§E7.42群ホモロジーの低次と Hopf の公式

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整数係数の第一次群ホモロジーは群のアーベル化に同型であり、交換子を自明としたときに残る群を記述する。第二次の群ホモロジーも、生成元と関係式による群の表示から記述することができるが、関係式が存在するだけで非零になるわけではない。例えば、位数二の巡回群では第一次は位数二の群となる一方、第二次は零となる。自由表示の関係のうち、どの部分が第二次のホモロジーに現れるかが問題となる。

Hopf の公式は、この関係を記述する基本的な公式である。自由表示の核に含まれる関係を自由群の交換子部分群と比較し、第二次の整数係数ホモロジーをその関係から得られる商群として表す。本記事では、低次の群ホモロジーとアーベル化および自由表示との関係を解説する。

1 増大イデアルと第一次ホモロジー

定義 1.1. 群GGに対して、添加写像ε ⁣:Z[G]→Z\ep\colon\Z[G]\to\Zの核をIGI_Gと書き、GGの増大イデアル (augmentation ideal) という。

補題 1.2. 任意の群GGに対して、写像g↦(g−1)+IG2g\mapsto(g-1)+I_G^2は同型

Gab⟶IG/IG2G^{\mathrm{ab}}\longrightarrow I_G/I_G^2

を誘導する。この同型は群準同型について自然である。

証明. 群環の等式

gh−1=(g−1)+(h−1)+(g−1)(h−1)gh-1=(g-1)+(h-1)+(g-1)(h-1)

により、g↦(g−1)+IG2g\mapsto(g-1)+I_G^2は加法群IG/IG2I_G/I_G^2への準同型である。§E7.22 定理 1.3により、GabG^{\mathrm{ab}}からの準同型α\alphaが定まる。

a=∑gagg∈IGa=\sum_g a_g g\in I_Gならば∑gag=0\sum_g a_g=0であり、a=∑g≠1ag(g−1)a=\sum_{g\ne1}a_g(g-1)である。この表示の係数は群環におけるg≠1g\ne1の係数に等しいので一意であり、族(g−1)g≠1(g-1)_{g\ne1}はIGI_Gのアーベル群としての基底である。gˉ\bar gをGabG^{\mathrm{ab}}におけるggの像とし、このアーベル群を加法で書く。写像g−1↦gˉg-1\mapsto\bar gはアーベル群の準同型β ⁣:IG→Gab\beta\colon I_G\to G^{\mathrm{ab}}を定める。IG2I_G^2は積(g−1)(h−1)(g-1)(h-1)で加法的に生成され、

β((g−1)(h−1))=gh‾−gˉ−hˉ=0\beta((g-1)(h-1))=\overline{gh}-\bar g-\bar h=0

であるから、β\betaはIG/IG2I_G/I_G^2からの準同型を誘導する。α\alphaとこの準同型の両合成は生成元上で恒等写像であり、両者は互いに逆である。群準同型u ⁣:G→Ku\colon G\to Kが誘導する群環の写像はg−1g-1をu(g)−1u(g)-1へ送るので、得られた同型はuuと可換である。▨

命題 1.3. 任意の群GGに対して、自然な同型

H1(G,Z)≅GabH_1(G,\Z)\cong G^{\mathrm{ab}}

が存在する。自明な整数係数の bar 複体における一次元の鎖[g][g]のホモロジー類は、この同型によってggのアーベル化における像へ移る。

証明.A=Z[G]A=\Z[G]とおく。自明右AA-加群Z\Zを固定し、左AA-加群の短完全列

0⟶IG⟶A→εZ⟶00\longrightarrow I_G\longrightarrow A\xrightarrow{\ep}\Z\longrightarrow0

に§E6.41 命題 4.2 (2)を適用する。AAは自由左AA-加群なので、§E7.35 定義 6.2により低次の列は

0⟶H1(G,Z)→δZ⊗AIG⟶Z⊗AA⟶Z⊗AZ⟶00\longrightarrow H_1(G,\Z)\xrightarrow{\delta} \Z\otimes_A I_G\longrightarrow\Z\otimes_A A \longrightarrow\Z\otimes_A\Z\longrightarrow0

となる。Z⊗AA→Z\Z\otimes_A A\to\Zの同型をn⊗a↦nε(a)n\otimes a\mapsto n\ep(a)、Z⊗AZ→Z\Z\otimes_A\Z\to\Zの同型をn⊗m↦nmn\otimes m\mapsto nmとすると、両項を結ぶ写像はZ\Zの恒等写像である。従ってδ\deltaは同型である。

テンソル積の平衡関係によって

Z⊗AIG⟶IG/IG2,n⊗a⟼na+IG2\Z\otimes_A I_G\longrightarrow I_G/I_G^2, \qquad n\otimes a\longmapsto na+I_G^2

が定まる。実際、b∈Ab\in Aに対して(b−ε(b))a∈IG2(b-\ep(b))a\in I_G^2である。逆写像はa+IG2↦1⊗aa+I_G^2\mapsto1\otimes aであり、b∈IGb\in I_Gに対して1⊗ba=ε(b)⊗a=01\otimes ba=\ep(b)\otimes a=0なので代表によらない。よって補題 1.2と合わせると所要の群同型を得る。

右 bar 分解§E7.35 補題 6.1では、[g]⊗1[g]\otimes1を係数AAの複体へ持ち上げた鎖の境界は[]⊗(g−1−1)[]\otimes(g^{-1}-1)である。従って連結写像δ\deltaは[g][g]の類を1⊗(g−1−1)1\otimes(g^{-1}-1)へ送る。上の同型IG/IG2→GabI_G/I_G^2\to G^{\mathrm{ab}}の負をδ\deltaに合成すると、[g][g]の類は−g−1‾=gˉ-\overline{g^{-1}}=\bar gへ移る。この合成を主張の同型とする。群準同型u ⁣:G→Ku\colon G\to Kは、自明係数の bar 複体の鎖を[g1∣⋯∣gn]↦[u(g1)∣⋯∣u(gn)][g_1|\cdots|g_n]\mapsto[u(g_1)|\cdots|u(g_n)]によって送る。この写像は各面写像と可換であり、一次元では[g]↦[u(g)][g]\mapsto[u(g)]となるため、主張の同型は群準同型について自然である。▨

2 自由表示と関係加群

定義 2.1.XXを集合とし、自由群F=F(X)F=F(X)から群GGへの全射π ⁣:F→G\pi\colon F\to Gと、その核RRを取る。Rab=R/[R,R]R^{\mathrm{ab}}=R/[R,R]に、g∈Gg\in Gの持上げf∈Ff\in Fを用いて

g⋅rˉ=frf−1‾(r∈R)g\cdot\bar r=\overline{frf^{-1}}\qquad(r\in R)

と作用を定める。この作用をもつ左Z[G]\Z[G]-加群RabR^{\mathrm{ab}}を、この自由表示の関係加群 (relation module) という。

証明.RRはFFの正規部分群なので、ffによる共役はRRの自己同型であり、[R,R][R,R]を保つ。また、s∈Rs\in Rによる共役はRabR^{\mathrm{ab}}上では恒等写像となる。π(f′)=π(f)\pi(f')=\pi(f)ならばf′=sff'=sfを満たすs∈Rs\in Rが存在するため、f′f'とffは同じ作用を誘導する。共役の合成は積による共役であり、単位元の共役は恒等写像なので、表示した式はGGの作用を定める。各作用はアーベル群の自己同型であるため、整数線形に延長すると左Z[G]\Z[G]-加群となる。▨

定理 2.2.XXを任意の集合、F=F(X)F=F(X)、π ⁣:F→G\pi\colon F\to Gを全射、R=ker⁡πR=\ker\pi、A=Z[G]A=\Z[G]とする。自由左AA-加群C=⨁x∈XAexC=\bigoplus_{x\in X}Ae_xと写像

∂ ⁣:C⟶IG,∂(ex)=π(x)−1\partial\colon C\longrightarrow I_G, \qquad \partial(e_x)=\pi(x)-1

に対して、左AA-加群の短完全列

0⟶Rab→ρC→∂IG⟶00\longrightarrow R^{\mathrm{ab}}\xrightarrow{\rho}C \xrightarrow{\partial}I_G\longrightarrow0

が存在する。ρ(rˉ)\rho(\bar r)は、頂点集合GG、正辺(g,x) ⁣:g→gπ(x)(g,x)\colon g\to g\pi(x)をもつグラフにおいて、単位頂点からrrの語を読む閉歩道の符号付き辺和である。

証明.π∗ ⁣:Z[F]→A\pi_*\colon\Z[F]\to Aをπ\piが誘導する環準同型とする。§E7.41 定理 1.1により、(x−1)x∈X(x-1)_{x\in X}は左Z[F]\Z[F]-加群IFI_Fの基底である。従って、写像

q ⁣:IF⟶C,q(∑xbx(x−1))=∑xπ∗(bx)exq\colon I_F\longrightarrow C,\qquad q\left(\sum_x b_x(x-1)\right)=\sum_x\pi_*(b_x)e_x

が定まり、q(bv)=π∗(b)q(v)q(bv)=\pi_*(b)q(v)を満たす。D(f)=q(f−1)D(f)=q(f-1)(f∈Ff\in F)とおくと、群環の積の展開により

D(uv)=D(u)+π(u)D(v),D(u−1)=−π(u)−1D(u),D(x)=exD(uv)=D(u)+\pi(u)D(v),\qquad D(u^{-1})=-\pi(u)^{-1}D(u),\qquad D(x)=e_x

である。また、基底x−1x-1上で∂q(x−1)=π(x)−1\partial q(x-1)=\pi(x)-1であるから、∂q(v)=π∗(v)\partial q(v)=\pi_*(v)であり、∂D(f)=π(f)−1\partial D(f)=\pi(f)-1となる。π\piは全射で、IGI_Gはg−1g-1で加法的に生成されるため、∂\partialは全射である。

r,s∈Rr,s\in Rに対してD(rs)=D(r)+D(s)D(rs)=D(r)+D(s)である。従ってDDのRRへの制限はRabR^{\mathrm{ab}}を経由し、ker⁡∂\ker\partialに値を取る準同型ρ\rhoを定める。さらに、f∈Ff\in Fとr∈Rr\in Rに対して

D(frf−1)=D(f)+π(f)D(r)+π(f)D(f−1)=π(f)D(r)D(frf^{-1})=D(f)+\pi(f)D(r)+\pi(f)D(f^{-1}) =\pi(f)D(r)

であるから、ρ\rhoは左AA-線形である。

商グラフΓ=R\CX\Gamma=R\backslash C_Xの頂点RfRfをπ(f)\pi(f)と同定すると、その正辺は主張にある(g,x)(g,x)となる。各正辺(g,x)(g,x)をgexge_xと同定し、逆辺にはその負を対応させる。DDの積と逆元に関する式から、D(f)D(f)は単位頂点からffを読む歩道の符号付き辺和に等しい。§E7.27 補題 2.5により、基点11の閉歩道群はラベル語によってRRと同型である。

§E7.27 補題 2.4と§E7.27 補題 1.3により、Γ\Gammaの全域木TTを取る。各頂点vvに対して、TT内の11からvvへの簡約歩道をpvp_vとする。TTに属さない正辺の集合をEEとし、e∈Ee\in Eに対して閉歩道ps(e)ept(e)−1p_{s(e)}e p_{t(e)}^{-1}の辺和をzez_eとする。§E7.27 補題 1.5により、この閉歩道の類をeeに対応させる写像は、EE上の自由群と閉歩道群の同型を与える。§E7.9 定理 1.6と§E7.22 定理 1.3により、この閉歩道群のアーベル化は、それらの類を基底とする自由アーベル群である。実際、各基底候補のアーベル群への像を指定すると、自由群の普遍性によって準同型が一意に定まり、アーベル化を一意に経由する。

任意のz∈ker⁡∂z\in\ker\partialについて、木外の正辺eeの係数をaea_eとし、

z′=z−∑e∈Eaezez'=z-\sum_{e\in E}a_ez_e

とおく。zzは有限台をもつので、この和は有限和であり、z′z'はTTの辺だけに台をもつサイクルである。z′≠0z'\ne0と仮定すると、係数が非零である辺からなる有限森には、辺をもつ連結成分が存在する。その成分の最長の単純道の端点には辺が一本だけ接する。別の辺が接するならば、道を延長することができるか、木の中に閉路が生じるためである。この端点における∂z′\partial z'の係数は、唯一の辺の非零係数かその負である。これは∂z′=0\partial z'=0に反するので、z′=0z'=0である。従って族(ze)e∈E(z_e)_{e\in E}はker⁡∂\ker\partialを生成する。zez_eの木外の辺の係数は、eeで11、他の木外の辺で00であるから、この族は一次独立でもある。ρ\rhoはRabR^{\mathrm{ab}}の上記の基底を(ze)e∈E(z_e)_{e\in E}へ送るので、Rab→ker⁡∂R^{\mathrm{ab}}\to\ker\partialの同型である。以上から、主張の列は完全である。X=∅X=\varnothingの場合にはF=R=G={1}F=R=G=\{1\}であり、Γ\Gammaは一頂点で辺をもたない。この場合もRab=C=IG=0R^{\mathrm{ab}}=C=I_G=0となり、表示した列は完全である。▨

3 第二次ホモロジーと Hopf の公式

定理 3.1.XXを任意の集合、F=F(X)F=F(X)、π ⁣:F→G\pi\colon F\to Gを全射、R=ker⁡πR=\ker\piとする。[F,R][F,R]を、frf−1r−1frf^{-1}r^{-1}(f∈F,r∈Rf\in F,r\in R)で生成される部分群とする。このとき、アーベル群の同型

H2(G,Z)≅R∩[F,F][F,R]H_2(G,\Z)\cong\frac{R\cap[F,F]}{[F,R]}

が存在する。この同型を Hopf の公式という。同じ群GGの別の自由表示π′ ⁣:F′→G\pi'\colon F'\to Gと核R′R'に対し、π′∘v=π\pi'\circ v=\piを満たす準同型v ⁣:F→F′v\colon F\to F'は右辺の商群の間に写像を誘導する。 Hopf の公式の同型は、この写像とH2(G,Z)H_2(G,\Z)の恒等写像について可換である。

証明.A=Z[G]A=\Z[G]とおき、自明右AA-加群Z\Zを係数として増大列0→IG→A→Z→00\to I_G\to A\to\Z\to0に§E6.41 命題 4.2 (2)を適用すると、

H2(G,Z)≅Tor⁡1A(Z,IG)H_2(G,\Z)\cong\operatorname{Tor}_1^A(\Z,I_G)

を得る。定理 2.2の中央の加群C=⨁xAexC=\bigoplus_xAe_xも自由なので、同じ次元移動の低次列により

0⟶H2(G,Z)⟶Z⊗ARab→1⊗ρZ⊗AC⟶Z⊗AIG⟶00\longrightarrow H_2(G,\Z)\longrightarrow \Z\otimes_A R^{\mathrm{ab}} \xrightarrow{1\otimes\rho}\Z\otimes_A C \longrightarrow\Z\otimes_A I_G\longrightarrow0

は完全である。

任意の左AA-加群MMに対して、1⊗m↦m+JG(M)1\otimes m\mapsto m+J_G(M)は同型Z⊗AM→MG\Z\otimes_A M\to M_Gを与える。逆写像はm+JG(M)↦1⊗mm+J_G(M)\mapsto1\otimes mであり、関係1⊗(gm−m)=01\otimes(gm-m)=0により定まる。特にZ⊗AC≅⨁xZex\Z\otimes_A C\cong\bigoplus_x\Z e_xであり、1⊗gex1\otimes ge_xはexe_xに対応する。自由群とアーベル化の普遍性により、⨁xZex→Fab\bigoplus_x\Z e_x\to F^{\mathrm{ab}}、ex↦xˉe_x\mapsto\bar xは同型である。従って、1⊗ρ1\otimes\rhoは

(Rab)G⟶Fab,rˉ⟼r[F,F](R^{\mathrm{ab}})_G\longrightarrow F^{\mathrm{ab}}, \qquad \bar r\longmapsto r[F,F]

に対応する。実際、ρ(rˉ)\rho(\bar r)の各辺gexge_xはexe_xに移り、逆辺は−ex-e_xに移るため、その像はrrの語の指数和である。

k∈Fk\in Fによる生成元frf−1r−1frf^{-1}r^{-1}の共役は

(kfk−1)(krk−1)(kfk−1)−1(krk−1)−1(kfk^{-1})(krk^{-1})(kfk^{-1})^{-1}(krk^{-1})^{-1}

であり、krk−1∈Rkrk^{-1}\in Rなので[F,R][F,R]はFFの正規部分群である。各生成元がRRと[F,F][F,F]の両方に属し、f∈Rf\in Rとした生成元も含むため、

[R,R]⊆[F,R]⊆R∩[F,F][R,R]\subseteq[F,R]\subseteq R\cap[F,F]

となる。RabR^{\mathrm{ab}}の余不変元を定める部分群はfrf−1‾−rˉ\overline{frf^{-1}}-\bar rで生成される。そのRRへの逆像は、[R,R]⊆[F,R][R,R]\subseteq[F,R]により[F,R][F,R]に等しい。従って(Rab)G≅R/[F,R](R^{\mathrm{ab}})_G\cong R/[F,R]であり、上の写像の核は

ker⁡(R/[F,R]⟶F/[F,F])=R∩[F,F][F,R]\ker\bigl(R/[F,R]\longrightarrow F/[F,F]\bigr) =\frac{R\cap[F,F]}{[F,R]}

である。完全列の左端と合わせて同型を得る。

π′ ⁣:F′=F(X′)→G\pi'\colon F'=F(X')\to Gとv ⁣:F→F′v\colon F\to F'を主張のように取り、二つ目の表示について構成した辺加群と写像をC′C'、D′D'、∂′\partial'とする。自由左AA-加群CCの基底の像をex↦D′(v(x))e_x\mapsto D'(v(x))と指定して、左AA-線形写像L ⁣:C→C′L\colon C\to C'を定める。DDとD′D'の積と逆元に関する式から、語の長さについての帰納法により

LD(f)=D′(v(f))(f∈F)LD(f)=D'(v(f))\qquad(f\in F)

となる。また、∂′L(ex)=π′v(x)−1=∂(ex)\partial'L(e_x)=\pi'v(x)-1=\partial(e_x)なので、∂′L=∂\partial'L=\partialである。従って、vvが誘導するRab→(R′)abR^{\mathrm{ab}}\to(R')^{\mathrm{ab}}、LL、IGI_Gの恒等写像は、二つの関係加群完全列の射を定める。§E6.41 命題 4.2 (2)の自然性により、得られる核の同型はH2(G,Z)H_2(G,\Z)の恒等写像と可換である。その核を上記の商群に同定したときの写像はr[F,R]↦v(r)[F′,R′]r[F,R]\mapsto v(r)[F',R']であるため、主張の可換性が従う。▨

例 3.2. 任意の巡回群GGに対してH2(G,Z)=0H_2(G,\Z)=0である。実際、一つの生成元をもつ自由群F({x})F(\{x\})からGGへの全射を取ることができる。§E7.9 例 1.7によりF({x})F(\{x\})はアーベル群なので、[F,F]=1[F,F]=1である。定理 3.1の分子は自明群となり、結論が従う。

4 Schur 乗数

定義 4.1. 群GGのSchur 乗数 (Schur multiplier) を、アーベル群M(G)=H2(G,Z)M(G)=H_2(G,\Z)と定める。

定理 4.2. 有限群GGの Schur 乗数M(G)M(G)は有限である。

証明.§E7.35 命題 6.3により、H2(G,Z)H_2(G,\Z)は右 bar 分解に自明左係数Z\Zをテンソルした複体C∙C_\bulletの第二ホモロジーである。CnC_nは記号[g1∣⋯∣gn][g_1|\cdots|g_n]((g1,…,gn)∈Gn(g_1,\ldots,g_n)\in G^n)を基底とする自由アーベル群であり、GGは有限なので有限階数である。§E6.30 定理 1.1をZ\ZとC2C_2の部分加群ker⁡d2\ker d_2に適用すると、ker⁡d2\ker d_2は有限階数の自由アーベル群である。従って、その商H2(C∙)H_2(C_\bullet)は有限生成である。

同じ基底をもつ有理ベクトル空間CnQC_n^{\Q}と、同じ整数係数の行列による微分を考える。自明係数なので、§E7.35 補題 6.1の微分は次数二と三で

d2[g∣k]=[k]−[gk]+[g],d3[h∣g∣k]=[g∣k]−[hg∣k]+[h∣gk]−[h∣g]\begin{aligned} d_2[g|k]&=[k]-[gk]+[g],\\ d_3[h|g|k]&=[g|k]-[hg|k]+[h|gk]-[h|g] \end{aligned}

となる。m=∣G∣m=|G|とおき、有理線形写像

s1[g]=1m∑h∈G[h∣g],s2[g∣k]=1m∑h∈G[h∣g∣k]s_1[g]=\frac1m\sum_{h\in G}[h|g], \qquad s_2[g|k]=\frac1m\sum_{h\in G}[h|g|k]

を定める。微分の式から

(d3s2+s1d2)[g∣k]=[g∣k]+1m∑h∈G(−[hg∣k]+[h∣k])=[g∣k]\begin{aligned} (d_3s_2+s_1d_2)[g|k] &=[g|k]+\frac1m\sum_{h\in G}\bigl(-[hg|k]+[h|k]\bigr)\\ &=[g|k] \end{aligned}

である。最後の等式ではh↦hgh\mapsto hgがGGの全単射であることを用いた。

任意の整数係数のサイクルz∈ker⁡d2z\in\ker d_2は、有理係数の複体でz=d3s2zz=d_3s_2zを満たす。s2zs_2zは有理数係数の有限和であるため、分母を払うと、ある正整数aaと整数係数の鎖w∈C3w\in C_3に対してaz=d3waz=d_3wとなる。従ってH2(C∙)H_2(C_\bullet)の各元は有限位数である。有限生成系をu1,…,utu_1,\ldots,u_tとし、それぞれの位数をa1,…,ata_1,\ldots,a_tとすると、有限アーベル群⨁i=1tZ/aiZ\bigoplus_{i=1}^t\Z/a_i\ZからH2(C∙)H_2(C_\bullet)への全射が存在する。よってM(G)=H2(C∙)M(G)=H_2(C_\bullet)は有限である。▨

参考文献

  1. Kenneth S. Brown, Lectures on the Cohomology of Groups, in: Cohomology of Groups and Algebraic K-theory, Advanced Lectures in Mathematics 12, International Press, 2010, pp. 131–166.第一次群ホモロジーとアーベル化の対応、自由表示による Hopf の公式、および第二次群ホモロジーの Schur 乗数としての位置づけを確認した。

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