§E7.43群の拡大と加群の拡大

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アーベル群を核とする群の拡大では、商群の核への作用を固定しても、中央の群の構造は一意に定まらない。この拡大の分類を、整数群環上の加群の拡大の分類と結び付けることが問題となる。例えば、分裂する群の拡大を表す半直積は、対応する加群の拡大では直和に移り、群準同型による切断の存在と加群としての切断の存在が対応する。

増大イデアルは、二つの拡大の分類を結ぶ基本的な加群である。群の第二次コホモロジーは、増大イデアルの加群拡大を分類する第一 Ext と同型となり、両端の同定を保つ拡大類の対応が得られる。本記事では、群の拡大と加群の拡大の対応、および中心拡大と群ホモロジーとの関係を解説する。

1 増大イデアルと次元移動

命題 1.1.GGを群、R=Z[G]R=\Z[G]、AAを左RR-加群とする。GGの増大イデアルIGI_Gを左正則加群RRの部分左加群とし、Z\Zに添加による自明左RR-作用を入れる。左RR-加群の短完全列

0⟶IG⟶R→εZ⟶00\longrightarrow I_G\longrightarrow R\xrightarrow{\ep}\Z\longrightarrow0

の連結準同型は同型

∂A:Ext⁡R1(IG,A)→ ∼ H2(G,A)\partial_A:\operatorname{Ext}_R^1(I_G,A) \xrightarrow{\ \sim\ }H^2(G,A)

を与える。この同型は、GGを固定した左RR-線形写像A→A′A\to A'について自然である。

証明.§E7.35 命題 1.2により、ε\epはZ\Zの自明左作用に関して左RR-線形である。ε(1)=1\ep(1)=1なので全射であり、IG=ker⁡εI_G=\ker\epにより表示された列は短完全である。中央項RRは一元の自由左RR-加群なので射影的である。§E6.39 系 3.1をK=IGK=I_G、P=RP=R、M=ZM=\Z、N=AN=A、n=1n=1に適用すると、係数AAについて自然な同型

Ext⁡R1(IG,A)→ ∂A Ext⁡R2(Z,A)\operatorname{Ext}_R^1(I_G,A) \xrightarrow{\ \partial_A\ }\operatorname{Ext}_R^2(\Z,A)

を得る。§E7.35 定義 4.1により右辺はH2(G,A)H^2(G,A)である。▨

2 拡大類の対応

定理 2.1.GGを群、R=Z[G]R=\Z[G]、AAを左RR-加群とする。与えられた作用を誘導する群の拡大

1⟶A→iE→pG⟶11\longrightarrow A\xrightarrow{i}E\xrightarrow{p}G\longrightarrow1

の同値類の Baer 群と、左RR-加群の拡大

0⟶A⟶X⟶IG⟶00\longrightarrow A\longrightarrow X\longrightarrow I_G\longrightarrow0

の同値類の Baer 群との間に同型が存在する。群の拡大の同値はA,GA,Gの恒等写像を固定し、加群の拡大の同値はA,IGA,I_Gの恒等写像を固定する。

群の拡大の因子集合の類をα∈H2(G,A)\alpha\in H^2(G,A)とすると、対応する加群の拡大の第一 Ext における類は∂A−1(α)\partial_A^{-1}(\alpha)である。群の拡大が群準同型による切断をもつことと、対応する加群の拡大が左RR-線形切断をもつことは同値である。零元はそれぞれ半直積の拡大A⋊GA\rtimes Gと直和の拡大A⊕IGA\oplus I_Gの類である。

証明.§E7.36 定理 2.5と§E7.36 定理 3.2により、群の拡大の同値類をその因子集合の類へ送る写像ccはH2(G,A)H^2(G,A)への群同型である。§E6.40 系 3.3により、Ext⁡R1(IG,A)\operatorname{Ext}_R^1(I_G,A)から左RR-加群の拡大の同値類への群同型yyが存在する。したがって、命題 1.1の同型を用いた合成

y∘∂A−1∘cy\circ\partial_A^{-1}\circ c

が求める群同型であり、指定された拡大類を∂A−1(α)\partial_A^{-1}(\alpha)に対応する類へ送る。

§E7.36 系 3.3により、群の拡大が分裂することはccによる像が零であることと同値である。∂A\partial_Aは群同型なので、この条件は対応する第一 Ext の類が零であることと同値である。§E6.40 系 3.3により、第一 Ext の零類はちょうど左RR-加群として分裂する拡大に対応する。群側の零元は§E7.36 定理 3.2によってA⋊GA\rtimes Gの類であり、加群側の零元は標準包含と標準射影をもつA⊕IGA\oplus I_Gの類である。▨

命題 2.2.GGを群、R=Z[G]R=\Z[G]、A,A′A,A'を左RR-加群、u:A→A′u:A\to A'を左RR-線形写像とする。群の拡大の因子集合ffをufufに送る対応は、与えられた作用を誘導する群の拡大の同値類の間の準同型を定める。定理 2.1の対応は、この係数変更と、加群の拡大のuuによる押出しについて自然である。

証明.uuはRR-線形なので、uδt=δ(ut)u\delta t=\delta(ut)が各一次コチェインttに対して成り立ち、二次コサイクルffに対してufufも二次コサイクルである。正規化されたffに対してufufも正規化される。§E7.36 定理 2.5により、ffをufufに送る操作は拡大の同値類上に定まる。u(f+f′)=uf+uf′u(f+f')=uf+uf'と§E7.36 定理 3.2により、この対応は Baer 和を保つ。

群の拡大からH2H^2への分類写像は、この係数変更をH2(G,u)H^2(G,u)に送る。命題 1.1によって次元移動の同型は係数について自然であり、§E6.40 定理 3.2によって加群拡大の分類同型は係数射と押出しについて自然である。したがって定理 2.1で与えた三つの同型の合成もこれらの係数変更と可換である。▨

3 中心拡大と Schur 乗数

命題 3.1.GGを群、R=Z[G]R=\Z[G]とする。自明右RR-加群Z\Zの右 bar 自由分解B∙rB^{\mathrm r}_\bulletに対して、自明左RR-加群Z\Zを用いた鎖複体

C∙(G)=B∙r⊗RZC_\bullet(G)=B^{\mathrm r}_\bullet\otimes_R\Z

を取る。負次数の項は零とする。各n≥0n\ge0においてCn(G)C_n(G)はGnG^nに添字をもつ記号[g1∣⋯∣gn][g_1|\cdots|g_n]を基底とする自由アーベル群である。n≥1n\ge1の微分は

dn[g1∣⋯∣gn]=[g2∣⋯∣gn]+∑i=1n−1(−1)i[g1∣⋯∣gigi+1∣⋯∣gn]+(−1)n[g1∣⋯∣gn−1]\begin{aligned} d_n[g_1|\cdots|g_n] ={}&[g_2|\cdots|g_n]\\ &+\sum_{i=1}^{n-1}(-1)^i[g_1|\cdots|g_i g_{i+1}|\cdots|g_n]\\ &+(-1)^n[g_1|\cdots|g_{n-1}] \end{aligned}

である。

AAを自明なGG-作用をもつ任意のアーベル群とすると、基底の値を取る同型は、余鎖微分δn(φ)=φdn+1\delta^n(\varphi)=\varphi d_{n+1}をもつHom⁡Z(C∙(G),A)\Hom_\Z(C_\bullet(G),A)を非斉次コチェイン複体に同定する。したがって

Hn(C(G))≅Hn(G,Z),HnHom⁡Z(C(G),A)≅Hn(G,A)H_n(C(G))\cong H_n(G,\Z),\qquad H^n\Hom_\Z(C(G),A)\cong H^n(G,A)

が成り立つ。これらの同定は群準同型について、第二の同定はさらに係数準同型について自然である。

証明.§E7.35 補題 6.1により、BnrB_n^{\mathrm r}はGnG^nに添字をもつ右自由基底をもつ。自明左加群Z\Zとのテンソル積を取ると、この基底に添字をもつZ\Zの直和を得る。右 bar 微分の第一項の係数g1−1g_1^{-1}は、自明作用によってg1−1⋅1=1g_1^{-1}\cdot1=1となるので、表示されたdnd_nの式を得る。§E7.35 命題 6.3により、この複体のホモロジーはHn(G,Z)H_n(G,\Z)である。

任意のZ\Z-線形写像φ:Cn(G)→A\varphi:C_n(G)\to Aは基底上の値によって一意に定まる。したがって、φ\varphiをf(g1,…,gn)=φ[g1∣⋯∣gn]f(g_1,\ldots,g_n)=\varphi[g_1|\cdots|g_n]に送る写像は群同型である。表示されたdn+1d_{n+1}の式にφ\varphiを適用すると、§E7.35 命題 4.2の微分におけるg1f(g2,…,gn+1)g_1 f(g_2,\ldots,g_{n+1})が、自明作用によってf(g2,…,gn+1)f(g_2,\ldots,g_{n+1})となる。よって基底の値による同型は余鎖微分と可換であり、同じ命題によりコホモロジーの同型を得る。

群準同型v:G′→Gv:G'\to Gに対して、基底写像

Cn(v)[g1′∣⋯∣gn′]=[v(g1′)∣⋯∣v(gn′)]C_n(v)[g'_1|\cdots|g'_n]=[v(g'_1)|\cdots|v(g'_n)]

をZ\Z-線形に延長する。v(gi′gi+1′)=v(gi′)v(gi+1′)v(g'_i g'_{i+1})=v(g'_i)v(g'_{i+1})により、この写像は表示された各微分と可換である。ホモロジー上の写像は群ホモロジーの誘導写像であり、Hom 上の前合成は非斉次コチェインのf↦f∘vnf\mapsto f\circ v^nに対応する。係数準同型u:A→A′u:A\to A'による後合成も基底の値による同型と可換である。▨

定理 3.2.GGを群、AAを自明なGG-作用をもつアーベル群とする。Schur 乗数M(G)=H2(G,Z)M(G)=H_2(G,\Z)に対して、短完全列

0⟶Ext⁡Z1(Gab,A)⟶H2(G,A)→ ρG,A Hom⁡Z(M(G),A)⟶00\longrightarrow\operatorname{Ext}_\Z^1(G^{\mathrm{ab}},A) \longrightarrow H^2(G,A) \xrightarrow{\ \rho_{G,A}\ }\Hom_\Z(M(G),A) \longrightarrow0

が存在する。この列は群準同型について反変に自然であり、係数準同型について共変に自然である。列はアーベル群として分裂し、整数 bar 複体のサイクル部分群へのレトラクションの選択から切断を構成することができる。

整数 bar 複体の二次サイクルz=∑jnj[gj∣hj]z=\sum_j n_j[g_j|h_j]と、自明係数の二次コサイクルffに対して、右端の射は

ρG,A([f])([z])=∑jnjf(gj,hj)\rho_{G,A}([f])([z])=\sum_j n_j f(g_j,h_j)

で与えられる。固定された両端A,GA,Gをもつ中心拡大の同値類の Baer 群をH2(G,A)H^2(G,A)と同定すると、この射は中心拡大の因子集合を二次ホモロジー類へ評価する準同型である。

証明.命題 3.1の整数自由鎖複体C(G)C(G)に§E6.43 系 3.1をR=ZR=\Z、M=AM=A、k=2k=2として適用する。得られた自然短完全列は

0⟶Ext⁡Z1(H1(G,Z),A)⟶H2(G,A)⟶Hom⁡Z(H2(G,Z),A)⟶00\longrightarrow\operatorname{Ext}_\Z^1(H_1(G,\Z),A) \longrightarrow H^2(G,A) \longrightarrow\Hom_\Z(H_2(G,\Z),A) \longrightarrow0

である。§E7.42 命題 1.3の自然同型H1(G,Z)≅GabH_1(G,\Z)\cong G^{\mathrm{ab}}と、Schur 乗数の定義を用いると、主張の列を得る。群準同型は命題 3.1の鎖写像を与え、係数準同型は Hom の後合成を与える。普遍係数列の両変数の自然性により、主張の列も両者について自然である。

普遍係数列の右端射は、コサイクルをサイクルに制限してホモロジーへ因子化する写像である。ffに対応するφf:C2(G)→A\varphi_f:C_2(G)\to Aに対し、φfd3=0\varphi_f d_3=0なので境界上で零となり、

[z]⟼φf(z)=∑jnjf(gj,hj)[z]\longmapsto\varphi_f(z)=\sum_j n_j f(g_j,h_j)

が定まる。ffをf+δtf+\delta tに替えても、サイクルzz上では(δt)(z)=t(d2z)=0(\delta t)(z)=t(d_2z)=0であるから値は変わらない。したがって、この公式はコホモロジー類とホモロジー類の双方の代表によらず、普遍係数列の右端射を与える。

命題 3.1の自由鎖複体C(G)C(G)に§E6.42 補題 1.2をR=ZR=\Z、n=2n=2として適用し、切断の選択による同型Z2(C(G))⊕B1(C(G))→C2(G)Z_2(C(G))\oplus B_1(C(G))\to C_2(G)を一つ取る。この同型の逆と第一射影の合成をr2:C2(G)→Z2(C(G))r_2:C_2(G)\to Z_2(C(G))とすると、r2r_2は包含Z2(C(G))↪C2(G)Z_2(C(G))\hookrightarrow C_2(G)のレトラクションである。商写像をq2:Z2(C(G))→H2(C(G))=M(G)q_2:Z_2(C(G))\to H_2(C(G))=M(G)とし、

s:Hom⁡Z(M(G),A)⟶H2(G,A),s(u)=[uq2r2]s:\Hom_\Z(M(G),A)\longrightarrow H^2(G,A), \qquad s(u)=[u q_2 r_2]

と定める。d3d_3の像はZ2(C(G))Z_2(C(G))に含まれ、r2r_2はその部分群上で恒等写像であるから、uq2r2d3=uq2d3=0u q_2 r_2 d_3=u q_2 d_3=0となる。よってs(u)s(u)はコホモロジー類を定める。ssは加法を保ち、任意の二次サイクルzzに対して

ρG,A(s(u))([z])=u(q2r2z)=u([z])\rho_{G,A}(s(u))([z])=u(q_2 r_2 z)=u([z])

である。したがってρG,As\rho_{G,A}sは恒等写像であり、列は分裂する。この切断の構成にはr2r_2の選択を用いている。

別のレトラクションr2′r'_2から得られる切断をs′s'とすると、任意のu:M(G)→Au:M(G)\to Aに対して

s′(u)−s(u)=[uq2(r2′−r2)]s'(u)-s(u)=[u q_2(r'_2-r_2)]

である。r2′−r2r'_2-r_2はZ2(C(G))Z_2(C(G))上で零なので、この差のρG,A\rho_{G,A}による像は零である。短完全性により、差はExt⁡Z1(Gab,A)\operatorname{Ext}_\Z^1(G^{\mathrm{ab}},A)の像に属する。

群の拡大が自明な作用を誘導することは、すべてのe∈Ee\in E、a∈Aa\in Aに対してei(a)e−1=i(a)ei(a)e^{-1}=i(a)が成り立つこと、すなわち核の像がEEの中心に含まれることと同値である。§E7.36 定理 2.5と§E7.36 定理 3.2により、この中心拡大の Baer 群はH2(G,A)H^2(G,A)である。分類は拡大を因子集合の類へ送るので、表示された評価公式が中心拡大の解釈を与える。▨

系 3.3.GGを完全群、AAを自明なGG-作用をもつ任意のアーベル群とする。このとき評価射

ρG,A:H2(G,A)→ ∼ Hom⁡Z(M(G),A)\rho_{G,A}:H^2(G,A)\xrightarrow{\ \sim\ }\Hom_\Z(M(G),A)

は同型である。したがって、両端の恒等写像を固定したAAによるGGの中心拡大の同値類は、準同型M(G)→AM(G)\to Aによって分類される。

証明. 完全群の定義により[G,G]=G[G,G]=Gであり、アーベル化Gab=G/[G,G]G^{\mathrm{ab}}=G/[G,G]は零群である。零加群は射影的なので、§E6.39 命題 1.5によりExt⁡Z1(Gab,A)=0\operatorname{Ext}_\Z^1(G^{\mathrm{ab}},A)=0となる。定理 3.2の短完全列において左項が零なので、ρG,A\rho_{G,A}は同型である。同じ定理の中心拡大の解釈により分類を得る。▨

系 3.4.GGを任意の群、AAを自明なGG-作用をもつ可除アーベル群とする。このとき評価射

ρG,A:H2(G,A)→ ∼ Hom⁡Z(M(G),A)\rho_{G,A}:H^2(G,A)\xrightarrow{\ \sim\ }\Hom_\Z(M(G),A)

は同型である。したがって、両端の恒等写像を固定したAAによるGGの中心拡大の同値類は、準同型M(G)→AM(G)\to Aによって分類される。

証明.§E6.17 命題 3.3により、AAは入射Z\Z-加群である。§E6.39 定理 4.1 条件 (b)によりExt⁡Z1(Gab,A)=0\operatorname{Ext}_\Z^1(G^{\mathrm{ab}},A)=0となる。したがって定理 3.2の短完全列の左項は零であり、評価射は同型である。同じ定理の中心拡大の解釈により分類を得る。▨

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