§A5.11中線定理

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三角形の頂点から対辺の中点へ線分を引くと、辺の長さに加えて、この線分の長さも考えることになります。三辺の長さが分かっているとき、対辺の中点までの長さをどのように求めればよいでしょうか。

頂点と対辺の中点を結ぶ線分を中線と呼びます。中線定理は、中線と三辺の長さを、それぞれの2乗を用いた一つの等式で結びます。例えば、直角三角形では、直角の頂点から斜辺の中点までの長さが斜辺の半分になります。中線の長さを調べることは、三辺から別の線分の長さを求めるだけでなく、三角形の角を判定することにもつながります。

本記事では、中線の長さを表す等式と、その幾何学的な意味を扱います。

1 中線定理

定理 1.1 (中線定理). 三角形△ABC\triangle ABCでMMをBCBCの中点とし、AB=c, AC=b, BC=a, AM=mAB=c,\ AC=b,\ BC=a,\ AM=mとする。このとき

m2=b2+c22−a24.m^2=\frac{b^2+c^2}{2}-\frac{a^2}{4}.

証明.AAから直線BCBCへ下ろした垂線の足をHHとし、r=BM=CM=a/2r=BM=CM=a/2、x=MHx=MH、h=AHh=AHと置く。

HHが線分BCBC上にあれば、BH,CHBH,CHは順序を除いてr+x,r−xr+x,r-xである。HHが線分BCBCの外部にあれば、BH,CHBH,CHは順序を除いてx+r,x−rx+r,x-rである。どちらの場合も

BH2+CH2=(r+x)2+(r−x)2=2r2+2x2BH^2+CH^2=(r+x)^2+(r-x)^2=2r^2+2x^2

が成り立つ。

§A5.4 定理 1.1により、

c2=h2+BH2,b2=h2+CH2,m2=h2+x2c^2=h^2+BH^2,\qquad b^2=h^2+CH^2,\qquad m^2=h^2+x^2

である。H=BH=Bのときは最初の式がc2=h2c^2=h^2、H=CH=Cのときは二番目の式がb2=h2b^2=h^2、H=MH=Mのときは三番目の式がm2=h2m^2=h^2となり、それぞれ長さの等しさから成り立つ。したがって

b2+c2=2h2+2r2+2x2=2m2+a22.b^2+c^2=2h^2+2r^2+2x^2=2m^2+\frac{a^2}{2}.

整理すると、主張の等式を得る。▨

2 中線による直角の判定

問題 2.1. 三角形△ABC\triangle ABCの辺BCBCの中点をMMとする。∠BAC\angle BACが直角であることと、AM=BC/2AM=BC/2であることが同値であることを、中線定理を用いて証明せよ。

解答.

a=BCa=BC、b=CAb=CA、c=ABc=AB、m=AMm=AMと置く。定理 1.1により、

m2=b2+c22−a24m^2=\frac{b^2+c^2}{2}-\frac{a^2}{4}

である。

∠BAC\angle BACが直角ならば、§A5.4 定理 1.1によりb2+c2=a2b^2+c^2=a^2であるから、m2=a2/4m^2=a^2/4となる。m,am,aは正なので、m=a/2m=a/2である。

逆にm=a/2m=a/2ならば、中線定理に代入して

a24=b2+c22−a24\frac{a^2}{4}=\frac{b^2+c^2}{2}-\frac{a^2}{4}

を得る。したがってb2+c2=a2b^2+c^2=a^2であり、§A5.4 定理 1.1の逆の向きから∠BAC\angle BACは直角である。▨

3 ベクトルによる別証明

証明.MMを原点とし、MA⃗=v\vec{MA}=\mathbf v、MB⃗=u\vec{MB}=\mathbf uと置く。MMはBCBCの中点なのでMC⃗=−u\vec{MC}=-\mathbf uであり、

m2=∣v∣2,c2=∣v−u∣2,b2=∣v+u∣2,a2=∣2u∣2.m^2=|\mathbf v|^2,\quad c^2=|\mathbf v-\mathbf u|^2,\quad b^2=|\mathbf v+\mathbf u|^2,\quad a^2=|2\mathbf u|^2.

よって

b2+c2=∣v+u∣2+∣v−u∣2=2∣v∣2+2∣u∣2=2m2+a22.b^2+c^2 =|\mathbf v+\mathbf u|^2+|\mathbf v-\mathbf u|^2 =2|\mathbf v|^2+2|\mathbf u|^2 =2m^2+\frac{a^2}{2}.

整理してm2=(b2+c2)/2−a2/4m^2=(b^2+c^2)/2-a^2/4を得る。▨

注意 3.1. 三点A,B,CA,B,Cが同一直線上にある退化配置でも、上のベクトルの平方展開は成り立つ。したがって、中線の長さを表す等式も成り立つ。

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