群の有限商は、元や部分群を有限群の中で調べるための情報を与える。しかし、一つの有限商の情報だけでは、群全体の構造を捉えることができるとは限らない。互いに整合する有限商の情報を逆極限としてまとめると、副有限群という位相群が現れる。副有限群は有限群の構造と位相的な極限を結びつける基本的な対象であり、整数の副有限完備化はその代表例である。
本記事では、副有限群の基本的な性質と代表的な例を解説する。
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群の有限商は、元や部分群を有限群の中で調べるための情報を与える。しかし、一つの有限商の情報だけでは、群全体の構造を捉えることができるとは限らない。互いに整合する有限商の情報を逆極限としてまとめると、副有限群という位相群が現れる。副有限群は有限群の構造と位相的な極限を結びつける基本的な対象であり、整数の副有限完備化はその代表例である。
本記事では、副有限群の基本的な性質と代表的な例を解説する。
定義 1.1. 空でない有向集合とは、任意の二元が共通の上界をもつ空でない半順序集合である。空でない有向集合上の有限群の逆系 (inverse system) とは、有限群と、に対する準同型であって、および()を満たすものである。その逆極限 (inverse limit) を
と定める。各に離散位相を入れ、に積空間の相対位相と座標ごとの群演算を入れる。射影をと書く。有限群の逆極限と位相群として同型である位相群を副有限群 (profinite group) という。空の逆系の逆極限は単位群とする。単位群は、一つの単位群からなる逆系でも表される。
命題 1.2. 有限群の逆系の逆極限はコンパクトな Hausdorff 位相群であり、全不連結である。有限個の射影の核の共通部分は、単位元の近傍基をなし、いずれも有限指数の開正規部分群である。
証明. 各遷移写像が準同型なので、整合条件は積と逆元で保たれ、単位元の族も整合条件を満たす。座標ごとの積と逆元の連続性、および積位相の有限座標開基§E2.14 命題 1.3によりは位相群である。各条件は有限個の離散座標における閉条件なので、はの閉部分集合である。有限離散空間のコンパクト性、§E2.19 定理 8.2および§E2.19 命題 4.1によりはコンパクトである。異なる二点はある座標で異なるので、とは互いに交わらない開近傍である。したがっては Hausdorff である。連結部分集合の各座標像は有限離散空間の連結部分集合であるから高々一点である。したがっても高々一点であり、は全不連結である。有限座標開基により、単位元の任意の近傍は(は有限)を含む。この共通部分は連続準同型の核であり、開正規部分群である。その指数はこの準同型の像の位数なので有限である。▨
補題 1.3. 空でない有向集合上の空でない有限集合と写像の逆系の逆極限は、空でないコンパクト空間である。各には離散位相を入れる。さらに、すべての遷移写像が全射ならば、各射影は全射である。
証明.は§E2.19 定理 8.2によりコンパクトである。各に対しては閉集合である。有限個の条件に現れる添字の共通上界とを取る。条件に現れる各座標をとし、残りの座標を任意に選ぶと、逆系の合成条件により指定された有限個の条件が満たされる。したがっては有限交差性をもち、§E2.19 定理 3.2によりその共通部分は空でない。この共通部分は逆極限であり、§E2.19 命題 4.1によりコンパクトである。すべての遷移写像が全射であると仮定し、とを取る。任意の有限個の整合条件に対して、と条件の添字の共通上界を取る。を満たすを取ると、前段の座標の選択は、その有限個の条件とを満たす。閉集合族にを加えて§E2.19 定理 3.2を適用すると、座標がである逆極限の元を得る。▨
注意 1.4. 遷移準同型が全射でなければ、逆極限の射影も全射とは限らない。二つの添字に対して、とし、遷移写像を唯一の準同型とすると、逆極限は単位群であり、への射影の像も単位群である。
命題 2.1. 副有限群の部分群が開ならば、は閉で有限指数をもつ。逆に、が閉で有限指数をもつならば、は開である。
証明.が開ならば各左剰余類は開であり、はと異なる左剰余類の和なので開である。したがっては閉である。左剰余類すべてはの開被覆なので、命題 1.2により有限個の左剰余類がを覆う。したがっては有限である。が閉で有限指数をもつならば、は有限個の閉集合の和である。したがっては閉であり、は開である。▨
注意 2.2. 副有限群の開正規部分群全体をと書く。各に対して有限群に離散位相を入れ、標準全射をと書く。に対してをと定める。は逆包含の順序で有向集合となる。実際、は両者に含まれる開正規部分群である。
命題 2.3.を副有限群、を閉部分群とする。このとき
であり、写像
は位相群の同型である。特に、は副有限群であり、である。
証明.を取る。は閉なので、命題 1.2の近傍基から、を満たすが存在する。ならばとなり、に反する。すべてのはを含むから、交わりの等式を得る。各は連続準同型であり、互いに整合するので、表示された写像は連続準同型である。異なる二点はある開正規部分群によって区別されるので、この写像は単射である。整合する族に対してとおく。各は空でない閉集合である。有限個のの共通部分に対して、整合条件からはそれらのすべてに含まれる。は命題 1.2と§E2.19 命題 4.1によりコンパクトなので、§E2.19 定理 3.2によりである。したがって写像は全射である。の近傍基はからなる。これらは対応する逆極限の座標を指定する開集合の逆像であるから、逆写像も連続である。とすると各となり、最後の同型を得る。▨
定義 3.1.を素数とする。有限群の逆極限と位相群として同型である位相群をpro-p 群 (pro-p group) という。副有限群の閉部分群のうち pro-p 群であるもの全体において、包含関係に関して極大な部分群を、のSylow pro-p 部分群 (pro-p Sylow subgroup) という。
補題 3.2.を素数とする。pro-p 群から有限離散群への連続準同型の像は有限群である。副有限群の閉部分群が pro-p 群であるための必要十分条件は、すべてのについてが群であることである。
証明.を有限群の逆極限とし、を有限離散群への連続準同型とする。は開なので、命題 1.2により、ある有限集合に対してである。は有限群の部分群と同型であり、はの商である。したがっての位数もの冪である。が pro-p 群ならば、前段をに適用しては群である。逆に、すべてのが群ならば、命題 2.3によりは有限群の逆極限である。▨
補題 3.3.を素数、を有限群の全射準同型、をの Sylow部分群とする。このときはの Sylow部分群である。
証明.とするとはの部分群であり、はを割る。はで割り切れないので、もで割り切れない。の位数はを割るのでの冪である。によりは Sylow部分群である。▨
補題 3.4.を副有限群、を素数とする。各についての Sylow部分群を選び、すべてのについてとなるようにすることができる。このような族に対して
は閉 pro-p 部分群であり、すべてのについてである。
証明.をの Sylow部分群全体の有限集合とする。§E7.18 定理 1.3により各は空でなく、補題 3.3によりは写像を定める。これらの写像は逆系をなし、補題 1.3により整合する族が存在する。各は閉部分群なので、その交わりは閉部分群である。遷移写像は整合条件により全射なので、補題 1.3により各射影は全射である。命題 2.3の同型はをに同定する。したがっては pro-p 群であり、である。▨
定理 3.5.を副有限群、を素数とする。このとき次が成り立つ。
証明.補題 3.4の部分群を取る。を満たす閉 pro-p 部分群に対して、補題 3.2によりは群である。は Sylow部分群を含むのでである。命題 2.3の交わりの等式によりである。したがっては Sylow pro-p 部分群である。
任意の閉 pro-p 部分群に対して
とおく。は有限離散群の部分集合の逆像なので閉である。補題 3.2と§E7.18 定理 2.2 (1)により、に所要の共役元が存在する。は全射なのでは空でない。有限個のの共通部分をとすると、によりである。したがっては有限交差性をもち、命題 1.2と§E2.19 定理 3.2によりが存在する。すべてのでであり、命題 2.3によりとなる。したがってである。共役は位相群の同型なので、も Sylow pro-p 部分群である。自身が Sylow pro-p 部分群ならば、その極大性によりである。したがって任意の Sylow pro-p 部分群はと共役であり、任意の二つも共役である。▨
系 3.6.を副有限群、を素数、をの Sylow pro-p 部分群とする。任意のについてはの Sylow部分群である。すべてのの位数がで割り切れなければ、の唯一の Sylow pro-p 部分群は単位群である。
定義 4.1.を素数とする。標準全射()に関する逆極限
を進整数 (p-adic integers) の加法群という。
例 4.2.を素数とする。は pro-p 群であり、各射影は補題 1.3により全射である。標準写像は単射であり、像は稠密である。実際、核はである。逆極限の一点の有限個の座標を指定した近傍について、その添字の最大値を取る。その一点の座標の整数代表は、整合条件により指定されたすべての座標を満たす。したがって標準写像の像はすべての空でない基本開集合と交わる。
例 4.3. 正整数全体を整除関係で順序づけ、に対して標準全射を取る。その逆極限
は整数の副有限完備化である。実際、の有限指数部分群は正整数を含む。に属する最小の正整数をとすると、整数の除法によりである。逆に各は有限指数正規部分群である。したがって表示された逆系は§E7.30 定義 4.1の有限商の逆系である。命題 1.2によりは副有限群であり、各射影は補題 1.3により全射である。§E7.30 命題 4.2により標準写像の核はである。その像も稠密である。有限個の座標を指定した近傍に対して共通の倍数を取る。近傍に属する逆極限の元の座標の整数代表は、指定されたすべての座標を満たす。