§E7.31副有限群

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群の有限商は、元や部分群を有限群の中で調べるための情報を与える。しかし、一つの有限商の情報だけでは、群全体の構造を捉えることができるとは限らない。互いに整合する有限商の情報を逆極限としてまとめると、副有限群という位相群が現れる。副有限群は有限群の構造と位相的な極限を結びつける基本的な対象であり、整数の副有限完備化はその代表例である。

本記事では、副有限群の基本的な性質と代表的な例を解説する。

1 有限群の逆極限

定義 1.1. 空でない有向集合とは、任意の二元が共通の上界をもつ空でない半順序集合である。空でない有向集合II上の有限群の逆系 (inverse system) とは、有限群(Gi)i∈I(G_i)_{i\in I}と、i≤ji\le jに対する準同型ϕij ⁣:Gj→Gi\phi_{ij}\colon G_j\to G_iであって、ϕii=id⁡Gi\phi_{ii}=\id_{G_i}およびϕijϕjk=ϕik\phi_{ij}\phi_{jk}=\phi_{ik}(i≤j≤ki\le j\le k)を満たすものである。その逆極限 (inverse limit) を

P=lim←⁡iGi={(xi)i∈∏iGi∣ϕij(xj)=xi for every i≤j}P=\varprojlim_iG_i=\{(x_i)_i\in\prod_iG_i\mid \phi_{ij}(x_j)=x_i\text{ for every }i\le j\}

と定める。各GiG_iに離散位相を入れ、PPに積空間の相対位相と座標ごとの群演算を入れる。射影をπi ⁣:P→Gi\pi_i\colon P\to G_iと書く。有限群の逆極限と位相群として同型である位相群を副有限群 (profinite group) という。空の逆系の逆極限は単位群とする。単位群は、一つの単位群からなる逆系でも表される。

命題 1.2. 有限群の逆系の逆極限PPはコンパクトな Hausdorff 位相群であり、全不連結である。有限個の射影の核の共通部分は、単位元の近傍基をなし、いずれも有限指数の開正規部分群である。

証明. 各遷移写像が準同型なので、整合条件は積と逆元で保たれ、単位元の族も整合条件を満たす。座標ごとの積と逆元の連続性、および積位相の有限座標開基§E2.14 命題 1.3によりPPは位相群である。各条件ϕij(xj)=xi\phi_{ij}(x_j)=x_iは有限個の離散座標における閉条件なので、PPは∏iGi\prod_iG_iの閉部分集合である。有限離散空間のコンパクト性、§E2.19 定理 8.2および§E2.19 命題 4.1によりPPはコンパクトである。異なる二点x,y∈Px,y\in Pはある座標iiで異なるので、πi−1({xi})\pi_i^{-1}(\{x_i\})とπi−1({yi})\pi_i^{-1}(\{y_i\})は互いに交わらない開近傍である。したがってPPは Hausdorff である。連結部分集合C⊆PC\subseteq Pの各座標像は有限離散空間の連結部分集合であるから高々一点である。したがってCCも高々一点であり、PPは全不連結である。有限座標開基により、単位元の任意の近傍は⋂i∈Fker⁡πi\bigcap_{i\in F}\ker\pi_i(FFは有限)を含む。この共通部分は連続準同型P→∏i∈FGiP\to\prod_{i\in F}G_iの核であり、開正規部分群である。その指数はこの準同型の像の位数なので有限である。▨

補題 1.3. 空でない有向集合II上の空でない有限集合と写像の逆系(Xi,fij)(X_i,f_{ij})の逆極限は、空でないコンパクト空間である。各XiX_iには離散位相を入れる。さらに、すべての遷移写像が全射ならば、各射影lim←⁡iXi→Xi\varprojlim_iX_i\to X_iは全射である。

証明.X=∏iXiX=\prod_iX_iは§E2.19 定理 8.2によりコンパクトである。各i≤ji\le jに対してCij={x∈X∣fij(xj)=xi}C_{ij}=\{x\in X\mid f_{ij}(x_j)=x_i\}は閉集合である。有限個の条件に現れる添字の共通上界kkとa∈Xka\in X_kを取る。条件に現れる各座標iiをfik(a)f_{ik}(a)とし、残りの座標を任意に選ぶと、逆系の合成条件により指定された有限個の条件が満たされる。したがって(Cij)i≤j(C_{ij})_{i\le j}は有限交差性をもち、§E2.19 定理 3.2によりその共通部分は空でない。この共通部分は逆極限であり、§E2.19 命題 4.1によりコンパクトである。すべての遷移写像が全射であると仮定し、i0∈Ii_0\in Iとb∈Xi0b\in X_{i_0}を取る。任意の有限個の整合条件に対して、i0i_0と条件の添字の共通上界kkを取る。fi0k(a)=bf_{i_0k}(a)=bを満たすa∈Xka\in X_kを取ると、前段の座標の選択は、その有限個の条件とxi0=bx_{i_0}=bを満たす。閉集合族(Cij)i≤j(C_{ij})_{i\le j}に{x∣xi0=b}\{x\mid x_{i_0}=b\}を加えて§E2.19 定理 3.2を適用すると、i0i_0座標がbbである逆極限の元を得る。▨

注意 1.4. 遷移準同型が全射でなければ、逆極限の射影も全射とは限らない。二つの添字0<10<1に対してG0=Z/2ZG_0=\Z/2\Z、G1={e}G_1=\{e\}とし、遷移写像を唯一の準同型とすると、逆極限は単位群であり、G0G_0への射影の像も単位群である。

2 開部分群と有限商

命題 2.1. 副有限群PPの部分群HHが開ならば、HHは閉で有限指数をもつ。逆に、HHが閉で有限指数をもつならば、HHは開である。

証明.HHが開ならば各左剰余類gHgHは開であり、P∖HP\setminus HはHHと異なる左剰余類の和なので開である。したがってHHは閉である。左剰余類すべてはPPの開被覆なので、命題 1.2により有限個の左剰余類がPPを覆う。したがって[P:H][P:H]は有限である。HHが閉で有限指数をもつならば、P∖HP\setminus Hは有限個の閉集合gHgHの和である。したがってP∖HP\setminus Hは閉であり、HHは開である。▨

注意 2.2. 副有限群PPの開正規部分群全体をU(P)\mathcal U(P)と書く。各U∈U(P)U\in\mathcal U(P)に対して有限群P/UP/Uに離散位相を入れ、標準全射をqU ⁣:P→P/Uq_U\colon P\to P/Uと書く。V⊆UV\subseteq Uに対してqVU ⁣:P/V→P/Uq_{VU}\colon P/V\to P/UをgV↦gUgV\mapsto gUと定める。U(P)\mathcal U(P)は逆包含の順序で有向集合となる。実際、U∩VU\cap Vは両者に含まれる開正規部分群である。

命題 2.3.PPを副有限群、H≤PH\le Pを閉部分群とする。このとき

H=⋂U∈U(P)HUH=\bigcap_{U\in\mathcal U(P)}HU

であり、写像

H⟶lim←⁡U∈U(P)qU(H),h⟼(qU(h))UH\longrightarrow\varprojlim_{U\in\mathcal U(P)}q_U(H),\qquad h\longmapsto(q_U(h))_U

は位相群の同型である。特に、HHは副有限群であり、P≅lim←⁡UP/UP\cong\varprojlim_UP/Uである。

証明.x∈P∖Hx\in P\setminus Hを取る。HHは閉なので、命題 1.2の近傍基から、xU⊆P∖HxU\subseteq P\setminus Hを満たすU∈U(P)U\in\mathcal U(P)が存在する。x=hu∈HUx=hu\in HUならばh=xu−1∈xU∩Hh=xu^{-1}\in xU\cap Hとなり、xU∩H=∅xU\cap H=\emptysetに反する。すべてのHUHUはHHを含むから、交わりの等式を得る。各qU∣Hq_U|_Hは連続準同型であり、互いに整合するので、表示された写像は連続準同型である。異なる二点はある開正規部分群によって区別されるので、この写像は単射である。整合する族(aU)U(a_U)_Uに対してFU={h∈H∣qU(h)=aU}F_U=\{h\in H\mid q_U(h)=a_U\}とおく。各FUF_Uは空でない閉集合である。有限個のUUの共通部分WWに対して、整合条件からFWF_WはそれらのFUF_Uすべてに含まれる。HHは命題 1.2と§E2.19 命題 4.1によりコンパクトなので、§E2.19 定理 3.2により⋂UFU≠∅\bigcap_UF_U\neq\emptysetである。したがって写像は全射である。h∈Hh\in Hの近傍基はH∩hUH\cap hUからなる。これらは対応する逆極限の座標qU(h)q_U(h)を指定する開集合の逆像であるから、逆写像も連続である。H=PH=Pとすると各qU(H)=P/Uq_U(H)=P/Uとなり、最後の同型を得る。▨

3 pro-p 群と Sylow 部分群

定義 3.1.ppを素数とする。有限pp群の逆極限と位相群として同型である位相群をpro-p 群 (pro-p group) という。副有限群PPの閉部分群のうち pro-p 群であるもの全体において、包含関係に関して極大な部分群を、PPのSylow pro-p 部分群 (pro-p Sylow subgroup) という。

補題 3.2.ppを素数とする。pro-p 群から有限離散群への連続準同型の像は有限pp群である。副有限群PPの閉部分群HHが pro-p 群であるための必要十分条件は、すべてのU∈U(P)U\in\mathcal U(P)についてqU(H)q_U(H)がpp群であることである。

証明.K=lim←⁡iKiK=\varprojlim_iK_iを有限pp群の逆極限とし、f ⁣:K→Af\colon K\to Aを有限離散群への連続準同型とする。ker⁡f\ker fは開なので、命題 1.2により、ある有限集合FFに対してL=⋂i∈Fker⁡πi⊆ker⁡fL=\bigcap_{i\in F}\ker\pi_i\subseteq\ker fである。K/LK/Lは有限pp群∏i∈FKi\prod_{i\in F}K_iの部分群と同型であり、f(K)f(K)はK/LK/Lの商である。したがってf(K)f(K)の位数もppの冪である。HHが pro-p 群ならば、前段をqU∣Hq_U|_Hに適用してqU(H)q_U(H)はpp群である。逆に、すべてのqU(H)q_U(H)がpp群ならば、命題 2.3によりHHは有限pp群の逆極限である。▨

補題 3.3.ppを素数、f ⁣:A→Bf\colon A\to Bを有限群の全射準同型、TTをAAの Sylowpp部分群とする。このときf(T)f(T)はBBの Sylowpp部分群である。

証明.N=ker⁡fN=\ker fとするとTNTNはAAの部分群であり、[B:f(T)]=[A:TN][B:f(T)]=[A:TN]は[A:T][A:T]を割る。[A:T][A:T]はppで割り切れないので、[B:f(T)][B:f(T)]もppで割り切れない。f(T)f(T)の位数は∣T∣|T|を割るのでppの冪である。∣B∣=[B:f(T)]∣f(T)∣|B|=[B:f(T)]|f(T)|によりf(T)f(T)は Sylowpp部分群である。▨

補題 3.4.PPを副有限群、ppを素数とする。各U∈U(P)U\in\mathcal U(P)についてP/UP/Uの Sylowpp部分群SUS_Uを選び、すべてのV⊆UV\subseteq UについてqVU(SV)=SUq_{VU}(S_V)=S_Uとなるようにすることができる。このような族に対して

S={x∈P∣qU(x)∈SU for every U∈U(P)}S=\{x\in P\mid q_U(x)\in S_U\text{ for every }U\in\mathcal U(P)\}

は閉 pro-p 部分群であり、すべてのUUについてqU(S)=SUq_U(S)=S_Uである。

証明.XUX_UをP/UP/Uの Sylowpp部分群全体の有限集合とする。§E7.18 定理 1.3により各XUX_Uは空でなく、補題 3.3によりT↦qVU(T)T\mapsto q_{VU}(T)は写像XV→XUX_V\to X_Uを定める。これらの写像は逆系をなし、補題 1.3により整合する族(SU)U(S_U)_Uが存在する。各qU−1(SU)q_U^{-1}(S_U)は閉部分群なので、その交わりSSは閉部分群である。遷移写像SV→SUS_V\to S_Uは整合条件により全射なので、補題 1.3により各射影lim←⁡USU→SU\varprojlim_US_U\to S_Uは全射である。命題 2.3の同型P≅lim←⁡UP/UP\cong\varprojlim_UP/UはSSをlim←⁡USU\varprojlim_US_Uに同定する。したがってSSは pro-p 群であり、qU(S)=SUq_U(S)=S_Uである。▨

定理 3.5.PPを副有限群、ppを素数とする。このとき次が成り立つ。

  1. PPは Sylow pro-p 部分群をもつ。
  2. 任意の閉 pro-p 部分群は、ある Sylow pro-p 部分群に含まれる。
  3. 任意の二つの Sylow pro-p 部分群はPPの元によって共役である。

証明.補題 3.4の部分群SSを取る。S⊆Q≤PS\subseteq Q\le Pを満たす閉 pro-p 部分群QQに対して、補題 3.2によりqU(Q)q_U(Q)はpp群である。qU(Q)q_U(Q)は Sylowpp部分群SU=qU(S)S_U=q_U(S)を含むのでqU(Q)=SUq_U(Q)=S_Uである。命題 2.3の交わりの等式によりQ=SQ=Sである。したがってSSは Sylow pro-p 部分群である。

任意の閉 pro-p 部分群QQに対して

CU={g∈P∣qU(g)qU(Q)qU(g)−1⊆SU}(U∈U(P))C_U=\{g\in P\mid q_U(g)q_U(Q)q_U(g)^{-1}\subseteq S_U\}\qquad(U\in\mathcal U(P))

とおく。CUC_Uは有限離散群P/UP/Uの部分集合の逆像なので閉である。補題 3.2と§E7.18 定理 2.2 (1)により、P/UP/Uに所要の共役元が存在する。qUq_Uは全射なのでCUC_Uは空でない。有限個のUUの共通部分をWWとすると、qWU(SW)=SUq_{WU}(S_W)=S_UによりCW⊆CUC_W\subseteq C_Uである。したがって(CU)U(C_U)_Uは有限交差性をもち、命題 1.2と§E2.19 定理 3.2によりg∈⋂UCUg\in\bigcap_UC_Uが存在する。すべてのUUでqU(gQg−1)⊆qU(S)q_U(gQg^{-1})\subseteq q_U(S)であり、命題 2.3によりgQg−1⊆SgQg^{-1}\subseteq Sとなる。したがってQ⊆g−1SgQ\subseteq g^{-1}Sgである。共役は位相群の同型なので、g−1Sgg^{-1}Sgも Sylow pro-p 部分群である。QQ自身が Sylow pro-p 部分群ならば、その極大性によりQ=g−1SgQ=g^{-1}Sgである。したがって任意の Sylow pro-p 部分群はSSと共役であり、任意の二つも共役である。▨

系 3.6.PPを副有限群、ppを素数、TTをPPの Sylow pro-p 部分群とする。任意のU∈U(P)U\in\mathcal U(P)についてqU(T)q_U(T)はP/UP/Uの Sylowpp部分群である。すべてのP/UP/Uの位数がppで割り切れなければ、PPの唯一の Sylow pro-p 部分群は単位群である。

証明.定理 3.5によりTTは補題 3.4のSSの共役なので、qU(T)q_U(T)はSUS_Uの共役であり、Sylowpp部分群である。すべての∣P/U∣|P/U|がppで割り切れなければ各qU(T)q_U(T)は単位群であり、命題 2.3によりTTも単位群である。▨

4 整数から得られる副有限群

定義 4.1.ppを素数とする。標準全射Z/pn+1Z→Z/pnZ\Z/p^{n+1}\Z\to\Z/p^n\Z(n≥1n\ge1)に関する逆極限

Zp=lim←⁡n≥1Z/pnZ\Z_p=\varprojlim_{n\ge1}\Z/p^n\Z

をpp進整数 (p-adic integers) の加法群という。

例 4.2.ppを素数とする。Zp\Z_pは pro-p 群であり、各射影は補題 1.3により全射である。標準写像Z→Zp, a↦(a+pnZ)n≥1\Z\to\Z_p,\ a\mapsto(a+p^n\Z)_{n\ge1}は単射であり、像は稠密である。実際、核は⋂n≥1pnZ={0}\bigcap_{n\ge1}p^n\Z=\{0\}である。逆極限の一点の有限個の座標を指定した近傍について、その添字の最大値NNを取る。その一点のNN座標の整数代表は、整合条件により指定されたすべての座標を満たす。したがって標準写像の像はすべての空でない基本開集合と交わる。

例 4.3. 正整数全体を整除関係で順序づけ、m∣nm\mid nに対して標準全射Z/nZ→Z/mZ\Z/n\Z\to\Z/m\Zを取る。その逆極限

Z^=lim←⁡m≥1Z/mZ\widehat\Z=\varprojlim_{m\ge1}\Z/m\Z

は整数の副有限完備化である。実際、Z\Zの有限指数部分群HHは正整数を含む。HHに属する最小の正整数をmmとすると、整数の除法によりH=mZH=m\Zである。逆に各mZm\Zは有限指数正規部分群である。したがって表示された逆系は§E7.30 定義 4.1の有限商の逆系である。命題 1.2によりZ^\widehat\Zは副有限群であり、各射影は補題 1.3により全射である。§E7.30 命題 4.2により標準写像Z→Z^\Z\to\widehat\Zの核は⋂m≥1mZ={0}\bigcap_{m\ge1}m\Z=\{0\}である。その像も稠密である。有限個の座標m1,…,mrm_1,\ldots,m_rを指定した近傍に対して共通の倍数MMを取る。近傍に属する逆極限の元のMM座標の整数代表は、指定されたすべての座標を満たす。

参考文献

  1. Jean-Pierre Serre, Galois Cohomology, Springer, Berlin, 1997.副有限群と pro-p 群に関する文献である。
  2. Joseph J. Rotman, An Introduction to the Theory of Groups, 4th ed., Graduate Texts in Mathematics 148, Springer, 1995.有限群の Sylow 部分群に関する群論の文献である。

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