1 問題1:相似から積の関係を得る
問題 1.1. 非退化な三角形ABCの辺BCの内部に点Dを取る。さらに
∠BAD=∠ACB
とする。このときAB2=BD⋅BCを示せ。
解答.
Dは辺BCの内部にあるので、∠ABD=∠ABCである。仮定から∠BAD=∠ACBなので、§A5.1 定理 3.1 (1)により
△ABD∼△CBA
である。
対応する頂点はA↔C、B↔B、D↔Aである。したがって
CBAB=BABD
であり、AB2=BD⋅BCを得る。▨
点Dが線分BCの外にある場合は、角の取り方と有向比を改めて指定する必要があります。線分外への拡張は項目 (1)で扱います。
2 問題2:垂心の反射と共円
問題 2.1. 鋭角三角形ABCの垂心をHとする。Hを辺BCに関して反射した点をHaとする。このときA,B,C,Haが同一円周上にあることを示せ。
解答.
§A5.8 系 14.1により、鋭角三角形の垂心Hは三角形の内部にある。§A5.8 定理 10.1によりBH⊥AC、CH⊥ABなので、
∠HBC=90∘−∠BCA,∠HCB=90∘−∠ABCである。三角形BHCの内角の和から、
∠BHC=∠ABC+∠BCA=180∘−∠BACを得る。辺BCに関する反射はB,Cを固定し、角の大きさを保つので、
∠BHaC=∠BHC=180∘−∠BACである。したがって、
∠BHaC+∠BAC=180∘
である。A,Hは直線BCの同じ側にあり、反射によりHaは反対側にある。§A5.6 定理 2.2 (2)により、A,B,C,Haは同一円周上にある。▨
3 問題3:角の二等分線の逆
問題 3.1. 非退化な三角形ABCの辺BCの内部に点Dを取る。AB/AC=BD/DCなら、ADは∠BACの二等分線であることを示せ。
解答.
∠BACの内角の二等分線と辺BCとの交点をEとする。点Eは辺BCの内部にある。§A5.2 定理 3.1と仮定から、
ECBE=ACAB=DCBDである。BE+EC=BD+DC=BCなので、
BCBE=1+BE/ECBE/EC=1+BD/DCBD/DC=BCBDとなり、BE=BDを得る。D,Eはともに辺BCの内部にあるのでD=Eである。したがって、ADは∠BACの二等分線である。▨
三角比を用いると、面積比から角の等しさを導く別解を得ることができます。
解答.
[XYZ]を三角形XYZの面積とする。三角形ABDとACDは共通の高さをもつので、
[ACD][ABD]=DCBD
である。一方、面積を二辺とその間の角で表すと、
[ACD][ABD]=ACsin∠CADABsin∠BAD
である。仮定からBD/DC=AB/ACなので、
sin∠BAD=sin∠CAD
である。DがBCの内部にあるため、二角∠BAD,∠CADはともに0∘と180∘の間にあり、その和は∠BAC<180∘である。この範囲で正弦が等しい二角は、等しいか、和が180∘である。後者は角の和に反するので、∠BAD=∠CADである。したがって、ADは∠BACの二等分線である。▨
4 角の二等分線の長さ
問題 4.1. 三角形ABCでAB=13、AC=15、BC=14とする。辺BCの内部の点DをBD:DC=13:15となるように取る。ADが∠BACの二等分線であることを示し、ADの長さを求めよ。
解答.
∠BACの内角の二等分線と辺BCとの交点をFとする。§A5.2 定理 3.1により、BF:FC=AB:AC=13:15である。F,Dはともに辺BCの内部にあり、
BF=BD=13+1514⋅13=213なのでF=Dである。したがって、ADは∠BACの二等分線であり、DC=15/2である。
§A5.6 定理 2.1により、三角形ABCの外接円が存在する。弦BCの内部点Dは円の内部にあるので、半直線ADはA以外の一点Eで円周と交わり、点はA,D,Eの順に並ぶ。AとEは直線BCの反対側にあるので、EはAを含まない弧BC上にあり、B,Cと異なる。また、B,Eは弦ACの同じ側にある。
ADは角の二等分線で、A,D,Eがこの順に並ぶので、∠BAD=∠EACである。点Dは辺BC上にあるから、§A5.5 定理 1.1 (1)により、
∠ABD=∠ABC=∠AECである。§A5.1 定理 3.1 (1)により△ABD∼△AECなので、
AEAB=ACAD,AD⋅AE=AB⋅AC=195を得る。
円の内部点Dを通る二つの弦AE,BCに§A5.7 定理 1.3を適用する。A,EはDの反対側にあり、B,CもDの反対側にあるので、二つの符号付き積はそれぞれ−AD⋅DE、−BD⋅DCである。したがって、
AD⋅DE=BD⋅DC=4195である。AE=AD+DEを用いて二つの積の差を取ると、
AD2=AD⋅AE−AD⋅DE=195−4195=4585となる。AD>0より、求める長さはAD=365/2である。▨
5 直交する二円の距離の関係
問題 5.1. 相異なる二円Γ1,Γ2が相異なる二点A,Bで交わり、Bにおける二円の接線は互いに垂直であるとする。PをΓ1上のA,B以外の点、QをΓ2上のA,B以外の点とする。次の等式を証明せよ。
AB2PQ2=AQ2BP2+AP2BQ2.
解答.
Aを中心とする半径r>0の反転を取り、B,P,Qの像をそれぞれB∗,P∗,Q∗とする。相異なる二円の共有点はA,Bだけなので、P=Qである。B,P,Qは中心Aと異なる相異なる三点であり、§A5.19 定理 2.2 (2)により、その像も相異なる。
§A5.19 定理 3.1 (2)により、二円の中心以外の部分の像は、それぞれ直線B∗P∗と直線B∗Q∗である。Bにおける二円の接線は垂直なので、§A5.19 定理 5.1により、二つの像直線も垂直である。§A5.4 定理 1.1を直角三角形P∗B∗Q∗に適用すると、
(P∗Q∗)2=(B∗P∗)2+(B∗Q∗)2となる。§A5.19 定理 2.2 (4)を三辺に適用して、
AP2AQ2r4PQ2=AB2AP2r4BP2+AB2AQ2r4BQ2を得る。AB,AP,AQ,rは正なので、両辺に正数AB2AP2AQ2/r4を掛けると、
AB2PQ2=AQ2BP2+AP2BQ2を得る。▨
6 補助線の選び方
- 等しい角がある場合は、相似、円周角、角の二等分線によって他の角を求めることができるか調べます。
- 線分の積の関係を求める場合は、相似の対応辺の比、方べき、面積比を調べます。
- 垂線がある場合は、直径に対する円周角、垂心、反射を用いる配置を調べます。
- 複数の操作で点を構成する場合は、その点を定める直線、垂線、垂線の足、交点を図に明記します。
図の観察は予想を作るために使い、証明では角の位置、点の内部・外部、向きを言葉と式で固定します。
7 演習
- 問題 1.1の仮定を、DがBCの外部にある場合へ拡張し、有向角・有向比で正しい形を定式化せよ。
- 垂心をCA,ABに関して反射した点も外接円上にあることを示せ。
- 三角形ABCの辺BCの内部に点Dを取る。BD/DC=AB/ACからADが∠BACの二等分線であることを示す方法を、三角比を使わず面積と相似だけで構成せよ。
- 問題 2.1の図に、必要な垂線とその足をすべて加え、どの線がどの点を定めるかを説明せよ。