§A5.19反転と円円対応

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円が複数現れる図形では、円の交点や接触を調べる問題があります。例えば、相異なる二点で交わる二円について、交点の位置や、交点での接線のなす角が問題になります。平行移動や回転では円は円へ移るため、円を直線に変えて関係を調べることはできません。

そこで、円を直線へ移すことがある変換として、反転を考えます。反転は、円の問題を直線の問題へ置き換えるために重要です。また、長さが変わっても曲線の交角の大きさが保たれるため、図形の形を変えて角の関係を調べることができます。円の性質を学んだ後に、図形を変換して問題を考える方法として位置づけられます。

本記事では、反転の基本的な性質と、円を扱う問題への応用を解説します。

1 まず動かして見る

点や曲線を反転するときは、反転の中心を除いた部分を考えます。

定理 1.1. 中心O\mathrm{O}、半径ρ>0\rho>0の反転について、中心を通らない円は円へ、中心を通る円から中心を除いた集合は中心を通らない直線へ移る。中心を通らない直線は中心を通る円から中心を除いた集合へ、中心を通る直線から中心を除いた集合は同じ集合へ移る。さらに反転は自分自身が逆写像であり、中心以外の滑らかな曲線の交角の大きさを保つ。

下の図では、中心O=(0,0)\mathrm{O}=(0,0)、反転半径ρ=2\rho=2です。円Γ\Gammaは中心(3,0)(3,0)、半径11なので、中心O\mathrm{O}を通りません。円周上の点P\mathrm{P}を動かすと、その反転像P∗\mathrm{P}^{*}も動きます。P∗\mathrm{P}^{*}は別の円の上に残ること、また3点O,P,P∗\mathrm{O},\mathrm{P},\mathrm{P}^{*}が一直線上にあることを観察してください。

図で円周上にとどまることが見えたとしても、観察は証明ではありません。 図が表示するのは選んだ座標と有限個の位置だけです。以下では、距離の式を計算して、なぜ円が円へ移るのかをすべての点について示します。

2 反転の定義と基本性質

定義 2.1 (反転). 中心O\mathrm{O}、半径ρ>0\rho>0の反転 (inversion) とは、O\mathrm{O}以外の各点X\mathrm{X}に対し、半直線OX\mathrm{OX}上のただ1つの点X∗\mathrm{X}^{*}を

OX⋅OX∗=ρ2\mathrm{OX}\cdot\mathrm{OX}^{*}=\rho^{2}

となるように対応させる写像である。点X∗\mathrm{X}^{*}をX\mathrm{X}の反転像と呼ぶ。

OX>0\mathrm{OX}>0なので、定義からOX∗=ρ2/OX\mathrm{OX}^{*}=\rho^{2}/\mathrm{OX}がただ1つ決まります。座標の原点をO\mathrm{O}に置き、点を位置ベクトルx\mathbf{x}で表すと、反転は

x∗=ρ2∥x∥2x(x≠0)\mathbf{x}^{*}=\frac{\rho^{2}}{\|\mathbf{x}\|^{2}}\mathbf{x}\qquad(\mathbf{x}\ne\mathbf{0})

と書くことができます。

定理 2.2. 中心O\mathrm{O}、半径ρ>0\rho>0の反転について、X,Y\mathrm{X},\mathrm{Y}をO\mathrm{O}と異なる点とする。

  1. O,X,X∗\mathrm{O},\mathrm{X},\mathrm{X}^{*}は一直線上にあり、OX⋅OX∗=ρ2\mathrm{OX}\cdot\mathrm{OX}^{*}=\rho^{2}である。
  2. (X∗)∗=X(\mathrm{X}^{*})^{*}=\mathrm{X}である。特に、反転は自分自身が逆写像である。
  3. OX=ρ\mathrm{OX}=\rhoの点は動かない。
  4. X≠Y\mathrm{X}\ne\mathrm{Y}ならば X∗Y∗=ρ2OX⋅OY XY.\mathrm{X}^{*}\mathrm{Y}^{*}=\frac{\rho^{2}}{\mathrm{OX}\cdot\mathrm{OY}}\,\mathrm{XY}.

証明.X∗\mathrm{X}^{*}はOX\mathrm{OX}と同じ半直線上にあり、その距離はρ2/OX\rho^{2}/\mathrm{OX}なので、(1)が成り立つ。さらに

OX∗⋅OX∗∗=ρ2\mathrm{OX}^{*}\cdot\mathrm{OX}^{**}=\rho^{2}

であり、OX∗=ρ2/OX\mathrm{OX}^{*}=\rho^{2}/\mathrm{OX}を代入するとOX∗∗=OX\mathrm{OX}^{**}=\mathrm{OX}となる。同じ半直線上で中心からの距離が等しい点は同じ点だからX∗∗=X\mathrm{X}^{**}=\mathrm{X}である。またOX=ρ\mathrm{OX}=\rhoならOX∗=ρ\mathrm{OX}^{*}=\rhoで、同じ半直線上にあるのでX∗=X\mathrm{X}^{*}=\mathrm{X}である。

(4)を示す。O\mathrm{O}を原点とし、x,y\mathbf{x},\mathbf{y}をX,Y\mathrm{X},\mathrm{Y}の位置ベクトルとする。内積を展開すると

∥x∗−y∗∥2=ρ4∥x∥x∥2−y∥y∥2∥2=ρ4∥x∥2∥y∥2(∥x∥2+∥y∥2−2x⋅y)=ρ4∥x∥2∥y∥2∥x−y∥2.\begin{aligned} \|\mathbf{x}^{*}-\mathbf{y}^{*}\|^{2} &=\rho^{4}\left\|\frac{\mathbf{x}}{\|\mathbf{x}\|^{2}}-\frac{\mathbf{y}}{\|\mathbf{y}\|^{2}}\right\|^{2}\\ &=\frac{\rho^{4}}{\|\mathbf{x}\|^{2}\|\mathbf{y}\|^{2}} \left(\|\mathbf{x}\|^{2}+\|\mathbf{y}\|^{2}-2\mathbf{x}\cdot\mathbf{y}\right)\\ &=\frac{\rho^{4}}{\|\mathbf{x}\|^{2}\|\mathbf{y}\|^{2}}\|\mathbf{x}-\mathbf{y}\|^{2}. \end{aligned}

距離は非負なので平方根をとり、(4)を得る。▨

系 2.3. 中心O\mathrm{O}、半径ρ>0\rho>0の反転について、相異なる点X,Y,Z\mathrm{X},\mathrm{Y},\mathrm{Z}がいずれもO\mathrm{O}と異なるならば、反転後の距離比は

X∗Y∗X∗Z∗=XYXZ OZOY\frac{\mathrm{X}^{*}\mathrm{Y}^{*}}{\mathrm{X}^{*}\mathrm{Z}^{*}} =\frac{\mathrm{XY}}{\mathrm{XZ}}\,\frac{\mathrm{OZ}}{\mathrm{OY}}

である。

証明.定理 2.2 (4)を、組(X,Y)(\mathrm{X},\mathrm{Y})と組(X,Z)(\mathrm{X},\mathrm{Z})に適用する。点の相異性と中心との非一致により、式の分母に現れる距離はすべて正である。二つの等式の辺々を割り、主張の式を得る。▨

定理 2.2 (4)の倍率は、X,Y\mathrm{X},\mathrm{Y}の中心からの距離に依存します。したがって、一般の線分比は保存されません。

3 円と直線の対応

円と直線の対応を、中心O\mathrm{O}を原点としたベクトル方程式で分類します。

定理 3.1. 反転の中心をO\mathrm{O}、半径をρ>0\rho>0とする。円Γ\Gammaの中心をC\mathrm{C}、半径をr>0r>0とし、c\mathbf{c}をOC\mathrm{OC}の位置ベクトルとする。

  1. O∉Γ\mathrm{O}\notin\Gamma、すなわちd=∥c∥2−r2≠0d=\|\mathbf{c}\|^{2}-r^{2}\ne0ならば、Γ\GammaのO\mathrm{O}以外の点の反転像は円 ∥u−ρ2dc∥=ρ2r∣d∣\left\|\mathbf{u}-\frac{\rho^{2}}{d}\mathbf{c}\right\| =\frac{\rho^{2}r}{|d|} である。
  2. O∈Γ\mathrm{O}\in\Gamma、すなわち∥c∥=r\|\mathbf{c}\|=rならば、Γ∖{O}\Gamma\setminus\{\mathrm{O}\}の反転像はO\mathrm{O}を通らない直線 c⋅u=ρ22\mathbf{c}\cdot\mathbf{u}=\frac{\rho^{2}}{2} である。この直線上のすべての点は、O\mathrm{O}を除くΓ\Gammaの点の反転像として得られる。

また、直線ℓ\ellがO\mathrm{O}を通らず、単位法線ベクトルn\mathbf{n}とh≠0h\ne0を用いて

n⋅x=h\mathbf{n}\cdot\mathbf{x}=h

と書くことができるなら、その反転像はO\mathrm{O}を通る円

∥u−ρ22hn∥=ρ22∣h∣\left\|\mathbf{u}-\frac{\rho^{2}}{2h}\mathbf{n}\right\|=\frac{\rho^{2}}{2|h|}

からO\mathrm{O}を除いた集合である。O\mathrm{O}を通る直線からO\mathrm{O}を除いた集合は、同じ集合へ移る。

証明. 反転前の点を位置ベクトルx\mathbf{x}、反転後の点をu\mathbf{u}とする。定義から

u=ρ2∥x∥2x,x=ρ2∥u∥2u\mathbf{u}=\frac{\rho^{2}}{\|\mathbf{x}\|^{2}}\mathbf{x}, \qquad \mathbf{x}=\frac{\rho^{2}}{\|\mathbf{u}\|^{2}}\mathbf{u}

である。

円Γ\Gammaの方程式は

∥x−c∥2=r2,\|\mathbf{x}-\mathbf{c}\|^{2}=r^{2},

すなわち

∥x∥2−2c⋅x+∥c∥2−r2=0\|\mathbf{x}\|^{2}-2\mathbf{c}\cdot\mathbf{x}+\|\mathbf{c}\|^{2}-r^{2}=0

である。ここへx=ρ2u/∥u∥2\mathbf{x}=\rho^{2}\mathbf{u}/\|\mathbf{u}\|^{2}を代入し、d=∥c∥2−r2d=\|\mathbf{c}\|^{2}-r^{2}とおくと

d∥u∥2−2ρ2c⋅u+ρ4=0d\|\mathbf{u}\|^{2}-2\rho^{2}\mathbf{c}\cdot\mathbf{u}+\rho^{4}=0

を得る。

d≠0d\ne0のとき両辺をddで割り、平方完成すると

∥u−ρ2dc∥2=ρ4d2(∥c∥2−d)=ρ4r2d2.\left\|\mathbf{u}-\frac{\rho^{2}}{d}\mathbf{c}\right\|^{2} =\frac{\rho^{4}}{d^{2}}\left(\|\mathbf{c}\|^{2}-d\right) =\frac{\rho^{4}r^{2}}{d^{2}}.

右辺は正なので、(1)の円の方程式である。この円の方程式へu=0\mathbf{u}=\mathbf{0}を代入すると∥c∥2=r2\|\mathbf{c}\|^2=r^2となり、d≠0d\ne0に反する。したがって、この円はO\mathrm{O}を通らない。逆向きの代入も同値変形なので、この円の全体がちょうど像になる。

d=0d=0のときは、同じ式が

−2ρ2c⋅u+ρ4=0-2\rho^{2}\mathbf{c}\cdot\mathbf{u}+\rho^{4}=0

となる。よってc⋅u=ρ2/2\mathbf{c}\cdot\mathbf{u}=\rho^{2}/2であり、(2)の直線を得る。この直線はu=0\mathbf{u}=\mathbf{0}を満たさず、逆向きの代入も同値変形なので、直線全体が像になる。

中心O\mathrm{O}を通らない直線ℓ\ellの方程式をn⋅x=h\mathbf{n}\cdot\mathbf{x}=hとし、∥n∥=1\|\mathbf{n}\|=1、h≠0h\ne0とする。中心の位置ベクトルがc0=ρ2n/(2h)\mathbf{c}_0=\rho^2\mathbf{n}/(2h)、半径がr0=ρ2/(2∣h∣)r_0=\rho^2/(2|h|)である円をKKとおく。∥c0∥=r0\|\mathbf{c}_0\|=r_0なので、KKはO\mathrm{O}を通る。(2)により、K∖{O}K\setminus\{\mathrm{O}\}の反転像は

c0⋅u=ρ22,すなわちn⋅u=h\mathbf{c}_0\cdot\mathbf{u}=\frac{\rho^2}{2}, \qquad\text{すなわち}\qquad \mathbf{n}\cdot\mathbf{u}=h

を満たす直線ℓ\ellである。定理 2.2 (2)により、反転をもう一度施すと、ℓ\ellの像はK∖{O}K\setminus\{\mathrm{O}\}となる。hhの符号によらず、この結論が成り立つ。

O\mathrm{O}を通る直線上の点は、反転後も同じ半直線上にある。反転を二度施すともとに戻るので、中心を除いた直線全体が同じ集合へ移る。▨

この定理のポイントは、円の方程式に現れる定数d=OC2−r2d=\mathrm{OC}^{2}-r^{2}です。ddは§A5.7 定義 1.1で中心O\mathrm{O}の方べきを計算した値でもあります。O\mathrm{O}が円の外側ならd>0d>0、内側ならd<0d<0、円周上ならd=0d=0で、最後の場合だけ2次式の項が消えて直線になります。

4 反転で不変な円と直交する円

定義 4.1. 二つの円が相異なる二つの共有点をもち、各共有点での接線が垂直であるとき、二円は直交する (orthogonal circles) という。

反転円との直交は、円全体が反転で不変になる条件と結び付きます。

定理 4.2. 中心O\mathrm{O}、半径ρ>0\rho>0の反転を考え、中心O\mathrm{O}、半径ρ\rhoの円をΩ\Omegaとする。O\mathrm{O}を通らず、Ω\Omegaと異なる円Γ\Gammaの中心をC\mathrm{C}、半径をr>0r>0とする。次の三つの条件は同値である。

  1. Γ\Gammaの反転像がΓ\Gammaに等しい。
  2. OC2−r2=ρ2\mathrm{OC}^2-r^2=\rho^2である。
  3. Γ\GammaとΩ\Omegaは直交する。

Ω\Omega自身は反転で不変であり、その各点は個別に固定されるが、Ω\Omegaは自身と直交しない。

証明.(1)⇒\Rightarrow(2)を示す。Γ\Gammaの反転像がΓ\Gammaに等しいとする。C=O\mathrm{C}=\mathrm{O}ならば、反転像は半径ρ2/r\rho^2/rの同心円なので、r=ρr=\rhoとなる。この結論はΓ≠Ω\Gamma\ne\Omegaに反する。したがってC≠O\mathrm{C}\ne\mathrm{O}である。

O\mathrm{O}がΓ\Gammaの内部にあると仮定する。直線OC\mathrm{OC}とΓ\Gammaの交点をA,B\mathrm{A},\mathrm{B}とすると、二点はO\mathrm{O}をはさんで反対の半直線上にあり、それぞれの半直線とΓ\Gammaの交点は一つだけである。反転は半直線を保ち、Γ\GammaをΓ\Gammaへ移すので、A,B\mathrm{A},\mathrm{B}はともに固定点である。反転の定義よりOA=OB=ρ\mathrm{OA}=\mathrm{OB}=\rhoであるが、二つの距離はr+OCr+\mathrm{OC}とr−OCr-\mathrm{OC}であるから、OC=0\mathrm{OC}=0となる。この結論はC≠O\mathrm{C}\ne\mathrm{O}に反する。O∉Γ\mathrm{O}\notin\Gammaも仮定されているので、O\mathrm{O}はΓ\Gammaの外部にある。

半直線OC\mathrm{OC}とΓ\Gammaの交点を、O,A,B\mathrm{O},\mathrm{A},\mathrm{B}の順にとる。反転は同じ半直線上で中心からの距離の大小を逆にするので、A\mathrm{A}とB\mathrm{B}は交換される。よって

ρ2=OA⋅OB=(OC−r)(OC+r)=OC2−r2\rho^2=\mathrm{OA}\cdot\mathrm{OB}=(\mathrm{OC}-r)(\mathrm{OC}+r)=\mathrm{OC}^2-r^2

である。

(2)⇒\Rightarrow(1)を示す。OC2−r2=ρ2\mathrm{OC}^2-r^2=\rho^2とする。右辺が正なので、O\mathrm{O}はΓ\Gammaの外部にある。Γ\Gamma上の任意の点X\mathrm{X}をとる。直線OX\mathrm{OX}がΓ\Gammaと相異なる二点で交わる場合、もう一つの交点をY\mathrm{Y}とする。§A5.7 定理 1.3 (1)により、二交点は同じ半直線上にあり、OX⋅OY=OC2−r2=ρ2\mathrm{OX}\cdot\mathrm{OY}=\mathrm{OC}^2-r^2=\rho^2である。直線OX\mathrm{OX}がΓ\Gammaに接する場合には、Y=X\mathrm{Y}=\mathrm{X}とおく。§A5.7 定理 1.5により、OX⋅OY=OX2=OC2−r2=ρ2\mathrm{OX}\cdot\mathrm{OY}=\mathrm{OX}^2=\mathrm{OC}^2-r^2=\rho^2である。したがって、いずれの場合もX\mathrm{X}の反転像はΓ\Gamma上の点Y\mathrm{Y}である。さらに、Γ\Gamma上の任意の点Z\mathrm{Z}についてZ∗\mathrm{Z}^*はΓ\Gamma上にあり、定理 2.2 (2)により(Z∗)∗=Z(\mathrm{Z}^*)^*=\mathrm{Z}である。よって反転像はΓ\Gamma全体に等しい。

(3)⇒\Rightarrow(2)を示す。Γ\GammaとΩ\Omegaが直交するとし、共有点T\mathrm{T}をとる。§A5.6 定理 1.2により各接線は半径に垂直なので、OT⊥CT\mathrm{OT}\perp\mathrm{CT}である。§A5.4 定理 1.1よりOC2=OT2+CT2=ρ2+r2\mathrm{OC}^2=\mathrm{OT}^2+\mathrm{CT}^2=\rho^2+r^2となる。

(2)⇒\Rightarrow(3)を示す。OC2=ρ2+r2\mathrm{OC}^2=\rho^2+r^2とする。長さρ,r\rho,rの二辺が直角をはさむ直角三角形を作ると、§A5.4 定理 1.1により斜辺の長さはOC\mathrm{OC}である。斜辺を線分OC\mathrm{OC}に重ね、直角の頂点をT\mathrm{T}とすると、OT=ρ\mathrm{OT}=\rho、CT=r\mathrm{CT}=rである。T\mathrm{T}を直線OC\mathrm{OC}に関して反射した点も二円の共有点であり、T\mathrm{T}は直線OC\mathrm{OC}上にないので二点は相異なる。任意の共有点U\mathrm{U}について、OU=ρ\mathrm{OU}=\rho、CU=r\mathrm{CU}=rである。∣ρ−r∣<OC<ρ+r|\rho-r|<\mathrm{OC}<\rho+rなので、三点O,C,U\mathrm{O},\mathrm{C},\mathrm{U}は一直線上にない。§A5.4 定理 1.1の逆によりOU⊥CU\mathrm{OU}\perp\mathrm{CU}であり、§A5.6 定理 1.2により二円の接線も垂直である。したがって、二円は直交する。▨

問題 4.3. 中心O\mathrm{O}、半径ρ>0\rho>0の円Ω\Omegaと二点P,Q\mathrm{P},\mathrm{Q}が与えられている。O,P,Q\mathrm{O},\mathrm{P},\mathrm{Q}は一直線上になく、OP≠ρ\mathrm{OP}\ne\rhoとする。P,Q\mathrm{P},\mathrm{Q}を通りΩ\Omegaに直交する円を構成し、その円が一意であることを示せ。

解答.

P\mathrm{P}の反転像P∗\mathrm{P}^*をとる。OP≠ρ\mathrm{OP}\ne\rhoよりP∗≠P\mathrm{P}^*\ne\mathrm{P}である。P,P∗\mathrm{P},\mathrm{P}^*は直線OP\mathrm{OP}上にあり、Q\mathrm{Q}はその直線上にないので、§A5.6 定理 2.1により三点P,P∗,Q\mathrm{P},\mathrm{P}^*,\mathrm{Q}を通る円Γ\Gammaがただ一つ存在する。

円Γ\Gammaの中心をC\mathrm{C}、半径をrrとする。直線OP\mathrm{OP}とΓ\Gammaの交点はP,P∗\mathrm{P},\mathrm{P}^*であり、二点は同じ半直線上にある。§A5.7 定理 1.3の符号つきの積は通常の長さの積に等しいので、

OC2−r2=OP⋅OP∗=ρ2>0\mathrm{OC}^2-r^2=\mathrm{OP}\cdot\mathrm{OP}^*=\rho^2>0

である。したがってO\mathrm{O}はΓ\Gammaの外部にあり、Γ≠Ω\Gamma\ne\Omegaである。定理 4.2によりΓ\GammaはΩ\Omegaに直交する。

P,Q\mathrm{P},\mathrm{Q}を通りΩ\Omegaに直交する別の円Δ\Deltaがあるとする。Δ\Deltaの中心をD\mathrm{D}、半径をssとすると、共有点での半径の直交と§A5.4 定理 1.1によりOD2=s2+ρ2>s2\mathrm{OD}^2=s^2+\rho^2>s^2である。よってO\mathrm{O}はΔ\Deltaの外部にあり、Δ≠Ω\Delta\ne\Omegaである。定理 4.2によりΔ\Deltaは反転で不変なので、P∗\mathrm{P}^*も含む。三点P,P∗,Q\mathrm{P},\mathrm{P}^*,\mathrm{Q}を通る円の一意性によりΔ=Γ\Delta=\Gammaである。

Γ\Gammaは反転で不変なので、Q∗\mathrm{Q}^*もΓ\Gamma上にある。したがって四点P,P∗,Q,Q∗\mathrm{P},\mathrm{P}^*,\mathrm{Q},\mathrm{Q}^*は同一円周上にある。ただし、Q\mathrm{Q}がΩ\Omega上にある場合にはQ∗=Q\mathrm{Q}^*=\mathrm{Q}である。▨

5 曲線の交角の保存

反転は線分の角を、対応する3点の三角形の角としてそのまま保存する写像ではありません。保存されるのは、曲線が交わる点での接線どうしの角です。これは「円が円へ移る」ことを角度の議論に使うときの正確な言い方です。

定理 5.1. 中心O\mathrm{O}、半径ρ>0\rho>0の反転を考える。γ1,γ2\gamma_1,\gamma_2が点X≠O\mathrm{X}\ne\mathrm{O}で交わり、各曲線がX\mathrm{X}の近傍ではO\mathrm{O}を通らない滑らかな曲線であるとする。γi\gamma_iの反転像をγi∗\gamma_i^{*}とし、X∗\mathrm{X}^{*}における接線が存在すると仮定する。このとき、γ1,γ2\gamma_1,\gamma_2のX\mathrm{X}における接線のなす角の大きさと、γ1∗,γ2∗\gamma_1^{*},\gamma_2^{*}のX∗\mathrm{X}^{*}における接線のなす角の大きさは等しい。向きをつけた角は符号が反転する。

証明.O\mathrm{O}を原点とし、反転を写す関数を

F(x)=ρ2∥x∥2xF(\mathbf{x})=\frac{\rho^{2}}{\|\mathbf{x}\|^{2}}\mathbf{x}

と書く。x≠0\mathbf{x}\ne\mathbf{0}における微分を、方向ベクトルv\mathbf{v}に作用させると

DFx(v)=ρ2∥x∥2(v−2x⋅v∥x∥2x).DF_{\mathbf{x}}(\mathbf{v}) =\frac{\rho^{2}}{\|\mathbf{x}\|^{2}} \left(\mathbf{v}-2\frac{\mathbf{x}\cdot\mathbf{v}}{\|\mathbf{x}\|^{2}}\mathbf{x}\right).

括弧内の写像は、x\mathbf{x}方向成分の符号だけを反転する反射である。したがって、v,w\mathbf{v},\mathbf{w}が作る角の大きさはDFx(v),DFx(w)DF_{\mathbf{x}}(\mathbf{v}),DF_{\mathbf{x}}(\mathbf{w})が作る角の大きさと等しい。曲線γi\gamma_iのX\mathrm{X}における接ベクトルにこの等式を適用すれば、主張を得る。反射の行列式は負なので、向きをつけた角は符号が反転する。▨

例えば、O\mathrm{O}を通らない2本の直線ℓ1,ℓ2\ell_1,\ell_2がX\mathrm{X}で交わるなら、各直線の像はX∗\mathrm{X}^{*}を通る円からO\mathrm{O}を除いた集合です。元の直線の角を反転後に読むときは、像の円の接線を使います。円と直線の接触、2円の接触、交わる2円の角にも、中心以外の交点では、この定理を適用することができます。

6 典型的な使い方

反転を問題へ持ち込むときは、次の順に対象を選びます。

  1. 多くの円が通る点、または接線を調べたい点を反転中心O\mathrm{O}にする。
  2. その点を通る円を反転して直線にし、円どうしの条件を直線どうしの条件へ変える。
  3. 距離の積OX⋅OX∗=ρ2\mathrm{OX}\cdot\mathrm{OX}^{*}=\rho^{2}と定理 2.2 (4)の距離公式で、長さの結論を元へ戻す。
  4. 角度の結論は定理 5.1により接線の交角として戻す。

例 6.1.O\mathrm{O}を通る相異なる2円Γ1,Γ2\Gamma_1,\Gamma_2が、O\mathrm{O}以外の点A\mathrm{A}でも交わるとする。O\mathrm{O}を中心とする任意の反転を施すと、定理 3.1により、中心を除いた各円は直線ℓ1,ℓ2\ell_1,\ell_2へ移る。反転は全単射なので、二つの像の直線は相異なる。点A\mathrm{A}の像A∗\mathrm{A}^{*}は両直線上にあるので

A∗=ℓ1∩ℓ2.\mathrm{A}^{*}=\ell_1\cap\ell_2.

反転後の2直線の交点を求めてもう一度反転すると、元の2円のO\mathrm{O}以外の交点が得られる。交点を求める際には、2円の方程式の連立を2直線の方程式の連立へ置き換えることができる。

さらに、定理 5.1を2本の円弧へ適用すると、A∗\mathrm{A}^{*}でのℓ1,ℓ2\ell_1,\ell_2の角は、元の2円のA\mathrm{A}での接線の角に等しい。保存されるのは接線の交角であり、円周上の弦の角ではない。

例 6.2. 中心O\mathrm{O}、半径ρ>0\rho>0の反転を考える。円Γ\GammaとO\mathrm{O}以外の点P\mathrm{P}を固定し、P\mathrm{P}を通る直線がΓ\Gammaと相異なる点A,B\mathrm{A},\mathrm{B}で交わるとする。A,B\mathrm{A},\mathrm{B}はいずれもO\mathrm{O}と異なるものとする。直線PAB\mathrm{PAB}がO\mathrm{O}を通らなければ、その反転像はO\mathrm{O}を通る円からO\mathrm{O}を除いた集合である。したがって、反転した3点は一般には一直線上にない。定理 2.2 (4)により

A∗B∗=ρ2OA⋅OB AB\mathrm{A}^{*}\mathrm{B}^{*} =\frac{\rho^{2}}{\mathrm{OA}\cdot\mathrm{OB}}\,\mathrm{AB}

を得る。この式と§A5.7 定理 1.3の方べきの積とを組み合わせて、反転後の距離と元の距離を結び付けることができる。直線の反転像が直線になるのは、元の直線がO\mathrm{O}を通る場合に限られる。

7 縮退・境界ケースと適用範囲

  • 中心O\mathrm{O}:通常の平面反転ではO\mathrm{O}の像を定義しません。拡張平面では無限遠点への対応として表すこともありますが、この記事の距離公式はOX>0\mathrm{OX}>0を仮定しています。
  • 反転円上の点:OX=ρ\mathrm{OX}=\rhoならX∗=X\mathrm{X}^{*}=\mathrm{X}です。反転円の円周上の各点は個別に固定されます。
  • 円が中心を通る場合:円の中心がO\mathrm{O}に一致することと、円周がO\mathrm{O}を含むことは異なります。円周がO\mathrm{O}を含むときに、中心を除いた円の像が直線となります。像の直線上にO\mathrm{O}の像という有限点は追加しません。
  • 直線が中心を通る場合:中心を除いた直線は同じ集合へ移ります。中心を通らない直線の像は、中心を通る円から中心を除いた集合です。
  • 円の式の分母dd:d=OC2−r2d=\mathrm{OC}^{2}-r^{2}が00でない場合にだけ、像の円の中心公式を使うことができます。d=0d=0では分母で割らず、直線の方程式を使います。
  • 一致する点や角:距離公式はX,Y≠O\mathrm{X},\mathrm{Y}\ne\mathrm{O}を仮定し、距離比の式は各点の相異性も仮定しています。交角の定理は、零でない接ベクトルをもつ滑らかな曲線の交点を扱います。中心での角や曲線の尖点には、交角の定理をそのまま適用しません。
  • 円周上の点の対応:反転像を同じ円の上に置くには、その円が反転で不変であるなどの追加条件が必要です。一般の円では、円と直線の対応の定理が与える別の円を使います。

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