§A5.23競技数学:初等幾何

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初等幾何の競技問題では、図を眺めて終わりにせず、点の位置・角の向き・補助線の目的を明示してから、相似、円、面積、比へ翻訳することを重視します。以下の問題は特定の大会問題の転載ではなく、典型的な構造をもつ再構成問題です。

1 問題1:相似から積の関係を得る

問題 1.1. 非退化な三角形ABCABCの辺BCBCの内部に点DDを取る。さらに

∠BAD=∠ACB\angle BAD=\angle ACB

とする。このときAB2=BD⋅BCAB^2=BD\cdot BCを示せ。

解答.

DDは辺BCBCの内部にあるので、∠ABD=∠ABC\angle ABD=\angle ABCである。仮定から∠BAD=∠ACB\angle BAD=\angle ACBなので、§A5.1 定理 3.1 (1)により

△ABD∼△CBA\triangle ABD\sim\triangle CBA

である。

対応する頂点はA↔CA\leftrightarrow C、B↔BB\leftrightarrow B、D↔AD\leftrightarrow Aである。したがって

ABCB=BDBA\frac{AB}{CB}=\frac{BD}{BA}

であり、AB2=BD⋅BCAB^2=BD\cdot BCを得る。▨

点DDが線分BCBCの外にある場合は、角の取り方と有向比を改めて指定する必要があります。線分外への拡張は項目 (1)で扱います。

2 問題2:垂心の反射と共円

問題 2.1. 鋭角三角形ABCABCの垂心をHHとする。HHを辺BCBCに関して反射した点をHaH_aとする。このときA,B,C,HaA,B,C,H_aが同一円周上にあることを示せ。

解答.

§A5.8 系 14.1により、鋭角三角形の垂心HHは三角形の内部にある。§A5.8 定理 10.1によりBH⊥ACBH\perp AC、CH⊥ABCH\perp ABなので、

∠HBC=90∘−∠BCA,∠HCB=90∘−∠ABC\angle HBC=90^\circ-\angle BCA,\qquad \angle HCB=90^\circ-\angle ABC

である。三角形BHCBHCの内角の和から、

∠BHC=∠ABC+∠BCA=180∘−∠BAC\angle BHC=\angle ABC+\angle BCA=180^\circ-\angle BAC

を得る。辺BCBCに関する反射はB,CB,Cを固定し、角の大きさを保つので、

∠BHaC=∠BHC=180∘−∠BAC\angle BH_aC=\angle BHC=180^\circ-\angle BAC

である。したがって、

∠BHaC+∠BAC=180∘\angle BH_aC+\angle BAC=180^\circ

である。A,HA,Hは直線BCBCの同じ側にあり、反射によりHaH_aは反対側にある。§A5.6 定理 2.2 (2)により、A,B,C,HaA,B,C,H_aは同一円周上にある。▨

3 問題3:角の二等分線の逆

問題 3.1. 非退化な三角形ABCABCの辺BCBCの内部に点DDを取る。AB/AC=BD/DCAB/AC=BD/DCなら、ADADは∠BAC\angle BACの二等分線であることを示せ。

解答.

∠BAC\angle BACの内角の二等分線と辺BCBCとの交点をEEとする。点EEは辺BCBCの内部にある。§A5.2 定理 3.1と仮定から、

BEEC=ABAC=BDDC\frac{BE}{EC}=\frac{AB}{AC}=\frac{BD}{DC}

である。BE+EC=BD+DC=BCBE+EC=BD+DC=BCなので、

BEBC=BE/EC1+BE/EC=BD/DC1+BD/DC=BDBC\frac{BE}{BC} =\frac{BE/EC}{1+BE/EC} =\frac{BD/DC}{1+BD/DC} =\frac{BD}{BC}

となり、BE=BDBE=BDを得る。D,ED,Eはともに辺BCBCの内部にあるのでD=ED=Eである。したがって、ADADは∠BAC\angle BACの二等分線である。▨

三角比を用いると、面積比から角の等しさを導く別解を得ることができます。

解答.

[XYZ][XYZ]を三角形XYZXYZの面積とする。三角形ABDABDとACDACDは共通の高さをもつので、

[ABD][ACD]=BDDC\frac{[ABD]}{[ACD]}=\frac{BD}{DC}

である。一方、面積を二辺とその間の角で表すと、

[ABD][ACD]=ABsin⁡∠BADACsin⁡∠CAD\frac{[ABD]}{[ACD]}=\frac{AB\sin\angle BAD}{AC\sin\angle CAD}

である。仮定からBD/DC=AB/ACBD/DC=AB/ACなので、

sin⁡∠BAD=sin⁡∠CAD\sin\angle BAD=\sin\angle CAD

である。DDがBCBCの内部にあるため、二角∠BAD,∠CAD\angle BAD,\angle CADはともに0∘0^\circと180∘180^\circの間にあり、その和は∠BAC<180∘\angle BAC<180^\circである。この範囲で正弦が等しい二角は、等しいか、和が180∘180^\circである。後者は角の和に反するので、∠BAD=∠CAD\angle BAD=\angle CADである。したがって、ADADは∠BAC\angle BACの二等分線である。▨

4 角の二等分線の長さ

問題 4.1. 三角形ABCABCでAB=13AB=13、AC=15AC=15、BC=14BC=14とする。辺BCBCの内部の点DDをBD:DC=13:15BD:DC=13:15となるように取る。ADADが∠BAC\angle BACの二等分線であることを示し、ADADの長さを求めよ。

解答.

∠BAC\angle BACの内角の二等分線と辺BCBCとの交点をFFとする。§A5.2 定理 3.1により、BF:FC=AB:AC=13:15BF:FC=AB:AC=13:15である。F,DF,Dはともに辺BCBCの内部にあり、

BF=BD=14⋅1313+15=132BF=BD=\frac{14\cdot13}{13+15}=\frac{13}{2}

なのでF=DF=Dである。したがって、ADADは∠BAC\angle BACの二等分線であり、DC=15/2DC=15/2である。

§A5.6 定理 2.1により、三角形ABCABCの外接円が存在する。弦BCBCの内部点DDは円の内部にあるので、半直線ADADはAA以外の一点EEで円周と交わり、点はA,D,EA,D,Eの順に並ぶ。AAとEEは直線BCBCの反対側にあるので、EEはAAを含まない弧BCBC上にあり、B,CB,Cと異なる。また、B,EB,Eは弦ACACの同じ側にある。

ADADは角の二等分線で、A,D,EA,D,Eがこの順に並ぶので、∠BAD=∠EAC\angle BAD=\angle EACである。点DDは辺BCBC上にあるから、§A5.5 定理 1.1 (1)により、

∠ABD=∠ABC=∠AEC\angle ABD=\angle ABC=\angle AEC

である。§A5.1 定理 3.1 (1)により△ABD∼△AEC\triangle ABD\sim\triangle AECなので、

ABAE=ADAC,AD⋅AE=AB⋅AC=195\frac{AB}{AE}=\frac{AD}{AC},\qquad AD\cdot AE=AB\cdot AC=195

を得る。

円の内部点DDを通る二つの弦AE,BCAE,BCに§A5.7 定理 1.3を適用する。A,EA,EはDDの反対側にあり、B,CB,CもDDの反対側にあるので、二つの符号付き積はそれぞれ−AD⋅DE-AD\cdot DE、−BD⋅DC-BD\cdot DCである。したがって、

AD⋅DE=BD⋅DC=1954AD\cdot DE=BD\cdot DC=\frac{195}{4}

である。AE=AD+DEAE=AD+DEを用いて二つの積の差を取ると、

AD2=AD⋅AE−AD⋅DE=195−1954=5854AD^2=AD\cdot AE-AD\cdot DE =195-\frac{195}{4}=\frac{585}{4}

となる。AD>0AD>0より、求める長さはAD=365/2AD=3\sqrt{65}/2である。▨

5 直交する二円の距離の関係

問題 5.1. 相異なる二円Γ1,Γ2\Gamma_1,\Gamma_2が相異なる二点A,BA,Bで交わり、BBにおける二円の接線は互いに垂直であるとする。PPをΓ1\Gamma_1上のA,BA,B以外の点、QQをΓ2\Gamma_2上のA,BA,B以外の点とする。次の等式を証明せよ。

AB2PQ2=AQ2BP2+AP2BQ2.AB^2PQ^2=AQ^2BP^2+AP^2BQ^2.
解答.

AAを中心とする半径r>0r>0の反転を取り、B,P,QB,P,Qの像をそれぞれB∗,P∗,Q∗B^*,P^*,Q^*とする。相異なる二円の共有点はA,BA,Bだけなので、P≠QP\ne Qである。B,P,QB,P,Qは中心AAと異なる相異なる三点であり、§A5.19 定理 2.2 (2)により、その像も相異なる。

§A5.19 定理 3.1 (2)により、二円の中心以外の部分の像は、それぞれ直線B∗P∗B^*P^*と直線B∗Q∗B^*Q^*である。BBにおける二円の接線は垂直なので、§A5.19 定理 5.1により、二つの像直線も垂直である。§A5.4 定理 1.1を直角三角形P∗B∗Q∗P^*B^*Q^*に適用すると、

(P∗Q∗)2=(B∗P∗)2+(B∗Q∗)2(P^*Q^*)^2=(B^*P^*)^2+(B^*Q^*)^2

となる。§A5.19 定理 2.2 (4)を三辺に適用して、

r4PQ2AP2AQ2=r4BP2AB2AP2+r4BQ2AB2AQ2\frac{r^4PQ^2}{AP^2AQ^2} =\frac{r^4BP^2}{AB^2AP^2} +\frac{r^4BQ^2}{AB^2AQ^2}

を得る。AB,AP,AQ,rAB,AP,AQ,rは正なので、両辺に正数AB2AP2AQ2/r4AB^2AP^2AQ^2/r^4を掛けると、

AB2PQ2=AQ2BP2+AP2BQ2AB^2PQ^2=AQ^2BP^2+AP^2BQ^2

を得る。▨

6 補助線の選び方

  • 等しい角がある場合は、相似、円周角、角の二等分線によって他の角を求めることができるか調べます。
  • 線分の積の関係を求める場合は、相似の対応辺の比、方べき、面積比を調べます。
  • 垂線がある場合は、直径に対する円周角、垂心、反射を用いる配置を調べます。
  • 複数の操作で点を構成する場合は、その点を定める直線、垂線、垂線の足、交点を図に明記します。

図の観察は予想を作るために使い、証明では角の位置、点の内部・外部、向きを言葉と式で固定します。

7 演習

  1. 問題 1.1の仮定を、DDがBCBCの外部にある場合へ拡張し、有向角・有向比で正しい形を定式化せよ。
  2. 垂心をCA,ABCA,ABに関して反射した点も外接円上にあることを示せ。
  3. 三角形ABCABCの辺BCBCの内部に点DDを取る。BD/DC=AB/ACBD/DC=AB/ACからADADが∠BAC\angle BACの二等分線であることを示す方法を、三角比を使わず面積と相似だけで構成せよ。
  4. 問題 2.1の図に、必要な垂線とその足をすべて加え、どの線がどの点を定めるかを説明せよ。

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