§A5.4三平方の定理とその逆

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等間隔の結び目を付けたロープを、三角形の三辺として張ることを考えます。三辺の長さを指定しても、どのような長さを選べば直角ができるのかは、見た目だけでは判断することができません。三平方の定理の逆は、辺の長さから直角を判定するための基本的な定理です。たとえば、結び目の間の区間を三つ、四つ、五つと振り分けて三辺を作ると、最も長い辺の向かいの角が直角になります。

角から辺の長さの関係を導くことと、辺の長さの関係から角を判定することは、区別して確かめる必要があります。本記事では、直角三角形の三辺の関係と、その関係による直角の判定を解説します。

1 この記事で証明する定理

定理 1.1 (三平方の定理). 非退化な三角形ABC\mathrm{ABC}の正の辺長をBC=a\mathrm{BC}=a、CA=b\mathrm{CA}=b、AB=c\mathrm{AB}=cとする。角は通常の角とする。次が成り立つ。

  1. ∠C=90°\angle\mathrm{C}=90°ならばa2+b2=c2a^2+b^2=c^2である。
  2. AB\mathrm{AB}が最大辺であり、a2+b2=c2a^2+b^2=c^2ならば∠C=90°\angle\mathrm{C}=90°である。

a,b>0a,b>0なので、a2+b2=c2a^2+b^2=c^2ならばc>ac>aかつc>bc>bです。したがって、逆の最大辺という条件は平方和の等式から従い、二つの主張は直角と平方和の等式の必要十分性を表します。

2 直角三角形と斜辺への垂線

下の図では、頂点C\mathrm{C}を半円上で動かして、直角三角形の形の変化を観察することができます。直角の頂点C\mathrm{C}から斜辺AB\mathrm{AB}へ下ろした垂線の足をH\mathrm{H}としています。三角形ACH\mathrm{ACH}、CBH\mathrm{CBH}、ABC\mathrm{ABC}の相似を、続く証明で用います。

図はA≠B\mathrm{A}\ne\mathrm{B}とC\mathrm{C}が直径の端点以外にある非退化な配置を示しています。半円上の有限個の位置での観察は、三平方の等式の証明ではありません。直径に対する円周角が直角であることは、後の§A5.5 系 5.1で証明します。

3 相似による証明

証明.定理 1.1 (1)を示す。∠C=90°\angle\mathrm{C}=90°とし、C\mathrm{C}から斜辺AB\mathrm{AB}へ下ろした垂線の足をH\mathrm{H}とする。∠A\angle\mathrm{A}、∠B\angle\mathrm{B}は鋭角なので、H\mathrm{H}は線分AB\mathrm{AB}の内部にある。

∠CAH=∠BAC\angle \mathrm{CAH}=\angle\mathrm{BAC}であり、∠AHC=∠ACB=90°\angle \mathrm{AHC} = \angle \mathrm{ACB} = 90°である。よって§A5.1 定理 3.1 (1)により△ACH∼△ABC\triangle \mathrm{ACH} \sim \triangle \mathrm{ABC}である。対応する辺の比からACAB=AHAC,すなわちb2=AH⋅c.\frac{\mathrm{AC}}{\mathrm{AB}} = \frac{\mathrm{AH}}{\mathrm{AC}}, \quad\text{すなわち}\quad b^2 = \mathrm{AH} \cdot c.

∠CBH=∠ABC\angle\mathrm{CBH}=\angle\mathrm{ABC}、∠BHC=∠BCA=90°\angle\mathrm{BHC}=\angle\mathrm{BCA}=90°なので、同じ相似条件により△BCH∼△BAC\triangle \mathrm{BCH} \sim \triangle \mathrm{BAC}である。対応する辺の比からBCBA=BHBC,すなわちa2=BH⋅c.\frac{\mathrm{BC}}{\mathrm{BA}} = \frac{\mathrm{BH}}{\mathrm{BC}}, \quad\text{すなわち}\quad a^2 = \mathrm{BH} \cdot c.

二式を足すと、AH+BH=AB=c\mathrm{AH} + \mathrm{BH} = \mathrm{AB} = cだからa2+b2=(BH+AH) c=c⋅c=c2.a^2 + b^2 = (\mathrm{BH} + \mathrm{AH})\, c = c \cdot c = c^2.▨

4 正方形の面積による証明

証明.定理 1.1 (1)を示す。直角をはさむ二辺の長さをa,ba,b、斜辺の長さをccとする。一辺がa+ba+bの正方形PQRS\mathrm{PQRS}をとり、辺PQ,QR,RS,SP\mathrm{PQ},\mathrm{QR},\mathrm{RS},\mathrm{SP}の内部にそれぞれ点E,F,G,H\mathrm{E},\mathrm{F},\mathrm{G},\mathrm{H}を

PE=QF=RG=SH=a,EQ=FR=GS=HP=b\mathrm{PE}=\mathrm{QF}=\mathrm{RG}=\mathrm{SH}=a,\qquad \mathrm{EQ}=\mathrm{FR}=\mathrm{GS}=\mathrm{HP}=b

となるようにとる。四隅の三角形PEH,QFE,RGF,SHG\mathrm{PEH},\mathrm{QFE},\mathrm{RGF},\mathrm{SHG}は、直角をはさむ二辺がそれぞれa,ba,bであるから、二辺夾角の合同条件によりもとの直角三角形と合同である。したがって、内側の四角形EFGH\mathrm{EFGH}の四辺はいずれもccである。

もとの直角三角形の二つの鋭角をα,β\alpha,\betaとすれば、α+β=90°\alpha+\beta=90°である。点E\mathrm{E}において、直線PQ\mathrm{PQ}と内側の四角形が作る三つの角の和は180°180°であり、両端の角はα,β\alpha,\betaである。よって∠HEF=90°\angle\mathrm{HEF}=90°となる。他の三つの頂点でも同じ角の計算により直角となるので、EFGH\mathrm{EFGH}は一辺がccの正方形である。

四隅の三角形と内側の正方形は、内部を重ねずに正方形PQRS\mathrm{PQRS}を分割する。面積を足し合わせると(a+b)2=4⋅ab2+c2.(a+b)^2=4\cdot\frac{ab}{2}+c^2.左辺を展開して2ab2abを両辺から引けば、a2+b2=c2a^2+b^2=c^2を得る。▨

相似による証明では、各脚の平方を、斜辺とその分割長との積として表しました。面積による証明では、正方形の面積を部分の面積の和として表しました。前者は相似な三角形の辺の比を用い、後者は合同な三角形の配置と面積の加法性を用いています。

5 三平方の定理の逆

証明.定理 1.1 (2)を示す。a2+b2=c2a^2+b^2=c^2とし、∠C′=90°\angle \mathrm{C'} = 90°、B′C′=a\mathrm{B'C'} = a、C′A′=b\mathrm{C'A'} = bである直角三角形△A′B′C′\triangle \mathrm{A'B'C'}をとる。定理 1.1 (1)により、その斜辺はA′B′=a2+b2=c2=c=AB.\mathrm{A'B'} = \sqrt{a^2 + b^2} = \sqrt{c^2} = c = \mathrm{AB}.△ABC\triangle \mathrm{ABC}と△A′B′C′\triangle \mathrm{A'B'C'}は三辺がそれぞれ等しいので、三辺相等の合同条件により合同である。合同な三角形の対応する角は等しいから∠C=∠C′=90°\angle \mathrm{C} = \angle \mathrm{C'} = 90°である。▨

例 5.1. 辺の長さの比が3:4:53:4:5である非退化な三角形では、あるt>0t>0によって辺長を3t,4t,5t3t,4t,5tと書く。(3t)2+(4t)2=(5t)2(3t)^2+(4t)^2=(5t)^2なので、定理 1.1 (2)により最大辺の向かいの角は直角である。等間隔の結び目によって12区間に分けた伸縮しないロープを用い、結び目の間隔をttとする。ロープの両端を合わせ、3区間、4区間、5区間の部分をそれぞれ一直線に張って三角形の三辺とすれば、長さ3t3tと4t4tの辺の間に直角を作ることができる。

6 高さと面積の最大値

問題 6.1. 線分AB\mathrm{AB}の内部に点H\mathrm{H}をとり、H\mathrm{H}を通りAB\mathrm{AB}に垂直な直線上に、H\mathrm{H}と異なる点C\mathrm{C}をとる。p=AHp=\mathrm{AH}、q=HBq=\mathrm{HB}、h=CHh=\mathrm{CH}とする。三角形ABC\mathrm{ABC}がC\mathrm{C}を直角とする直角三角形であるための必要十分条件がh2=pqh^2=pqであることを示せ。また、斜辺の長さがc>0c>0である直角三角形の面積の最大値と、その値をとる三角形を求めよ。

解答.

∠ACB=90°\angle\mathrm{ACB}=90°とする。∠AHC=∠CHB=90°\angle\mathrm{AHC}=\angle\mathrm{CHB}=90°であり、∠CAH\angle\mathrm{CAH}と∠BCH\angle\mathrm{BCH}はともに90°−∠CBH90°-\angle\mathrm{CBH}に等しい。§A5.1 定理 3.1 (1)により△ACH∼△CBH\triangle\mathrm{ACH}\sim\triangle\mathrm{CBH}であるから、対応する辺の比はAH/CH=CH/BH\mathrm{AH}/\mathrm{CH}=\mathrm{CH}/\mathrm{BH}となる。したがってh2=pqh^2=pqである。

逆にh2=pqh^2=pqとする。直角三角形AHC,BHC\mathrm{AHC},\mathrm{BHC}に定理 1.1 (1)を用いると、

AC2=p2+h2=p(p+q),BC2=q2+h2=q(p+q).\mathrm{AC}^2=p^2+h^2=p(p+q),\qquad \mathrm{BC}^2=q^2+h^2=q(p+q).

二式を足せばAC2+BC2=(p+q)2=AB2\mathrm{AC}^2+\mathrm{BC}^2=(p+q)^2=\mathrm{AB}^2である。各辺長は正なのでAB\mathrm{AB}は最大辺であり、定理 1.1 (2)により∠ACB=90°\angle\mathrm{ACB}=90°となる。

斜辺の長さをccに固定すると、p+q=cp+q=cである。0≤(p−q)2=(p+q)2−4pq=c2−4h20\leq(p-q)^2=(p+q)^2-4pq=c^2-4h^2なので、h≤c/2h\leq c/2となる。三角形の面積はch/2ch/2であるからc2/4c^2/4以下であり、等号が成り立つのはp=q=c/2p=q=c/2のときである。このときAC2=p(p+q)=BC2\mathrm{AC}^2=p(p+q)=\mathrm{BC}^2なので、三角形は二等辺直角三角形である。実際にp=q=h=c/2p=q=h=c/2として三角形を作れば、既に示した十分性から直角三角形となり、面積はc2/4c^2/4である。よって最大値はc2/4c^2/4であり、二等辺直角三角形で達成される。▨

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