§E7.28有限性条件

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無限群であっても、生成元と関係式が有限個で済むことがある。例えば、有限個の元を自由基底にもつ自由群は、基底の元を生成元とし、関係式を加えない表示をもつ。群の元の個数が有限であることと、群を記述するためのデータが有限であることは区別する必要がある。

有限個の元で生成される群を有限生成群といい、有限個の生成元と関係式による表示をもつ群を有限表示群という。有限表示性は有限生成性を含むが、群の構成に伴って何が有限に保たれるかを調べる際には、生成元と関係式を分けて扱う必要がある。有限性条件は、商群や部分群を通して群の構造を調べるための基本的な条件である。

本記事では、群の有限生成性と有限表示性の基本的な性質について解説する。

1 有限生成性と有限表示性

定義 1.1. 群GGが有限生成 (finitely generated) であるとは、有限集合S⊆GS\subseteq Gが存在してG=⟨S⟩G=\langle S\rangleとなることをいう。群GGが有限表示 (finitely presented) であるとは、有限集合SSと有限集合R⊆F(S)R\subseteq F(S)が存在してG≅⟨S∣R⟩G\cong\langle S\mid R\rangleとなることをいう。空集合による生成と表示を認める。

注意 1.2. 有限表示群は有限生成群である。実際、表示の有限集合SSの標準生成元の像が群を生成する。自明群は⟨∅∣∅⟩\langle\varnothing\mid\varnothing\rangleと同型であり、有限表示群である。

命題 1.3. 次が成り立つ。

  1. 有限生成群GGと正規部分群K⊴GK\trianglelefteq Gに対し、G/KG/Kは有限生成である。
  2. 短完全列1→N→ιE→πQ→11\to N\xrightarrow{\iota}E\xrightarrow{\pi}Q\to1において、NNとQQが有限生成ならばEEも有限生成である。

証明.GGの有限生成集合SSに対し、商への射影の像がG/KG/Kを生成する。したがって(1)が成り立つ。

NNの有限生成集合XXとQQの有限生成集合YYを取り、各y∈Yy\in Yの持上げy~∈E\widetilde y\in Eを取る。L=⟨ι(X),y~ (y∈Y)⟩L=\langle\iota(X),\widetilde y\ (y\in Y)\rangleとおくと、ι(N)⊆L\iota(N)\subseteq Lかつπ(L)=Q\pi(L)=Qである。任意のe∈Ee\in Eに対し、π(l)=π(e)\pi(l)=\pi(e)を満たすl∈Ll\in Lが存在する。el−1∈ker⁡π=ι(N)⊆Lel^{-1}\in\ker\pi=\iota(N)\subseteq Lであるからe∈Le\in Lである。よってE=LE=Lであり、(2)が成り立つ。▨

2 商群と拡大の有限表示

命題 2.1.GGを有限表示群、K⊴GK\trianglelefteq Gを正規部分群とする。ある有限集合A⊆KA\subseteq Kに対してKKがAAのGGにおける正規閉包であるならば、G/KG/Kは有限表示群である。

証明. 有限表示G≅F(S)/⟨ ⁣⟨R⟩ ⁣⟩G\cong F(S)/\langle\!\langle R\rangle\!\rangleを取り、対応する全射をq ⁣:F(S)→Gq\colon F(S)\to Gとする。各a∈Aa\in Aに対してq(wa)=aq(w_a)=aを満たす語wa∈F(S)w_a\in F(S)を取る。M=⟨ ⁣⟨R∪{wa∣a∈A}⟩ ⁣⟩M=\langle\!\langle R\cup\{w_a\mid a\in A\}\rangle\!\rangleとおく。MMはker⁡q\ker qを含み、q(M)q(M)はGGの正規部分群である。q(M)q(M)はAAを含むためK⊆q(M)K\subseteq q(M)である。一方、q−1(K)q^{-1}(K)はRRとすべてのwaw_aを含む正規部分群なので、M⊆q−1(K)M\subseteq q^{-1}(K)である。q(M)=Kq(M)=Kかつker⁡q⊆M\ker q\subseteq MによりM=q−1(K)M=q^{-1}(K)となる。合成F(S)→qG→G/KF(S)\xrightarrow{q}G\to G/Kの核はMMであるから、§E7.9 命題 3.3により

G/K≅⟨S∣R∪{wa∣a∈A}⟩ G/K\cong\langle S\mid R\cup\{w_a\mid a\in A\}\rangle

である。生成元と関係式の集合はともに有限である。▨

補題 2.2. 短完全列1→N→ιE→πQ→11\to N\xrightarrow{\iota}E\xrightarrow{\pi}Q\to1と、群準同型a ⁣:N→Pa\colon N\to P、p ⁣:P→Ep\colon P\to Eを取る。p∘a=ιp\circ a=\iota、a(N)⊴Pa(N)\trianglelefteq Pと仮定する。π∘p\pi\circ pから誘導される準同型P/a(N)→QP/a(N)\to Qが同型ならば、ppは同型である。

証明.p∘a=ιp\circ a=\iotaは単射なのでaaは単射である。任意のu∈ker⁡pu\in\ker pに対し、πp(u)=1\pi p(u)=1である。P/a(N)→QP/a(N)\to Qの単射性によりu=a(n)u=a(n)となるn∈Nn\in Nが存在する。1=p(u)=ι(n)1=p(u)=\iota(n)とι\iotaの単射性によりn=1n=1であり、u=1u=1である。

任意のe∈Ee\in Eに対し、P/a(N)→QP/a(N)\to Qの全射性によりπp(v)=π(e)\pi p(v)=\pi(e)を満たすv∈Pv\in Pが存在する。ep(v)−1∈ker⁡π=ι(N)ep(v)^{-1}\in\ker\pi=\iota(N)であるから、あるn∈Nn\in Nに対してep(v)−1=ι(n)=pa(n)ep(v)^{-1}=\iota(n)=pa(n)となる。したがってe=p(a(n)v)e=p(a(n)v)であり、ppは全射である。よってppは同型である。▨

定理 2.3. 短完全列1→N→ιE→πQ→11\to N\xrightarrow{\iota}E\xrightarrow{\pi}Q\to1において、NNとQQが有限表示群ならばEEも有限表示群である。

証明. 互いに素な有限集合X,YX,Yを生成元とする有限表示

N≅⟨X∣R⟩,Q≅⟨Y∣S⟩ N\cong\langle X\mid R\rangle,\qquad Q\cong\langle Y\mid S\rangle

を取る。x∈Xx\in XのNNにおける像をnxn_x、y∈Yy\in YのQQにおける像をqyq_yと書き、π(y~)=qy\pi(\widetilde y)=q_yを満たすy~∈E\widetilde y\in Eを取る。語s∈Ss\in Sを持上げy~\widetilde yで評価した元はker⁡π=ι(N)\ker\pi=\iota(N)に属する。したがって、s(y~)=ι(ws(nx))s(\widetilde y)=\iota(w_s(n_x))を満たす語ws∈F(X)w_s\in F(X)が存在する。また、x∈Xx\in X、y∈Yy\in Y、ε∈{1,−1}\varepsilon\in\{1,-1\}に対し、ι(N)⊴E\iota(N)\trianglelefteq Eであるから、

y~ει(nx)y~−ε=ι(vy,ε,x(nx)) \widetilde y^{\varepsilon}\iota(n_x)\widetilde y^{-\varepsilon} =\iota(v_{y,\varepsilon,x}(n_x))

を満たす語vy,ε,x∈F(X)v_{y,\varepsilon,x}\in F(X)が存在する。有限表示

P=⟨X⊔Y | R, sws−1 (s∈S), yεxy−εvy,ε,x−1 (y∈Y, x∈X, ε∈{1,−1})⟩ P=\left\langle X\sqcup Y\ \middle|\, R,\ s w_s^{-1}\ (s\in S),\, y^{\varepsilon}x y^{-\varepsilon}v_{y,\varepsilon,x}^{-1} \ (y\in Y,\ x\in X,\ \varepsilon\in\{1,-1\}) \right\rangle

を定める。§E7.9 定理 3.2により、x↦ι(nx)x\mapsto\iota(n_x)、y↦y~y\mapsto\widetilde yは準同型p ⁣:P→Ep\colon P\to Eを定める。同じ普遍性により、xxの標準生成元への対応は準同型a ⁣:N→Pa\colon N\to Pを定め、p∘a=ιp\circ a=\iotaとなる。

L=a(N)L=a(N)とおく。LLはXXの標準生成元の像が生成する部分群である。正負の共役関係により、任意のy∈Yy\in Yに対してyLy−1⊆LyLy^{-1}\subseteq Lとy−1Ly⊆Ly^{-1}Ly\subseteq Lが成り立つ。よってyLy−1=LyLy^{-1}=Lである。X⊔YX\sqcup YがPPを生成するので、L⊴PL\trianglelefteq Pである。

P/LP/LではXXの像がすべて単位元であるから、YYの像はSSの関係式を満たす。§E7.9 定理 3.2により、qyq_yをyLyLへ移す準同型b ⁣:Q→P/Lb\colon Q\to P/Lが存在する。π∘p\pi\circ pから誘導される準同型c ⁣:P/L→Qc\colon P/L\to QはyLyLをqyq_yへ移す。生成元上でcbcbとbcbcは恒等写像に一致するから、bbとccは互いに逆の同型である。補題 2.2によりppは同型であり、EEは有限表示群である。▨

3 有限指数部分群

補題 3.1. 群GGの生成集合SSと部分群H≤GH\leq Gを取る。右剰余類の代表集合TTを1∈T1\in Tとなるように取り、g∈Gg\in Gに対してHg=Hg‾Hg=H\overline gを満たす唯一のg‾∈T\overline g\in Tを定める。このときHHは

{txtx‾−1∣t∈T, x∈S∪S−1} \{t x\overline{tx}^{-1}\mid t\in T,\ x\in S\cup S^{-1}\}

によって生成される。

証明.Htx=Htx‾Htx=H\overline{tx}であるからtxtx‾−1∈Htx\overline{tx}^{-1}\in Hである。任意のh∈Hh\in Hをh=x1⋯xmh=x_1\cdots x_m、xi∈S∪S−1x_i\in S\cup S^{-1}と書く。t0=1t_0=1とし、ti=ti−1xi‾t_i=\overline{t_{i-1}x_i}と定める。帰納的にHti=Hx1⋯xiHt_i=Hx_1\cdots x_iであるから、tm=h‾=1t_m=\overline h=1である。したがって

h=(t0x1t1−1)(t1x2t2−1)⋯(tm−1xmtm−1) h=(t_0x_1t_1^{-1})(t_1x_2t_2^{-1})\cdots(t_{m-1}x_mt_m^{-1})

であり、各因子は指定された集合に属する。m=0m=0のときは空積がh=1h=1を与える。▨

補題 3.2. 群FF、部分群K≤FK\leq F、正規部分群L⊴FL\trianglelefteq Fを取り、L⊆KL\subseteq Kと仮定する。LLが集合R⊆LR\subseteq LのFFにおける正規閉包であり、TTが右剰余類K\FK\backslash Fの代表集合ならば、LLは

{trt−1∣t∈T, r∈R} \{t r t^{-1}\mid t\in T,\ r\in R\}

のKKにおける正規閉包である。

証明. 任意のt∈Tt\in Tとr∈Rr\in Rに対してtrt−1∈L⊆Ktrt^{-1}\in L\subseteq Kである。指定された集合のKKにおける正規閉包をMMとすると、L⊴KL\trianglelefteq KによりM⊆LM\subseteq Lである。RRのFFにおける正規閉包は、fr±1f−1fr^{\pm1}f^{-1}、f∈Ff\in F、r∈Rr\in Rの有限積全体である。この有限積全体はRRを含む正規部分群であり、RRを含む任意の正規部分群に含まれるからである。任意のf∈Ff\in Fをf=ktf=kt、k∈Kk\in K、t∈Tt\in Tと書くと、

fr±1f−1=k(trt−1)±1k−1∈M fr^{\pm1}f^{-1}=k(trt^{-1})^{\pm1}k^{-1}\in M

である。したがってL⊆ML\subseteq Mとなり、L=ML=Mである。▨

定理 3.3. 群GGと有限指数の部分群H≤GH\leq Gに対し、次が成り立つ。

  1. GGが有限生成ならば、HHは有限生成である。
  2. GGが有限表示ならば、HHは有限表示である。

証明.GGの有限生成集合SSを取る。右剰余類と左剰余類はgH↦Hg−1gH\mapsto Hg^{-1}によって一対一に対応するので、右剰余類代表集合TTは有限である。補題 3.1が与える生成集合は有限であり、(1)が成り立つ。

G≅⟨S∣R⟩G\cong\langle S\mid R\rangleを有限表示とし、q ⁣:F(S)→Gq\colon F(S)\to Gを対応する全射とする。K=q−1(H)K=q^{-1}(H)、L=ker⁡q=⟨ ⁣⟨R⟩ ⁣⟩L=\ker q=\langle\!\langle R\rangle\!\rangleとおく。写像fK↦q(f)HfK\mapsto q(f)HはF(S)/KF(S)/KとG/HG/Hの左剰余類集合の間の全単射である。よって[F(S):K]=[G:H][F(S):K]=[G:H]は有限であり、§E7.27 定理 4.2によりKKは有限自由基底BBをもつ。KKのF(S)F(S)における右剰余類代表集合TTを取ると、補題 3.2によりLLは有限集合

A={trt−1∣t∈T, r∈R} A=\{trt^{-1}\mid t\in T,\ r\in R\}

のKKにおける正規閉包である。K≅⟨B∣∅⟩K\cong\langle B\mid\varnothing\rangleは有限表示群なので、命題 2.1によりK/LK/Lは有限表示群である。qqのKKへの制限はHHへの全射で核がLLであり、§E7.16 命題 1.2によりK/L≅HK/L\cong Hである。したがって(2)が成り立つ。▨

命題 3.4.GGを有限生成群、d≥1d\geq1を整数とする。このとき、指数ddの部分群H≤GH\leq Gは有限個しかない。

証明.GGの生成集合の個数をkkとし、Sd\mathfrak S_dを集合{1,…,d}\{1,\ldots,d\}の置換群とする。準同型ρ ⁣:G→Sd\rho\colon G\to\mathfrak S_dは生成元上の値で一意に定まるから、準同型の個数は(d!)k(d!)^k以下である。任意の指数ddの部分群HHに対し、左剰余類集合G/HG/Hに番号を付ける。左乗法の作用は準同型ρ ⁣:G→Sd\rho\colon G\to\mathfrak S_dを定める。剰余類HHの番号をjjとすると、

H={g∈G∣ρ(g)(j)=j} H=\{g\in G\mid\rho(g)(j)=j\}

である。したがって指数ddの部分群は、準同型ρ\rhoと番号jjの組から得られる部分群の集合に含まれる。その組は高々d(d!)kd(d!)^k個であるから、指数ddの部分群は有限個である。▨

参考文献

  1. Joseph J. Rotman, An Introduction to the Theory of Groups, 4th ed., Graduate Texts in Mathematics 148, Springer, 1995.群の生成と表示、群の拡大、および有限指数部分群を扱う文献である。

前提記事