上の自明左加群Zを考える。Zの射影次元 (projective dimension)pdRZを、射影左R-加群P0,…,Pdからなる完全列
0⟶Pd⟶⋯⟶P0⟶Z⟶0が存在する非負整数dの最小値とする。そのような非負整数が存在しないときは、pdRZ=∞とする。Gのコホモロジー次元 (cohomological dimension) を
cdG:=pdZ[G]Zと定める。値の集合N≥0∪{∞}では、すべての非負整数を∞より小さいものとする。
命題 1.2.Gを群、R=Z[G]、dを非負整数とする。次の条件は同値である。
- cdG≤dである。
- 任意の左R-加群Mに対してHd+1(G,M)=0である。
- 任意の左R-加群Mと任意の整数n>dに対してHn(G,M)=0である。
証明.条件 (a)⇒(c)を示す。Zの長さd以下の射影分解P∙を取り、分解の長さより上の項を零とする。任意の左R-加群Mに対して、HomR(P∙,M)の次数dより上の項は零である。§E7.35 系 4.4により、そのコホモロジーはHn(G,M)に同型であるから、すべてのn>dでHn(G,M)=0である。
n=d+1とすることで条件 (c)⇒(b)が従う。
条件 (b)⇒(a)を示す。任意の左R-加群Mに対してHd+1(G,M)=0と仮定する。§E7.35 定義 4.1により、ExtRd+1(Z,M)=0である。d=0ならば、全係数に対する射影性判定§E6.39 定理 3.3によりZは射影的である。従って恒等写像Z→Zは長さ零の射影分解を与え、cdG=0である。
d≥1とし、§E6.38 定理 1.3により自明左R-加群Zの射影分解を取る。K0=Zとし、その分解から0≤j<dに対して短完全列
0⟶Kj+1⟶Pj⟶Kj⟶0を取る。ここでK1は添加射P0→Zの核であり、Kj+1はPj→Kjの核である。反復次元移動§E6.39 系 3.2をs=d、n=1、第一変数Z、第二変数の任意の左R-加群Mに適用すると、
ExtR1(Kd,M)≅ExtRd+1(Z,M)=0となる。§E6.39 定理 3.3によりKdは射影的である。従って完全列
0⟶Kd⟶Pd−1⟶⋯⟶P0⟶Z⟶0は長さdの射影分解であり、cdG≤dである。▨
命題 1.3. 群Gに対して、cdG=0であるための必要十分条件は、Gが自明群であることである。
証明. 必要性を示す。cdG=0と仮定すると、Zは左R=Z[G]-加群として射影的である。添加写像ε:R→Zは§E7.35 命題 1.2の左R-線形写像であり、ε(1)=1により全射である。§E6.16 命題 1.2 (2)により、εは左R-線形な切断s:Z→Rをもつ。a=s(1)とおくと、aは有限台の群環の元であり、ε(a)=1である。Zの作用は自明であるから、すべてのg∈Gについてga=s(g⋅1)=s(1)=aである。
a=∑h∈Gahhと書くと、ga=aのgにおける係数を比較することでag=a1を得る。従ってすべての係数は一つの整数c=a1に等しい。Gが無限群ならば、aの台が有限であるためc=0となり、a=0となる。これはε(a)=1と両立しないので、Gは有限群である。m=∣G∣とおくと、a=c∑g∈Ggであり、1=ε(a)=mcとなる。mは正整数、cは整数であるからm=1であり、Gは自明群である。
十分性を示す。G={1}ならばZ[G]=Zであり、自明加群Zは階数一の自由Z-加群である。従ってZは射影的であり、恒等写像による長さ零の分解からcdG=0である。▨
2 自由群と自由アーベル群
命題 2.1.Xを任意の集合、F(X)をX上の自由群とする。X=∅ならばcdF(X)=0であり、X=∅ならばcdF(X)=1である。
証明.X=∅ならばF(X)は自明群であり、命題 1.3によりcdF(X)=0である。X=∅とする。自由群の増大イデアルの基底§E7.41 定理 1.1が与える自由分解は長さ一であるから、cdF(X)≤1である。F(X)は非自明群であるから、零次元の判定命題 1.3によりcdF(X)=0である。よってcdF(X)=1である。▨
命題 2.2. 任意の非負整数nに対して、自由アーベル群Znのコホモロジー次元はnである。
証明.n=0ならばZ0は自明群であり、命題 1.3によりcdZ0=0である。n≥1とする。§E7.41 定理 3.1の自由分解は、次数nより上の基底が空であるため長さnである。従ってcdZn≤nである。自明整数係数について、§E7.41 系 3.2により
Hn(Zn,Z)≅Zである。もしcdZn≤n−1ならば、命題 1.2によりHn(Zn,Z)=0となり、Zに同型であることと両立しない。よってcdZn=nである。▨
3 部分群と有限位数元
命題 3.1.Gを群、H≤Gを任意の部分群とする。このとき
cdH≤cdGが成り立つ。
証明.cdG=d<∞ならば、自明左Z[G]-加群Zの長さdの射影分解を取る。§E7.39 補題 2.2により、この分解をHに制限すると、自明左Z[H]-加群Zの長さdの射影分解を得る。従ってcdH≤d=cdGである。cdG=∞ならば、コホモロジー次元の値域からcdH≤∞=cdGである。▨
命題 3.2. 群Gが非自明な有限位数元をもつならば、cdG=∞である。
証明. 非自明な有限位数元g∈Gを取り、その位数をm≥2とする。部分群C=⟨g⟩は位数mの巡回群である。§E7.38 例 2.2により、自明整数係数について、すべての整数q≥1に対して
H2q(C,Z)≅Z/mZ=0である。もしcdC=d<∞ならば、2q>dとなる整数q≥1を取る。命題 1.2によりH2q(C,Z)=0となり、非零であることと両立しない。従ってcdC=∞である。部分群への単調性命題 3.1により、∞=cdC≤cdGであり、cdG=∞である。▨
4 有限指数部分群