§E7.36低次群コホモロジーと群の拡大

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群の拡大では、核と商群を指定しても中央の群の構造は一意に定まらない。例えば、位数四の巡回群と二つの位数二の巡回群の直積は、いずれも位数二の巡回群を核と商にもつ拡大を与えるが、前者は分裂せず、後者は分裂する。核がアーベル群である場合には、商群の核への作用を固定したうえで、拡大の相違と分裂の条件を記述することが問題となる。

低次の群コホモロジーは、群の拡大を分類するための基本的な不変量である。第一次の群コホモロジーは半直積の補群の核による共役類を、第二次の群コホモロジーは核と商群の同定を保つ拡大の同値類を記述し、第二次の零元は分裂する拡大に対応する。本記事では、低次の群コホモロジーと群の拡大との関係を解説する。

1 零次と第一次の群コホモロジー

系 1.1.GGを群、AAを左Z[G]\Z[G]-加群とする。不変元の群AGA^Gと零次群コホモロジーの間に、AAについて自然な同型

H0(G,A)≅AGH^0(G,A)\cong A^G

が存在する。

証明.§E7.35 命題 4.2により、H0(G,A)H^0(G,A)はδ0 ⁣:A→C1(G,A)\delta^0\colon A\to C^1(G,A)の核であり、δ0a(g)=ga−a\delta^0a(g)=ga-aである。この核はAGA^Gに等しく、同定は係数の射による写像と可換である。▨

定義 1.2.GGを群、AAを左Z[G]\Z[G]-加群とする。写像d ⁣:G→Ad\colon G\to Aが、すべてのg,h∈Gg,h\in Gに対して

d(gh)=d(g)+gd(h)d(gh)=d(g)+g d(h)

を満たすとき、ddを交差準同型 (crossed homomorphism) という。交差準同型全体をDer⁡(G,A)\operatorname{Der}(G,A)と書く。また、a∈Aa\in Aに対する写像

da(g)=ga−ad_a(g)=ga-a

を主交差準同型といい、その全体をPDer⁡(G,A)\operatorname{PDer}(G,A)と書く。

命題 1.3.GGを群、AAを左Z[G]\Z[G]-加群とする。点ごとの加法についてDer⁡(G,A)\operatorname{Der}(G,A)はアーベル群であり、PDer⁡(G,A)\operatorname{PDer}(G,A)はその部分群である。AAについて自然な同型

H1(G,A)≅Der⁡(G,A)/PDer⁡(G,A)H^1(G,A)\cong \operatorname{Der}(G,A)/\operatorname{PDer}(G,A)

が存在する。

証明.§E7.35 命題 4.2の微分を次数一で書くと

(δ1d)(g,h)=gd(h)−d(gh)+d(g)(\delta^1d)(g,h)=g d(h)-d(gh)+d(g)

である。したがってDer⁡(G,A)=ker⁡δ1\operatorname{Der}(G,A)=\ker\delta^1、PDer⁡(G,A)=im⁡δ0\operatorname{PDer}(G,A)=\operatorname{im}\delta^0である。部分群の主張と商による記述はこの余鎖複体から従い、同定は係数の射と可換である。▨

定理 1.4.GGを群、AAを左Z[G]\Z[G]-加群とし、与えられた作用による半直積A⋊GA\rtimes Gを考える。対応

d⟼Hd:={(d(g),g)∣g∈G}d\longmapsto H_d:=\{(d(g),g)\mid g\in G\}

は、交差準同型全体からA×{1}A\times\{1\}の補群全体への全単射である。この対応は、H1(G,A)H^1(G,A)と補群のA×{1}A\times\{1\}による共役類全体との全単射を誘導する。

証明. 交差準同型ddに対して、写像sd ⁣:G→A⋊Gs_d\colon G\to A\rtimes Gをsd(g)=(d(g),g)s_d(g)=(d(g),g)と定める。半直積の積と交差準同型の等式により、sds_dは準同型である。射影p ⁣:A⋊G→Gp\colon A\rtimes G\to Gについてpsd=id⁡Gps_d=\id_Gであるから、像HdH_dはA×{1}A\times\{1\}と単位元だけで交わる。任意の(a,g)(a,g)は(a−d(g),1)sd(g)(a-d(g),1)s_d(g)と表されるので、HdH_dは補群である。

逆に補群HHに対して、p∣Hp|_Hの核はH∩(A×{1})H\cap(A\times\{1\})であり、(A×{1})H=A⋊G(A\times\{1\})H=A\rtimes Gからp∣Hp|_Hは全射である。したがってp∣Hp|_Hは同型である。その逆写像をg↦(d(g),g)g\mapsto(d(g),g)と書くと、準同型性からddは交差準同型であり、H=HdH=H_dとなる。逆写像の一意性によりddも一意である。

a∈Aa\in Aによる共役は

(a,1)(d(g),g)(−a,1)=(d(g)+a−ga,g)(a,1)(d(g),g)(-a,1)=(d(g)+a-ga,g)

を満たし、HdH_dをHd−daH_{d-d_a}へ送る。よって共役類はDer⁡(G,A)/PDer⁡(G,A)\operatorname{Der}(G,A)/\operatorname{PDer}(G,A)に対応し、命題 1.3から結論を得る。▨

2 因子集合と群の拡大

定義 2.1.GGを群、AAを左Z[G]\Z[G]-加群とする。短完全列

1⟶A→iE→pG⟶11\longrightarrow A\xrightarrow{i}E\xrightarrow{p}G\longrightarrow1

が与えられた作用を誘導するとは、すべてのe∈Ee\in Eとa∈Aa\in Aに対して

ei(a)e−1=i(p(e)a)e i(a)e^{-1}=i(p(e)a)

が成り立つことをいう。このような拡大の同値では、核AAと商GGの双方の恒等写像を固定する。すなわち、二つの拡大(E,i,p)(E,i,p)と(E′,i′,p′)(E',i',p')が同値 (equivalent extensions) であるとは、群同型F ⁣:E→E′F\colon E\to E'が存在してFi=i′Fi=i'、p′F=pp'F=pとなることをいう。

注意 2.2.GGを群、AAをアーベル群とする。AAの内部自己同型はすべて恒等写像である。したがって§E7.16 定理 2.2により、AAによるGGの任意の拡大の外部作用はG→Aut⁡(A)G\to\operatorname{Aut}(A)という作用である。この作用は、GGの元の持上げの選択によらない。

補題 2.3.GGを群、AAを左Z[G]\Z[G]-加群とし、拡大(E,i,p)(E,i,p)が与えられた作用を誘導するとする。集合としての右逆写像s ⁣:G→Es\colon G\to Eでs(1)=1s(1)=1を満たすものを取る。等式

s(g)s(h)=i(f(g,h))s(gh)s(g)s(h)=i(f(g,h))s(gh)

は写像f ⁣:G2→Af\colon G^2\to Aを一意に定める。このffをssの因子集合という。ffは正規化された二次のコサイクルであり、すべてのg,h,k∈Gg,h,k\in Gに対して

f(1,g)=f(g,1)=0,gf(h,k)−f(gh,k)+f(g,hk)−f(g,h)=0f(1,g)=f(g,1)=0, \qquad g f(h,k)-f(gh,k)+f(g,hk)-f(g,h)=0

を満たす。

別の正規化された集合としての右逆写像は、一意な写像t ⁣:G→At\colon G\to A、t(1)=0t(1)=0によりs′(g)=i(t(g))s(g)s'(g)=i(t(g))s(g)と表される。その因子集合f′f'は

f′=f+δ1t,(δ1t)(g,h)=gt(h)−t(gh)+t(g)f'=f+\delta^1t, \qquad (\delta^1t)(g,h)=g t(h)-t(gh)+t(g)

である。

証明.p(s(g)s(h)s(gh)−1)=1p(s(g)s(h)s(gh)^{-1})=1とker⁡p=i(A)\ker p=i(A)により、iiの単射性からf(g,h)f(g,h)が一意に定まる。s(1)=1s(1)=1からf(1,g)=f(g,1)=0f(1,g)=f(g,1)=0である。三つの元の積を二通りに括ると

(s(g)s(h))s(k)=i(f(g,h)+f(gh,k))s(ghk),s(g)(s(h)s(k))=i(gf(h,k)+f(g,hk))s(ghk)\begin{aligned} (s(g)s(h))s(k)&=i(f(g,h)+f(gh,k))s(ghk),\\ s(g)(s(h)s(k))&=i(g f(h,k)+f(g,hk))s(ghk) \end{aligned}

となる。結合律とiiの単射性からコサイクルの等式を得る。

s′(g)s(g)−1∈i(A)s'(g)s(g)^{-1}\in i(A)によりt(g)t(g)は一意に存在し、正規化からt(1)=0t(1)=0である。積を計算すると

s′(g)s′(h)=i(t(g)+gt(h)+f(g,h))s(gh)=i(t(g)+gt(h)+f(g,h)−t(gh))s′(gh)s'(g)s'(h)=i(t(g)+g t(h)+f(g,h))s(gh) =i(t(g)+g t(h)+f(g,h)-t(gh))s'(gh)

である。よってf′=f+δ1tf'=f+\delta^1tとなる。▨

補題 2.4.GGを群、AAを左Z[G]\Z[G]-加群、f ⁣:G2→Af\colon G^2\to Aを正規化された二次のコサイクルとする。集合A×GA\times Gに積

(a,g)(b,h)=(a+gb+f(g,h),gh)(a,g)(b,h)=(a+gb+f(g,h),gh)

を入れると、群EfE_fを得る。写像if(a)=(a,1)i_f(a)=(a,1)、pf(a,g)=gp_f(a,g)=gは、与えられた作用を誘導する拡大

1⟶A→ifEf→pfG⟶11\longrightarrow A\xrightarrow{i_f}E_f\xrightarrow{p_f}G\longrightarrow1

を定める。正規化された集合としての右逆写像sf(g)=(0,g)s_f(g)=(0,g)の因子集合はffである。

さらに、任意の群KK、準同型u ⁣:A→Ku\colon A\to K、写像v ⁣:G→Kv\colon G\to Kが、すべてのg,h∈Gg,h\in Gとa∈Aa\in Aに対して

v(1)=1,v(g)u(a)v(g)−1=u(ga),v(g)v(h)=u(f(g,h))v(gh)v(1)=1,\qquad v(g)u(a)v(g)^{-1}=u(ga),\qquad v(g)v(h)=u(f(g,h))v(gh)

を満たすならば、Fif=uFi_f=u、Fsf=vFs_f=vを満たす準同型F ⁣:Ef→KF\colon E_f\to Kがただ一つ存在する。この準同型はF(a,g)=u(a)v(g)F(a,g)=u(a)v(g)である。

証明.(a,g),(b,h),(c,k)∈A×G(a,g),(b,h),(c,k)\in A\times Gに対し、二通りの三重積の第一成分はそれぞれ

a+gb+ghc+f(g,h)+f(gh,k),a+gb+ghc+gf(h,k)+f(g,hk)a+gb+ghc+f(g,h)+f(gh,k),\qquad a+gb+ghc+g f(h,k)+f(g,hk)

である。これらはコサイクル条件により一致する。正規化条件から単位元は(0,1)(0,1)である。コサイクル条件を(g−1,g,g−1)(g^{-1},g,g^{-1})に適用すると

f(g−1,g)=g−1f(g,g−1)f(g^{-1},g)=g^{-1}f(g,g^{-1})

となるので、

(a,g)−1=(−g−1a−g−1f(g,g−1),g−1)(a,g)^{-1}=(-g^{-1}a-g^{-1}f(g,g^{-1}),g^{-1})

は左右両方の逆元である。

ifi_fは単射準同型、pfp_fは全射準同型であり、ker⁡pf=if(A)\ker p_f=i_f(A)である。また

(a,g)if(b)=if(gb)(a,g)(a,g)i_f(b)=i_f(gb)(a,g)

により誘導作用は所定の作用である。積の定義からsf(g)sf(h)=if(f(g,h))sf(gh)s_f(g)s_f(h)=i_f(f(g,h))s_f(gh)が成り立つ。

写像F(a,g)=u(a)v(g)F(a,g)=u(a)v(g)は、仮定の二つの積の関係から

F(a,g)F(b,h)=u(a)v(g)u(b)v(h)=u(a+gb)u(f(g,h))v(gh)=F(a+gb+f(g,h),gh)\begin{aligned} F(a,g)F(b,h) &=u(a)v(g)u(b)v(h)\\ &=u(a+gb)u(f(g,h))v(gh)\\ &=F(a+gb+f(g,h),gh) \end{aligned}

を満たすため、準同型である。各元は(a,g)=if(a)sf(g)(a,g)=i_f(a)s_f(g)と表されるので、指定された値をもつ準同型はFFに限られる。▨

定理 2.5.GGを群、AAを左Z[G]\Z[G]-加群とする。与えられた作用を誘導するAAによるGGの拡大の同値類全体とH2(G,A)H^2(G,A)との間に全単射が存在する。この全単射は、拡大を正規化された集合としての右逆写像の因子集合ffの類[f][f]へ送り、逆に[f][f]を拡大EfE_fの同値類へ送る。

証明. 拡大(E,i,p)(E,i,p)に対して、選択公理により正規化された集合としての右逆写像ssを取る。補題 2.3により、その因子集合の類[f][f]はssによらない。拡大の同型F ⁣:E→E′F\colon E\to E'に対してFsFsの因子集合もffであるから、この類は拡大の同値類だけで定まる。

§E7.35 命題 4.3により、H2(G,A)H^2(G,A)の各元は正規化された二次のコサイクルffで表される。同じ類を表す正規化コサイクルf,f′f,f'に対しては、t(1)=0t(1)=0を満たす一次のコチェインttが存在してf′=f+δ1tf'=f+\delta^1tとなる。Ef′E_{f'}でu(a)=(a,1)u(a)=(a,1)、v(g)=(−t(g),g)v(g)=(-t(g),g)と置くと

v(g)v(h)=(f(g,h)−t(gh),gh)=u(f(g,h))v(gh)v(g)v(h)=(f(g,h)-t(gh),gh)=u(f(g,h))v(gh)

であり、v(g)u(a)v(g)−1=u(ga)v(g)u(a)v(g)^{-1}=u(ga)も成り立つ。補題 2.4の普遍性により

Ef⟶Ef′,(a,g)⟼(a−t(g),g)E_f\longrightarrow E_{f'},\qquad (a,g)\longmapsto(a-t(g),g)

は準同型である。この写像は全単射であり、両端の恒等写像を固定する。したがって[f]↦[Ef][f]\mapsto[E_f]は代表の選択によらない。

拡大(E,i,p)(E,i,p)と右逆写像ssの因子集合をffとすると、同じ普遍性をu=iu=i、v=sv=sに適用して準同型

Φ ⁣:Ef⟶E,(a,g)⟼i(a)s(g)\Phi\colon E_f\longrightarrow E,\qquad (a,g)\longmapsto i(a)s(g)

を得る。任意のe∈Ee\in Eに対してg=p(e)g=p(e)と置けばes(g)−1∈i(A)es(g)^{-1}\in i(A)であり、iiの単射性からe=i(a)s(g)e=i(a)s(g)となるaaは一意である。よってΦ\Phiは両端の恒等写像を固定する同型である。一方、EfE_fの標準の右逆写像の因子集合はffであるから、二つの対応は互いに逆である。▨

3 Baer 和と分裂

命題 3.1.GGを群、AAを左Z[G]\Z[G]-加群とし、拡大(E,i,p)(E,i,p)と(E′,i′,p′)(E',i',p')はともに与えられた作用を誘導するとする。繊維積とその部分群を

P=E×GE′={(e,e′)∈E×E′∣p(e)=p′(e′)},D={(i(a),i′(−a))∣a∈A}P=E\times_G E'=\{(e,e')\in E\times E'\mid p(e)=p'(e')\}, \qquad D=\{(i(a),i'(-a))\mid a\in A\}

と定める。DDはPPの正規部分群であり、B=P/DB=P/D、商写像q ⁣:P→Bq\colon P\to Bに対して

j(a)=q(i(a),1),r(q(e,e′))=p(e)j(a)=q(i(a),1),\qquad r(q(e,e'))=p(e)

は、与えられた作用を誘導する拡大

1⟶A→jB→rG⟶11\longrightarrow A\xrightarrow{j}B\xrightarrow{r}G\longrightarrow1

を定める。この拡大を二つの拡大の Baer 和という。

包含k ⁣:A×A→Pk\colon A\times A\to P、k(a,b)=(i(a),i′(b))k(a,b)=(i(a),i'(b))と加法m ⁣:A×A→Am\colon A\times A\to A、m(a,b)=a+bm(a,b)=a+bに対してqk=jmqk=jmである。この可換図式は群の圏で押出しである。すなわち、任意の群KKと準同型u ⁣:P→Ku\colon P\to K、v ⁣:A→Kv\colon A\to Kがuk=vmuk=vmを満たすならば、wq=uwq=u、wj=vwj=vを満たす準同型w ⁣:B→Kw\colon B\to Kがただ一つ存在する。

証明.(e,e′)∈P(e,e')\in Pとg=p(e)=p′(e′)g=p(e)=p'(e')に対して、(e,e′)(e,e')による共役は(i(a),i′(−a))(i(a),i'(-a))を(i(ga),i′(−ga))(i(ga),i'(-ga))へ送る。したがってDDは正規部分群である。準同型P→GP\to G、(e,e′)↦p(e)(e,e')\mapsto p(e)は全射であり、DD上で自明なので全射準同型r ⁣:B→Gr\colon B\to Gを誘導する。q(i(a),1)=q(1,i′(a))q(i(a),1)=q(1,i'(a))であるから

q(k(a,b))=j(a+b)q(k(a,b))=j(a+b)

となる。rrの核の各元はこの形に表されるのでker⁡r=j(A)\ker r=j(A)である。j(a)=1j(a)=1ならば(i(a),1)∈D(i(a),1)\in Dであり、i′i'の単射性によりa=0a=0となる。よってjjは単射である。さらに

q(e,e′)j(a)q(e,e′)−1=j(ga)q(e,e')j(a)q(e,e')^{-1}=j(ga)

であるから、誘導作用は与えられた作用である。

uk=vmuk=vmを満たす準同型u,vu,vに対して、任意のa∈Aa\in Aについてu(k(a,−a))=v(0)=1u(k(a,-a))=v(0)=1である。商群の普遍性により、wq=uwq=uを満たす準同型w ⁣:B→Kw\colon B\to Kがただ一つ存在する。j(a)=q(k(a,0))j(a)=q(k(a,0))からwj(a)=u(k(a,0))=v(a)wj(a)=u(k(a,0))=v(a)であり、押出しの普遍性を得る。▨

定理 3.2.GGを群、AAを左Z[G]\Z[G]-加群とする。与えられた作用を誘導する二つの拡大の類が定理 2.5によってα,β∈H2(G,A)\alpha,\beta\in H^2(G,A)に対応するとき、その Baer 和の類はα+β\alpha+\betaに対応する。Baer 和は拡大の同値類全体にアーベル群構造を定め、この分類の全単射はアーベル群の同型となる。零元はE0=A⋊GE_0=A\rtimes Gの拡大類である。任意の正規化された二次のコサイクルffに対して、EfE_fの拡大類の逆元はE−fE_{-f}の拡大類である。

証明. 二つの拡大の正規化された集合としての右逆写像をs,s′s,s'、その因子集合をf,f′f,f'とする。命題 3.1の記号でσ(g)=q(s(g),s′(g))\sigma(g)=q(s(g),s'(g))と置くと、σ\sigmaはrrの正規化された集合としての右逆写像であり、qk=jmqk=jmにより

σ(g)σ(h)=q(k(f(g,h),f′(g,h)))σ(gh)=j(f(g,h)+f′(g,h))σ(gh)\begin{aligned} \sigma(g)\sigma(h) &=q(k(f(g,h),f'(g,h)))\sigma(gh)\\ &=j(f(g,h)+f'(g,h))\sigma(gh) \end{aligned}

である。よってその因子集合はf+f′f+f'であり、対応する類はα+β\alpha+\betaとなる。分類の単射性により、Baer 和の同値類は各拡大の代表によらない。結合律、可換律、零元と逆元の主張は、この全単射を通してH2(G,A)H^2(G,A)の加法から従う。▨

系 3.3.GGを群、AAを左Z[G]\Z[G]-加群とする。与えられた作用を誘導する拡大が分裂することと、そのH2(G,A)H^2(G,A)における類が零であることは同値である。

証明. 拡大が分裂するとき、群準同型である切断を右逆写像に選べば因子集合は零である。逆に拡大の類が零ならば、定理 2.5により、その拡大は標準半直積拡大E0=A⋊GE_0=A\rtimes Gと同値である。標準切断g↦(0,g)g\mapsto(0,g)とこの同型を合成すると、元の拡大の切断を得る。▨

例 3.4.G={1,x}G=\{1,x\}を位数二の巡回群、A=Z/2ZA=\Z/2\Zを自明なGG-加群とする。正規化された写像f ⁣:G2→Af\colon G^2\to Aはc=f(x,x)c=f(x,x)だけで決まる。コサイクルの等式では、入力のいずれかが11ならば項が相殺し、入力が(x,x,x)(x,x,x)ならばc−c=0c-c=0となる。したがってc=0,1c=0,1のいずれもコサイクルを与える。正規化された一次のコチェインttに対して

(δ1t)(x,x)=2t(x)=0(\delta^1t)(x,x)=2t(x)=0

であるから、§E7.35 命題 4.3によりH2(G,A)≅Z/2ZH^2(G,A)\cong\Z/2\Zである。

c=0c=0の拡大は自明作用の半直積であり、E0≅C2×C2E_0\cong C_2\times C_2である。c=1c=1の拡大ではy=(0,x)y=(0,x)がy2=(1,1)y^2=(1,1)を満たすので、yyは位数四をもち、四元からなるEfE_fを生成する。よってEf≅C4E_f\cong C_4であり、系 3.3によりこの拡大は分裂しない。定理 3.2により、この非零の拡大類とそれ自身との Baer 和は、分裂拡大C2×C2C_2\times C_2の類である。

参考文献

  1. Kenneth S. Brown, Cohomology of Groups, Graduate Texts in Mathematics 87, Springer, New York, 1982.低次の群コホモロジー、交差準同型、およびアーベル核をもつ群の拡大の分類を参考にした。

前提記事