§E7.11推移的作用と二重剰余類

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群作用の各軌道では、ある一点から群の作用によってすべての点へ移ることができる。例えば、S3S_3の部分群H={e,(12)}H=\{e,(12)\}に対する剰余類集合S3/HS_3/Hは三点からなり、S3S_3はこの集合に推移的に作用する。群の作用を保つ対応が存在するかどうかは、軌道の大きさだけでは定まらない。作用を保つ写像である同変写像を用いると、推移的作用の比較を安定化群の包含や共役の問題として記述することができる。

推移的作用を剰余類集合で表すことは、作用の分類と部分群の構造を結び付ける基本的な方法である。さらに、群全体の作用を部分群の作用へ制限したときの軌道は、二重剰余類として群の中に表される。本記事では、推移的作用の同変写像と二重剰余類の構造を扱う。

1 同変写像と推移的作用

定義 1.1. 群GGが集合X,YX,Yに左から作用するとする。写像f ⁣:X→Yf\colon X\to Yがすべてのg∈Gg\in Gとx∈Xx\in Xに対して

f(g⋅x)=g⋅f(x)f(g\cdot x)=g\cdot f(x)

を満たすとき、ffを同変写像 (equivariant map) という。全単射である同変写像を同変同型 (equivariant isomorphism) という。

補題 1.2. 群GGの作用を受ける集合X,YX,Yの間の同変同型f ⁣:X→Yf\colon X\to Yの逆写像は同変写像である。

証明.g∈Gg\in G、y∈Yy\in Yに対し、x=f−1(y)x=f^{-1}(y)と置く。同変性からf(g⋅x)=g⋅yf(g\cdot x)=g\cdot yであり、両辺にf−1f^{-1}を適用するとg⋅f−1(y)=f−1(g⋅y)g\cdot f^{-1}(y)=f^{-1}(g\cdot y)を得る。▨

命題 1.3. 群GGが非空集合XXに推移的に作用し、x∈Xx\in Xとする。安定化群GxG_xに対する写像

Φx ⁣:G/Gx⟶X,aGx⟼a⋅x\Phi_x\colon G/G_x\longrightarrow X,\qquad aG_x\longmapsto a\cdot x

は同変同型である。逆に、任意の部分群H≤GH\leq Gに対し、左乗法による作用

g⋅(aH)=(ga)Hg\cdot(aH)=(ga)H

を持つG/HG/Hは非空で推移的である。

証明. 推移性からG⋅x=XG\cdot x=Xである。§E7.10 定理 3.4によりΦx\Phi_xは全単射であり、

Φx(g⋅(aGx))=(ga)⋅x=g⋅Φx(aGx)\Phi_x(g\cdot(aG_x))=(ga)\cdot x=g\cdot\Phi_x(aG_x)

であるから同変である。逆の主張は§E7.10 命題 4.1により成り立ち、H∈G/HH\in G/HであるからG/HG/Hは非空である。▨

注意 1.4. 空集合への作用には軌道は存在しない。しかし、空集合は非空の剰余類集合G/HG/Hと同変同型ではない。

2 剰余類集合の同変写像

命題 2.1. 群GGと部分群H,K≤GH,K\leq Gに対し、G/HG/HからG/KG/Kへの同変写像は、そのHHにおける値によって一意に定まる。剰余類gK∈G/KgK\in G/Kが同変写像のHHにおける値となるための必要十分条件は

g−1Hg⊆Kg^{-1}Hg\subseteq K

である。この条件を満たすgKgKに対応する写像は

fg ⁣:G/H⟶G/K,aH⟼agKf_g\colon G/H\longrightarrow G/K,\qquad aH\longmapsto agK

であり、全射である。さらに、fgf_gが同変同型であるための必要十分条件はg−1Hg=Kg^{-1}Hg=Kである。

証明. 同変写像ffに対してf(H)=gKf(H)=gKとすると、すべてのa∈Ga\in Gについてf(aH)=af(H)=agKf(aH)=af(H)=agKである。h∈Hh\in HならばhH=HhH=HであるからhgK=gKhgK=gKであり、§E7.6 式 (1.2.1)によりg−1hg∈Kg^{-1}hg\in Kである。したがってg−1Hg⊆Kg^{-1}Hg\subseteq Kを得る。

g−1Hg⊆Kg^{-1}Hg\subseteq Kと仮定する。aH=bHaH=bHならばa−1b∈Ha^{-1}b\in Hであり、g−1a−1bg∈Kg^{-1}a^{-1}bg\in KであるからagK=bgKagK=bgKである。したがってfgf_gは代表元によらず定まる。u,a∈Gu,a\in Gに対してfg(uaH)=uagK=u⋅fg(aH)f_g(uaH)=uagK=u\cdot f_g(aH)であるから、fgf_gは同変である。任意のbK∈G/KbK\in G/Kはfg(bg−1H)f_g(bg^{-1}H)に等しいから、fgf_gは全射である。

g−1Hg=Kg^{-1}Hg=Kならば、agK=bgKagK=bgKからg−1a−1bg∈K=g−1Hgg^{-1}a^{-1}bg\in K=g^{-1}Hgを得る。したがってa−1b∈Ha^{-1}b\in H、すなわちaH=bHaH=bHであり、fgf_gは単射である。逆に、fgf_gが単射ならば、k∈Kk\in Kに対して

fg(gkg−1H)=gkK=gK=fg(H)f_g(gkg^{-1}H)=gkK=gK=f_g(H)

であるからgkg−1∈Hgkg^{-1}\in Hである。ゆえにK⊆g−1HgK\subseteq g^{-1}Hgであり、既に得た包含と合わせてg−1Hg=Kg^{-1}Hg=Kとなる。▨

系 2.2. 群GGと部分群H,K≤GH,K\leq Gに対し、G/HG/HとG/KG/Kが同変同型であることと、H,KH,KがGGの中で共役であることは同値である。

証明.命題 2.1により、同変同型が存在することは、あるg∈Gg\in Gに対してg−1Hg=Kg^{-1}Hg=Kが成り立つことと同値である。▨

3 二重剰余類

定義 3.1. 群GG、部分群H,K≤GH,K\leq G、元g∈Gg\in Gに対し、集合

HgK={hgk∣h∈H, k∈K}HgK=\{hgk\mid h\in H,\ k\in K\}

をggの二重剰余類 (double coset) という。二重剰余類全体の集合をH\G/KH\backslash G/Kと書く。

命題 3.2. 群GGと部分群H,K≤GH,K\leq Gに対し、HHがG/KG/Kに左乗法で作用するとき、gKgKの軌道は

H⋅(gK)={hgK∣h∈H}H\cdot(gK)=\{hgK\mid h\in H\}

であり、その安定化群はH∩gKg−1H\cap gKg^{-1}である。軌道を、その軌道に属する剰余類の和集合へ送る写像は、軌道全体の集合からH\G/KH\backslash G/Kへの全単射である。とくに二重剰余類全体はGGを分割する。

証明.h∈Hh\in Hに対して、hgK=gKhgK=gKであることはg−1hg∈Kg^{-1}hg\in Kと同値であるから、安定化群はH∩gKg−1H\cap gKg^{-1}である。軌道H⋅(gK)H\cdot(gK)に属する剰余類の和集合は

⋃h∈HhgK=HgK\bigcup_{h\in H}hgK=HgK

である。§E7.10 命題 3.2により軌道全体はG/KG/Kを分割し、§E7.6 定理 1.3により剰余類全体はGGを分割する。したがって、各軌道の剰余類の和集合は互いに素であり、GG全体を尽くす。各和集合は非空であるから、異なる軌道は異なる二重剰余類を与える。任意の二重剰余類HgKHgKは軌道H⋅(gK)H\cdot(gK)から得られるので、写像は全単射である。▨

命題 3.3. 群GGの有限部分群H,KH,Kと元g∈Gg\in Gに対し、

∣HgK∣=∣H∣ ∣K∣∣H∩gKg−1∣|HgK|=\frac{|H|\,|K|}{|H\cap gKg^{-1}|}

が成り立つ。

証明.命題 3.2と§E7.10 定理 3.4により、H⋅(gK)H\cdot(gK)に属する剰余類の個数は∣H∣/∣H∩gKg−1∣|H|/|H\cap gKg^{-1}|である。各剰余類aKaKへの写像K→aKK\to aK、k↦akk\mapsto akは、逆写像u↦a−1uu\mapsto a^{-1}uを持つ全単射である。したがって各剰余類の元の個数は∣K∣|K|である。HgKHgKは軌道に属する剰余類の互いに素な和であるから、主張の等式が成り立つ。▨

例 3.4.G=S3G=S_3、H=K={e,(12)}H=K=\{e,(12)\}、g=(123)g=(123)とし、置換の積は右側から作用させる。g(12)g−1=(23)g(12)g^{-1}=(23)であるから、H∩gHg−1={e}H\cap gHg^{-1}=\{e\}である。命題 3.3により∣HgH∣=4|HgH|=4であり、実際に

HgH={(123),(23),(13),(132)}HgH=\{(123),(23),(13),(132)\}

である。残る二つの元はHeH=HHeH=Hに属するので、二重剰余類はH,HgHH,HgHの二つである。G/HG/Hは三点からなり、HHの作用は一点軌道{H}\{H\}と二点軌道{gH,(12)gH}\{gH,(12)gH\}に分かれる。

4 演習

問題 4.1.S3S_3が自身に左乗法で作用するとする。このS3S_3集合の同変同型をすべて求め、二つの同変同型の合成を計算せよ。

解答.

S3S_3の左乗法作用はS3/{e}S_3/\{e\}への作用と同一視される。命題 2.1をH=K={e}H=K=\{e\}に適用すると、同変同型は

fg(a)=ag(g∈S3)f_g(a)=ag\qquad(g\in S_3)

という六つの写像である。fg(e)=gf_g(e)=gであるから、異なるggは異なる写像を与える。任意のa∈S3a\in S_3について

(fg∘fh)(a)=(ah)g=a(hg)=fhg(a)(f_g\circ f_h)(a)=(ah)g=a(hg)=f_{hg}(a)

である。したがってfg∘fh=fhgf_g\circ f_h=f_{hg}であり、逆写像はfg−1f_{g^{-1}}である。▨

参考文献

  1. David S. Dummit and Richard M. Foote, Abstract Algebra, 3rd ed., Wiley, 2004.推移的作用、剰余類集合の同変写像、二重剰余類を参考にした。
  2. Joseph J. Rotman, An Introduction to the Theory of Groups, 4th ed., Graduate Texts in Mathematics 148, Springer, 1995.推移的作用と部分群の共役の対応を参考にした。

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