§A5.13シムソン線

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三角形と点を一つ取り、その点から三辺を含む直線へ垂線を下ろすと、三つの足が定まります。三つの足は一般には一直線上にありません。例えば、正三角形の中心から垂線を下ろした足は三辺の中点となり、一直線上には並びません。

ところが、点を三角形の外接円上に置くと、三つの足は一直線上に並びます。この直線がシムソン線です。点を置く円と、そこから得られる直線との関係を明らかにするシムソンの定理は、垂線の足の配置を理解するための重要な結果です。

本記事では、外接円上の点に対するシムソン線の性質を扱います。

1 シムソンの定理

定理 1.1 (シムソンの定理). 非退化三角形△ABC\triangle ABCの外接円上に、頂点とは異なる点PPを取る。PPから直線BC,CA,ABBC,CA,ABへ下ろした垂線の足をそれぞれD,E,FD,E,Fとすると、D,E,FD,E,Fは一直線上にある。

三つの垂足を通る直線を、点PPに対する三角形ABCABCのシムソン線と呼びます。

証明.PPがAAと外接円の直径の両端にあるならば、§A5.5 系 5.1によりPB⊥ABPB\perp AB、PC⊥ACPC\perp ACである。したがってF=BF=B、E=CE=Cであり、DDも直線BCBC上にあるので三垂足は共線である。PPがBBまたはCCと直径の両端にある場合も、頂点の文字を巡回的に入れ替えると、それぞれ直線CACAまたはABAB上に三垂足がある。

以下では、PPはどの頂点とも直径の両端にないとする。外接円と各辺を含む直線の交点はその辺の両端だけなので、頂点と異なるPPは三辺を含む直線上にない。また、垂足が辺の端点に一致すれば、対応する円周角が直角になる。例えばD=CD=Cならば∠BCP=90°\angle BCP=90°であり、§A5.5 定理 1.1 (1)によりBPBPが直径となって仮定に反する。他の端点についても同じ議論が成り立つ。二つの垂足が一致すれば、対応する二辺の交点である頂点に一致することになるので、D,E,FD,E,Fも互いに異なる。

この証明では、直線ℓ\ellから直線mmへの回転角を180°180°の整数倍の違いを除いて表し、∠(ℓ,m)\angle(\ell,m)と書く。回転角の加法により

∠(ℓ,n)=∠(ℓ,m)+∠(m,n)\angle(\ell,n)=\angle(\ell,m)+\angle(m,n)

である。同じ円周上の相異なる四点X,Y,Z,WX,Y,Z,Wについて、§A5.6 定理 2.2により

∠(ZX,ZY)=∠(WX,WY)\angle(ZX,ZY)=\angle(WX,WY)

が成り立つ。実際、Z,WZ,Wが直線XYXYの同じ側にあれば通常の円周角は等しい。反対側にあれば通常の円周角は補角で回転の向きが逆になるので、回転角の差は180°180°の整数倍になる。

∠PDC=∠PEC=90°\angle PDC=\angle PEC=90°なので、§A5.6 定理 2.2により相異なる四点P,D,C,EP,D,C,Eは同じ円周上にある。§A5.5 定理 1.1 (1)により、PCPCはこの円の直径である。同じ弦EPEPに対する円周角を比較すると、

∠(DE,DP)=∠(CE,CP)=∠(CA,CP)\angle(DE,DP)=\angle(CE,CP)=\angle(CA,CP)

である。同様に、∠PDB=∠PFB=90°\angle PDB=\angle PFB=90°なので四点P,D,B,FP,D,B,Fは直径PBPBの円周上にあり、同じ弦PFPFに対する円周角から

∠(DP,DF)=∠(BP,BF)=∠(BP,BA)\angle(DP,DF)=\angle(BP,BF)=\angle(BP,BA)

を得る。

元の外接円では、同じ弦APAPに対する円周角から∠(CA,CP)=∠(BA,BP)\angle(CA,CP)=\angle(BA,BP)である。したがって、

∠(DE,DF)=∠(DE,DP)+∠(DP,DF)=∠(CA,CP)+∠(BP,BA)=0(mod180°).\begin{aligned} \angle(DE,DF) &=\angle(DE,DP)+\angle(DP,DF)\\ &=\angle(CA,CP)+\angle(BP,BA)\\ &=0\pmod{180°}. \end{aligned}

直線DEDEとDFDFは点DDを共有するので一致する。よって三垂足は一直線上にある。▨

注意 1.2.P=AP=Aの場合にはE=F=AE=F=Aであり、D≠AD\ne Aなので、三垂足は直線ADAD上にある。P=BP=Bの場合にはD=F=BD=F=Bで直線BEBE上にあり、P=CP=Cの場合にはD=E=CD=E=Cで直線CFCF上にある。後で示す垂足の公式も、これらの場合に成り立つ。

例 1.3. 正三角形△ABC\triangle ABCの外心をOOとし、OOから直線BC,CA,ABBC,CA,ABへ下ろした垂線の足をD,E,FD,E,Fとする。§A5.8 定理 6.2により、OOは各辺の垂直二等分線上にあるので、三垂足は三辺の中点である。

§A5.2 定理 2.1により、DE∥BADE\parallel BA、DF∥CADF\parallel CAである。BABAとCACAは平行ではないので、DEDEとDFDFは異なる直線であり、D,E,FD,E,Fは一直線上にない。

外接円の半径は正であるから、その中心OOは外接円上にない。したがって、点が外接円上にあるという仮定を外すと、三垂足が共線であるという結論は成り立たない。

2 複素数による別証明

補題 2.1. 単位円上の相異なる点u,vu,vと任意の点ppに対し、ppから直線uvuvへ下ろした垂足の複素座標は

q=p+u+v−uvp‾2q=\frac{p+u+v-uv\overline p}{2}

である。

証明. 単位円上ではu‾=1/u,v‾=1/v\overline u=1/u,\overline v=1/vなので、弦uvuvの直線は

z+uvz‾=u+vz+uv\overline z=u+v

と表すことができる。右辺のqqを代入するとこの方程式を満たす。p=qp=qならば、pp自身が弦を含む直線上にあり、求める垂足である。p≠qp\ne qならば、p−q=(p−u−v+uvp‾)/2p-q=(p-u-v+uv\overline p)/2と弦の方向v−uv-uの内積を実部で計算すると

Re⁡((p−q)(v−u)‾)=0\operatorname{Re}\bigl((p-q)\overline{(v-u)}\bigr)=0

となる。したがって直線pqpqは弦に垂直であり、qqは求める垂足である。▨

証明. 外接円を相似変換して単位円とし、頂点と点PPの複素座標をそれぞれa,b,c,pa,b,c,pとする。すべての絶対値は1である。補題から、BC,CA,ABBC,CA,ABへの垂足d,e,fd,e,fは

d=p+b+c−bcp‾2,e=p+c+a−cap‾2,f=p+a+b−abp‾2.d=\frac{p+b+c-bc\overline p}{2},\quad e=\frac{p+c+a-ca\overline p}{2},\quad f=\frac{p+a+b-ab\overline p}{2}.

p≠bp\ne b、a≠ca\ne c、p≠0p\ne0であるから、f−d=(a−c)(p−b)/(2p)≠0f-d=(a-c)(p-b)/(2p)\ne0である。したがって

e−df−d=(a−b)(1−cp‾)(a−c)(1−bp‾)=(a−b)(p−c)(a−c)(p−b).\frac{e-d}{f-d} =\frac{(a-b)(1-c\overline p)}{(a-c)(1-b\overline p)} =\frac{(a-b)(p-c)}{(a-c)(p-b)}.

最後の値が実数であることを共役を取って確認する。∣a∣=∣b∣=∣c∣=∣p∣=1|a|=|b|=|c|=|p|=1より

(a−b)(p−c)(a−c)(p−b)‾=(1/a−1/b)(1/p−1/c)(1/a−1/c)(1/p−1/b)=(a−b)(p−c)(a−c)(p−b).\overline{\frac{(a-b)(p-c)}{(a-c)(p-b)}} =\frac{(1/a-1/b)(1/p-1/c)}{(1/a-1/c)(1/p-1/b)} =\frac{(a-b)(p-c)}{(a-c)(p-b)}.

したがって(e−d)/(f−d)(e-d)/(f-d)は実数であり、d,e,fd,e,fは一直線上にある。相似変換を戻しても共線性は保たれる。▨

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