1 シムソンの定理
定理 1.1 (シムソンの定理). 非退化三角形△ABCの外接円上に、頂点とは異なる点Pを取る。Pから直線BC,CA,ABへ下ろした垂線の足をそれぞれD,E,Fとすると、D,E,Fは一直線上にある。
三つの垂足を通る直線を、点Pに対する三角形ABCのシムソン線と呼びます。
証明.PがAと外接円の直径の両端にあるならば、§A5.5 系 5.1によりPB⊥AB、PC⊥ACである。したがってF=B、E=Cであり、Dも直線BC上にあるので三垂足は共線である。PがBまたはCと直径の両端にある場合も、頂点の文字を巡回的に入れ替えると、それぞれ直線CAまたはAB上に三垂足がある。
以下では、Pはどの頂点とも直径の両端にないとする。外接円と各辺を含む直線の交点はその辺の両端だけなので、頂点と異なるPは三辺を含む直線上にない。また、垂足が辺の端点に一致すれば、対応する円周角が直角になる。例えばD=Cならば∠BCP=90°であり、§A5.5 定理 1.1 (1)によりBPが直径となって仮定に反する。他の端点についても同じ議論が成り立つ。二つの垂足が一致すれば、対応する二辺の交点である頂点に一致することになるので、D,E,Fも互いに異なる。
この証明では、直線ℓから直線mへの回転角を180°の整数倍の違いを除いて表し、∠(ℓ,m)と書く。回転角の加法により
∠(ℓ,n)=∠(ℓ,m)+∠(m,n)である。同じ円周上の相異なる四点X,Y,Z,Wについて、§A5.6 定理 2.2により
∠(ZX,ZY)=∠(WX,WY)が成り立つ。実際、Z,Wが直線XYの同じ側にあれば通常の円周角は等しい。反対側にあれば通常の円周角は補角で回転の向きが逆になるので、回転角の差は180°の整数倍になる。
∠PDC=∠PEC=90°なので、§A5.6 定理 2.2により相異なる四点P,D,C,Eは同じ円周上にある。§A5.5 定理 1.1 (1)により、PCはこの円の直径である。同じ弦EPに対する円周角を比較すると、
∠(DE,DP)=∠(CE,CP)=∠(CA,CP)である。同様に、∠PDB=∠PFB=90°なので四点P,D,B,Fは直径PBの円周上にあり、同じ弦PFに対する円周角から
∠(DP,DF)=∠(BP,BF)=∠(BP,BA)を得る。
元の外接円では、同じ弦APに対する円周角から∠(CA,CP)=∠(BA,BP)である。したがって、
∠(DE,DF)=∠(DE,DP)+∠(DP,DF)=∠(CA,CP)+∠(BP,BA)=0(mod180°).直線DEとDFは点Dを共有するので一致する。よって三垂足は一直線上にある。▨
例 1.3. 正三角形△ABCの外心をOとし、Oから直線BC,CA,ABへ下ろした垂線の足をD,E,Fとする。§A5.8 定理 6.2により、Oは各辺の垂直二等分線上にあるので、三垂足は三辺の中点である。
§A5.2 定理 2.1により、DE∥BA、DF∥CAである。BAとCAは平行ではないので、DEとDFは異なる直線であり、D,E,Fは一直線上にない。
外接円の半径は正であるから、その中心Oは外接円上にない。したがって、点が外接円上にあるという仮定を外すと、三垂足が共線であるという結論は成り立たない。
2 複素数による別証明
証明. 単位円上ではu=1/u,v=1/vなので、弦uvの直線は
z+uvz=u+vと表すことができる。右辺のqを代入するとこの方程式を満たす。p=qならば、p自身が弦を含む直線上にあり、求める垂足である。p=qならば、p−q=(p−u−v+uvp)/2と弦の方向v−uの内積を実部で計算すると
Re((p−q)(v−u))=0となる。したがって直線pqは弦に垂直であり、qは求める垂足である。▨
証明. 外接円を相似変換して単位円とし、頂点と点Pの複素座標をそれぞれa,b,c,pとする。すべての絶対値は1である。補題から、BC,CA,ABへの垂足d,e,fは
d=2p+b+c−bcp,e=2p+c+a−cap,f=2p+a+b−abp.p=b、a=c、p=0であるから、f−d=(a−c)(p−b)/(2p)=0である。したがって
f−de−d=(a−c)(1−bp)(a−b)(1−cp)=(a−c)(p−b)(a−b)(p−c).最後の値が実数であることを共役を取って確認する。∣a∣=∣b∣=∣c∣=∣p∣=1より
(a−c)(p−b)(a−b)(p−c)=(1/a−1/c)(1/p−1/b)(1/a−1/b)(1/p−1/c)=(a−c)(p−b)(a−b)(p−c).したがって(e−d)/(f−d)は実数であり、d,e,fは一直線上にある。相似変換を戻しても共線性は保たれる。▨