1 相似の定義
通常の角は、二本の半直線がつくる0°以上180°以下の小さい方の角として扱います。
定義 1.1 (三角形の相似). 二つの非退化な三角形ABC,A1B1C1について、対応する三組の角がそれぞれ等しく、対応する三辺の長さの比がすべて等しいとき、二つの三角形は相似 (similarity of triangles) であるといい、△ABC∼△A1B1C1と書く。頂点の順序はA↔A1、B↔B1、C↔C1という対応を表す。
ABA1B1=BCB1C1=CAC1A1=k>0のとき、△ABCから△A1B1C1への相似比 (similarity ratio) をkとする。
2 平行線による辺の比
三角形の一辺に平行な直線を引くと、頂点を共有する二つの三角形の対応する角が等しくなります。
下の図では、スライダーによって平行線 DE の位置を変えることができます。DEがBCと平行である限り、△ADEは△ABCと相似で、3つの比ABAD、ACAE、BCDEはつねに等しく保たれます。
この図は0<AD/AB<1の範囲だけを表示しています。図を動かした有限個の配置は証明ではありません。次の辺の比は、相似を使わずに面積から導きます。
定理 2.1. 非退化な△ABCの辺ABの内部点D、辺ACの内部点Eについて、DE∥BCならばABAD=ACAE=BCDE.
証明. 三角形XYZの面積を[XYZ]と書く。△ADEと△BDEは直線ABへの高さが等しく、△ADEと△CDEは直線ACへの高さが等しい。また、DE∥BCだから、△BDEと△CDEは共通の底辺DEに対する高さが等しい。したがって
DBAD=[BDE][ADE]=[CDE][ADE]=ECAE.Eを通ってABに平行な直線とBCとの交点をFとする。同じ面積比の議論を△CBAに用いるとEACE=FBCFとなる。r=AD/DBとおけば、以上の二つの等式からr=AE/EC=FB/FCを得る。一方、四角形DBFEは平行四辺形だからDE=BFである。ゆえに
ADAB=rr+1=AEAC=DEBC.各比の逆数をとれば結論を得る。▨
DE∥BCなら、平行線の同位角から∠ADE=∠ABC、∠AED=∠ACBです。平行線で作った三角形の角と辺の比を用いると、相似条件を合同条件へ帰着させることができます。
3 相似条件
三角形の相似は、次の三条件のいずれかによって判定することができます。
定理 3.1 (三角形の相似条件). 二つの非退化な三角形ABC,A1B1C1は、次のいずれかを満たせば、この頂点の順序で相似である。角は通常の角とする。
- 二組の角がそれぞれ等しい(AA)。すなわち、∠A=∠A1、∠B=∠B1である。
- 二組の辺の比とその間の角が等しい(SAS)。すなわち、A1B1/AB=A1C1/AC、∠A1=∠Aである。
- 三組の辺の比が等しい(SSS)。すなわち、A1B1/AB=A1C1/AC=B1C1/BCである。
証明. 必要なら二つの三角形を入れ替え、k=A1B1/AB≤1とする。k=1のとき、(1)では角辺角、(2)では二辺夾角、(3)では三辺相等の合同条件により二つの三角形は合同となる。したがって相似である。
0<k<1とする。辺ABの内部にAD=A1B1となる点Dをとり、Dを通るBCに平行な直線と辺ACの内部との交点をEとする。定理 2.1により
AD=kAB,AE=kAC,DE=kBCである。平行線の同位角により、△ADEと△ABCの対応する角は等しい。
(1)の仮定の下では、AD=A1B1と∠DAE=∠B1A1C1、∠ADE=∠A1B1C1から、角辺角の合同条件により△ADE≡△A1B1C1となる。(2)の仮定の下では、AD=A1B1、AE=kAC=A1C1とその間の角の相等から、二辺夾角の合同条件により同じ合同を得る。(3)の仮定の下では、さらにDE=kBC=B1C1となり、三辺相等の合同条件により同じ合同を得る。
どの場合も、△A1B1C1の角と辺を合同な△ADEの角と辺に置き換えると、△ABCとの対応する角がすべて等しく、辺の比がすべてkである。相似の定義により△ABC∼△A1B1C1である。▨
合同の SAS 条件では対応する二辺の長さがそれぞれ等しいことを用いますが、相似の SAS 条件では対応する二辺の比が等しいことを用います。合同の SSS 条件と相似の SSS 条件も、対応する三辺の長さの相等と、対応する三辺の比の相等という違いがあります。
4 相似を使った証明
定理 4.1. 非退化な△ABCの辺AB,ACの内部点をそれぞれD,Eとする。∠ADE=∠ABCかつ∠AED=∠ACBなら△ADE∼△ABC。特にDE∥BCならこの条件が成り立つ。
証明. 二組の角の相等と定理 3.1 (1)により、△ADE∼△ABCである。対応する頂点はA↔A、D↔B、E↔Cなので、相似の定義から
ABAD=ACAE=BCDEを得る。特にDE∥BCなら、平行線の同位角によって∠ADE=∠ABC、∠AED=∠ACBとなる。▨
問題 4.2. 非退化な三角形ABCの辺AB,ACの内部点を、それぞれD,Eとする。ABAD=ACAEならばDE∥BCであることを、平行線による辺の比を用いて証明せよ。
解答.
Dを通るBCに平行な直線と辺ACの内部との交点をE′とする。定理 2.1と仮定から
ACAE′=ABAD=ACAEなので、AE′=AEである。半直線AC上でAからの距離が指定した正の数に等しい点は一つだから、E′=Eとなる。したがってDE∥BCである。▨